SIDEジークハルト 私の生きる希望 1
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「マリアッ‼」
マリアを追いかけて海に潜ろうとしたジークハルトだったが、まるでそれを阻止するかのように海の底から真っ青なイルカが飛び出してきて息を呑んだ。
「……ヒメル?」
コバルトブルーのイルカは、返事をするようにきゅきゅーっと鳴く。
「イルカだ‼ 私のイルカだ‼ はは、ははは! やったぞっ、お前ら、急いで捕まえろ‼」
マリアが海に飲まれたというのに、ギューデン伯爵がけらけらと興奮したように笑い出し、ジークハルトは彼に強い殺意を覚えた。
しかし――
「きゅきゅきゅーっ」
ヒメルが高い声で鳴くと、どこからともなく数十頭のイルカが集まって来た。
それらが一斉に、ギューデン伯爵の乗ったゴムボートに襲い掛かる。
「うわああああああっ」
イルカたちに襲い掛かられたゴムボートはあっけなく転覆し、海に投げ出されたギューデン伯爵はイルカの尾びれの攻撃を受けて海の中に沈んだ。
(いったい何が……)
茫然としたのもつかの間。
イルカたちの行動には驚愕したが、今はそれどころではないとジークハルトは大きく息を吸い込み、海に潜ろうとしたのだが。
「きゅきゅきゅっ」
ヒメルが妨害するようにジークハルトにまとわりつく。
「ヒメル、悪いが相手をしている暇はないんだ。マリアが」
「きゅきゅきゅきゅきゅうーっ」
ヒメルは何かをぷるぷると頭を左右に振り、それからジークハルトに背中を向けた。
「きゅきゅっ」
「ジークハルト様、もしかしたら乗れと言っているのかもしれません」
「はあ?」
ヴィルマがわけのわからないことを言ったが、ヒメルはそれを肯定するかのように今度は頭を縦に振る。
「もしかしたらお嬢様を一緒に探してくださるのかも」
「ヴィルマ、いくらイルカが賢いからと言ってそれは……」
「きゅきゅっ!」
ジークハルトはヴィルマの言葉を否定しようとしたのだが、ヒメルがぶんぶんと頭を何度も縦に振るので、あながち間違いでもない気がしてきた。
マリアは泳げない。
水の初級魔法の一つに、水の中で呼吸ができるようにするものがある。だが、マリアはそれが使えるかどうかもわからない。
ジークハルトは中級治癒魔法までなら使えるので、早く発見できればたとえ一時的に呼吸が止まっていても対処は可能だが、時間が経てばそうではなくなる。
急がなくてはならないのだ。
こんなところで、くだらない時間を使いたくない。
「信じるぞヒメル」
海は広い。
闇雲に探し回るなら、ヒメルに賭けた方がいいかもしれない。
(マリア……)
それでももし、マリアが見つからなければ――
「ヴィルマ、あとのことは任せる」
ジークハルトはヒメルの背びれを掴みながら、小さく笑った。
――もしもの時は、私も君を追うよ、マリア。
ジークハルトは、かつて幼いマリアを飲み込んだ海を見ながら、ヒメルと共にマリアを追って海中に潜った。
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