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オルヒデーエ伯爵家の事情 1

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 お兄様が劇場であったことの説明を終えると、わたしも先日わたしの部屋にヒルデベルトがやってきたことを伝えた。


 怒られるのは確実だったため本当は隠しておきたかったが、この状況ではそうもいっていられない。

 案の定、お兄様からは怖い顔をされて「今度改めてお説教だ」と言われてしまった。うぅ……。

 お兄様も呑気にわたしをお説教している場合ではないと判断したのか、今この場では怒られなかったけれど、逆に後回しにされるとそれはそれで怖い。


 ……それもこれも、ヴォルフラムを攫った人たちのせいだわ! 絶対に捕まえて八つ当たりしてやるっ!


 わたしが一人いらない闘志を燃やしている間に、お兄様とニコラウス先生はわたしから聞いた情報を整理していた。

 ヒルデベルトがわたしの部屋にやってきたことは伝えたが、ヴォルフラムと兄弟であることは伝えていない。

 何故ならその情報は、わたしが前世の知識で知っているだけのことで、現実のこの世界で見聞きしたことではないからだ。そんな情報を持ち出せば、いったいどこからそのような情報を仕入れて来たのかと、今度はそれが問題視されるからである。


 ……わたしだって、そのくらいはわかるもんね~!


 だからこの場で、共有した情報は以下の内容だ。


 一つ、お兄様とアレクサンダー様と劇場に行った時、劇場の外で爆発が起こり二人が席を外した。二人の帰りを待っている間に、ヒルデベルトが天井から降って来て、自分に会ったことは口外するなとわたしを脅した。そして去り際に、わたしにボールマン伯爵のことを訊ねた。


 二つ、その時のことをヴォルフラムに見られていて、わたしは彼から、あの男は誰なのかと質問を受けた。そして、わたしの身の安全のために、ヴォルフラムがわたしを守ると言って学園の送り迎えをはじめた。


 三つ、一昨日の水曜日の夜中に、わたしの部屋にヒルデベルトが侵入してきた。その際に、墓地でアンデットに襲われた時のこと、そしてヴォルフラムに変わった様子はないかと訊ねられた。


 この三つである。

 わたしが考えたように、お兄様もニコラウス先生も、ヒルデベルトとヴォルフラムが攫われた件、そしてボールマン伯爵の件に、何らかの関係があるのではないかと考えている様子である。


「これだけの情報で決めつけるのは時期尚早だが、無関係とは考えられないな。ヴォルフラム・オルヒデーエの使用人が口を割ればもう少しわかるだろう。アレクサンダーが聞き出してくるのを待つしかないね」


 うんうん、お兄様とニコラウス先生、それからアレクサンダー様という三人のブレーンに任せておけば、きっと何か糸口がつかめるはずだ。

 あとからお説教されるのは怖いけど、これでヴォルフラムを攫った人間の糸口がつかめるかもしれない。


 ……早く何とかしないと、何かあってからでは遅いんだもの!


 ここは現実世界だというのを、わたしは改めて思い知る。

 ゲームではないのだからやり直しはきかないのだ。

 わたしの未来も、そしてこの世界で生きている人たちの未来も、リセットなんてできない。

 だからこそ、ゲームではこうだったから大丈夫などと、安易に考えてはいけないのだ。


 わたしが悪役令嬢というポジションを返上しようと動いている時点で、すでに本来用意されていたゲームのストーリーの改変は起きはじめている。

 そのせいで、誰かが不幸になるようなことには、決してなってはいけない。


 ……わたしは自分が大切だけど、そのせいで誰かが不幸になるのは嫌だもの!


 わたしがストーリーを捻じ曲げようとしたがために誰かが犠牲になるようなことは、あってはいけない。

 もしそのせいでヴォルフラムが攫われてしまったのだとしたら、何が何でも彼を助けなくちゃ!


 ううん、それだけではない。

 ヴォルフラムはもう、わたしの大切な友だちなのだ。ヴォルフラム側がそう思っていなくても、ここ数日、親切にしてくれた彼をわたしは他人だと切り捨てられない。彼に何かあれば、わたしはとっても悲しいし、とっても後悔するわ!


「そろそろ授業がはじまってしまいますね。マリアさん、ジークハルト君、君たちは一度教室に戻りなさい。また放課後、ここで相談しましょう」


 こんな時でも授業を優先させるのは、さすが教師と言うべきか。


 お兄様が二年三組まで送ってくれるというので、わたしはニコラウス先生に挨拶をして、生徒指導室を後にした。





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