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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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75.教会の主人…小さな駆け引き

ハルキたちが戻ってくるまでショコラちゃんとお話をしていた俺。


中の様子を見てきて欲しいと頼んだユーリさんは、気を使ってくれたのかハルキたちと一緒に戻ってきた。


おかげで中の様子をひっそりと知ることは出来なかった。


それはともかく、ハルキたちと一緒に見知らぬ男性が歩いてきた。


その男性は俺の近くまで来ると挨拶をした。


「初めまして、この教会の責任者の《ナバロ》と申す者です。どうぞお見知り置きを」

「あっこれはご丁寧に。私はマーガレット…マーガレット・ファルクラフト。今教会にいるファルクラフト領からの難民達が居た、領主の娘です」


相手の挨拶に、どうせ自分の事はバレてるし良いやと、フルネームで答える。


「はい、存じております。そちらのお嬢さんや他の子供たちがずっと案じておりましたから」


ナバロさんの返しに未だ俺に引っ付いているショコラが少し照れた。

かわいい。


まぁそれはともかく…


「ナバロさん、今回は私の領の難民を預かっていただきありがとうございます」

「なんのなんの、むしろこれぐらいしか出来ずに申し訳ない。(わたくし)共には彼らの苦しみを和らげる手伝いをするぐらいですから」

「いえ、それを言ったら私なんて何もしていませんよ。周りの人に助けてもらってばかりで……」

「ふふふ、ご謙遜を…貴女の噂は(わたくし)の耳にも届いております。《戦慄の天使》さん?」


ぐはっ!?

聖職者にまでっ!!


「あの…すみません……天使というのは通り名であって、神の使いだとかそんなことは一切思っていないので何卒ご容赦いただけないでしょうか……?」

「…ハルキ様…?マーガレットさんに何を教えたのですか?」

「なんでもかんでも僕のせいにするのは良くないですよ?ナバロさん。僕もその二つ名の出処は知らないんですし」


俺が胸を押さえながら答えると、ナバロさんとハルキが話し始めた。


そうかぁ…ハルキじゃ無いのかぁ……。

じゃあダニエルさんかな?

隠密ギルドに「お嬢」呼びを定着させたあの男ならあり得る。


「マーガレットさん。確かに我々は《女神セインディア様》を崇めておりますし、その御使(みつかい)たる天使様のことももちろん崇拝しております。ですがさすがに他人が付けた通り名に、しかも本人が否定しているのに口を出すようなことはしませんのでご安心を」

「そ、そうですか……良かった……」


ハルキから狂信者って聞いてたけど、思ったより良識がある人じゃないか。

前の世界で見た作品の狂信者たちはみんなぶっ飛んでたから警戒しすぎてたのか?


何にしても、「お前が天使様を名乗るなど不敬だっ!」とか言われなくてよかった……。


ホッと胸を撫で下ろした俺に、ナバロさんは話を続けた。


「それで本題に戻りますが……マーガレットさん。ロッサ村の方々にはハルキさんが住居を用意するとの事でして、すぐに働ける大人たちは仕事を探す予定ですが、そうでない人や子供たちには教会(ここ)でお手伝いをしてもらおうという話になりました。なので、何かご用がある場合はとりあえずウチに来てください。いつでも歓迎しますよ」


さすがやでハルキ。

あんたもう商人じゃなくて不動産屋を名乗れば良いんじゃないの?


「ありがとうございます、ナバロさん。…えっと……では、こちらからも村のみんなに伝えてもらいたい事があるのですが……」

「構いませんよ、なんでしょうか?」

「私は今冒険者ギルドで働いているということ、龍については考えがあるから気にしないでほしいと伝えてください」

「ふむ……ふむ?ちょっと待ってください?」

「あっはい」


?なんか気になることでもあったか?


「マ、マグ?龍って…村を焼いてたアイツだよね……?」


よく分からないが静寂が訪れたところに、ショコラが俺に聞いてきた。


そりゃあ…それ以外の龍知らないし。


「そうだよ?」

「か、考えがあるって…まさかアイツを倒すの……?」

「うん」

「や、やめようよぉ!あんなのに勝てないよ!また誰か死んじゃうよっ!?」


気持ちは分かる。

だがそれはもう決めたことだ。


「大丈夫。そのために手を回してるんだから、これ以上アイツに好き勝手させる気は無いよ」


俺は(すが)り付いてくるショコラちゃんに優しく語りかける。


「……本当なのですか?」

「えぇ。僕たちとしても無視できない問題ですから」


ナバロさんがハルキに聞いていた。

そんな中ユーリさんが慌てた様子で俺に問いかけてきた。


「ちょ、ちょっと待って!?本気なの!?」

「そうですよ?」

「えぇ……。えっとじゃあその考えって……?」

「それは……」


俺は「翡翠龍ころころ計画(仮)」のプランを話す。


その1

偵察による生息地域の特定や行動パターンの確認。


その2

敵の攻撃パターンや傾向、弱点の特定。


その3

あらゆる手段を用いて、()る。


大前提目標

死なない、死なせない。

これ以上アイツのせいで悲しむ人を増やさない。


ものっそざっくり説明するとこんな感じだ。


その説明を受けたユーリさん、ナバロさん、そしてショコラちゃんの反応がこちら。


「……まぁ…無難…かな?」

「………これを本当に貴女が考えたのですか……?」

「マグ凄い!」


ショコラちゃんはちょっと純粋すぎるかなぁ〜。


「ナバロさん。確かにベースは私ですが、何人かに持ちかけて出来たものですので、私が全て考えたわけではありませんよ?」

「でもマーガレットが考えたものに僕らがちょっとずつ手を貸してるだけだから、ほとんどマーガレットが考えたもので合ってますよ」

「…なんと賢き子だ……」


そんな大袈裟な……。


驚き黙ってしまったナバロさんの代わりに、ショコラちゃんが俺に話しかけてきた。


「アイツ倒せるの?」

「それはまだなんとも言えないかなぁ。アイツの力が私たちでは歯が立たないほどだったら無理だし……」

「あぅ…でも、やるんでしょ!?」

「やるよ」


ハルキに協力してもらっているとはいえ相手は災害級の化け物。

弱点や攻略法が分かっても、それを実現することが出来なければ意味が無い。


だが…それでもやる。


「必ず落とす…」

「ひっ!?」


俺が思わずドスを効かせてしまったせいでショコラちゃんが怯えてしまった。


「ご、ごめんねショコラ…!」

「う、うぅん…大丈夫……」


全然だいじょばなーい!

せっかく仲直りしたのにぃ……!


「…なるほど、《戦慄の天使》ですか……」

「いやぁ…何回見ても鳥肌が立つね……」

「さすがは師匠です…」

「マ、マーガレットって凄いんだね……」


周りがなんか言ってるしぃ〜!

やめてよそんな怖がるほどじゃないだろう!?


この空気を変えたい俺は、わざとらしく咳払いをして話を進めることにした。


「ごほんっ!とにかく、村のみんなにはそう伝えてください!何かあればとりあえずギルドに来れば良いと!」

「えぇ、分かりました。確かに伝えておきます」


よし!話は終わったな!

んじゃあ…


「マグ帰っちゃうの……?」

「……」


(きびす)を返そうとした俺にショコラちゃんが悲しそうな声で聞いてくる。


や、やめろ……!

そんな悲しそうな目で俺を見ないでくれ……!


「だだだ大丈夫だよショコラ……。今までみたいに「会えないかも…」って感じじゃなくて、会いに行けばいつでも会えるんだから……」

「くぅ〜ん……」

「うっ……!?」


そ、そんな子犬みたいな目で見ないでぇ……!


「マグゥ……」

「あー…ショコラァ……で、でもぉ……」

「…………(じー)」

「あぅぅ……」


どうすればええん?

私がここに泊まるってこともできるけど、それは結局明日にコレを引き延ばすだけだし……。


やっぱり心を鬼にして……


「ショ、ショコラ……」

「…………(じー)」


鬼に…


「あの……」

「…………(じー)」


おに…


「…………(じー)」


……無理じゃない?


これ断るの無理じゃない?


うー…どうする……俺は今日マグを慰めるという大事な使命もあるというのに……。


俺がいつまでも決められないでいるとショコラちゃんが不意にクスッと笑った。


「え?」

「ふふふ…ごめんねマグ、困らせちゃったね…」

「え?あ、いや…大丈夫だけど……」

「……良かった。いつものマグで…」

「へっ?」


い、いつもの……?

どういうこと……?


「だってさっきのマグ…すごく怖かった……まるで別人みたいだった……」


ごめんなさい、別人です。


「でも…やっぱりマグは優しかった……だから…良かった」

「ショコラ……」


まさかさっきのあの落とす宣言でそんなに心配をかけるとは……。

悪いことしちゃったなぁ……。


「ごめんね、ショコラ…一緒にいてあげられなくて……」

「んーん、いいよ、マグもいろいろがんばってるんだもんね。ショコラこそごめんね?」

「ショコラは悪くないよ…」

「じゃあ仲直り♫」

「…うん!」


ショコラちゃんの差し出した手を握って仲直りした。


うーん…まさかこんなに翻弄(ほんろう)されるとは……。

ショコラちゃん…恐ろしい子……!


「それじゃあね、マグ!今度遊ぼうね!」

「うん!遊ぼうね!またね、ショコラ!」


なんだかんだあったが、俺はショコラちゃんとナバロさんと別れた。


「ふふふ…」

「どうしたんですか、ユーリさん?」


帰る途中でユーリさんが突然笑い出した。


思い出し笑いか?


「いや、マーガレットっていろんな顔があって面白いなって思って…」

「いろんな顔って…私は普通にしてるだけですよ?」

「そうかなぁ?いつものどこか大人びてるマーガレットに、急に怖くなるマーガレット、かと思えば今みたいに年相応の子どもらしいマーガレットもいるし、見てて楽しいな」

「そ、そうですか……?」


そんなにコロコロ…うん、まぁ……変わってる…かな……?


「それに…」

「わっ!?」


少し意地悪な笑みを浮かべたユーリさんに突然後ろから抱きつかれて思わず驚いた声を上げてしまった。


わわっ!?

こ、後頭部に幸せな感触が……!


「こうやってギュッてすると顔赤くしちゃうところとかも可愛いし♡」

「ユ、ユーリさん…そんな突然……!」


あわわわわ……!

何回かユーリさんに抱きしめられたけど、やっぱり慣れないよこんなん!


「ははは、仲良いね」

「えぇ、微笑ましいですね」


そこ2人!

俺の中身知ってんだろ!?


微笑ましいわけあるかぁ!!


結局俺は、大通りでみんなと別れるまでユーリさんに抱きしめられていた。


…だってユーリさんの方が力強いし……ほら……ね?

ショコラちゃんの呼び方


コウスケ ショコラちゃん

マーガレット ショコラ


なので、コウスケは毎回ちゃんを付けないように気を付けています。

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