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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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63.本日の予定…少女の一歩

マジックバッグの整理が終わり、ご飯が出来たと呼びに来たフルールさんと共に、俺は新しい服にマジックバッグを引っさげリビングに向かう。


バッグの中身は「救壁の護符」が10個、お金が銀貨80枚。

そして昨日もらった地図。


残りのお金と魔導書は置いてきた。

いくつかに分けておけば、万が一盗られてもダメージを抑えられるからだ。

それでも8万という大金を失うのは痛い。


なので盗まれないようヒモをガッチガチに固めた。

念には念をだ。


メモ一式はスカートの右ポケットに、懐中時計はパーカーの左ポケットに突っ込んである。

懐中時計の重みでスカート下がりそうなんだもん。


「おはよう、マーガレットちゃん」

「おはようございます、メイカさん、ディッグさんとケランさんも」

「おう、おはようさん」

「おはよう」


みんなと挨拶を交わす。


「フルールさん、メリーちゃんは?」

「まだ寝てる。私は慣れたけど、あの子は朝弱いから。多分、お昼頃まで寝てるんじゃない?」

「なるほど」


2人は吸血鬼だもんね。

朝弱いのは当然。

フルールさんの「慣れた」は……まぁ、そういうことだろう。


昨日あのチンピラどもをシバいたことは誰にも言ってない。


わざわざ言うことでもないと思ったからだ。

思い出させても悪いしね。


そんな俺にメイカさんが話しかけてきた。


「マーガレットちゃん、今日お休みなんでしょ?どうするの?」

「今日はまず、ユーリさんとの約束があるので、いつも通り冒険者ギルドに行きますよ」

「ユーリ……あぁ、昨日のあの狐の踊り子か」

「はい、隠密ギルドまでの道案内を頼まれたので」

「あぁ、昨日見学に行ったんだってな。だが道案内?」

「あそこらへんはややこしいので、私の持ってる地図を見ながら、覚えつつ行く予定です」


あの辺全然覚えられないからな、マジで。


「そのあと、モーリッツさんのところに挨拶に行って、ローズさんの洋服屋さんに寄って帰ってくる予定ですけど、もしかしたらそのままお昼ご飯を食べに行っちゃうかも…」

「ん、分かった」

「それは良いが嬢ちゃん、金なんて持ってたか?」

「はい、昨日隠密ギルドのお手伝いをして、お小遣いを貰いました」

「あぁ、そのマジックバッグの中に入ってたのか。隠密ギルドで貰ったもんだったんだな」


そういや、昨日はいろいろ考えることが多すぎてあんまり話してなかったっけ。


「えぇ、お金以外にも、「救壁の護符」とか、雷魔法の入門書とか入ってましたので、お礼を言いに行こうかと」

「へぇ…ずいぶん気に入られたんだね。しかもそのバッグ、かなり良いものだよね?」

「はい、Cランクのバッグだって言ってました」

「C!?」


あれ?

またなんか駄目だった?


「おいおい…Cランクのバッグなんて子供が持つには高級過ぎるぞ……?」

「え、そうなんですか?」

「うん、私のこれはDランクだけど、これでも60万ぐらいだよ?」

「(ろっ、60万っ!?)」


なんじゃそりゃっ!?

いくらなんでも高すぎないかっ!?


「えっ?待ってください…?じゃ、じゃあこのバッグは……?」

「えーと……ケラン?」

「…確かCランクの相場は最低でも100万だったはずです……」

「(100万…………)」


俺もマグもドン引きである。


便利なものではあるんだろうけど、そんな大金がこの袋ひとつで動くのか……!


そんなヤバそうなものを俺に渡すでないよダニエルさんっ!


「…それ誰に…あぁいや、隠密ギルドってことはあの男ね?」

「はい、ダニエルさんに…」

「ダニエル……?」

「それって…《断罪》のダニエル……?」


フルールさんの質問に答えると、ディッグさんたちがザワザワし始めた。


《断罪》……?

ずいぶん物騒な二つ名だな……。


「その《断罪》…かどうかは分かりませんが、この街の隠密ギルドのお偉いさんがダニエルさんですよ」

「……そうか……」

「…考えすぎ…かしらね……」

「(「?」)」


俺とマグ、フルールさんが揃って首を傾げる。


何?ダニエルさんなんかやったの?


「えーっと…マーガレットちゃん…いや、コウスケ、なんでその「ダニエルさん」にマジックバッグを貰ったの?」


おっと…俺をご指名とは……そんなヤバい話なの?


「昨日、隠密ギルドで入団試験があって、その手伝いの折、いろいろあって向こうに「貸し」があるんですよ」

「お、隠密ギルドに「貸し」があるって……いったい何があったの……?」

「まぁ…ちょっとした事故と面倒ごと…ですかね」

「…大丈夫なの……?」

「大丈夫です。昨日の内に終わりましたから」

「…そう……」


正直その後の方が大変だったからなぁ……。


(……コウスケさん、ちょっと…良いですか……?)

(ん?どうしたの?)

(…私に少しだけ体を返してもらえませんか?)

(えっ?そりゃもちろん良いけど……なんで?)


急にどうしたんだろう……?

マグは対人恐怖症になっちゃってるから、人と話すのは苦手なはずなのに……。


(私、皆さんにお礼を言いたいんです。私を助けてくれて、いつも優しくしてくれる皆さんに、自分の言葉でお礼を言いたいんです!)

(……そっか…うん、分かった)


マグが勇気を出したのなら、俺が止める理由は無い。


(でも、無理はしないでね。ヤバいと思ったら戻っておいで)

(はい!ありがとうございます!)


俺は目を閉じ、意識を沈める。

同時に、マグの意識の浮上を感じる。


〔マグ〕


ゆっくりと目を開く。


いつも心の中から見ている景色。


ここ数日を過ごした寮のリビング。

毎日お話をしているメイカさんたち。


だけど、少し違う。

いつもと違う。


今見てる景色には、ぼんやりとしたモヤがかかっておらず、いつもよりも鮮やかで、いつもよりも綺麗で、いつもよりも怖かった。


大丈夫…大丈夫……。


この人たちは消えない。

消えさせない。


コウスケさんが頑張ってくれるから。

私も…頑張るから。


「すぅー…はぁ〜……」


1つ、深呼吸をする。


…大丈夫。

いざとなったら彼が助けてくれる。

彼が支えてくれる。


うん…だから、大丈夫。


「…メイカさん」

「ん?……ん?」

「ディッグさん」

「…おう?」

「ケランさん」

「う、うん……?」


メイカさんは気付いたかな?

でも、気付いてても気付いてなくても関係ない。


私はお礼を言いたいだけ。


「私を…村から助けてくれて…ありがとうございます…」

「「!?」」

「マーガレットちゃんっ!?」

「はい…」

「?」


メイカさんたちが気付いて驚いてる。


フルールさんは分かってないみたい。

私のこと話してないもんね。


「フルールさん、初めまして。えっと……この体の持ち主…です…」

「!?」


あ、驚いた。

この話はしてたもんね。


…なんだか、最初よりも落ち着いてる……。

コウスケさんがいるからかな……?


「マーガレットちゃん…その…大丈夫なの……?」


メイカさんが心配してくれる。

やっぱり優しい。


「大丈夫です……なんだか、すごく…落ち着いてるんです…」

「そう…でも無理はしないでね?」

「はい、ありがとうございます…。これだけじゃなくて、今までも…私に優しくしてくれて……」

「当たり前だよ。困ったときはお互い様」

「そうそう。もっと私たちを頼って良いのよ?」

「ま、嬢ちゃんにはもう頼りになる婚約者がいるけどな!」


私がお礼を言うと、みんなが励ましてくれる。


それに…えへへ…婚約者かぁ……。


「…はい…!」

(……なんか照れるな……)

(えへへ…頼りにしてますよ?)

(おーう、まかせろぉバリバリィ!)


ふふふ…コウスケさんったら。


「マーガレットちゃん!」

「ふぁっ!?な、なんでしょう…?」

「もうっ!せっかく表に出てるんだから、コウスケとイチャイチャしてないで私たちとお話ししようよぉ〜!」

「い、イチャイチャ……!?」


そ、そんな顔に出てたかな……?


「マーガレットちゃんすごく幸せそうな顔をしてたよ?」

「おう、側から見てても分かるぐらいにな」

「はうぅぅ……!」


そ、そんなに……!?

は、恥ずかしい……!


「…幸せにする…か……ふふ…本当に幸せそう。ねぇ?マーガレット」

「は、はい……?」


フ、フルールさん……?

なんだか嫌な予感が……


「コウスケとはどこまでいったの?」

「(どっ!!!!???)」


どこまでって!???


「お、それは気になるなぁ」

「そうですねぇ、僕も気になりますねぇ」

「ねぇねぇ〜、どうなのぉ?教えてよ〜」

「へあっ!?えーと…あの……!」


メイカさんたちも悪ノリして聞いてくる。


ど、どどどどこまでって…そ、それは……


「え、えーと…ですね…?その…き、昨日の夜に……」

「「「「昨日の夜に?」」」」

「わ、わわ私の方から…その…コ、コウスケさんに……」

「うんうん!」

「だ、だき…抱きつきましたっ!」

「「「「おぉー!」」」」


ひゃあぁぁぁ…!恥ずかしいぃ…!!


だけどフルールさんはまだ満足しませんでした。


「それで?」

「そ、それで……?」

「その後は?」

「そ、そのあと……?」

「キスしたの?」

「キッ!!!!!!?」

(ぶふぅっ!!?)


キ、キキキキキキキ、キ、キスっ!!!!!???


た、確かに出来そうなくらい顔が近かったけど……!


「し、してませんっ!」

「えぇ〜?本当に〜?」

「し、してにゃいですっ!!」


うぅぅ…!!

みんなしてニヤニヤして私を見つめてくるぅ……!


も、もう無理ぃ……!!


(コウスケさんお願いしますっ!)

(はっ!?ちょっと待って今変わるのは…)


〔コウスケ〕


「ズルイと思うって変わってるしっ!?」


なんでところで引っ込むんだあの子はっ!?


「あらぁ?コウスケ?マーガレットちゃんは?」

「皆さんの視線に耐えきれず引っ込みましたよっ!もうっ!せっかく勇気出したのに困らせてどうするんですかっ!?」

「だってぇ…ねぇ?」

「気になるんだもん…ねぇ?」


メイカさんとフルールさんが顔を合わせてそう言う。


息ぴったりだな!

仲がよろしくてあたしゃ嬉しいよチクショウッ!!


その後、標的がマグから俺に変わっただけで、いや、俺に変わったからこそ、メイカさんたちは容赦なく俺とマグの蜜月の内容を聞いてきて、俺は誤魔化したり話を逸らそうと必死で抵抗することを余儀なくされた。


あー!

予想してた展開と全然違うっ!!




「…そういえば、あなたコウスケって言うのね」

「伝えてなかったねそういえばっ!?」

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