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89.油断大敵…とキツネっ娘

あけましておめでとうございます。


今年もよろしくお願いします。

「まぁ頑張るっつっても、ダニエルさんたちが目ぇ光らせてるんじゃ、本当に出番無さそうだけどね」

『うん、まぁね』

(『ええぇぇぇ!!?』)


おっ、どうしたどうしたお二人さん。


そんな「そこまで話しておいて結論それっ!?」みたいな声出して。


「まぁそれは置いといて、俺の目下の問題は知ってるか?」

『モニカちゃんいじめ問題?』

「イグザクトリィ」

『それズギャァァン!のやつだっけ?』

「確かにそっち有名だけど、俺は「ゲッゲェロ〜♪」のコミックスで初めて見てから使ってる」

『へぇ〜、と、それで?』

「あぁそうそう。それで頼みたい事があるんだ」

『うん、なに?』

「ルークとその取り巻きの情報をくれ」

(えっ?)

『ダニエルとかに聞けば?』

「フェアじゃないとか、自分で調べろとか言われそう」

『あぁ〜…じゃあなんで僕に?』

「チェルシー泣かされただろ?」

『確かに十分な理由だ。分かった、こっちで出来る範囲で調べてみるよ』

「サンキューハルキ」

『こちらこそ、チェルシー守ってくれてありがとう』

「遅かったけどな」

『守ってくれたって事が大事なんだよ。それじゃあね』

「おう、お互い頑張ろうや」

『ファイトだよっ!』

「推しじゃん」

『そんな僕はスピリチュアル派』

「俺は正直みんな可愛いから選ぶの辛い派」

『あれ?推しは?』

「最後は自分の感性に任せた結果そうなった。反省も後悔もしていない」

『そんなもんじゃない?』

「だよね」

『じゃあね』

「じゃあの」


テレフォンオーブを止め……た瞬間にマグからこんな言葉が届いた。


(……コウスケさん、私といた時よりも楽しそうでしたね?)

(いや、男友達なんてこんなもんじゃないか?)

(ふ〜ん?)

(マグさん……?)

(つーん)


ギャン可愛いっ!!

…じゃなくて……。


(マグ〜……?)

(ぷーい)


まさかの別パターン!


(マーグさん?)

(にゅーん)


にゅーんっ!?

ぎゃわいい!


(…マーガレット(イケボ))

(んふっ……)


よし、聞いた。

ありがとうキリン。

このまま畳み掛けるぞ。


(マグ)

(むーん)


くっ…もどってしまったか……!

…ならば……。


(……嫁さん)

(んっ!?)

(我が未来の妻…)

(えっ、あっ、えっと……)


俺の突然の言葉にテンパり出すマグ。


…はぁ、可愛い。


(良いか?我が愛。我が愛と話すのとハルキと話すのは天秤にかけるもんじゃない)

(わ、我が愛……?)

(そう、愛。ハルキと話すのが楽しいのは、話が合うから、気が合うからだ。対して、マグと話すのが楽しいのは…)

(た、楽しいのは……?)

(一緒にいて楽しいから)

(ひゃっ!?)

(一緒にいて落ち着くから)

(あぅ…)

(マグが好きだから)

(…!)

(好きだから、一緒にいるだけで楽しいの)

(…………はうぅぅ……!!)


…いかん……。

熱がこもってガッツリ言っちゃった。


やばいやばい、言った俺も恥ずかしくなってきた……!


『……コウスケ』

「(ひゅわぁぁぁ!!?)」

『うわっ!うるさっ!』


俺らが甘々してるところに、停止させたはずのテレフォンオーブからハルキの声が聞こえ、思わず大声をあげてしまった。


「ハ、ハハハルキっ!?なんでっ!?ハルキナンデッ!?」

『いや、そりゃあ…どっちからも繋げられるようにしてるに決まってるでしょ……?』

「アイエェェ!?」

『…それも流行ったねぇ……』


どっちからも繋げられる……そりゃそうだ!

そんな基本的な事に気付かないとか……迂闊っ!!


『それじゃあコウスケ、イチャイチャするのは良いけど、君、凄くだらしない顔してたから気をつけなよ?』

「うぇっ!?」


そう言うと再びテレフォンオーブの接続が切れた。


俺とマグはお互いに黙り込み、しばらく経ってから…


(……行こっか……)

(……はい…行きましょう……)


そう言って、俺たちはギルド1階に戻っていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


1階に戻り、しばらく仕事をしていると、受付から知ってる人の声が聞こえてきた。


「えっ!?こ、これだけでこんなにっ!?」

「はい、現在こちらの素材を求めている依頼主様がいまして、今回、その報酬分も足してこちらになります」

「ふぇぇ〜……!」


この明るい女の子ボイスは……


「ユーリさん?」

「ん?あっ、マーガレット!おはよう!」

「はい、おはようございます」


やっぱりユーリさんだった。


ユーリさんの前…受付カウンターの上には、いろんな素材がどっちゃりと置かれている。

これを見るに、ユーリさんは相当頑張ってたようだ。


午前中にこの量ということは、もしかしたら徹夜したのかもしれない。


でも見た感じ、クマとかは無いんだよなぁ……。

キッチリ仮眠を取ったんだろう。


そんなユーリさんは最初にあったときの踊り子風の服を着ていて、チラッと周りを見渡すと、男性の冒険者がジロジロと、女性の冒険者も何人かユーリさんの肢体に見惚れている人がいた。


俺はそれを確認し終わるとユーリさんに聞いた。


「あの…なんでまたその服を……?」

「これは仕事着も兼ねてるからだよ!初めてここの迷宮に入るんだから、本気でいかないとね!」

「…なるほど……」


確かユーリさんは見た目通り踊り子だったはずだ。


…だがユーリさんの周りに誰かが待っている様子は無い。


「ユーリさん…パーティとかは……」

「組んでないよ?」

「…ということはこの素材たちは……」

「頑張りました!」

『おぉ……!』


ふんすっ!と両手を腰に当て、豊満なお胸を張るユーリさん。

バルンッ!と音が鳴りそうなほどの揺れに、ギャラリーから驚きと喜びの声が上がる。


俺はピコピコと高速で動く耳と、フリフリと嬉しそうに揺れる尻尾に目がいく。


可愛い。

…待って?

…踊り子ってソロで戦うもんだっけ……?


「…と、マーガレットちゃん、お話しするならちょっとズレてね」

「あっ…と、すいません」


いかんいかん……。

情報が濃くて若干フリーズしそうだったわ……。


ユーリさんが報酬金を貰ってる間に、カウンターからホール側へと出る。


そしてユーリさんがいた辺りへ向かう途中で、彼女がこちらに向かってくるのを確認した。


「あっ、ユーリさん…」

「やったよ、マーガレットォォ!!」

「いつものやつっ!!」


7日目も無事に激突ノルマを達成した瞬間であった。


今日は低めに飛び付かれ、後方に座るように倒れた俺の頬に自分の頬をスリスリして喜びを伝えてくるユーリさん。


そうなると彼女の髪が顔に当たる為、とてもこそばゆい。


とりあえず俺は、彼女の髪が目に入らないように片目を閉じて、ユーリさんに疑問をぶつける。


「なんでユーリさん、いつも飛び込んでくるんですか?」

「ん〜?マーガレットってなんだか安心するんだよね。匂いもそうだけど、凄く善い人のオーラが出てるから」

「善い人のオーラって……」


オーラってそんなことまで分かるの?


う〜ん…確かにマグの手助けをしたり、モニカちゃんやチェルシーを助けたりしてはいるが……。

それは俺とマグの今後のことを考えて、そうした方が都合が良いから、という合理的な考えでやったことだ。


それを「善い人」と言われるのは、なんか…ちょっとそわそわする。


(うふふ、やっぱりユーリさんは分かってますねぇ♫コウスケさんは優しくてカッコよくてとっても善い人ですからね♩)

(やめてやめてプレッシャー掛けないで?)


マグが自分を褒められるよりも嬉しそうな声で俺を褒め称える。


やめて?

「あなた善人」とか言われると凄く居心地悪いからマジでやめて?

そわそわしちゃう。


俺そんな立派な人間じゃないからね?


「まぁいいです。それで、何か嬉しいことでもありましたか?」

「うん!さっきの査定額なんだけどね?思ってたよりも高く買い取ってもらえたの!」

「おぉ、それは良かったですね!」

「うん!一昨日から潜ってた甲斐があったよ!」

「(……えっ?)」

「えっ?」


彼女の言葉にフリーズするとマグに、なんで止まったのか分からず聞き返してくるユーリさん。


「……あの、確か一昨日は一緒にいましたよね……?」

「うん、一緒にいろいろ回ったね」

「えっ?じゃあ、あのあと迷宮に直接行ったんですか?」

「あはは!そんなわけないよ〜!ちゃんと宿に戻って、1回寝てから入ったんだよ」

「そ、そうですよね……良かった……」


まさかの2徹夜状態かと思ったけど、さすがにそんなことはなかったようでホッとした。


「あ、でもあのとき時計は11時終わりぐらいだったし、迷宮に入ったのはもしかしたら昨日だったかも…」

「結局徹夜みたいなもんじゃないですかっ!?」

「あはは!大丈夫大丈夫!私寝ないで4日は動けるんだから!」

「廃人みたいなこと言い出したっ!?」


ユーリさんはあれかな?

スタミナ全部使い切らないと落ち着かないタイプかな?


ユーリさんのスタミナ尋常じゃなさそうだから、使い切るの大変そうなんだけど?

普通に休んで欲しいんだけど?


「それにほら、別に変な臭いとかしてないでしょ?」

「…まぁ…確かに……」


むしろ良い匂いがするんじゃが……。

ユーリさんもしかして汗かいてない……?


汗かかないのって、そんなに動いてない人か、体がちょっと不健康な人やで?


ユーリさん、ロクな食事を取ってないってこと知ってるからね?

栄養足りてないでしょ?


…そういえば休みの時も似たような会話をしたような……。

……えっ……?

まさかそっから寝ただけとかじゃないよね?


「ユーリさん、お金を貰ったのなら休みましょう?今日はもうゆっくりしましょう?」

「えぇ〜?寝るのは夜って決めてるのにぃ……」

「ど深夜に迷宮に入った人が何言ってんですか」

「それに武器の手入れもしないと……そろそろ刃こぼれしそうなんだもん」

「うっ…それは大事ですね……」

「だよね!」


武器は冒険者の商売道具。

それを(ないがし)ろにするのは良くない。


「それでね。マーガレット顔広いっぽいし、どこか良い武器屋とか知らないかな?」

「あぁ…それならちょうど今日のお昼に鍛治ギルドに行く予定があるんですけど、良かったら一緒に行きますか?」

「ホント!?行く行く!」


本当はさっさと宿に戻って休んで欲しいけど、ユーリさんの場合、メンテナンス頼める店を紹介しただけだと…


「代わりの武器が必要だよね……うん!これにしよう!じゃあ早速試し斬りしてくるね!」


とか…


「武器直った!じゃあ早速試し斬りしてこよっと!」


とか言いかねないから、目の届く範囲に置いておいて、また徹夜とかしそうだったら止められるようにしておかないと……。


「あっそうだ。鍛治ギルドに行くときはメイカさんたちも一緒ですけど…」

「え?もしかしてメイカさんたちも武器の手入れをしに?」

「いえ、私の練習用の武器を見に行くのに付いて来てくれるんです」

「えっ!?練習用の武器って…マーガレット冒険者になるの!?」


あー…まぁそう思うよな、普通。


「残念ながら違いますよ。昨日色々あって、同年代の男の子と試合をすることになったんです」

「どういうことがあればギルドスタッフのマーガレットが試合をするなんてトンチキな状況になるの……?」


本当にね。


おっと…もう少しこうしていたいけど、いつまでもおしゃべりしてるわけにはいかないからな。


「さ、ユーリさん、立ってください。私もそろそろ仕事に戻らないと…」

「あっそっか、ごめんね?」

「いえ、楽しかったですし、良い息抜きになりましたから気にしないでください」

「ありがとうマーガレット。う〜ん…お昼までもうすぐだし、そこら辺で待ってようかなぁ……でもなぁ……」


待つことにあまり乗り気では無いユーリさん。


んー…また変なのに絡まれることを心配してるのかな?


……確かに、さっきユーリさんがソロだって知ってから、そわそわし出した人が結構いるし……。

ほとんどが男性だけど、女性も何人か混じってるな……。


ふ〜む……こういう出会いとかも冒険者らしいっちゃらしいけど……。

この後鍛治ギルドに同行してもらう時にすぐに抜けられないとちょっと困る。


「あ、それならあの辺に……いた。メイカさんたちがあそこにいますから、せっかくですしお話ししていては?」

「え?…あっほんとだ。うん、じゃあそうするよ。お仕事頑張ってね!」

「はい、ありがとうございます」


そう言ってユーリさんはメイカさんたちの方へと歩いていった。


それを見たギャラリーは残念そうに解散していった。


悪いな、皆々様方(みなみなさまがた)

とりあえず今回のところは諦めてくれ。


そう心の中で謝罪しながら、俺も仕事へと戻っていった。

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