表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/51

魔女の心配

 「じゃあねー、今日もありがとう」

 「こちらこそー」

 デザはある日も手伝いを終え、カメンムシを後にする。最近ことあるごとに、何かあれば自分が責任をとるだの、いつでもあなたの味方だのいってくれて、デザはカルナを信用しきっていた。

 「何がありがとうなの?」

 「ヒィッ、姉さんいつからここに!」 

 ふりかえるとリーヌが、店のホール、ホールといっても狭いところだがそこに新聞をひろげて、二人の様子を凝視していた。魔法をつかっていたのか全く気がづかなかった。

 「あんたねえ、“夢共有”の魔力の残骸が匂っていたわ、彼と一緒に夢をみたのね?あんたのやり方や意思は尊重するけど、わざわざグレーな事しなくても診断方法はいろいろあったのに……いつもいっているように」

 お説教の予感にカルナは首をすぼめた。

 「私たちはいまだマイノリティの中のマジョリティにすぎない。少しの失敗が全体の悪評に直結する」

 「わかってます、姉さん」

 「このことはこれからも監視していくわ、あなたは人間に感情移入しすぎる所が治ってない、無関係に介入しすぎ距離を近づけすぎないこと、私は仕事があるけれど、また見に来るから、とにかく考えておいて、“夢潜入”は危険よ、どの現場にも人間を同行させるとどうなるか、あなたもリスクを負わないわけではないのよ」

 「別に私は、私の評判のことは……」

 「そうじゃない、あなたの少しの失敗で、人間の少しの失敗で、魔女災害が広がることだってあるのよ」

 「……」


 リーヌは地下への入り口、階段へと急いだ。この世界には、こうした地下への階段があらゆるところにあって、たいていは魔女によって使われている。かつて魔女が地下へ逃げ込み、人間と戦っていたころの名残である。その性質上迷路のようになっていて、実際人間が迷い込むと、魔女による探索隊が出される事がある。リーヌは地下に入り、電話をかける。

 「ええ、言われた通り調べています、こちらの件と関係がありそうです、今カルナの件の魔女災害の首謀者になると思われる魔女の“姉弟子”を見つけましたが、やはり地下に潜んでいて、時折一人の魔女と接触する様子が確認されると、ウィッカフリークスから連絡がありました」

 「やあ、リーヌ」

 話しかけられ、リーヌは電話をおいた。薄暗い地下のある区画で、リーヌはそこである男と会う約束があった。エージェントである。眼鏡をして薄手コートを着ている。すらりと高い身長に、輪郭のしゃきっとした、常に眉をひそめている思慮深そうな男だ。なきボクロがある。彼のネクタイに意味もなくてをのばしポンポンとたたいて

 「それでは」

とリーヌは電話をきった。

 「久しぶりね、グイン、変わりはない?」

 「ああ」

 二、三昔話をした後彼女は、こう切り出した。

 「ちょっと相談があって、カルナの事で」

 「カルナの?私は、エージェントの一員として、長老と君たち学生をつなぐのが仕事だ、学生同士の個人的なことは……」

 「そうじゃなくて、そう、個人的な事なんだけど、個人的な相談でいいのよ、あなたは古い友達だから……」

 グインは黙りこくってしまった。少したつと後ろを親指で指さして、アゴで指示をする。

 「うちの事務所に来るかい、こんな所ではあれだし」

 「ええ、あなたまだ“地下の入り口”にいるのね」

 「ああ、ここは何かと情報が入りやすいんだ」

 地下を進み事務所へと移動し、奥へ通された。事務所の使われてなさそうなすっからかんの一室でパイプ椅子に腰をおろした。テーブルに、コーヒーを置かれ、用事をすませたあと来るというので、しばらくまった。

 「おまたせー、それで、何が心配なんだ?」

 と、入ってくるなり、用心のためか扉をしめ、グインが話をきりだし腰をおろした。

 「君と彼女の関係は近い、だが信用すべきさ、カルナは確かに間違いを犯したが、その実力は偉大なる魔女だよ」

 「ええ、でもまだ、子供で」

 「そのために、長老は君のスケジュールに余裕を持たせてあるのでは、必要ならいつでも、助けに入ってくれといわれたんだろう?何ならもう少し掛け合おうか?エージェントの仕事だ」

 「いえ、長老はそういったけれど、もし成功したとしても失敗したとしても、彼女に“過去”の不安を重荷にさせたまま、私はあいまいな立場を続けなければならないわ」

 「結局、どうしたいんだ?君自身は」

 「私は……」

 コーヒーをずずっと半分以上のみほして、覚悟をきめたようにため息をはいて、リーヌはすべてをはきだした。

 「彼女に嫌われるのが怖い、けれど強くいわなければ彼女は優しすぎるから、そのうまい塩梅がわからないわ、結局私はただの、姉替わりのお人よしにすぎないから、彼女はどうかわからないけど、昔から本当に妹のようにかわいがっているのよ、妹のように、妙な失敗で失いたくもないわ」

 「リーヌ」

 グインはリーヌの肩をやさしくポンたたいた。

 「何も特別な事はないんだ、誰も、人とのかかわり方は何かしら失敗はするものさ、それでも、最後に本心を伝えることができたら、関係はうまくいくはずさ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ