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神がおちた世界  作者: 兎飼なおと
第2章
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第22話

「さきに今後の話をしてしまいたくてね。コルトくんの報告はあとでもいいかな?」


疑問形だが実質後回しにするぞという宣言とみていいだろう。

リンデルトが忙しいことは分かるし、コルトも特に思うところはないので了承の意を伝える。


「まず最初に教会の一部派閥が友好を結びたいという話だけど、結論から述べると陛下は締結に同意された。以後、我が国はそれを前提として動くことになる」

「ご快諾ありがとうございます」


コルトは心が踊った、やっと外の人達と共に手を取れる一歩になるからだ。

ハウリルも深く頭を下げた。

だが喜びもつかの間すぐに落とされた。


「ただし、これは極秘事項として王宮の一部と軍の中で処理をする。国民にはまだ知らせるつもりはないので、各員そのつもりでいるように」

「なぜ隠すんですか!?」


思わず立ち上がり大声を上げると、いつの間に後ろに立っていたオーティスによってイスに引き戻されてしまった。

そのまま肩を押さえつけられる。


「コルトくん、君は分かってるはずだよね?」


先程と変わらぬ調子のリンデルトが例のものをと言うと、背後のアシュバートが足元の箱を持ち上げると、中身を机の上にぶちまけた。

それを見てハウリルが息を飲む。

ハウリルと似たような装飾が施された服や装飾品の山だ。


「ハウリルくんはこれが誰の物か分かるかな?一応言っておくけど死体はもう無いよ」


眉間にシワを寄せたハウリルが苦々しく口を開いた。


「カストルネ枢機卿とその一派の物ですね。北部の山越えで奇襲すれば壁内を皆殺せると息巻いていました。結果、コルトさんから大勢が犠牲になったと聞いています」

「なら隠したい理由も分かるよね」

「今表にすれば確実に混乱を招くでしょうね」


千年の確執を埋めるんだからのんびり行こう、と笑う殿下だが周りの空気はかなりピリピリしている。


「1つだけ、簡単に国の内情を明かしたコルトさんを怒らないで欲しいです」

「この程度では怒らないよ、そもそもそちらも想定済みだと思ってたんだけどねー。まあいいや、次の話をしようか」


完全にリンデルトのペースで話が進んでいる。


「教会との友好が進んだとして、次に問題になるのがやっぱり魔族だよね」


室内の視線が一斉にルーカスに向けられた。

注目を浴びているのに不遜な態度を変える気が全くない。


「それで、何か収穫はあったかい?」

「何か隠してんのは確実だな、それ以上は分かんねぇ」

「というと?」

「ハウリルが前に南に建てた砦がその度に壊されたって言ってたんだが、それを見てきた。破壊痕から魔人なのは確実なんだが、誰がやったか特定出来ねぇし出撃記録もどこにもねぇ。少なくとも俺が調べられる範囲にはねぇな」

「なるほど。何かありそうではあるね」


思ったよりもかなり普通に意見して、そして普通に受け入れられていることに驚いた。

なんかちょっと気に入らない。

そもそもルーカスが調べた内容に信頼性があるのだろうか。

不満が顔に出ていたのか、リンデルトが意見があれば自由に喋っていいというので、思ったことをそのまま口にする。


「それについては今まで彼はこちらのルールに則って2年を過ごしてその間に情報提供に魔力提供、君を情報と共に無事に連れ帰るっていう仕事をきっちり熟してくれたからねー。これでもまだ疑うってなったらもう何も信じられないよ」


基本的には遊んでばっかだったようだが、魔力については医療区が3日フルパワーで稼働出来る量を断続的に提供していたらしい。

心情的にまだ納得出来ないが、これ以上の貢献は過剰である。


「まだ納得出来なさそうだね」


リンデルトはルーカスに手を振って視線を取ると、そのままシュリアを指さした。

それを見てアシュバートがため息をついて腕組みをすると、指さされたシュリアが無言で一歩前に出る。

何をするのかと思っていると、ルーカスが火球を生成しシュリアに向かって真っ直ぐに放たれた。

コルトは思わずあっ、と声を上げる。

今のシュリアは戦闘用の鎧ではなく平時の軍服である、ある程度の耐火性能はあるが魔族の攻撃に耐えられるような性能はない。

だが、シュリアにぶつかる前に火球が霧散し、ただの光の粒になるとシュリアの体にそのまま吸い込まれた。

コルト、ハウリルとアンリの3人はそれを見て固まり、リンデルトが満足そうに頷いている。


「彼女が特殊体質でね、魔力由来なら触れたものだけでなく、ある程度の範囲全てを分解吸収出来る。どんなに巨大な魔法でも彼女の前では無力だし、直接叩こうにも近づいただけで魔力を吸収するからね。まさに対魔族特攻の能力を持ってるんだよ」

「しかも吸収した魔力は全部肉体強化と再生に使いやがるからな、戦えば戦うほど強化されるとかやってらんねぇよ」


対策方法の無い完全無力化出来る方法があることをお互いに理解しているから敵対関係にはならない、するだけ無駄だ。

それならばお互いの利益のために友好関係を結んだほうがいい。


「そのせいで戦い方が欠損を前提とした状態になっているのが勘弁して欲しいのだが……」

「ならちょっとは手加減しろよ!遠慮なくぶっ飛ばしやがって」

「手加減したら訓練にならないだろ」


アシュバートが死んだ目をしている。


「というわけで、理解してもらえたかな?なら話を戻すよ」


リンデルトが軌道修正をしたので、各々が居住まいを正した。

オーティスもいつの間にか離れた位置に移動している。


「短期間とはいえ調査の結果魔族側ではルイでも分からない何かが動いているのは確実という事になった。これを元にまた魔族側での調査をしても良いんだけど」

「50年粘ってダメだったからな、この程度じゃまたどうせはぐらかされる」

「というわけで、悪いんだけどルイの調査の手伝いとして君たちには引き続き外で活動して欲しいんだよね。あっ、もちろんある程度支援はするよ」


ニコニコと有無を言わさぬ威圧感を出しながら、リンデルトはコルトたち3人を見渡した。


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