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93.武器選び…お説教

短剣

小剣

直剣

大剣

片刃剣

細剣

小槍

薙刀

ハルバード

突撃槍

戦斧

手斧

長柄斧

ハンマー

メイス

籠手

短弓

大盾

バックラー


グラズさんが全26種の子供用サイズの木製の武器を、自分のマジックバッグから取り出した。


「ふぅ……とりあえずはこんなもんかな?」

「うわぁぁ〜……!前に見学させてもらった時もそうでしたけど、改めてこうして並ぶと圧巻ですねぇ……!」

「ははは、本当はまだまだ種類はあるんだけどね。さ、マーガレットちゃん。気になるものから試してみてよ」

「わぁい!分かりましたぁ!」

「ってちょっと待てぇぇい!!」

「えっ?どうしました?ディッグさん」

「どうしました?じゃないぞ嬢ちゃん!杖を選ぶんだろう!?なんでそんな武器並べてんだよ!?」

「ハッ!?確かにっ!?」


言われてみれば、俺は俺に合った杖を作ってもらうためにここに来たんだった!?

つい目の前の武器たちに心を奪われて、そのまま全部試すところだった!


というか主に、刀と薙刀に目を奪われてた。

練習用の木製とはいえ、この前の見学じゃあ見かけなかったからなぁ……。


てか、仕事内容とか仕事っぷりばかり見てて、飾られてた武器とかあんまり覚えてないんだよなぁ……。

くそぉ…しくじったぜ……。


「いやぁ…前に来た時、鍛治ギルド中を目を輝かせて見てたから、せっかくだし全部試させてあげようかなって……」

「おいおい……俺たちはいいが、嬢ちゃんはただの昼休み中なんだぞ……?」

「ははは、すみません」


まったく悪びれずに謝るグラズさん。


う〜ん…お茶目。


(ふふふ、楽しそうに武器を眺めるコウスケさん、なんだか子供みたいでかわいかったですよ?)

(うっ!)


マグにかわいいって言われるとどうしても恥ずかしい……!


恥ずかしさを誤魔化すため、俺は咳払いをすると、さっさと話を進めるべくディッグさんに話しかける。


「こほん……。確かに時間は無いですけど、自分に合ったものがあるかもしれませんし、とりあえず気になったものだけ試させてもらえませんか?」

「う〜む…まぁそれはそうだな。分かった。全部は無理だろうが、半分ぐらいならいけるだろ」

「やった!ありがとうございます!じゃあまずは……」


ディッグさんの許可も降りたので、俺は早速物色を始める。


う〜ん…こうして並んでると目移りしちゃうなぁ……!


(ふふふふ……コウスケさん、まずは最初の予定通り、杖から試してみては?)

(ん、そうだね、そうしよう!)


マグが楽しそうに笑っているが、俺はそれを気にすることなく杖を手に取る。


練習用の物とはいえ、杖の先には小さな魔石が付いており、しっかりと魔法の威力や速さなどの違いも分かるようになっている。


えーと…確か魔力を通すんだったっけ……?

テレフォンオーブと同じ要領で良いかな?


えーっと…壁際のあれが的…で良いんだよな……?


「グラズさん、あれに向かって魔法を撃っても良いですか?」

「あぁ、どうぞ」

「マーガレット、やり方は分かるのか?」

「んー…テレフォンオーブと同じ感じかなって思ってるけど……」

「おう、それでいいぜ!」

「良かった。じゃあ早速……」


俺は鎧を付けた木人形の方を向いて詠唱を始める。


今回は単純なもんが良いかな?

あー…でも実感できないじゃ意味無いか……。なら、あれかな。


えーっと…確か詠唱は……


「…《【大地を跳ねる青白き(いかづち)】よ…[我が宝を傷つけんとする不届き者]に【裁きを与えよっ】!敵を貫け…[バウンディングボルトっ]!》」


ユーリさんと一緒に悪質冒険者に襲われたときに使った魔法、《バウンディングボルト》。

どうにかあの時と同じ詠唱文と効果を思い出し、唱えた。


「へぇ……!」

「おぉぉ!」


あの時と同じように青白い雷が3つ現れ、地面を跳ねて的に向かい、そして貫いた。


『えっ?』


そう、貫いた。

鎧を付けた木人形にブッスリと刺さった。


そんな威力あったっけ?


俺たちが呆然としている間に、雷たちは役目は終わったとばかりに消え、後には細い穴が3つ空いた人形が残った。


「ウッソだろ……!?あの人形、確かに壊すことは出来るけど……まさか子供の魔力で壊すなんて……!」

「……マーガレットちゃん……?今のは……?」


リオとグラズさんが戦慄している。

ディッグさんとケランさん、いつのまにか起きていたメイカさんも呆気に取られている中、1度見たことのあるユーリさんは…


「すご〜い!さすがマーガレット!」


1人はしゃいでいた。


そんなユーリさんにメイカさんが話しかける。


「ユーリちゃん?マーガレットちゃんの魔法を見たことあるの……?」

「はい!私たちが隠密ギルドの帰りに変な男たちに絡まれたとき………」


ユーリさんはそのままのテンションで返答し、途中でメイカさんが怒った目をしていることに気づいて口を閉じたが……


「マーガレットちゃん?ユーリちゃん?どういうことか…教えてくれる?」

「「……はい……」」


時すでに遅し。


というわけで俺はユーリさんと一緒にあの日のことを説明した。


「あの……メイカさん……」

「何?」

「いえ…あの……ちょっと苦しいので…離していただけると……」

「嫌」

「それに武器もまだ選び途中……」

「杖ね」

「いやでも……」

「動かないで」

「……はい……」


その結果俺はメイカさんにガッチリと後ろから抱きしめられ動けなくなっている。


その様子をディッグさんとケランさんはやや怒った顔で、グラズさんとリオが気まずそうな顔で見ている。


なお一緒に話していたユーリさんは、別に悪いことなどしていないのに、メイカさんの隣で正座している。


メイカさんはそんなユーリさんの腰に手を回して抱き寄せている。


「あ、あの……メイカさん?なんで私のことも抱き寄せているんでしょうか……?」

「あなたも大変だったのね……」

「えっ…いえ、いつものことですし……」

「駄目よ。ユーリちゃん可愛いんだからもっと気をつけないと」

「えっと…」

「良い?」

「は、はい……」


結局なんで抱きしめてるのかは言わないのね……。


(うぅ……でもこのままだと、杖を1回使っただけで終わっちゃうなぁ……)

(そうですね……でもメイカさんが心配する気持ちも分かりますし……)

(…まぁねぇ……)


俺もメイカさんの立場なら凄く心配するだろうし……。


でもなぁ……。


「ディッグさん……」

「う〜ん…嬢ちゃんは終始巻き込まれただけだから怒りはしないが、それを言わずにいたことはまずいことだって理解してるか?」

「それは……」

「マーガレットちゃんは毎日のように何かしら巻き込まれてるから麻痺してるかもしれないけど、それを聞く僕らがどれだけ心配してるか分かるかい?」

「えっと……」


ディッグさんに助けを求めてみたが、逆に優しく咎められ、ケランさんにも言われてしまった。


…まぁ……確かに…言わなかったのは悪いと思うけど……。

でもそれ以上にイベントや気掛かりが多くていっぱいいっぱいだったし……。


というか、1度「終わった事」で納得してたじゃないか……。


(コウスケさん)

(!…どったの?マグ)


ウジウジと考え事をしてた俺にマグが話しかけてきたので、慌てて答える。


(大丈夫ですか?)

(…まぁ…うん……ちょっとアレだけど……俺が悪いのは変わらないし……)

(う〜ん……)


俺の答えにマグがなんだか不服そうな声で考え始める。


(マグ…?)

(コウスケさん、ちょっと代わってもらえませんか?)

(えっ?う〜ん……今交代すると、俺が逃げたみたいに取られる恐れがあるんだよなぁ……)

(あ〜そっかぁ……いや、でも私もメイカさんとお話ししたいことがありますし……)

(うん?それは俺が仲介するんじゃダメなの?)

(それでも良いんですけど……やっぱり、メイカさんたちとは自分の言葉で話していけるようになりたいんです。コウスケさん、お願いします)

(う〜ん…そういうことなら……)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔ユーリ〕


うぅ……メイカさんたちに怒られちゃった……。

せっかくパーティに誘ってくれたのに、これじゃあこの先また迷惑をかけないか不安だよぉ……。


それにマーガレットも一緒に怒られてしゅんってしちゃったし……。


…メイカさんたちの気持ちも分かるけど、マーガレットもあの日は色々あったし、次の日も……朝はどうか分からないけど、少なくとも私と合流してからは色々あったから、それを全部言うなんて無理だよぉ……。


さっきからマーガレット、俯いたまま何も言わないし、メイカさん、魔法使いのはずなのに私よりも力強いし……うぅ……どうしよう……。


………?

あれ…?マーガレットのオーラが変わったような……?


いや、でもこの感じ……前にもどこかで……?


「…メイカさん」

「なぁに?」


メイカさんを見上げて話しかけるマーガレットはいつも通りのマーガレットのように見えるけど……う〜ん……?


「離してください」

「ダメ、離さない。あんな大事なことを秘密にしとく子は離しません」


マーガレットがメイカさんにお願いするが、メイカさんは断固拒否、取りつく島もない。


が、ここでマーガレットが反撃した。


「…メイカさんは秘密が嫌なんですね?」

「そうよ」

「……そういうメイカさんは昔、私が遊んでいるところをじーっと見つめては、ディッグさんに連れて行かれてましたよね?」

「!?え、そ、それ……!」


…何やってるんですか?メイカさん……。


ん…でもなんだかメイカさんだけじゃなく、ディッグさんとケランさんも驚いてるような……。


「しかも誰にもバレないように念入りに草むらと同化してましたよね?」

「いやほんとに何やってるんですか……?」

「うっ…だ、だってぇ……マーガレットちゃんたちが可愛くて……癒されるからずっと見てたかったんだもん……!」


思わず感想が声に出てしまったが、メイカさんは特に気にした様子はなく答えてくれた。


と、そこでメイカさんはハッとすると、1つ咳払いをして話を逸らそうとする。


「こほん……でもそれがどうしたの?」

「…曇りの日に、私がショコラと森で遊んでた日があったじゃないですか」

「うん、あったねぇ」


迷いなく答えたよメイカさん……。


「それで1回ショコラが私に耳打ちしてたところがあったでしょう?」

「うん、2人しかいないのに耳打ちしたからバレちゃったかな?って思ったよ」


悪びれもしないよ……?

もしかして私、やばい人とパーティ組んじゃった……?


「…私それまで怖かったんですよ?」

「えっ?なんで?」

「誰かに見られてる感覚があったので」

「あぁ〜…それは……うん、ごめん」

「…………」


うわぁ…凄いジト目だ……。


「…本当に怖かったんですよ?」

「う、うん……」

「ショコラがメイカさんの匂いだから大丈夫って言ってくれるまで私そっちを見れなかったんですよ?」

「ご、ごめん……」


そりゃ怖いよ……。


でもマーガレットの話はそこで終わらなかった。


「で、メイカさんたちが村を離れたあと、同じようにショコラと森で遊んでた日があったんですよ」

「う、うん……?」

「私その日も誰かに見られてまして」

「「え……」」


メイカさんがいなくなった後に見られてた……?


「だ、誰に……?」


私はつい気になってマーガレットに聞いた。


「…私はまたメイカさんかなって思って気にしないようにしてたんですけど、ショコラが私の手を引いて全力で逃げろって言って」

『えっ……』

「村が見えてきたところぐらいで振り返ってみたら、私たちを追ってきてたのは盗賊の人たちで…」

『えっ!?』


盗賊!?


「その時は運良く出かけようとしてたお父さんに助けてもらったんですけど、あのときショコラがいなかったら私はメイカさんだと思っていた盗賊に捕まって今頃どこかに売られてましたよ?」

「えっと……」

「メイカさん」

「う、うん……?」

()()()()()()()()なので、言わないでおこうと思ってましたけど、メイカさんが秘密は嫌だって言うので言いました。どうですか?」

「ど、どうって……?」

「知れて良かったですか?」

「え、えーっと…それは……」


うわぁ……メイカさん、これはメイカさんが悪いよ……。

というかそんなことがあったのに言わずにずっと過ごしてたマーガレット、凄いよ……。

私だったらすぐに文句言っちゃうよ……。


「あー…嬢ちゃん…それぐらいで……」

「ディッグさんもですよ?」

「えっ……」

「ディッグさんが酒場で珍しく荒れてた日があったじゃないですか」

「あ、あぁ……あのときか……」


へぇ…ディッグさんが……なんか意外。

今日見てた感じだとずっと落ち着いてみんなを良く見てる感じがして、頼れる大人って雰囲気なのに……。


「ディッグさん、あのとき他の冒険者と口論になって乱闘騒ぎを起こしたじゃないですか」

「あ、あぁ……」

「その余波で、私の方に冒険者が吹き飛んできたんですけど」

「「「えっ!?」」」


うわぁ…危ないなぁ……!

それに冒険者が吹き飛んできたって……どういう乱闘したの……?


「…やっぱり誰も気づいてなかったんですね。その日からしばらく夜に1人で眠れなかったんですよ?」

「そ、それは……」

「それは?」

「……すまん……」

「はい。まぁ()()()()()()ですし、ディッグさんだけが悪いわけではないですし別に気にしてませんが」


いやいや…すごく気にしてるじゃない……。

…というかマーガレット、昔からトラブルに巻き込まれる体質なんだね……。


「最後にケランさん」

「ぼ、僕は別に問題とか起こした覚えは……」

「そうですね。ケランさんは村を回ってはけが人を治して、みんなに感謝されていました」


おぉ…えらい人だ……。

…でも…何かしたんだよね……?


「でもちょっと切ったぐらいの軽い怪我にも治癒魔法を使って、その日の夜から次の朝まで寝込んでましたよね?」

「えっ!?な、なんでそれを……!?」

「…やっぱり……その日私に魔法の手解きをしてくれるって約束も忘れてるんですね」

「えっ……そんな約束………あ…」


あちゃ〜……それは怒られるよ……。

単純にダメだよそれは〜……。


「そ、それはごめん……。で、でも…それならその時に言ってくれれば……」

「起きてお昼ご飯食べたあと、すぐに村から出発したじゃないですか」

「あっ……」


ケランさん〜……。

いや、でもでも!

それならまだ……!


「そしてそれを3回やりましたよね?」

「そ、そうだったかな……?」


あちゃ〜……!


「…というわけで、秘密…というよりは、言ってなかったことを言いましたけど、皆さん私を大事にしてると言ってくれてる割には扱いがぞんざいだと思うんですけど」

「「「…ご、ごめんなさい……」」」

「全部無事に済んだことですし、ケランさんのも、今お勉強をしているので別にいいですが、私はそれでも大なり小なり傷付いたんですからね?」

「「「は、はい……すみません……」」」


ひゃぁ〜……!

マーガレット、やっぱり怒ると怖いよぉ……!


……でも…なんだかあの時とは違う……。

悪質な冒険者に襲われたときはもっと静かで、それでいて強い感情が出てたような……。


やっぱり、身内だからまだ優しめなのかな……?


いつの間にか力が抜けているメイカさんの手からひっそりと抜け出しながら、私はマーガレットのことをぼーっと眺めていた。

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