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88.報・連・相は大事…いやマジで

「ただいま戻りました〜…ってあれ?まだ誰も食べてないんですか?」

「うん!みんなで食べた方が美味しいでしょ?」

「そういうわけだから、あなた待ちよ、コウスケ」

「おっふ……それは大変お待たせしました……」

「いいのいいの♫ほら、座って座って!」


俺が風呂で軽く汗を流してくると、リビングではみんながご飯を食べずに待っていた。


俺がメイカさんに言われるままに、そそくさと椅子に座ると、メイカさんが手を合わせて言う。


「さ!それじゃあみんな手を合わせて!せ〜の…」

『いただきます!!!』


メイカさんの音頭で、全員で声を揃え、食事を開始する。


俺が早速パンを喰らっていると、メイカさんがディッグさんに特訓のことを聞いた。


「ねぇディッグ、どうなの?コウスケは」

「そうさなぁ……。コウスケが、ってよりは、嬢ちゃんの体がもともとあまり動けるタイプじゃ無いからなぁ。しばらくは体力作りだな」

「そっかぁ……。マーガレットちゃん、本読むのが好きだもんねぇ……」

(うぅ…ごめんなさい……コウスケさん……)

(いや…俺も体動かすのは得意じゃないからなぁ……)


2人の会話を聴きながら、俺は次にベーコンをもきゅる。


もっきゅもっきゅ……ンマッ!

何これ、超ンマイんだけど!


俺がベーコンに感動してると、今度はケランさんが話しかけていた。


「今日練習用の武器を見に行くとのことですが、何を買うのですか?」

「やっぱり杖だろうなぁ。本来は壁役の後ろから火力支援するタイプだからな」

「あら、じゃあやっぱり私と同じタイプなのね。それじゃあ私も立ち回りを教えた方が良いかしら?」

「どうでしょう……コウスケの場合は一般的な魔法使いとは違いますからねぇ……」

「う〜ん…それでも知らないよりは良いんじゃない?」

「ま、何にせよまずは武器だな。コウスケ」

「んっ!?んぐ……ごくん……はいなんでしょう?」


俺が目玉焼きを食べた後、再びパンにかじり付いたところで俺に話が飛んできた。


危ねぇ危ねぇ……。

変なとこ入るとこだったぜ……。


「今日の昼休みに行けないか?武器はやっぱ本人が実際に試さないとだからな」

「はい、大丈夫だと思います。ララさんにお願いしてみますね」

「あぁ、頼んだ」


多分大丈夫だろう。

いつもララさんやハルキたちとお昼を食べに行っているが、別に約束してるわけではなく、その場で決めてるだけだからな。


先に話をしておけば問題無いだろう。


と、ケランさんが俺に聞いてくる。


「そうだ、コウスケ。どこか良い武器のお店とか、そういう話を聞いたことはない?」

「んー……いや、無いですねぇ……。俺が知ってるのは鍛治ギルドだけですね」

「おっ!じゃあそこにしよう。職人が集まってる鍛治ギルドなら、嬢ちゃんに合う武器もサクッと見つかるだろ」

「そうですね。それで良いかい?コウスケ」


確かに……あれだけいたなら、誰か子供用の武器を作っててもおかしくないな。


それに、リオにも会いたいな。


男勝りで、頼りみオーラが溢れていたあのドワーフっ子とは、まだ1回しか話せてないし……。


「はい。一応ギルドマスターとも会って話したことがあるので、事情を説明すれば協力してくれるはずです」

「それなら尚更話が早いな。決まりだ。昼飯がてら鍛治ギルドに行くとしようか」

「はい!」

「ついでにマーガレットちゃんの仕事ぶりも観察させてもらうわね♡」

「いいえっ!!」

「ち、力強い拒否……」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「というわけで、お昼ハケます」

「あっうん、分かったよ」


ギルドに出勤した俺は、早速ララさんに今朝の話を()(つま)んで話した。


ララさんはそれを了承し、俺にハルキから話があると伝えてくれたので、お礼を言って通信室へ向かった。


…ちなみにメイカさんたちはギルド1階のホールで待機している。


本当に俺の仕事ぶりを見るつもりか……。


ともかく、通信室に到着した俺は、慣れた手つきでテレフォンオーブを起動し、ハルキとフォーマルハウトにご挨拶を入れる。


「おっす!オラ、マグウ!」

『んふっ…!』


よぉし…掴みは上々だぜ……!


『ふふ…久々に聞いたよそれ……。というかマーガレットちゃんの体でそんなくぐもった声出すのやめなよ……w』

「すんなこと言ったってしょうがないジャマイカ」

『ふふ…ははは…!どっから声出してんの?それw』

「やろうと思ったら案外いけたw」


はぁ〜楽し。

向こうのネタが通じるのハルキだけだからなぁ……ここである程度消化しないと。


『はいはい、おふたりさん。そろそろお話を始めてくださいな?』

「『えぇ〜!?』」

『えぇ〜、じゃないっ!』

(コウスケさん、お話が楽しいのは良いことなんですけど、その……)

「ほら、ハルキ。話を進めるよ」

『急にっ!?…あっ!分かった!マーガレットちゃんだなっ!?』

「ウェイ!」

『なんて言われたのさ』

「めっさ控えめに諭された」

『あっ……(察し)。ごほん、それじゃあ真面目な話をしようか』

「あい」

『あなたたち……』

(コウスケさん……)


あい、すいません。

ちゃんとフォーマルハウトにも謝るから許しておくんなまし。


「こほん…ごめんねフォーマルハウト。どうしてもネタを言いたい欲が溢れちゃって……」

『ごめんフォーマルハウト…向こうのネタに飢えてたもんで……』

『……もうっ!そんな言い方されたら怒らないじゃないですか!次からは気をつけてくださいね!?』

「『は〜い』」

『本当に分かってます!?』


わぁっとりますよぅ、フォーマルハウトさん。


と、悪ふざけはこのぐらいにして……


「んじゃあハルキ、早速話したいこととやらを教えてちょ?」

『了解。昨日僕が徹夜したのは知ってるだろう?』

「あぁ〜…なんか手を回してたとか聞いたけど、何してたんだ?」

『ちょっと大国3つに手紙をね。それの内容を夜通し考えてたら朝になってた』

「おつかれ。…大国3つってことは……」


確かマグの…マーガレット先生の話だと…


「ワァズ王国、クシャリオス帝国、ミューロット共和国……だっけ?」

『おぉ…よく知ってるんだね。正直覚えづらい名前なのに』

「先生が良いからな」

(えへへ…)


可愛い、頭が良い、器量もいい、それでいて若干Sっ気がある。

最高の婚約者だよ、ホント。


『良いなぁ…そっちの先生は優しそうで……』

『ハルキの先生も優しいでしょう?』

『鏡見て言える?それ』

『はい』

『即答っ!』


そっちもそっちで楽しそうで何よりだ。


『ごほん…それで、話を戻すけど……』

「三国に手紙…だっけか。なんて送ったんだ?」

『単純に「こっち龍出たけどそっちどう?」って内容を、貴族様に出せるように物凄く頑張って丁寧に書いたやつを送ったよ』

「社交辞令は大事だからな」

『面倒だよね』

「まぁね」


でもホント大事だからね、社交辞令。

これが上手に出来る人は重宝されるよ。

仕事増えるけど。


「しかしなんでまた急に?手紙を出すなら、俺らが来た次の日辺りに出した方が良かったんじゃないか?」

『やろうと思えばサクッと出せるし、まずは身近な所からって思ってたら…』

『一昨日ロッサ村の人たちを見るまで忘れていたんですよ』

「(…………)」

『…ごめんなさい』

「よろしい」

(…まぁ…ダンジョンマスターですもんね……)


多分それ言ったら、ハルキにまたダメージ入りそうだなぁ……なんとなく。


面白そうだけど、また怒られそうだからやめておこう。


「まぁそれはいいとして、そういうことなら返事はいつ頃来るか分かるか?」

『どうだろうねぇ……。日数で言えば、どこもまぁ似たようなもんなんだけど……』

「えっ?そうなの?」

『そうだよ?この街は三国の国境線ギリギリにあるんだよ?知らなかったの?』

「はつみみぃ〜!」


そんなえらいところにあんのこの街。

絶対揉めたよね?


『それで、各国の軍隊が来る前に、こっちで出来る限り手を回して情報を集めて、三国にそれぞれ多少の利があるように調整して認められたんだよ。王国の領内だけど、実質この街は独立領みたいなものさ』

「それ本当に大丈夫だろうなぁ……?何かあったら出来る限りは手伝うつもりだけど、あくまでマグを優先するからな?」

『分かってるよ。僕も似たようなものだしね。とにかく、各国に一応ツテはあるんだけど、正直期待はしてないね』

「そりゃまたどうして?」

『王国はゴ…ゔぅん!』


おい、今ゴミって言おうとしただろ?

マグがいるからやめただけで、聞いてなかったら遠慮無く言うつもりだっただろ?


『…あまり期待できないし、帝国はあまり他国の事には口を出さない。良くも悪くもね。そして共和国は今いろいろと揉めてるから……』

「全滅じゃん」

『うん。僕の徹夜はあまり意味は無いものになっちゃうね』

(えぇ……じゃあなんで書いたんですか……?)


マグが少しがっかりしながら呟いた。

そうさなぁ…龍の動向ぐらいは知っときたかったけど……。


「本命は龍が出たってのを伝えたという事だろう?」

『その通り』

(えっ?どういう事……ん……伝えたという事が本命……。伝えたという事実が欲しかった……?)


おっと?

マグの様子が……。


『?どうしたの?』

「しっ」

(伝えた事が大事……どこかで被害が出た時に有利に立つため……?)


なるほどそれもある。

でも…


「…俺らの目標は龍の討伐……」

『?うん』

(龍の討伐………もしかして、討伐した時に手柄を取られないようにするため……?)

「ハルキ」

『うん?』

「俺の未来の嫁さんが頭良すぎて頼りみが深い」

『うん???』


はぁぁ〜!!

マグ本当に頭の回転早いよな!


ハルキが各国に手紙を出したのは、自分のところに龍が出たぞ、というアピールのためだ。


そうすることで、各国で龍被害が起きたときに、その国と龍被害同盟として協力関係を結びやすくなるし、何より龍を落としたときに他国のチャチャが入りにくくなる。


龍を落としたぞやったー!

だけでは他の国に「龍?知らない子ですね」とか言われる恐れがあるし、すでに被害が出ているのを何故伝えなかったとか言われるかもしれない。


だから出すだけ出しとくのが大事なのだ。


一応王国領だから、ワァズ王国も同じようなことは出来るが……。


「ハルキ、ワァズ王国の戦力ってどのくらいか分かるか?」

『少なくとも龍を落とすことは出来ないね』

「なんで?確か魔術学校もあるって聞いたぞ?」

『あんなの、貴族の交流の場みたいなもんだって聞いたよ?』

「誰に?」

『ダニエル』

「へぇ〜、ダニエルさんが……」


ダニエルさん、行ったことあるのか。

その……


(なんだっけ?)

(「ナージエ騎士・魔法学園」ですね)

(そうそう、ナージエだ。ありがと、マグ)

(いえいえ)


「その…ナージエって街には騎士もいるらしいけど?」

『王国の貴族だよ?使い物になるわけないじゃないか』

「ひでぇ。マグも王国領の貴族の娘だぞ」

『それはごめん。だけど王国の首都に1度行った事があるけど、貴族街は栄えているのに、平民街は廃れてて、貧民街に関しては兵士が率先して悪事を働いてるようなところだよ?』

「(うわぁ……)」


なにそれ、ひでぇってレベルじゃねぇぞ?

あっ!もしかして……


「なぁ、もしかしてそこから奴隷商がこっちに流れてる……?」

(!)

『…あぁ、そうだよ……。この街が出来た当初は本当に多かったよ……』


やっぱり……。


ハルキの声に若干の怒りが混ざってる気がする。


『……コウスケ、そのことでお願いが出来た』

「どんなこと?」

『今後街でこの間のような奴隷商を見かけたら、僕かダイン、ダニエルに連絡して欲しい』

「了解。とはいえ俺は諜報活動には目立ちすぎるがな」

『ははは、見かけたらで良いといっても、そうそう見かけるもんじゃないよ。ほとんどはダインやダニエルが手を回してるさ』

「なら安心だ。脳の片隅に置いとくよ」

『うん、それで良いよ』


奴隷商……ね。

ま、この間のやつを餌に元を叩く的なことを言ってたし、多分しばらくは大丈夫だろう。


「……異世界で奴隷はお約束みたいなもんだけど……実際になる身としてはふざけんなだよな……」

『うん……。だからこそ、奴隷の価値観がこの世界の人たちとは違う僕たちが、頑張らないといけないんだ……!』


ふむ……その(こころざし)は立派なもんだが……。


「…全ては救えない。知ってるだろう?」


前世で知っているはずだ。

世界の誰かは救えない、近所の誰かだって難しい。


…そもそも「見て見ぬ振り」が標準スキルの世界だからな。


可哀想とは言うが、それだけだ。

自分に来なきゃそんなもんだ。


悲しい事に…俺もその1人だ。


人1人に出来る事などたかが知れてるしな。


『……うん……。それでも、手の届く範囲は救いたいんだ……!』


だから…そう言うハルキが眩しいと感じると共に、とても危うくも思える。


…俺は、世界には悪意の方が多いと思っているからな。


だからハルキを放っておけない。

まぁもともと、友人としてほっとく気は無いが。


「ん……それが分かってるんなら良いんだ。俺も手伝うよ」

『…ありがとう……』


まったく……。

俺は戦力外だとさっき言ったのにな……。


嬉しそうに言いやがる……。


それじゃあ俺も頑張らないわけにはいかないじゃないか。

もうあと数時間で新年ですねぇ。


私の小説を読んでくださった皆さま、ありがとうございます!


そして、来年もよろしくお願いできればと思っております!


それでは皆さま、良いお年を〜!

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