64.ほのぼのとした朝…めでたき事態
「で?勇気を出したマグを返してまで聞いた俺の話は面白かったですか?」
「「「すっごく!」」」
「反省しろ」
「「「はい……」」」
結局あの後、誤魔化しきれずに昨夜のことを話してしまった。
途中「もっと積極的に!」とか、「ぎゅっまで行ったんだから、ちゅーもしちゃえばよかったのに!」とか、初めの保護者のような立ち位置からは程遠いヤジが飛んできてさらに困った。
そして、どうにか話し終えた俺は、せめてもの反撃にと嫌味をきかせ聞いてみたのだが、全く反省の色がないので結局ストレートに怒った。
「…ねぇ?なんでマーガレットは表に出てこないの?」
「ん…そういえばフルールさんには話してませんでしたっけ。実は……」
~説明中~
「そう……それは悪いことしちゃったわね……」
「いいんですよ。知ってるのに悪乗りしたダメ大人がここに3人いるんですから」
「「「うっ……!!」」」
知らなかったんなら…まぁしゃあない。
次気を付けてくれればいいだけだから。
だがそこ3人は駄目だこのやろー。
「フルールさん、ご飯まだでしたよね?」
「え?あぁそうね、ごめんなさい。すぐに作るわ」
「そこ3人はいらないんじゃないですか?」
「「「え?」」」
「急いでるんでしたら通り道の屋台で何か買えばいいんじゃないですか~?」
「そんなっ!?」
「フルールさんのご飯の味を知ってるのにそれはひどいよっ!?」
「コウスケ!いや、嬢ちゃんっ!俺らが悪かった!だから勘弁してくれぇ!!」
ふはははは、愉悦愉悦!
こんなに言われて照れてるフルールさんもキューート、ですぞっ!
(さてさてどうするマグ先生?)
(ふふふ…許してあげましょう…ご飯はみんなで食べたほうがおいしいですからね)
「喜べかまいたちいや、あなたたち!マーガレット先生の許しが出たぞっ!」
「「「おおおぉぉぉぉ!!!!」」」
「…変な人たち…ふふふ……」
そんな感じで、俺たちはおいしいご飯をみんなで食べて、美味しいしましたマル
(そういえばマグって味とかわかるの?)
(表に近ければ近いほど、外の感覚が伝わるみたいなので、ほんのりと分かりますよ?とってもおいしいです!)
「マグもおいしいって」
「…そう」
((あ、照れた。かわいい))
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ご飯を食べ終え、ギルドでメイカさんたちと別れた俺は、とりあえず受付に挨拶しに行く。
「おはようございます」
「あれ?おはようマーガレットちゃん。今日はお休みじゃなかったっけ?」
「はい、今日はちょっと待ち合わせがあるので来たんです」
「へぇ。んー…今日はまだそういう人がいるって聞いてないから、まだ来てないんじゃないかな?」
「そうですか…分かりました、ありがとうございます。ちょっとその辺で待たせてもらいますね?」
「うん、どうぞ」
受付のお兄さんと話した後、俺はギルドの入り口がよく見える位置で待機する。
そこへ近づいてくる冒険者集団がいた。
「嬢ちゃん、ようやく会えたな」
「ん…?あっ、あなたたちはあのときの…」
俺に話しかけてきた冒険者は、以前ここでもめ事を起こし、あわや刃傷沙汰になりかけたあの冒険者たちだった。
「その…この前はすまなかった……改めて俺たちが浅はかだってのがわかったよ……」
「えぇ……ハンターウルフの群れと連続で戦うのがあんなにきついなんて……」
「俺たち、下へ下へってばかり考えてたから、それまでの魔物と大して戦ってなかったんだ……」
「お嬢ちゃんに言われるまで気づかないなんて……なさけないぜ……」
なんだ、わざわざ改めて謝罪に来たのか。
うんうん、最初の印象とはだいぶ変わったな。
いい変化だ。
「イライラしてたら冷静な判断なんてそうそうできませんからね。私の方こそ、あんなこと言っといて先に帰ってしまってすいません…」
「いやいやっ!俺たちが悪いんだから気にしないでくれっ!」
「そうよっ!むしろ伝言まで残してくれて嬉しかったんだからっ!」
あぁ、確か…「ランクアップおめでとうございます。先に帰ってしまってごめんなさい。お疲れ様でした」だっけ?
今思えばかなりのプレッシャーだよな、これ。
「あー…大丈夫でしたか?変にプレッシャーかけませんでした?」
「えっ!?なんでっ!?むしろ疲れた体に優しさが染み渡ったんだけど!?」
「そうそう!アタシ泣きそうになったもん!」
「そこまでっ!?」
大げさじゃないっ!?
ん……?
染み渡った…ってことは……?
「あの…もしかして……?」
俺がそう聞くと冒険者たちは顔を合わせ不敵に笑う。
この感じはもしや……?
「「「「じゃーーんっ!!」」」」
満面の笑顔で各々が自分のカードを取り出し見せつけてきた。
ってぇ、それはぁっ!!
「おおぉぉぉっ!Dランクのカードッ!!おめでとうございますっ!!」
「へへへ…ありがとう、嬢ちゃんのおかげだよ!」
「ランクアップは初めてじゃないけど、今までで一番嬉しかったわっ!」
「お嬢ちゃんのおかげだよ!」
「ほんっとありがとなっ!」
「あははっ!きっかけはそうだとしても、皆さんが頑張った結果じゃないですか!」
「嬢ちゃんは謙虚だなぁ!」
俺の言葉を素直に受け取ってくれた結果なんだから、もっと自分を誇ればいいのに。
「あははっ、それで?今日も潜るんですか?」
「あぁいや、俺たちは普段午後からなんだ。嬢ちゃんに会いたくてここに来ただけだから、午後までは冒険の準備をしてくるよ」
「おぉ、そうですか。ふふっ、「いのちだいじに」、ですね」
「えぇ、アンタが悲しまないように、ね」
「約束だからな。じゃあな、嬢ちゃん」
「はい!また!」
冒険者たちと笑いあった後、彼らと別れた。
(あの人たち、変わりましたね)
(うん、あれならもう喧嘩とか起こさないだろうね)
それに、自分の力を過信して、無茶なことをするなんてこともないだろう。
さて、引き続きユーリさんを…
「あっ!マーガレット~!」
「ん、ユーリさん!」
ナイスタイミング。
ぼーっと待つ必要がなくなった。
入り口に向かい、昨日と同じ踊り子衣装の彼女と合流すると、なぜか突然抱きしめられた。
「んむっ!?ぷはっ!ユーリさんっ!?」
「んふふ、元気になったんだね。よかった」
あぁ…そういう……
「あはは…昨日はお手数をおかけしました…」
「んーん。私も助けてもらったしお互い様だよ。さ、行こっ!」
「はい!」
そうして俺たちは、例によって手を繋いで隠密ギルドへと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そういえばユーリさんはなんで隠密ギルドに入ろうと思ったんですか?」
「あー……それは…んー…ごめん…内緒…」
「あ、はーい」
道中、ユーリさんと雑談をしながら歩いていたのだが、ふと気になったことを尋ねたらものっそ気まずい雰囲気になったの巻き。
とりあえず、努めて軽く返事をしてさっさと話題を変える。
「ユーリさんのその武器…この辺りじゃ見ませんね。どこの武器ですか?」
「あぁ、これは私の故郷に伝わる武器でね?「エンゲツトウ」って言うんだって。ほら、先の部分が槍とかとは違うでしょ?」
「はい、なんというか…刀…みたいな?」
「わっ!刀知ってるんだ!」
「えっ!?あぁっと…はい、昔読んだ本に載ってた気がして……」
あっぶね。
昨日鍛治ギルドを見学してもどっちも見当たらなかったのに、なんで俺が知ってんだってなるとこだった。
というか、そうかー…「エンゲツトウ」かぁ〜……。
刀もあるらしいし、どっかで見ることできないかなぁ……。
「そういえばマーガレットは武器とか持ってないんだね。昨日冒険者になってたし、もしかしてこの街に来たのって最近なの?」
「えぇ、まぁ…ほんの4日前に来たばかりですよ」
「へぇ〜…それなのにギルドで働いてるなんて、えらいねぇ。冒険者になろうとは思わなかったの?」
「少しは考えましたけど、周りの反対もありましたし、私自身覚悟が出来てないので……」
「そっかぁ…マーガレットと一緒に迷宮に行くの、楽しそうだったんだけどなぁ……」
「あぁ…それは…ごめんなさい…」
それは確かに魅力的だ。
メイカさんたちについて行く、というのは安心感がすごいのだが、こうして友達と行く、というのも楽しそうだ。
う〜ん…やっぱり検討し直そうかなぁ……。
「大丈夫大丈夫、気にしないで!…んー…でもマーガレットが使うとしたら…何が良いかなぁ…?」
あ、続けはするんだ。
「そうですねぇ……立ち位置的には、中衛後衛あたりが無難かなぁ……?」
「そうだねぇ…確かにマーガレットに前衛は無理かもねぇ」
「力と速さがまだ足りないですし」
「んー、それもあるけど…マーガレットは後ろで指揮に徹してたほうが良いと思うなぁ」
指揮官…指揮官かぁ……。
無理。
「いやぁー…そういう責任の強い立場はちょっと……」
「えー?マーガレットなら安心して指示に従えるんだけどなぁ」
「駄目ですよぉ。私緊張にめっぽう弱いんですから」
「ちぇ〜……」
可愛く拗ねるユーリさん。
だが、さすがにこれは譲れない。
そんなパーティみんなの命を預かるような役、絶対やりたくないっ!!
(ユーリさんの言う通り、コウスケさんが後ろにいてくれれば安心できるのに……)
(無理、俺がプレッシャーに耐えられない。というか冒険者にはならないって言ったでしょ?)
(そうですね、メイカさんたちにも言っちゃいましたし)
マグまでこんなことを言ってくるが、俺は何がなんでも指揮官なぞやらん。
そんなのはゲームの中だけで十分だ。
俺たちはその後も雑談をしながら、隠密ギルドへと歩いていった。




