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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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73.再会…と計画

〔マグ〕


「村の生き残り…?どういうことなのマーガレット……?」

「かくしか」

「そんなことが……!?」


ユーリさんに手早く説明を終えたコウスケさんは今、ココさんに抱えられて目標の教会付近に着いた。


そこでハルキさんと待ち合わせをしているからだ。


「来たね、マーガレット」

「こんにちはハルキさん、リンゼさんも」

「うん、こんにちは。それとありがとうココさん」

「問題無い」

「ん、そっちのキツネの子は?」

「こちらはユーリさん。私を心配してくれてここまで着いてきてくれた心優しきお姉さんです」

「はぁ……!はぁ……ど、どうも……ユーリ…です……ゲホッ!ゲホッ!」

「うん、落ち着いてからで良いからね」


ユーリさん…さすがにココさんに着いていくのはキツかったらしく、昼間とは違って息が上がってしまっている。


しかもココさん…多分力抜いて走ってた。

ちょくちょくユーリさんの様子を確認してたもん。


やっぱりすごいよ、Sランクって。


というわけで今ここにいるのは、私、ハルキさん、リンゼさん、ココさん、ユーリさんの5人だ。


息を整えたユーリさんがハルキさんとリンゼさんとの自己紹介が終わったところで、早速コウスケさんがハルキさんに聞く。


「ハルキさん、村の生き残りが云々って聞いたんですけど、本当ですか?」

「あぁ、間違いない。受け入れてくれた教会の主人はこの街が出来た時からの古株でね。僕も信用してる人なんだけど、その人から、「ファルクラフト領のロッサ村から難民が来た」と連絡を受けたんだ」

「(ロッサ村……!)」


(ってどこ?)

(知らないのに驚いたんですかっ!?)

(ごめんて)


…そういえばコウスケさんに村の名前を教えてなかったっけ……。

それじゃあ仕方ないか……。


(ロッサ村は私がいた村…龍に焼かれた村の名前です。…ファルクラフト領と言っても、ロッサ村とお花畑ぐらいしか無いので、村というだけでも伝わりますけど……名前は覚えておいてくださいね?)

(了解。マグのいた村を忘れるもんかよ)


そう言ってくれたコウスケさんはハルキさんとの話に戻る。


「それで、どうして待ち合わせがここなんですか?信用のある人なら教会前でも良いのでは?」

「それはね、先に伝えておかないといけないことがあったからだよ」

「…それは?」

「教会の主人…ナバロさんって言うんだけど、ナバロさんはもの凄い《セインディア教》…あ、光属性の神様の名前なんだけどね?そのセインディア教の狂…とまではギリギリいかないけど、かなりの信者でね……。だからセインディア教に興味を示すと、とんでもなく長い話が始まるし、馬鹿にすると力ずくで信者にさせられるから気を付けてね?」

「それギリギリじゃ無いですよ。ゴリッゴリの狂信者ですよ」


…どうしよう……会いたくない。

絶対めんどくさい人だ……。


でも、村のみんながいるんなら、そんなわがままを言ってる場合じゃない。


(……行きましょう、コウスケさん)


「ん…覚悟は決まった。行きましょう」

「うん。ココさんとユーリさんはどうしますか?」

「えっと、お邪魔でなければ…」

「私は行かない」

「えっ!?」


ユーリさんは来てくれるらしいが、ココさんは来ないらしい。


驚いたユーリさんがココさんに理由を尋ねた。


「な、なんでですか……?」

「仕事があるから」

「あっ…そ、そうなんですね……」


…なんでユーリさんが落ち込んでいるんだろう?

私はユーリさんがここまで来てくれただけでも十分嬉しいんですよ?


「ユーリさん、ココさんは優秀な冒険者の方なんですから、ここまで来てくれただけでも感謝しないと」

「うぅ…でも…ココさんはマーガレットのことが心配じゃないんですか……?」


…ユーリさん……本当に優しい方ですね。


そんなユーリさんにココさんは表情を変えずにこう言った。


「貴女がいるなら問題無い」

「えっ!?わ、私ですかっ!?」

「うん、よろしく」

「わ、分かりました!頑張ります!」

「ん」


…か、かっこいいぃ……。


ココさんに頼まれたユーリさんはむんっ!と気合を入れた後、私の手を握ってくれた。


「マーガレット、私がいるからねっ!」

「…ふふふ、頼りにしてます」


コウスケさんは嬉しそうに笑った後、ユーリさんにそう言った。

それを聞いたユーリさんは嬉しそうにはにかんだ。


…耳と尻尾がピコピコ動いてる……。

そんなに頼られて嬉しいんだ……可愛い。


「それじゃあ行こうか」

「はい、行きましょう!」


ハルキさんに返事をして、彼の後をついて行く。


もうすぐ…もうすぐ村のみんなに会える……!


期待に胸を膨らませながら教会へと向かう私たち。

ハルキさんが教会の扉を開けようと近づいたところで…


バンッ!


と扉が勢いよく開きハルキさんが吹っ飛んだ。


「(「「ハルキさーーん!!?」」)」

「マグゥっ!!」

「えっ?どぅっ!!」

「マ、マーガレット{様}ッ!?」


吹っ飛んだハルキさんを目で追っていたコウスケさんは扉から出てきた声の主に反応できず、その人に突撃された。


「マグゥ!マグゥ!!生きてたっ!良かったぁぁ!!!」


私に抱きついて泣きじゃくるその人を私は知っていた。


(…ショコラ……?)

「ショコラ……?」

「そうだよっ!ショコラだよぉぉ!!会いたかったよぉ!マグゥゥ!!」


その人…その子は、犬耳の獣人で私の友達の《ショコラ》だった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あぁっ!マーガレットちゃんっ!良かった!生きてたのねっ!」

「何っ!?マーガレットっ!?」

「マグっ!?本物のマグなのかっ!?」

「あぁっ!みんなぁっ!!」


未だ泣き止まぬショコラと共に教会に入った私に、次々と知ってる声がかけられた。


よく買いに行っていたパン屋のルネおばさん…村唯一の雑貨屋さんの店主、ヴァインおじさん…村1番のやんちゃ男子、ゴードンくん……。


他にもいる…村の人たちがいる……良かった…良かったぁ……!


コウスケさんは私に体を預けて引っ込んでしまった。


…気を遣ってくれたんだ……私がみんなと話せるように……。


「えぐっ…ぐすっ…良かったぁ……生きてたぁ……!」

「もうっ!泣かないでよマーガレットちゃんっ!あたしまで涙が出てきちゃうじゃないか……!」

「良かった…マーガレットの姿が見えないから、みんなずっと心配してたんだ……!」

「へ、へへんっ!マグは泣き虫だなっ!こ、こんなことで…ぐすっ…泣くなんてさっ!」


感極まって泣いてしまった私を、みんなが涙ぐんだ顔で慰めてくれる。


私はルネおばさんに抱きついた。


ショコラが抱きついてきたから分かってたはずなのに、私はようやく夢なんかじゃないと理解して、また泣いてしまった。


そうしてしばらくみんなで再会を喜びあった後、落ち着いてきた頃合いを測ってルネおばさんが私に尋ねた。


「マーガレットちゃん、領主様は?ご両親は一緒じゃないの?」

「!……それは……」


…お父さんとお母さんは……


「そう…でも大丈夫よっ!あたしたちが会えたんだから、領主様たちにだって会えるわ!ね!」


言い淀む私に、ルネおばさんは(はぐ)れたのだと勘違いをしたようでそんなことを言ってきた。


…ごめんなさい……お父さんとお母さんはもう……


顔を上げることが出来ない私にヴァインおじさんも喋りかけてくる。


「そうそう!なんてったって領主様もその奥様も、元は立派な冒険者だったんだから!あのお二人がそう簡単に死ぬはず無いって!だから元気出しな!なっ!」


…知らないくせに……。


「………無理だよ……だって……」

「無理じゃ無いわよ!マーガレットちゃんが信じないで誰が…」

「死んだんだよ……」

「え……?」


もう…お父さんもお母さんも……!


「龍に潰されて…!食べられて…!2人とも死んじゃったんだよっ!」

「そ、そんな……!?」

「私見てたもん……!お父さんとお母さんが龍に立ち向かって…あっさり殺されたのを見たんだもんっ!!」

『…………』


場が静寂に包まれる。


でも、私は止まれなかった。


「死んだのっ!時間稼ぎも出来ずにっ!アリみたいに潰されてっ!その手で掴まれて食べられてっ!私の見てる前で…」

(マグ)

「っ!!?」


コウスケさんに呼ばれてようやく気づいた。


みんなが私を見ている。

どうすれば良いのか、どう声をかければ良いのか分からずに、ただただ私を見つめている。


「ーーー!」


私は、そんなみんなの顔が見れなかった。

…見たくなかった。


だから顔を逸らした。

ショコラが抱きついている方とは逆の方を向いて、目も閉じた。


…私は…誰とも話したくなかった。


だから…彼に甘えた。


(…コウスケさん……)

(…あとは任せて休んでて)

(……ありがとうございます……)


何も言わずにいてくれた彼の心遣いがに甘えて、私は心の奥に(こも)った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔コウスケ〕


目をゆっくりと開ける。

教会の床が見える。


今顔を上げれば、マグを心配そうに見つめる村の人々が視界に入るだろう。


…残念ながら、今彼らにかける言葉が思いつかない。


気にするな、なんてさっきの今で言えるはずがない。

早くこの場を離れて、マグを休ませるべきだ。


そう考えた俺は黙って成り行きを見守っていたハルキに話しかける。


「ハルキさん、ごめんなさい…少し外します」

「…分かった」


俺は未だ引っ付いているショコラちゃんから腕を引き抜いた。


先ほどの話でショックを受けていたのか力は入っておらず、思ったよりあっさり抜けた。


「ごめん…」


俺は彼女に一言謝ってから教会を出て、門に寄りかかりボーッと考え事を始めた。


うっかり素が出て腕を組んでしまっているが、なにぶん無意識なので仕方がない。


…少し平和ボケしてたのかねぇ……。


マグは最初あった時よりもかなり元気になった。だから油断してたのかもしれない。


彼女の夢を盗み見した程度の俺が、現場にいた彼女の心情を完全に理解することなど出来ない。

それは分かってたはずだ。


それなのに俺は、マグが元気になったことを喜んで…彼女との仲が進展したことに浮かれていたのだろう。

本来の目標を忘れ、思いっきり休日を楽しんだ。


マグも楽しんでいた。

彼女の笑顔は……見たわけではないが、とにかく本当に楽しそうに笑っている声を聞いた。


だから後悔はしていない。

マグが元気でいることが、彼女が幸せになってくれるのが俺の第一目標で、大本命で、決定事項なのだ。


だから俺は次に移る。


そろそろ…村の様子を知っておきたい。

ロッサ村跡地の偵察、探索を依頼しよう。


かなり危険な依頼だ。

もしも龍があそこを仮拠点にでもしていた場合、最悪戦闘になる可能性もある。


そうでなくても、街の外には魔物が出現する。

ここの迷宮のように安全に配慮がされているわけでもない。


もしかしたら…死人が出るかもしれない。

そこまでいかなくても、怪我人は出るかもしれない。


もしそうなったら、マグはまた悲しむだろう。

自分のせいだと責めるだろう。


俺がやったことだと言っても、原因は私だと言うだろう……。


それでも…出すべきだ。


とはいえ、ハルキやダニエルさんたちと相談をしておきたい。

龍災害という強力で凶悪なものに関する依頼だからだ。


どこまでやるか。


俺は指折り数え始める。


まずは付近の偵察、龍が仮拠点にしていた場合、付近には動物や魔物がいなくなっているかもしれない。


次に村の偵察。

龍じゃなくても、魔物や盗賊が根城にしている可能性もある。

慎重に(おこな)いたい。


そして村の探索。

村の様子や生存者の確認をしてほしいが、正直あんまり期待はしていない。


ここに来てもう5日目。

依頼の発注、偵察と探索の準備、それだけでも時間がかかる。


そもそも、そんな危険な依頼を受けようと思う冒険者がいるかどうか……。


冒険者ギルドで働いて、冒険者たちとはそこそこ仲良くなった。


だがそれとこれとは話が別だ。


人のことより自分の命を大事に考えるのは、冒険者としては割と普通の事。

俺もマグも、無理をして命を失われては敵わないので、無理強いをすることは出来ないし、する気もない。


何より肝心の報酬だ。


また指を折って数えていく。


今手元にあるのは懐中時計とCランクのマジックバッグに、16万ちょいのお金、今日買ったアクセサリー各種、雷魔法初級編の本(未読)、救璧の護符が合計11個、手紙やらメモやらノートやらは報酬にならないとして、あとは洋服ぐらいしか無い。


この中で報酬に出来るものとしては、お金と本と…このマジックバッグくらいか……。


懐中時計には何が付いてるか分からないからな。

なんたってダンジョンマスターハルキの作品だ。

変なもんが付いてて問題になったら大変だ。


マジックバッグは…ダニエルさんには悪いがこれが一番妥当では無いかと思う。


龍がいればもちろんヤバいし、龍がいなくても危険で面倒なことに変わりは無い。


だからその分報酬を豪華にしなければ人は集まらないだろう。


そしてCランクのマジックバッグ…しかも最高品質の物だ。

相場は最低品質でも100万は必要だと言っていたから……まぁ、200万ぐらいはするんじゃないか?

多分。


とにかく、かなりの高級品であることには間違いないので、報酬にはこれを出そうかと思う。


正直かなり便利だし、めちゃくちゃ惜しいが………推定200万かぁ……!ぬぅ〜…しかしぃ…!


これは必要なプロセス……!

つまりこれは必要な出費……!

貰い物だけど……!


だから仕方ないぃぃぃ………!!


……ふぅ……。

ダニエルさんと相談しよう、そうしよう。


…俺は婚約者と200万を天秤にかける最低な男だ……。

ふふふ……これは怒られても…いや、最悪愛想を尽かされても仕方が……あぁぁ…嫌だぁぁ……!!

そうなったら俺もう成仏するぅぅ……!!


地獄で反省するぅぅ……!!

チュチュンにバッサリされるぅぅ…!!


「…マーガレット?」

「のわぁ!ごめんなさいっ!?」

「きゃあっ!?ビックリしたぁ……」


思考が本来のものからかけ離れ始めた俺に話しかけてきたのはユーリさんだった。


思いっきり最低なことを考えていた俺は、勢いで謝ってしまった。

マグに言えよ。


ユーリさんは追いかけてきてくれたのか……いや待て。

ここは教会の柵にある門だぞ?

まったく距離離れてないぞ?


そして俺は長々と考え事をしていたはずだが?

追いかけてきたんならもっと早い段階で話しかけられてもおかしくないが?


そこまで考え嫌な予感がした俺は、思い切って聞いてみた。


「あの…いつからそこに……?」

「…………今来たとこだよ……?」

「……じゃあなんで私の目を見て答えないんですか?」

「ちょっと向こうから…あの…ほら、なんか…そんな感じのやつを感じたからだよ……?」

「……どこからいました?」

「…………マーガレットが門に寄りかかって険しい顔で考え事を始めたあたりから……」

「…………」

「…………」


…最初からじゃないですかやだー。

油断するとシリアス展開に持ってっちゃう自分の脳が怖い

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