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90.新たなメンバー…発覚

「マギーちゃん、少し早いけどお昼休みにしよっか。鍛治ギルドに行くんでしょう?」

「はい、でも良いんですか?」

「私が言い出した事だしね。マギーちゃんには絶対に勝ってもらいたいから!」

「あはは、ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて、お先に休憩もらいますね」

「うん、いってらっしゃい」


ララさんの好意でいつもより早い時間にお昼休憩を貰った俺は、彼女にお礼を言うとメイカさんたちがさっきいた場所に向かう。


そこにはメイカさんたちが移動せずに残っていて、ユーリさんと何か楽しそうに話している様子だった。


そこに俺が近づくと、ユーリさんがキツネ耳をピコピコさせ、真っ先にこちらを向いた。


さすがの感知能力だ。


「あっ、マーガレット!お疲れ様〜!もう休憩?」

「はい、少し早めに貰っちゃいました。そちらは盛り上がってましたけど、何の話をしてたんですか?」

「うふふ、マーガレットちゃんのお話♡隠密ギルドでずいぶん色々あったのね?」

「あー……それは……えぇ、まぁ……」


やべぇ〜……。

あの日の事はあんまり話してないんだよなぁ……。


成り行きで俺とユーリさんが襲われた事は知られてるが、ギルドで何があったとかは全く言ってない。


ダニエルさんの凡ミスで、マグの心に大ダメージが入ったとか言ってない。


「マーガレットちゃん♡」

「は、はい……」

「今日帰ったらお話しましょ♡」

「……はい……」


ひゅうぅ〜……!

怒ってらっしゃるぅ〜……!

恐ろしあぁ〜……!


(コ、コウスケさん…どうしましょう……)

(…こうなったら大人しくありのまま起こったことを話そう……)

(…隠密ギルドに殴り込まないでしょうか……)

(……祈るか……)


「んじゃあそろそろ行くか?」

「えぇ、ユーリちゃんも大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

「それじゃあ行きましょうか。マーガレットちゃん、案内よろしく」

「あっはい」


そういうわけで、メイカさんたちにユーリさんもプラスして、俺たちは鍛治ギルドに向かった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


俺が先導して鍛治ギルドに向かう道中に、ユーリさんに何故俺が試合なんぞすることになったのかを話す。


「なるほどぉ…そういう事なら納得だよ。マーガレットかっこいいね!」

「目の前で友達がバカにされてるのに腹立たない人なんていませんよ」

「それでもそこで助けに入れるのは立派だよ」

「ですよね!ほら、ケランさんもそう言ってるよ?」

「あー…まぁ…ありがとうございます……」

「マーガレットちゃん照れてる!可愛いわぁ♡」

「可愛いですねぇ♡」

「「ねぇ〜!」」

「うぅ……」


メイカさんとユーリさんはすっかり意気投合したみたいで、2人で俺のことをいじってくる。


ユーリさんがメイカさんたちと仲良くなれたのは嬉しいけど、今まで俺を可愛がっていたのが、メイカさん1人からユーリさんと2人になって、口を挟む余裕もない。


しかも俺を挟んで会話してるもんだから逃げることも出来ない。


(んふふ〜♫照れてるコウスケさん、可愛いです♡)


その上マグまでこんなことを言うもんだから、心の中にも逃げ道が無い。


助けを求めてディッグさんとケランさんを見るが、2人とも「頑張れ」的な良い笑顔を返して来やがった。


助ける気は無いらしいこんちくしょう。


…こうなったら自分で話題を変えるしかない……。


「あの…ユーリさんはパーティを組む気は無いんですか?」

「うん?う〜んそうだねぇ…あんまり考えた事は無いかなぁ……」


やっぱり人間関係の問題かなぁ。


そこに今度はメイカさんが聞いた。


「ユーリちゃん、今回は何階層まで潜ったの?」

「3階層ですね」

「ほぉ〜…3階層を1人で行けるんなら、少なくともEランクまでは簡単に上がれそうだな」

「そうなんですか?」

「あぁ、Eランクまでは普通に活動してりゃあ簡単に行けるからな。だが確か3階層には、必ず群れで出てくる「ハンターウルフ」や「スケルトン系」の魔物がいただろ?それも1人でやったのか?」

「はい!私、五感には自信があるんです!なので少し離れたところから削って、後はまとめてこれでズバッと…」


ユーリさんは背中の偃月刀(えんげつとう)を指して話す。


「それならDランクに行くのも早いだろうな。そうだろ?嬢ちゃん」

「そうですね、Dランクに上がる条件が、「3階層でハンターウルフを10体討伐する」ですから、もしかしたらもう達成してるかもですね」


懐かしいなぁ…それでごねてた彼らを思い出す……。


彼らは4人で四苦八苦してたっぽいのに、ユーリさんは1人でサクッと片付けたっぽい……。


頑張れ冒険者。

ユーリさん(規格外)がすぐそこまで迫っているぞ。


俺が懐かしんでると、今度はケランさんがユーリさんに話しかけた。


「ですが、状態異常を使う敵と戦うときはどうするのですか?3階層にもいたはずですよ?」


確かに、麻痺やら眠りやら貰ったらそのまま……ってなりそうだ。


「いましたね、植物系の魔物が。でもあんな遅い攻撃、当たる方が難しいですよ?」

「…なるほど…そういうタイプですか……」


当たらなければどうと言うことはないタイプね。


(……なんというか……すごくゴリ押しというか……行き当たりばったりというか……)

(うん…まぁ……平たく言えば……脳筋?)


ケランさんがそっかぁ…みたいな顔をしたところで、メイカさんが代わりに続けた。


「でも怖くないの?ユーリちゃん踊り子なんでしょ?本当は後ろで舞を踊って支援する職業なのに……」

「ちゃんと戦いながら舞ってますから大丈夫です。でも…そうですね。私、火属性が得意なんですけど、耐性を持ってる魔物に会っちゃって…」

「あっ、もしかしてゴーレム?」

「はい、石造りだから斬撃も炎も通り辛くて…あのときはちょっと焦りましたね……」

「それでどうしたの?」

「これを叩きつけることも考えたんですが、その時にちょっと刃こぼれしてることに気づいて、仕方なく帰ってきました」


…それ、刃こぼれしてなかったらまだ潜るつもりだったってことだよね?


「…これは…マーガレットちゃんが気にかけるのも頷けるわね……」

「えぇ…彼女1人だと絶対無茶しますし、それを無茶だと理解しないと思います……」

「……だな。なぁユーリ嬢ちゃん、良かったら俺たちと組まないか?」


メイカさんたちもこれはヤバいと思ったらしく、ディッグさんがユーリさんをパーティに誘った。


「えっ?ディッグさんたちとですか?」

「あぁ、俺たちのパーティで魔法が使えるのはメイカとケランなんだが、メイカは風と土が、ケランは光が適性でな。一応火も使えなくは無いんだが、やっぱり適性持ちの方が上手く使えるからな」

「それにユーリさんなら、マーガレットちゃんとも仲が良いですし、信頼できます」

「だからね?ユーリちゃんの都合の良い時だけで良いから、誘わせて貰っても良いかな?」


みんなでユーリさんにお願いする様子を見守る俺。

ギルドでお留守番の俺よりも、実際に組むメイカさんたちの言葉の方が良いと思って黙って見守る。


「ほ、本当に良いんですか……?だって皆さんは私よりも上のランクでしょう?」

「関係無いわよ。実力の合う相手と組むのも大事だけど、それ以上に相性が大事なの。ランクは違くても、私たちはユーリちゃんとなら冒険できるって思ったの。だからお願い」

「…………」


メイカさんの言葉に少し考え始めるユーリさん。


…なんかこっちまで緊張してきたな……。


そしてユーリさんが口を開いた。


「……えっと…わ、私で良ければ、こちらこそよろしくお願いします!」

「おう!」

「はい!」

「やった!よろしくねユーリちゃん!」

「は、はい!頑張ります!」


無事に決まったみたいで何よりだ。


「それじゃあユーリちゃん!今日の夜、予定とかある?」

「?いえ、特には…」

「ならウチで一緒にご飯食べない?ものすごくお料理が上手な同居人がいるのよ!」

「え!?い、良いんですか…?」

「もちろんよ!ね、良いでしょ?」


メイカさんが俺たちに同意を求めてくる。


「俺は構わないぜ」

「僕も、歓迎しますよ」

「マーガレットちゃんは?」

「断ると思います?」

「だよね!決まり!」


当然俺たちは承諾。


「そうなると先に連絡を入れといた方が良いよな」

「マーガレットちゃんの武器が決まってからですね」

「食材も買っていかないとね!何が良いかしら……」


早速予定を組み立て始めるメイカさんたち。

そんな彼らを先導する俺にユーリさんが近づいてきて、小声で話しかける。


「…メイカさんたち、良い人だね」

「…えぇ、とても」


俺たちはクスリと笑い合う。


「ねぇねぇ!2人は何か食べたいものとかある〜?」

「う〜ん…そうですね〜」

「私は美味しければなんでも……」

「ユーリさん、それ1番困るやつですよ?」

「えっ!?」


そうこうしているうちに、鍛治ギルドへ続く道に入っていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


しばらく歩いて、鍛治ギルドはもうすぐ…というところで、ど偉い荷物を担いでいる背の低い女性が目に入った。


「わぁ…凄い荷物だねぇ……。マーガレット……」

「ん……んー…そうですね……」


ユーリさんはあの人を手伝いたいようだが……んー……。


俺はメイカさんたちに目を向ける。


「いいんじゃないか?」

「もし遅くなっちゃったら、私たちも一緒に謝ってあげるからさ」

「えぇ、困ってる人を助けようというのは良いことですよ」

「ふむ……じゃあユーリさん、声をかけに行きましょうか」

「うん!ありがとうマーガレット!」

「はいはい」


嬉しそうに耳と尻尾を動かしちゃってまぁ……。


ユーリさんがトテトテと女性に近づいていくので、俺も少し小走りで追う。


そして早速ユーリさんが女性に話しかけた。


「あの、すいません!」

「うん?あたしかい?」

「はい!…えっと…凄い荷物ですね……」

「そうかい?まぁ、ウチはよく食べるのが多いからね」

「そ、そうなんですね……。あ、あの…よろしければお手伝いしましょうか?」

「うん?そいつぁありがたいけどねぇ……」


少し悩む女性。


うん、まぁ…急に話しかけられたら怪しむわな。


「ユーリさん、ほら、なんか、自己紹介とかしといた方が良いんじゃ無いですか?」

「そ、そうかな?」

「いやそういうことじゃ……うん?黄色い髪に冒険者ギルドの制服……あんたもしかして、マーガレットって名前かい?」

「えっ?はい、マーガレットですけど……」


冒険者ってわけでも無さそうなのに、なんで知っとるん?


「あたしの家族からあんたの話を聞いたことがあるんだよ。なんでも、娘と友達にもなってくれたみたいじゃないか」

「娘?友達……?」


えーっと…ちょっと待ってよ?


俺がこの街で友達になった女の子は……モニカちゃん、チェルシー、リオ、ユーリさん…かな?


あ、でも娘だから子供とは限らないか……。

いや待てよ?


この人…俺より少し大きいぐらいの身長なのに、娘って言ったぞ?

ってことはドワーフの可能性も……?


そうなると……


「…もしかして、リオのお母さんですか?」

「そうだよ。リオはあたしの娘さ」

「そうでしたか!初めまして!」

「あぁ、初めまして」


そっかぁ…リオのお母さん……ということは親方さんの奥さんということか……。


…あの2人がケンカをすぐにやめるほど怖いという……。


「それで?もしかしてこの子はあんたのお友達かい?」

「はい、そうです」

「そうかいそうかい。悪いね、危ない格好の物取りかと警戒しちまったよ」


あぁやっぱり。


「い、いえ!私の方こそ怪しませてごめんなさい……」

「はは、ちゃんと謝れるのは良いことだよ。そっちの後ろの人たちも知り合いかい?」


リオのお母さんはそう言って、メイカさんたちに目を向ける。


「あっ、この人たちは私がお世話になってる人たちで、今みんなで鍛治ギルドに向かってるところだったんです」

「そうかい、それでその途中にあたしがいたってことだね」

「はい」

「なるほどね。それじゃあ一緒に行こうじゃないか。少しあたしのおしゃべりに付き合ってくれよ」

「良いですよ、とは言っても、本当にもう少しでしょうけどね」

「ははは、確かに、そこを曲がればすぐだもんね」


リオ母と笑い合ったあと、俺は彼女が持ってる荷物を見て、こぼれそうな危ういやつを発見する。


「その細かいの持ちますよ」

「そうかい?悪いねぇ、こういうのをよく落としちまったりするから助かるよ」

「いえ、あんまり重いものを持てませんから、これぐらいは当然ですよ」

「あっ!じゃ、じゃあ私そっちの担いでるやつ持ちます!」

「良いのかい?これが無いとずいぶん楽になって助かるよ」

「ん、なら俺はその重そうなのを持とう」

「では僕はそちらを」

「じゃあ私が残ったものを」

「おいおい、それじゃああたしが持つものが無くなっちまうよ」


俺たちはリオ母の荷物を手分けして持ち、再び鍛治ギルドに向かう。


程なくして、鍛治ギルドの入り口に到着した。


と、そこで俺は前回の訪問を思い出し、待ったをかける。


「あー…ちょっと待ってください。ディッグさん、盾構えてもらえますか?」

「は?盾?なんでだ?」

「いえ…この前来たとき、何か無茶な依頼をされたらしくて、怒って武器を投げてたのを思い出して……」

「えっ?あの時の話嘘じゃなかったの?」


あのとき……あぁ、悪質冒険者たちに襲われたときか。

そういえばそんなことも言ったような……。


「えぇまぁ…そのときはココさんが掴んだので無事でしたけど……」

「……マーガレットちゃん、そんな話聞いてないんだけど……?」


メイカさんから背筋も凍る冷たい視線を感じる。


俺は明後日の方向を向きながらごまかす。


「まぁ…終わったことですし……」

「マーガレットちゃん?」

「……すいません……」


無理でした。

…今日は帰ったらめちゃくちゃ怒られそうだ……。


そう考えた俺の隣で、現在進行形で怒りをあらわにしている人がいることに気づいた。


「……あの馬鹿……お客さんに武器を投げるなって何度も言ってるのに……!」


リオ母だ。


メイカさんの冷たい視線とリオ母の怒りの炎に挟まれ身を縮こまらせる俺。


それに巻き込まれる、俺の隣のリオ母とは逆の位置にいたユーリさん。


「お嬢ちゃん、あたしに任せな」


リオ母がズンズンとギルドの扉へと向かう。


「えっ、いや危ないですよ!?」

「大丈夫だよ、あたしを誰だと思ってるんだい?」

「だ、誰なんですか……?」


俺が聞くと、リオ母は得意げな顔で振り向いて…


「主婦だよ」


そう言って勢いよく扉を開けた。


「ドアの前で何ちんたらやっとんじゃあぁぁ!!」

「危ねぇ…」

「武器を投げるなとぉ…言ってるでしょうがぁぁぁ!!!」


そこに案の定投げ込まれる武器を、止めに入ろうとしたディッグさんよりも素早い動きで掴むと、そのまま親方さんの方に投げ返した。


「うおぉぉぉ!!??さ、サワコっ!?」

「あんた……いつもお客さんに武器を投げるなって言ってるのに、性懲りもなくまた投げたね!!」

「ま、待ってくれっ!これには訳が…」

「問答無用ぉぉぉっ!!」

「ぐぶぉあぁぁぁっ!!!」


リオ母…サワコさんは瞬時に距離を詰めると、親方さんにボディブローを喰らわせ、空中に打ち上げた。


……主婦恐ぇぇ……。

武器投げオヤジ再び。


現実にこんなんいたらやだなって思ったけど、ハラスメントねちねちされ続けるのと、瞬間火力は違えど、迷惑度で言えば同じようなもんかな?


他殺か自殺かの違いだもんね。

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