ばれちゃった 3
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ふぅ……。
ついに来てしまったわ、夜が!
あれから昼食と夕食のときに人が来たけど、それ以外は誰もやってこなかった。
まあ、頻繁に扉を開けて逃げられたりしたら大変だから、人が来る回数も限られるわよね。
ヴォルフラムは髪を洗って体を拭いてさっぱりしたのか、機嫌がよさそうだったけど……わたしは、お兄様が来るか来ないかそればっかりを考えていて、不安でしょうがなかったわよ。
……どうか~、お兄様じゃありませんように~。
どちらにしても帰ったらお説教なんだろうけど、激怒したお兄様なんて想像するだけで怖すぎて見たくない。
夕食が終わった後で、わたしはヴォルフラムの部屋に移動して、助けが来るのを今か今かと待っている状態だ。
ハイライドもヴォルフラムの足枷の上でスタンバイ。いつでも外せる状況である。
……いきなり足枷が外れたらヴォルフラム、びっくりするかもだけど、ごめんね!
ハイライドのことは説明できないので、「わたしは知りません」という態度を貫き通すしかない。足枷の作りが脆かったとかなんかで納得してくれることを祈るよ!
「心配するな。何かあっても君は俺が守る。足枷はあるが、魔法が使えなくなったわけじゃないからな」
ヴォルフラム、頼もしい!
そしてごめん! わたしが心配しているのはそこじゃなくて、お兄様が来るか来ないかということなの!
正直、まったく不安がないと言えば嘘になるけど、そこまで不安じゃないのよ。
何と言っても、ここにはハイライドがいる。
最悪のときはハイライドに頼めば何とかなる気がしているのよね! だって曲がりなりにも妖精の王子で攻略対象の一人ですから!
ハイライドがヴォルフラムの足枷をどうにかできるなら、ハイライドとヴォルフラムという、二人の攻略対象がいるのよ。
ハイスペックでチートとしか思えない攻略対象が二人もいるんだから、もう勝ったも同然だもの(何に勝つのかというツッコミは聞かない)。
そしてさらに、お兄様とヒルデベルトか、アレクサンダー様とニコラウス先生のどちらかが来るのよ? どう考えても、こちらの方が戦力過多だわ。いくら黒豹でも、こんなチート集団にかなうとは思えない。
こういう時ヒロインなら震えながら助けを待つんだろうけど、わたしだからね。攫われても怯えないなんて、まさに悪役令嬢って感じよね。って、悪役令嬢になりたくないから頑張ってるんだけど!
「安心しろ、君のことは守ると以前にも言っただろう?」
あれ、あの宣言、まだ有効だったの?
てっきりヒルデベルトがこっちの味方になった時点で無効になったんだと思ってたよ。
気になったけど、今はそれを突っ込んでいる状況でもないよね。
夜もだんだん更けて来たから、お兄様たちが来るのもそろそろだろう。
そう思っていたら、「来たみたいだぞ」とヴォルフラムが教えてくれた。
なんでわかるのかと思ったら、ヴォルフラムってば、こっそり風魔法をつかって周囲の気配を探っていたみたい。さすが攻略対象! そんなことをさらっとやってのけるなんてチートすぎる!
「ねえ、誰が来たかわかる?」
「さすがにそこまではわからないが、気配は二つだな」
……神様仏様お願いですからお兄様じゃありませんようにー!
わたしは心の中で手を合わせて滅茶苦茶祈ったんだけど……神様も仏様も、無情だった。
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