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中間試験 4

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 なぁんて思っていた時期もありました。


「……うぅ、お兄様、もう恥ずかしいです。もう許してほしいです」

「ダメだよ、だってこれはお仕置きだからね」


 翌日の夕方。

 わたしはお兄様の用意したテストを受けて、そして砕け散った。


 ……うぅ、でも、あと三点だったの! あと三点で五十点だったの! 三点くらいおまけしてくれればいいのに、お兄様の意地悪ぅー!


 ということで、わたしは絶賛、お兄様にお仕置きされている最中である。

 だが、お仕置きの内容が理解できない。

 何故かわたしはお兄様の膝の上に、幼子のように抱っこされて、お菓子を食べさせられていた。

 わたしの腰にはがっちりとお兄様の腕が巻き付いていて、どうやっても離れそうにない。

 ソファの前のローテーブルの上には懐中時計が置かれていて、静かに秒針が動いている。


 お兄様のお仕置き。

 それは、お兄様にお膝抱っこされて一時間過ごすという意味不明なものだった。


「ほらマリア、次は何を食べる?」

「もうお腹いっぱいです。食べられませんっ」

「おや、そうかい? じゃあ仕方がないね」


 お兄様はわたしにお菓子を食べさせるのをやめて、今度はわたしの頬をこちょこちょとくすぐり出した。


 くすぐったいです! やめてほしいです!


 でも、身をよじったところで、解放してくれるお兄様ではない。


「いいかい、マリア。おにいちゃまが説明してまとめたノートを、試験当日までしっかりと読み返しておくんだよ。そうすれば、きっと赤点なんて取らないからね」

「わかりました、わかりましたからお兄様、くすぐった、い……!」

「もし赤点なんて取ったら、もっとすごいお仕置きをするからね」


 ひっ!

 もっとすごい、ですって!

 冗談じゃありませんよ!


 わたしがぶんぶんと首を横に振ると、お兄様が至近距離でにっこりと微笑む。イケメンの至近距離での微笑みは破壊力が半端ない。お兄様のシャンプーの匂いにくらくらする。


「それから、帰る前にドレスの試着だけはしてあげなさい。母上の機嫌が悪くなるからね」

「それは、はい……」


 お母様に、結婚式の準備を丸投げしているわたしだが、さすがに罪悪感くらいはある。

 お母様に付き合わされるとどれだけ拘束されるかわからないのであまり近づきたくないが、ドレスの試着はしなければならないことのようだ。

 現在仮縫い状態らしく、試着をした後で本縫いがはじまるという。


 ……でも、夏に結婚だから、結婚式まであと三か月くらいなのよね。


 わたしからお兄様にお願いしたことだけど、契約ではあれどわたしとお兄様が結婚するなんて、なんだか不思議。

 結婚後も変わらず学園には通うし、寮生活なので、わたしの生活はなにも変わらないと思うが、世間からは「人妻」として見られるわけだ。


 ……人妻。ふふ、なんかいい響き。


 前世でも結婚未経験のまま死んだため、初「人妻」である。人妻って聞くと、ぐっと大人になった気がするわよね。「奥様」とか「夫人」とか呼ばれたりするのかしら? ぷくくくく。


 そして、お兄様と無事結婚すれば、晴れて悪役令嬢ルートから解放されるはずである。人妻がヒロインの恋のライバルになるはずないもんね~。


「マリア、にやにや笑っているが、何を考えているんだい?」

「何でもありませんわ、お兄様」


 攻略対象であるアレクサンダー様とちょっと仲良くなってしまったのは想定外だったけれど、ヒロインのリコリスがアレクサンダー様を選ぶとは限らない。

 大勢いる攻略対象のうちの一人だ。しかもわたしは別にアレクサンダー様につき纏っているのではなくて、アレクサンダー様が責任を感じてわたしを守ろうとしてくれているだけのこと。うん、きっと大丈夫!


 わたしの、脱悪役令嬢計画は、順調であると、そう言っていいですよね~?




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