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生死“第一話完”

 カルナは落下の瞬間に、手足の末端に力をこめ、術を詠唱せずに魔法を行使した。

 《ズドン!!!》

地面に四つの小さなクレーターができる、落下の衝撃を“オリジンの魔法”で殺したのだった。ボロボロのカルナとグルトの直ぐ傍、クレーターの端でヘドロ状になったグルトの弟だったもの、ネクロマンシーで蘇った弟がもがき苦しんでいた。

 

【生きたくない、死にたくない、生きたくない】

「ごめんなさい、クレイ、私いつのまにか自分の恨みが中心になっていた、あなたを生き返らせることも私の自己満足だったのかもしれない」


そういって、グルトは力なくそのヘドロ状になった弟に手を伸ばす。弟は手を伝い、グルトの腹部へともどった。カルナはグルトを抱きかかえながらその様子をみていた。

(そうだ、切り離されると、いきていけないんだ、そうだ、彼は関係ない、私はまた意識を……強い魔術は魔女を狂わせる)

やがてグルトは、弟と一体になると意識を失ったのだった。



 砂埃が収まると、拳銃をむけられ警官に囲まれるカルナだったが、両手をあげると警察官も拳銃を下ろし、やがて希星魔女院の自警団がきて、グルトを捕まえていった。リーヌがカルナの傍にきて、上着をかけた。

「これでいいのよ、カルナ、二度とあんなこと繰り返さないで」

 デザはその様子を見ながら、手が震えていた。かつて親友とおもっていた友人を殴ってしまったこと。しかし結果的にそれが彼への本心を伝える結果になったこと。骨折の痛みはマヒし、自分が人に思いを伝えられる人間であることに手が震えていた。


 パトカーにつれ荒れていくデニー、保護されるカルナ、集う野次馬たち。その喧噪の様子を建物の物陰から見るものがいた。グルトの姉弟子ピロアだった。ピロアは小さくつぶやいた。

「ここまで予知夢をみたわ。けれどあなたにはいい薬だとおもったの、 私が直接いっても、あなたには響かなかったもの、さようなら、グルト」

 そして次の瞬間には物陰から姿を消すのだった。



 その後グルトは希星魔女院に戻され、法の裁きをうけ懲役刑になった。カルナとデザはだきあっていたが、デザもすぐに病院にもどされた。骨折はさらにひどくなり入院期間が長くなったが、母とデザとの関係は《ある魔法》によって修復をしたのだった。


 デニーは、警察の取り調べをうけた。といっても、彼の罪は魔女にそそのかされたという事で心神喪失が認められたのだったが。その取調室での出来事。取り調べをしたのは、ロズ刑事だった。

「君は、いじめられた恨みをもっているトールズ君を殺そうとしたが、妙なデジャヴをみてやめたと?」

「ええ、あれはきっとデザ君の持ち物によるものです、彼の祖母はとても、霊力が強いと有名でしたから」

「霊力……ねえ、魔女と何か関係があるのかねえ」

 そういってロズ刑事は缶コーヒーを飲む。

「そういえばデニー君」

「?」

 《ドンッ》

 とロズ刑事は新品のコーヒーの缶をおいてデニーに差し出した。

「君の友人生きているらしいぞ」

「は?」

 ロズ刑事は、じーっと彼の方を見下ろして、話だす機会をうかがっていた。

「ばかな……」

「時間があれば連絡をとってくれと、君の方から音信普通になったそうじゃないか」

 そういってロズ刑事は、事の顛末を話しはじめた。

「……」

「魔女は“憎悪”を自己目的化させる、もともと魔物や魔法は“負の感情”から生まれるんだとよ、昔の事はどう記憶している?」

「何も、つらい日々のことしか、二人していじめられたこととか」

 そういって、デニーは右手で左手の肘をかいた。

「彼は、君の友人は、君の事を自分を救ってくれたヒーローだといっていた」

「そんな……僕は彼女と、グルトと一緒にいてから、自分がだめだとばかり思い込んで、彼を救えなかったと」

「中学二年生の頃、初めのうち、トールズ君たちに彼がいじめられていたが、君がトールズ君をよびだし、喧嘩をした、それは決闘試合だった、君は彼をなぐりつけ、デザ君のように勇敢にたたかった、戦いは君が勝った、だが彼らはそれが気に入らなかったらしく、こんどは君がいじめを一手に引き受けるようになったらしい、だから彼は心配していたよ、そして君と彼とは、転校までずっと友達だった。彼は申し訳ないと思いながらも感謝していたそうだ、そして、転校は親の都合だそうだ、きっと君の記憶は魔女に洗脳されたか、君が自分自身を追い詰めるうちに作ってしまったものなのかもしれない」

「!!」

 刑事を見上げるデニー。記憶が錯綜して、頭をかきむしる。

「今後の事だけど、デザ君が命に誓っていじめをやめさせるそうだ、君はもう彼らとは関わらなくていいんだよ」

そういうとデニーはロズ刑事にだきついで号泣をするのだった。


 カルナは、希星魔女院にことわってある魔法をデザ・ロアにかけた。それは、彼女の記憶を忘れてしまう事、魔法に関するつらい出来事を忘れてしまう事。デザロアの傷は予想より深く、日常生活に支障をきたしてはいけないと、カルナが提案したことだった。それに、リーヌのいう通りだとおもったからだ。

 (魔女は人間の暮らしに深くかかわってはいけない、かあ)

 そして一か月半の月日がたったころ、あるとき万事屋件便利屋カメンムシに、来訪者がきた。

 「あのー、あなた……カルナさんです、よね?」

 「!!」

 そこにたっていたのは、記憶を失っているはずのデザ・ロアだった。

 「そうですけど……何か」

 「フ、フフフフ、僕に魔法をかけたんですね、でも、無駄だったみたいです」

 「!?」

 「すべて思い出したんですよ、僕の祖母は、ずっとかくしてはいたけど、“本当の魔女”でしたから、僕にだけ話してくれたんです」

 そういってデザが笑うと、カルナはデザのほうにかけよっていって、彼をだきしめて、泣き出してしまったのだった。

 「ごめんなさい、私たち魔女のトラブルに巻き込んで、ごめんなさい」

 デザは、記憶を消される前の事を思い出していた。病室で泣きながら、こんな事になって申し訳ないと謝り続けるカルナの事を。

 「なんか、デジャブだなあ」

 そういって、カルナの肩をやさしく支えるのだった。


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