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神がおちた世界  作者: 兎飼なおと
第2章
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第24話

「先ずこの会議の目的は、作戦目標の確認と情報の共有、準備期間中の担当の割決めである。壁外から3名と一般学生であるコルトくんが参加しているが、作戦実行部隊であるため情報は隠さなくて良いと陛下からお言葉を賜っている。また実行部隊である4名、特に壁外共族である2名の協力にも期待する。分かっていると思うが、軍外部への情報の漏洩は重大な軍規違反として然るべき処分が下るので、各自そのつもりでいるように」

「あっ、あのっ!」


コルトが手を挙げると注目が集まり少し尻込みしたが、両親への報告もダメですか?と口にすると、ダメという言葉と共についでに帰還したことすら伝えられていないと言われてしまった。

家に戻ると周りの勘繰りがあったりなどで情報の隠蔽が難しくなるため、出来れば他の地区には行かないで欲しいそうだ。

壁外での活動はコルトの周りでは両親しか知らない極秘任務だ。

おおよそ1ヶ月ほどいなかったうえに、久しぶりに会ったと思ったらまたいなくなったとなれば友人たちも心配するかもしれない。両親も最初のときすらかなり渋っていたので、それなら逆に今は会わないほうが良いのだろう。

分かりましたと頷くと、各隊長たちに座った状態で敬礼を返された。

なんかむず痒く感じていると、前提には同意してもらえたか?とアンリやハウリルにも確認が入り、2人とも同意を返す。

ルーカスだけはさっさと始めろといった感じで手を振っている。


「各自何かあれば適宜発言してもらって構わない。議事録は取っているが機密資料になるので閲覧に関しては直接私のところにくるように。では始める」


まずハウリルの派閥陣営への情報の持ち帰りが先ず第1目標となり、接触装置探索はその後の第2目標という確認から始まった。

ハウリルの帰還後については陣営から他の人間を手配するように取り計らうとのことで、その人物との接触方法はまた後日ハウリルと軍で話し合うそうだ。

「神との接触についてだが、そもそも創造神についての説明から必要だな」

「コルトさんから神を知らないのは聞いていましたが、そちらは隠す理由はないのでは?」

「隠しているつもりはない。ただどんな状況になろうが神は沈黙を守ったままだったからな、我々も神に頼らないことを決めた。だから敢えて周知するようなこともしない、その状況を隠しているというのであれば何も言うことはない」


一応歴史に興味を持って国管理の資料館にいけば誰でも知ることは出来る。

ただルーカスのようにそもそも神の概念がなければ、誰も気に留めないということだ。

そんなわけで差異はあれどこの場の者でも知らないと考えていいだろう。

そういうものがいるということだけ知っていればこの場は問題ないが、一応共通認識の確認のための説明だ。


「文字通りこの世界を作った姿なき存在だ。大地を作り空を作り生命を作りこの世界を作った。そして人類に知恵を授け社会を構成させ文明を作らせた存在でもある」

「姿がないのにどうしていることが分かるんですか?」

「共族が持つ共鳴力は元々神との対話に使われていた能力が変遷したものだからだ」


神と対話し神から受け取った知識を具現化することで人類はその社会を発展させてきた。

そして社会が成熟し自分たちで考えて具現化出来るようになってくると、神が徐々に対話能力を減らしイメージの具現化と他者との共鳴のほうに変えていった。


「総長、それでは壁外に時々先祖返りで共鳴者が現れるように、無魔の中にも神との対話能力を持つ者が現れてもおかしくないはずです。それなら内部で探したほうが早いのでは?」

「それはあり得ない。先祖たちが残した記録では、神側から能力の変更が通達されたが反発した人類との妥協点として作ったのが対話装置らしいからな。完成後人類種から対話能力が完全に剥奪除去されたらしい。つまり今の我々は厳密には古代人とは中身が違う」

「あー、なるほど。遺伝子自体に対話能力の記録が無いのか」

「遺伝子かは分からんが、対話能力を使えた名残すらない」


アンリがイデンシってなにと小声で聞いてきたので、肉体の色々な情報を持ってる体の一部で子供が親に似るのはこれの情報を元にしてるからと答えておいた。

ハウリルもなるほどという顔をしている。


「能力がない以上は対話装置を探す以外に神と接触する方法はない」

「それなのですが、実行部隊であるわたしたちは無魔ではない。ルーカスは種族自体が違いますが、使用可能という根拠はあるのですか?」

「はっきり言うと無い」


ダメじゃんとボソッとアンリが隣でつぶやいた。

見つけたのに使えないじゃそれまでの労力が水の泡ではないだろうか。


「本当は無魔の者も同行出来れば良いのだが」

「さすがに危険すぎる。髪を染めて見た目は誤魔化せたとしても、漏れ出る魔力が全くないのであればいずれ気付かれる可能性は必ずある。食料の問題もあるしな」

「無魔のやつらは魔力がねぇから気配が読めねぇんだよ。何か会ったときにどこにいるのか分かんねぇもん守るのは自信がねぇ」

「先程のシュリアさんはどうなのですか?」


アシュバートの目が一瞬鋭く光り、眉間にシワがよる。


「シュリアは性格的に外の行動は向かん」


それ以上は聞くなという圧が掛かったので、ハウリルは深く追求することはなかった。


「だから初回目標では捜索が目的で、使用までは含まれてないんだよね」

「我々も外の情報のほうが優先順位的には高かったですしね」

「俺も別に10年20年遅れたところで寿命的には別にって感じだしな」


今更だけどルーカスはいくつなんだろうか。


「なので仮に見つけた場合は持ち帰れるなら持ち帰ってもらって、ダメなら改めてこちらから部隊を派遣するという手順でした。その頃には外の情報も十分にあるはずなので、無魔を編成した部隊を組みやすい可能性がありますからね」

「目的地が分かってんなら1人くらい俺が後から空輸してもいいしな」

「こんなに早く現地の協力者、それも教会の中枢に近い人と接触出来るとは思っていませんでした」

「魔人と教会関係者が揃っている状況がこの先もある保障などどこにもない。そのため計画を変更して装置の探索の優先順位を同程度に引き上げた」


人の自立のために対話能力を取ったのに、それでも結局は対話装置に頼ってしまうのは親離れ出来ない子供という印象を抱いた。

コルト的には家族なんだから離れたくないと思うのは分からなくもない。


「装置の探索については承知しました。気の早い話ではあるのですが、完全に魔族の独断で神が何も知らなかった場合はどうするのですか?」

「それについても考えたのだが」


アシュバートがルーカスを見た。


「大瀑布はかなり昔から存在している、つまり地理的には完全に断絶している状態だ。にも関わらず、共族と魔族には不自然なくらい共通点が多すぎる」


先程の雑談でルーカスが生物的には同じという話が出たが、そんなものより明らかにおかしいものがある。

言語と文字だ。


「ルイの話では価値観や社会構造がこちらとは全く違う。にも関わらず使用言語と文字が共通しているのは明らかにおかしい。こちらの言語も文字も多少変わってはいるが大元は神の知識だ。魔族も知らないだけで神から教えられたと考えるのが妥当だろう」


これらの可能性から例え侵略が魔族の独断だとしても、同じ神から作られた存在なら何かしら把握している可能性がある。

というのがラグゼル側の結論だった。


「お前らも途中から能力を変更させられたって過去があるなら、正直俺らも何かしら弄られててもおかしくねぇんだよな」

「理由は分からないけど共族を襲うようにとかですかね?」

「方向性はあってるが、それはねぇな。お前らを殺そうっていう衝動が全く湧かねぇのが証拠だ」


何かあったらすぐ殺すとしてた記憶があるのだが、記憶違いだろうか…。

胡乱な目で見ると察したのか、無差別に殺そうとは思わないし結局誰も殺してねぇだろと反論されてしまった。

確かになんだかんだで一線はまだ超えていない。


「とりあえず、先ずは神に会ってみないことにはどうにも始まらないって感じ?」

「俺はそう思うぞ」

「ルイが今から頑張って魔族のその議会に入るのとかもダメ?」

「それが出来なかったからここにいんだよ」


結局命令だろうが独断だろうがやることは変わらない。


「教会側でもこの件については不明という事でいいのだったな?」

「はい。残念ながらこちらでも結局魔族の襲撃については原因が不明です。ただ南部ギリギリに砦を築くと尽く破壊され、少し奥まったところでは何も無いことから最低限の上陸地点の確保だけは行われているようなので、今の所侵略が目的では?というのが主流ですね」

「ルイが言ってた犯人不明の破壊活動か」

「それも結局決め手にかけ結論が出ないのでは次の議題に移ったほうが良いと思います、さらに深い考察は王宮に任せましょう」


5番隊隊長の発言にアシュバート以下隊長たちが頷くと、改めてまとめとして第1目標と第2目標の確認が行われ、それでいいかとコルトたちにも確認が入った。。

ハウリルがスムーズですねと感心していた。



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