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王都の義賊 5

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 お兄様とアレクサンダー様と馬車に乗って、わたしは王都の劇場にやって来た。


 馬車から降りて、お兄様とアレクサンダー様に挟まれるようにして階段を登っていると、ちらちらと女性たちが振り返っていく。


 ええ、ええ、気持ちはわかりますよ。わたしも、前世でこんなイケメンがいたら思わず二度見どころか三度見四度見したでしょうからね。

 前世の記憶を取り戻す前のマリアなら「おーほほほほほっ」と高笑いしたいシチュエーションだっただろうが、わたしはひたすら胃が痛い。

 もう、さっさと劇場内に入りたかったが「マリアは運動音痴だからね」と右手をお兄様、左手をアレクサンダー様に繋がれているこの状況では、急ぎたくても急げなかった。


 ……お二人とも、いくらわたしが運動音痴でも、階段を上るだけで転んだりはしませんよ!


 でも、二人ともわたしの「大丈夫」という言葉は聞き入れてくれない。

 なんて過保護なナイトたちなのかしら。わたしは小さなお子様ではないんですけどね。


「マリア、さっきから大勢の人が君を振り返っていくね。きっと、今日の君が、春の妖精のように可愛らしいからだろう」


 アレクサンダー様って、さら~っと歯の浮くようなセリフを吐く方だったのね~。そういえばゲームでもそうだった気がするわ~。でも、あれはヒロイン限定じゃあなかったかしら?


「ほ、ほほほほ、ご冗談を。わたしなんて誰も見ていませんわ。きっとアレクサンダー様とお兄様を見ているのよ」

「マリア、お前はもっと自分の顔立ちを自覚した方がいい。お前はとても美人なんだよ。みんなが振り返るほどにね」


 えーえー、知ってますよ。ゲームでさんざん見ましたからね。マリアは「外見だけ」は超ハイスペックなんです。でも、お兄様たちを前にしたら霞むと思いますよ。そして、中身が残念な悪役令嬢なわたしに見とれる人なんていないと思いますから、お兄様たちの勘違いです。


「本当にお前は何もわかっていないな。いつか誰かに攫われてしまいそうで、おにいちゃまはとっても不安だよ。いいかい? お菓子を上げるなんて言われても、誰にもついて行ってはいけないよ」

「お兄様、わたしはもう十七歳です」


 そんな、七歳児のようなことはしませんよ。

 むっと口をとがらせると、今度は左側からアレクサンダー様がそっと息を吐き出した。


「君は純真で優しいから、誰かが困っていると言われたらすぐについて行ってしまいそうだな。いいか、マリア。君の自己判断はとても危ういところがあるので、何かあれば必ず誰かに……できれば私に、相談するように」

「アレクサンダー、出しゃばらないでくれないかい? マリアを守るのは、今も昔も私なんだよ。……いいかいマリア、絶対に怪しい人にはついて行ってはいけないよ。怪しい人じゃなくてもだめだ。アレクサンダーのように、一見善人に見える男はもっとたちが悪い。優しい言葉しか吐かない男は、絶対に信用してはいけないよ」


 アレクサンダー様もお兄様も、いったいわたしをいくつだと思っているんですか!

 いくらわたしでも、これはバカにされているのだとわかりますからね!

 あんまり意地悪を言うと、おいて行っちゃいますよ!


 むむっと眉を寄せて、わたしは歩くペースを速めたのだが――、おバカさんなので、左右の手をお兄様とアレクサンダー様に捕まれていることをすっかり忘れていた。

 がくんと後ろに引っ張られて、そのままひっくり返りそうになる。


「おっと!」

「マリア!」


 お兄様とアレクサンダー様が左右からわたしの背を支えてくれたので転ばなくてすんだけれど、二人から残念な子を見るような目を向けられてしまった。


「マリア、本当に君は目が離せない」

「ほらマリア、危ないから、もっとしっかり手をつなごうね」


 ……なんか、釈然としませんけど、これ、わたしが悪かったの⁉ 悪かったのね⁉





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