86.あまあまな…初めての
そんなわけでそのまま解散。
メイカさんとケランさんには悪いが、持ってきてもらった本やアクセサリーの話はまた後日ということなった。
その後、多少部屋の中でも魔法の練習をしてみることにしたのだが…
「ん〜……」
(どうしたんですか?)
(いやね?MP…魔力残量の上げ方と、集中力の鍛え方を覚えたのは良いとして、肝心の魔法を練習したいなって…)
(魔法の練習なら……あ、もしかして、戦闘用の魔法ですか?)
(その通り)
そう、室内だったり住宅地のど真ん中だったりで仕方ないとはいえ、俺は未だに戦闘用の魔法の練習が出来ていない。
あの悪ガキルークと戦うのだから、これが1番練習したい項目なのだが、これの練習をするには、ララさんが言っていた練習場…それも個室タイプでなければいろいろヤバいということを今日また理解したのだが、とにかくそこぐらいしか練習出来そうに無いのだ。
これは不味い。
非常に不味い。
(さすがにぶっつけ本番で考えたことを試すとか、ゲームじゃあるまいしやるわけにはいかないからな……。ちゃんと練習しとかないと)
(やったことはあるんですね……)
(いろいろ粗が出てきて大変だぜ、毎回)
(懲りましょうよ……)
(俺もそう思うんだが…やめられない止まらない)
(やばい人だ……)
とにかく、そんな数少ない練習の機会を有効に活用するため、俺は練習場で試したいことをまとめることにした。
んー…そうだな……まずは……
(自分の魔法の最大攻撃力と魔力残量の限界が知りたいかな)
(そうですね、確かにその2つは知っておいた方が良いですね)
(でがしょう?ただ魔力残量の方は、近くに誰かいないと危ないからな……必ず誰か看病してくれる人がいる状態じゃないとダメかな)
(ですね。1人だと倒れたらそれまでですから……)
うんうん。
MP切れの症状は話を聞く限り重そうだったし、そんな危険そうなものにマグの体を使うんだから、安全には最大限に気を配りたい。
(とりあえず、頼めそうなのはメイカさんたちに、事情を知っているハルキたちと……)
(ユーリさんも、コウスケさんが魔法を使えるのは知ってますから頼めるのでは?)
(そうだね。となると隠密ギルドの人もいけるかな?)
(はい。……そういえば、あのとき襲ってきてコウスケさんにあっさり返り討ちにされた人たちはどうしたんでしょうか?)
わぁとてもトゲがあるわ。
当然よな?
アイツら普通にヤバい奴らだったもん。
(多分、隠密ギルドに捕まってんじゃないか?それで、奴隷商との繋がりや、今までの悪事を調べてるのかもよ?)
(なるほど。…奴隷にされた人たちが帰ってこれれば良いんですけど……)
(…こればっかりはどうしようもないよ。俺たちに出来るのは、せめてそういうことが無いような気を配ることだけさ)
(……はい……)
…まぁ、冒険者達は多分もう終わりだけどな。
前にフルールさんたちを売っていた奴隷商、そろそろ危ないかもね。
(さてと…それはともかく、とりあえずは練習場に行ってからだな。それまではいつも通り続けていくのに合わせて、集中力強化のために魔力球を使っていく感じで)
(はい、私も何か思いついたら言いますね)
(うん、お願い。それじゃあ寝ようか)
(はい、おやすみなさい、コウスケさん)
(おやすみ、マグ)
俺はそう話をつけて、マグとおやすみの挨拶を交わすと、ベッドに潜り込んだ。
まぁ夢の中で会うんだけどね。
そんな身もふたもないことを考えながら、俺は夢の世界へ旅立った。
〜ZZZZZZZZZZZZZZZZ〜
「おいっす、マグ」
「こんばんは、コウスケさん」
俺たちは軽く挨拶を済ますと、お互いに何も言わずとも、昨日と同じように俺がマグを後ろから抱きしめて座る体勢になる。
これが以心伝心というやつか……。
うーん、悪くない。
むしろ良い。
この夢の世界でしかマグと出会うことは出来ないが、マグといる時間はもうそこそこ経っている。
「…あれからもう6日経ったんだね……」
「……そうですね……。あれからまだ1週間も経ってないのに、すごく長く感じました……」
「…いろいろあったもんねぇ……」
1日1日がはちゃめちゃ濃い内容だからなぁ……。
とんでもない街だよここは。
「はい…中には怖いものもありましたけど…でも、楽しい思い出の方が多いですね。えへへ、コウスケさんのおかげです」
「俺の方こそ…マグにはいつも元気と勇気を貰ってるよ。ありがとう、マグ」
「それなら私もコウスケさんに貰ってますよ。だから私の方こそ、ありがとうございます、コウスケさん」
「…ふふふ、お礼を交換しちゃったねぇ」
「ふふ、しちゃいましたね」
「…………」
「…………」
お礼を言い合って、笑い合って、そしてお互いに黙り込んでしまった。
こうしていると、どうしても昨日のことが思い浮かぶ。
……今ならいいんじゃないか?
雰囲気も良いし、それに…マグの耳も真っ赤になっている。
…もしかしてマグも昨日のことを思い出したのかな……?
…………。
「…ねぇ…マグ……」
「……はい……」
俺はマグの耳元で囁くように話しかける。
マグは小さな声で返事をして、こちらを見てくる。
…その目は何かを期待している目だと感じた。
少しの間見つめ合った後、俺は彼女に問いかけた。
「…キス…していい……?」
「……(こくり)」
俺の問いに彼女は頷いて答えてくれた。
「それじゃあ…こっち向いて……」
「……」
体をこちらに向け、向かい合う形で座り直す。
マグの顔はリンゴのように真っ赤になっていて、それがとても可愛らしいと思った。
マグはしばらく顔を俯かせもじもじとしていたが、チラッとこちらの様子を伺った後、潤んだ瞳でこう言った。
「あの…コウスケさん……」
「うん……」
「…………お願いします……」
「…………うん……」
マグはそう言うと、顔を上げ、目を閉じた。
俺は、そんな彼女の頬に触れる。
マグがピクッと震えた。
俺はそんな彼女の顔に、自分の顔を近づけて…キスをした。
「んっ……」
彼女の唇はとても柔らかかった。
彼女から漏れ出した声はとても甘かった。
しばらく唇を合わせた後、ゆっくりと顔を離し、彼女と見つめ合う。
彼女がゆっくりと口を開いた。
「キス…しちゃいましたね……」
「うん……」
「私…今、とても幸せです……」
「俺もだよ……マグ……」
彼女はとても恥ずかしそうに、されど、とても嬉しそうに笑った。
それがとても嬉しくて、俺は彼女にお願いをした。
「マグ……」
「……?」
「マグ……もっとしてもいい……?」
「!…はい……私も…したいです……」
そうして、再び彼女の口に自分の口を合わせた。
彼女がお願いを聞いてくれたのが嬉しくて、先ほどよりも長く唇を合わせていた。
またしばらくそうやって、そして離した。
そして再び見つめ合う。
今度はマグから話しかけてきた。
「あの…コウスケさん……」
「…どうしたの……?」
「今度は私からしても良いですか……?」
「もちろん……!」
俺がそう言うと、彼女は俺の首に手を回し、抱きつくような体勢でキスをした。
同じキスなのに、自分からするのと、相手からされるのとではまた違った感覚があった。
2回目よりもさらに長くそうしたのち、ゆっくりと離れた彼女は、嬉しそうにこう言った。
「コウスケさん」
「?」
「…大好きです♡」
「!…俺もだよ……!」
「きゃっ!」
俺は彼女の言葉が嬉しくてつい抱きしめてしまった。
彼女は驚いた声をあげたが、すぐに抱きしめ返してくれた。
「えへへ…コウスケさん……」
「うん?どうしたの?」
「えへへへ……呼びたかっただけです……♡」
「ふふふ…なにそれ……」
「うふふ…コウスケさん……」
「なぁに?」
「……大好き……♡」
「……知ってる」
「えへへへへへ……♡」
「……マグ……」
「?どうしましました……?」
「…………好き……」
「!………はい♡」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「マグ…本当に大丈夫?重くない?」
「大丈夫ですよ〜。えへへへへ……♡」
しばらく抱き合った後、マグが膝枕をしたいと言い出したので、俺は今彼女の膝に頭を乗せて、彼女の顔を見上げている。
マグの体は細く、頭だけとはいえ俺の体を乗せるのは気が引けたのだが、彼女は頑なに俺を膝枕したがった。
いったいなにが彼女をそこまで掻き立てるのか……。
柔らかい太ももの感触を味わいながら、俺はぼんやりとそんなことを考えた。
が、別に良いやと速攻で破棄し、膝枕を堪能することにした。
あ〜…これがリア充か……。
真っ先に出る感想がこれってのもアレだけど、これが彼女のいる生活かぁ……。
しかもこんなに甘やかしてくれる健気な美少女……正直俺には勿体無いくらいだ。
俺はそんな子とキスをしたんだなぁ……。
マグの唇…柔らかかったなぁ……。
マグの方からしてくれた時も嬉しかった……。
だが…どうしても考えてしまうことがある……。
それは……
俺、上手くキス出来てただろうか?
ということだ。
恋人いない歴=年齢な俺が、誰かとキスすることなど無いのですごく心配だ。
あれで良かったんだろうか……?
もう少し優しくした方が良かったか……?
舌は…まだ早いかな……?
知らんけど。
「あの…コウスケさん……」
「ん?」
あれこれ考えてると、マグが話しかけてきた。
どこか心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。
どうしたんだろう?
「どうしたの?マグ」
「えっと……その……わ、私…上手に出来てたでしょうか……?」
「うぇっ!?」
マグもその心配をっ!?
どうだったかって聞かれても……
「えっと……す、すごく…柔らかかった…です……」
「そ、そうですか……!」
あ、ちげーやこれ。
マグの唇の感想言っちった。
アホやん。
「えと…そうじゃなくてその……は、初めて…だったので…その……上手いかとかはちょっと…分かんない…っす……」
「そ、そうですか…そうですよね……わ、私も初めて…なので……ちょっと…気になったもので……はい……」
お互いに顔真っ赤で照れまくりながら話す。
うぅ…膝枕されながらキスの話をするとか、すごく恥ずかしい……!
…キスの上手い下手ってどう決まんの……?
マグと…その…今後も、することを考えたら…やっぱり上手い方が……ね……?
…あー…うー……あ、そうだ。
あぁいやでも…う〜ん…さすがに恥ずかしい…けど……うん……。
「あー…マグ……?」
「は、はひっ!ななななんでしょう……!?」
「…んふふふ……きょどりすぎやでマグ……」
「あうぅぅ……」
ふふふ…俯くと俺がいるから、手で顔を隠してそっぽ向いてる。
かぁええなぁ……ホント。
と、本題本題。
「それで…あのぉ……さっきの話だけどね……?」
「……はい……」
「…その…お互いに初めてだったし…その…やっぱり…上手な…キス…の方が…その…ね……?」
「…は、はい……」
「だから…その……えっと……こ、これからは…さ……練習も兼ねて…その……」
「は、はい……」
「……こ、こうして会える日には…キス…しよっか……?」
「…………はい……」
あぁぁぁぁ〜〜!!!
恥ずか死ぬぅぅぅぅ!!!
マグの顔見れねぇぇぇ!!!
いいいい良いんだよねっ!??
オーケーだよねっ!??
嫌な顔してないよねっ!??
会える日とかほぼ毎日じゃんツラっとか思われてないよねっ!??
フォロー入れとこっ!!
「えーっと…毎日とかは言わないからさ!あの…良ければね?良ければ……!マグが「あぁ…今日はちょっと…アレかな……」って思ったら別に…」
「……もう、コウスケさんったら……」
あ、あれ?
マーガレットさん?
そんな頬を膨らませて…何か怒ってらっしゃる……?
「私は…練習じゃ嫌です」
「うっ……」
「だから…その……毎日してください……」
「!!」
「毎日キスして…毎日好きって言って欲しいです……。…コウスケさんはどうですか……?」
ま、毎日キスして、毎日好きって伝えるって……そ、そんなの…拒むわけないじゃ無いかっ!!
「……マグ……」
「はい……」
「……好き……」
「…はい……」
「………大好き……」
「♡……はい…」
「だから…えっと……お願いします……」
「♡♡♡………はい♡」
あー……マグにはやっぱ勝てねぇなぁ……。
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皆さまありがとうございます!
個人的に好きな数字です!
(いらん情報)




