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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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74.ショコラ…をギュッとね

教会の門の前であれこれ考えていたら全部ユーリさんに見られていたでござるの巻。


門に寄りかかって、険しい顔して腕組んで、指折り数えて考えて、報酬のことでまた指折り数えて、最終的に青い顔して現実逃避を始めた俺の姿をバッチリ見られたでござる。


辛いでござる。


「ユーリさん、今見たことは忘れてください。忘れてく〜ださ〜いな〜♫」

「無理だよマーガレット。今の歌でもっと忘れにくくなっちゃったよ」


なんてこったい。

やっちまったなぁ!


まぁいいや。


「ユーリさんは何故ここに?」

「あ、無かったことにする気だ。まぁいいけど。…マーガレットが心配だからに決まってるでしょ?」


ですよね。

大泣きしながら「親は死んだ!もういない!」って言ったもんね。


…ごめんねマグ。

茶化さないと平静を保てない。


さっきの件もそうだけど、泣き叫ぶマグの姿見てたら俺も辛くなったから……。


「…さっきのあの犬耳の子…心配して泣いてたよ?どうすればいいか分かんないって感じだった」

「……そうですか……」


犬耳の子…ショコラちゃんだったか……。

確かマグが友達って言ってたような……呼び捨てだったし、フランクだったし。


そりゃ友達が突然泣き叫んで、その理由が親の死を見たから…だなんて、どう声をかけりゃいいか分からんよ。


ショコラちゃんだけじゃなく、周りの大人たちだってそうだったんだし。


「……私はどうすれば良かったんでしょうね……」

「…マーガレットはさ、どうしたいの?」

「どうしたい…?」

「うん、マーガレット自身は、あの人たちとどうしていたいの?」


マグがどうしたいか……?

それは……。


「…分かりません……ただ……」

「ただ?」

「…このまま気不味(きまず)いままなのは…嫌です……」


正直なところマグの気持ちは分からない。

同じ体の中にいても、結局は他人だからな。


でも、マグが村の人たちと再会できて、心から喜んでいるのは分かった。

そんな人たちとこのまま気不味い状態なのは嫌なはずだ。


俺だってそうだ。

出会えると思っていなかった。

無意識のうちに考えないようにしていた。


たまに頭をよぎることはあったが、そのことを深く追求するのをずっと避けてきた。


だからこうして実際に出会うことが出来て本当に良かった、嬉しかった、これでマグもまた笑顔が増えると思った。


それが今はこうなっている。


マグの両親が死んだこと、それをマグ本人が見ていたこと、そのことを知らずにきっと出会えると根拠のない慰めをしてしまったこと。


それが今彼らがどうすればいいか分からなくなっている原因だと推測する。


そしてマグの方だが……今はあまり話したくないのかもしれない。


話しかけたわけじゃないが、なんとなく…今はそっとしておいた方が良い気がする。


多分、みんなに会えて嬉しくて、そのみんなに根拠のない慰めをかけられて、嬉しさと悲しさと怒りとが()()ぜになって、思わず泣きながら叫んでしまったのだろうと思う。


そして、そのこともマグは気にしている。


…別に誰かを傷つけるようなことを言ったわけじゃない。

言っちゃアレだが、全員まとめてただの自爆だ。


だから……うん……


「どうしよホント……」


ここまで考えたは良いがさっぱり思いつかねぇ〜……。


一番簡単なのは、「私はもう割り切って前に進んでいる、だから気にしないで」って言うことだ。

これまではそうすることで、周りに必要以上に心配をかけさせないようにしていた。


だが今回は思いっきり泣き言を言ってしまったのでこの手は使えない。

あんなに言っちゃっちゃあ、気にすんなとは言えない。


う〜ん……。


「…う〜ん…今なら大丈夫そうかな……?」

「えっ?」

「マーガレット、さっきは凄く荒れてたから……」

「うっ……」


それは…まぁ…うん……。


実際荒れてたのはマグだけど、俺も俺で冷静じゃ無かったからなぁ……。


現実逃避に今後の予定考え始めるし、途中で体が無意識に動いてるし、それ見られてるのに気づかないし。


……うん、俺も大概だわ。

マグが荒れてたから、俺はしっかりしないとって思って落ち着いてる風を装ってるけど、内心バリバリ荒れ荒れですわ。


元から心が弱めなんだからこういうイベントは本当にキツいぜ。


心は硝子…いや、紙パックなんだぜ。

クソ雑魚だぜ☆


「でも今は落ち着いてるでしょ?」

「……まぁ、一応」

「凄く考えたね……。まぁ考えられるなら大丈夫だね。マーガレットと話したいって子がここにいるよ?」

「えっ」


ユーリさんは、俺が寄りかかっていた門の柱の裏手側を見やる。

それにつられて俺も覗き込む。


「……ショコラ……?」

「…………」


そこにいたのはマグの友人、ショコラちゃんだった。


…危うくショコラ()()()って呼びそうになったわ……。

あっぶねぇ危ねぇ…下手したら傷つくぞこの子。


名前を呼んでも返事をしてくれずに、ただただ俺を遠慮がちにチラチラと見てくるショコラちゃん。


耳はペターンとしており、尻尾も元気がなさそうに垂れ下がっている。


…えーっと……この超絶落ち込みワン子に俺はなんで声をかければ……?


「…………」

「…………」


無言になる俺たち。


…もしかして、この子は俺が怒ってると思ってんのかな?


ふ〜む…さっきのマグの荒れっぷりを考えるに……まぁ何か悪いことしたかなとは思ってるかもしれない。


それじゃあとりあえず…俺は怒っていないぞと、今私はクールビューティーだぞと教えるところからか……。


んー……単純に怒ってないよと言うのは……どうなんだろう……?


言葉よりも行動に表した方が伝わりやすいんだけど………あ。


そこで俺はふとユーリさんを見る。


「?」


ユーリさんは俺が助けを込めて見やったわけじゃないと感じ、首をコテンと傾げた。

可愛い、いやそうじゃない。

そうだけどそうじゃない。


俺は昨日の事を思い出した。


昨日も泣きじゃくってた俺をユーリさんは優しく包み込んでくれた。


俺はフム、と小さく頷くと、ショコラちゃんの方に向き直り、声をかけた。


「えっと…ショコラ……」

「…………」


やっぱり答えてくれないが、彼女の目は(うかが)うようにこちらを見つめてくる。


俺は少し覚悟を決めると、ショコラちゃんに向けて両手を開き、


「……おいで?」

「…!」


彼女を呼んだ。


ショコラちゃんは驚いたが、俺が怒ってないことが分かったのか、徐々に耳と尻尾に元気が戻っていき、顔も明るくなっていく。


「……うん!」


そしてショコラちゃんは元気良くそう言うと、俺に突撃してきた。


「勢いがツヨイッ!!?」


呼んだとは言え、まさか突っ込んでくるとは思っていなかった俺は本日2度目の激突ノルマを達成しつつ、後ろに倒れ込んだ。


「おっと」


そんな俺たちをユーリさんが支えてくれた。


ありがとうユーリさん。

激突されたのに背面が痛いどころかやわこくて天国だなんて事今まで無かったよ。


勢いが強すぎて頭が胸の谷間にめり込んでるけど、圧迫感凄いけど、我々の業界ではご褒美です。


「ぐすっ…マグゥ……!」


そして前面では犬耳っ子が泣きながら俺の胸にグリグリと顔を擦り付けてきている。


若干押しが強いが、我々の業界ではご褒美です。


いや、感動的な場面で何考えてんだ俺は。


「マグゥ…ごめんね…ごめんねぇ……!」

「んー……?何がぁ…?」

「だって…マグのお父さんとお母さんがぁ……!」

「アレは…事故だよ……ショコラが悪いわけじゃないでしょ?」

「違うのぉ……えっぐ…ショコラたち…マグがいないからって…マグのこととか…マグのお父さんとお母さんのこととか酷いこと言っちゃってぇ……!」

「おっとぉ?」


それは許されざる案件だな(⤴︎)


「なんて言ってたの?」

「えぐ…領主様は先に逃げたんだって……誰も見てないのが証拠だってぇ…!」

「あらら……」


ぶっ○…ゔんっ!!ころころすんぞ?


「マグも…最近遊んでくれないからって…村を捨てたんだって……!」

「どつきまわ…ゔゔんっ!!しばいて………おはなしが必要かな?」

「ひっく…そんなことないってショコラたちが言っても…子供には関係無いって…大人しくしてろって怒ってばっかりでぇ……!」


ほ〜ん……?


「……マーガレット…?」

「なんでしょう?」

「顔怖いよ?」

「あらやだ」


左手はショコラちゃんを背中から気持ち的に離せないので、右手を頬に当ててみる。


そんな怖い顔してたカナ?

とりあえずショコラちゃんに見られないように胸に押しつけておこう。


「んふ〜……!」


再びショコラちゃんの後頭部に右手をやり、やさ〜しく自分の胸に押しつけると、ショコラちゃんは嬉しそうな声を出して顔をグリグリしてくる。

かぁいぃなこの子。


「よしよ〜し…よく言ってくれたねぇ…ほらほら、(ショコラちゃんや庇ってくれた子には)怒ってないからさ。気が済むまでこうしてていいからね」

「んふぅ〜……♡」


ピコピコと耳が動き、パタパタと尻尾が揺れる。

ウチに来ねぇかなこの子。


「マグゥ〜……んぅ…マグの匂い好きぃ……♡」

「ふふ…可愛い子……。…ユーリさん」

「ん…なぁに?」


俺はショコラちゃんの頭を撫でながら、ユーリさんに話しかける。


「少し…中の様子を見てきてもらっても良いですか?」

「中の?うん、良いよ」


今ハルキたちや村の人たちがどうしてるのか気になってきたからな。


あ、そうだ。


言い忘れたことがあった俺は、教会に歩き出そうとするユーリさんを呼び止める。


ついでにショコラちゃんの耳を塞ぐ。


「あ、ショコラの話は秘密にしといてくださいね。後で揺するんで」

「う、うん…分かった……」


そんな引かないでくれユーリさん。

悪いのは俺でもこの子でも無いんだから。


ユーリさんが向かった後、ショコラちゃんが顔を上げて聞いてきた。


「ねぇねぇマグ、マグは今何してるの?」

「ショコラを…あぁそういうことじゃないか。私は今冒険者ギルドで働いてるの」

「冒険者ギルド!マグが好きな冒険者が集まるところだ!」

「そうだよぉ。まだ3日しか働いてないけど、色んな冒険者の人と仲良くなったんだよ?」

「すご〜い!」


純粋な子だねぇ…こんなに目を輝かせて……。


そうして俺はハルキたちが戻ってくるまでの間、ショコラちゃんといろいろなことをお話しした。


うん…どうにか友達とは仲直りできて良かった良かった。


…まぁ別の問題が生まれたがな。

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