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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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57.帰路での遭遇…古典的な悪役たち

「それでは、試験の結果を発表する!」


ココさんに運んでもらい、最初の空洞…俺が落とされたあの場所に戻ってきた。


今ここには、ダニエルさん、ヘンリエッタさん、ベックさんら審査官たちと、受験者全員が集まっている。


受験者は迷路突破組と落下組に別れていて、落下組の人たちは軒並み表情が暗い。


最後まで試験はやったはずだが、迷路の失敗がかなり効いているのだろうか。


ちなみにここに戻ってきた時、ユーリさんに再び飛び込まれた。


今度は窒息することはなかったが、衝撃で後ろに倒れ込んだのでお尻が痛い。


だが、彼女が面倒な冒険者に絡まれていたと考えると、そんな野暮なことを言うわけにはいかない。

彼女も大変だったのだ。


俺はそう思い、俺に抱きついているユーリさんの後頭部を優しく撫でた。


そんな彼女と手を繋いで結果発表を待っている現在。


あの粘着チャラ男冒険者はニヤニヤしていて、自分が落ちることなど無いと思っているようだ。


残念ですが、今回は縁がなかったということで、貴方様の今後の活躍をお祈りしております、と。


そんなことを考えていると、ついにダニエルさんが合格者の名前を呼び始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


結果的にユーリさんは合格した。


彼女の獣人故の五感の鋭さと、火属性魔法を使いこなす魔法の才、そしてひとつのことに対する並外れた集中力が決め手だった。


後から聞いた話だが、最終試験の最中にあの粘着冒険者に幾度となく妨害行為をされたらしい。


付き纏う、罠に嵌めようとする、魔物を押し付ける、セクハラ発言を繰り返すなど、落第も致し方なしというほどの救いようの無い妨害の数々を、ユーリさんは全部乗り越え、最終的に彼が押し付けた魔物を彼の近くにひっそりと誘導して撒いたらしい。


その時のそいつの顔が実に滑稽(こっけい)だったと審査官たちが言っていた。


俺も見たかったな……。


そして今、他の冒険者たちが喜びながら、又は落ち込みながら隠密ギルドを後にしていく中、俺とユーリさんはギルド受付前でダニエルさんと話していた。


「まずはキツネっ娘の隠密ギルド合格を祝福しようじゃないか。おめでとう」

「あ、ぁああり、ありがとうございましゅ……」


ダニエルさんを毛嫌いしていたユーリさんがなぜここまで震えた声を出しているかというと、ダニエルさんが隠密ギルドのギルドマスターだということを知ったからだ。


「あー…別に今までの態度のことを咎めようってわけじゃねえから安心しろ」

「で、ででででもぉ……」


ナンパ男だとか散々言っちゃってたユーリさんは、やっちまった感を全面に出し、青い顔で答える。


「問題ねぇっての。それよりも、お前冒険者ギルドに登録してないそうだな?」

「は、はい……この街に来たのが昨日で、隠密ギルドの試験があるって聞いたのが今日の朝だったので……」

「なんでそれでウチに来れたんだよ……」

「その…他の冒険者の人が話し声を頼りにして、ここまで来ました……」


すごっ!

隠密ギルド(ここ)めっちゃ複雑な路地を歩いてこないと行けないのに、それで来れるものなのか!


「そりゃすげぇな……。まぁいい。とにかく、ウチだけでも別に良いっちゃ良いんだが、冒険者ギルドに登録したくないってわけでもないんだろ?だったら登録しておいた方が何かと都合が良いし、単純に冒険者カードを発行してもらえ。あれがあった方が色々と話が早い場面が多いからな」


んー…?ここでも出来そうだけどなぁ。


「隠密ギルドのギルドカードとかは無いんですか?」

「あるにはあるが、冒険者カードの方が都合が良い。何より、自分から隠密だ、なんていうやついないだろ?」

「それは確かに。あれ?それじゃあかなり有名になってるココさんは?」

「ココは元々Aランクの冒険者でな。それを俺がスカウトして、こっちの仕事も受けていくうちにSランクになったんだ。だから元から有名だったんだよ」

「へぇ〜!」


そうだったんだ!

なるほど、そりゃあんだけ名が知られてるわけだ。


「鍛治ギルドや商業ギルドは身分証明としては問題ないが、それでも冒険者と両立してる奴の方が多い。冒険者ギルドに登録していてもデメリットは無いからな」


あれかな?

資格みたいなものかな?


それなら確かに、持っておいた方が都合が良いかも。


「ま、とにかくそういうわけだ。お嬢も冒険者ギルドに戻るんだろう?案内がてら行ってみたらどうだ?」

「…そういうことなら……マーガレット、お願いして良い?」

「はい!大歓迎ですよっ!」


断る理由も無し、俺はグッと親指を立て返事をした。


「んじゃ、今日はもう何もないし、カードは明日以降ここに来た時に渡すから、今日のところはお開きってことで。あぁそうだ、お嬢。この辺りの地図だ。好きな時に遊びに来てくれ。じゃっ、ギルドについたらあとは頼んだぜ」

「はーい!では行きましょうユーリさん。ダニエルさん、皆さん、お疲れ様でしたぁ!」

「おう!お嬢もな!」


ギルドの人たちに見送られ、俺とユーリさんは外に向かう。


去り際にダニエルさんが俺にウインクをする。


分かってるよ。

まだ終わってない。


俺はウインクを返すと何事もなかったかのように隠密ギルドを後にした。


ちなみに俺はウインクが苦手だ。

かなり不格好なウインクになってしまった気がする。


…これも練習事項に追加しとくか……?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ユーリさん、大通りまでの道って覚えてますか?」

「……ごめん、ここに来るのに必死で覚えてない……」

「えぇ…明日以降どうするんですか?隠密ギルドのカードをもらわないとですよ?」

「…マーガレットォ……」

「は〜い、明日一緒に行きましょうねぇ」

「うぅ…ありがとう……」


もう何個目かの分かれ道を曲がり、冒険者ギルドへ手を繋いで向かう俺たち。


最初の方は今みたいな会話をしていたのだが、隠密ギルドから離れるにつれ、ユーリさんの口数が減って、顔が険しくなっていく。


「…ユーリさん?」

「ん?ごめん、なんの話だっけ?」

「鍛治ギルドに行ったら武器投げられて死にかけた話です」

「あぁそうだった……いや待ってウソ、初耳、何その話!?」

「ウソです、顔が険しくなっていたので声をかけただけですよ」

「そ、そっか……あはは…試験で疲れちゃったからかな……ごめんね、心配かけて……」


明らかなウソで俺に心配をかけさせまいとぎこちない笑みを浮かべるユーリさん。


(…やっぱりあの冒険者のことが気になるんでしょうか……?)

(いや、多分獲物が罠にかかったんだろうよ)

(え?)

(多分、近くにアイツがいるよ)

(!)


ユーリさんは五感が鋭い。

だから多分気付いている。


でも、俺がいるからそのことを言わないのだろう。


「ユーリさん」

「うん、なぁに?」

「…本当に大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫大丈夫。今日ぐっすり眠れば治るよ!」

「えぇ〜?そんなこと言わずに遊ぼうぜぇ〜?」

「!」


俺たちの会話に割り込んできたのは、やはりアイツ…粘着質な冒険者のチャラ男だ。

そいつが2人の男を伴って、行手を遮るように現れた。


「…なんのつもり?」

「えぇ〜?だからさぁ〜俺らと遊ぼうって話ぃ〜、聞いてなかったのぉ〜?」


ユーリさんの質問に、相っ変わらず気持ち悪い話し方で返事をするチャラ男。


しかもお供の男たちとニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべているから余計に気持ち悪い。


気持ち悪さに気持ち悪さを足して、それはもう気持ち悪い。

なんかもうホントヤバイ。


「!…ユーリさん……!」

「?………!」


来た道からも3人、同じような気持ち悪さの塊が現れた。


これ以上増やさないでくれ。

俺のポーカーフェイスにも限界があるんだぞ?


「おいおい、確かにこりゃ上玉だなぁおーい!」

「へっへっへっ!そんな格好してるくせに、純情ぶってるのがたまんねぇなぁ!」

「おー、おー!ブルンブルンだぜ!?すげぇなオイ!」


わぁすっご〜い!

絵に描いたような3流悪党だぁ!


(こんなわかりやすい悪党もそうそういないよな)

(いやいや!?言ってる場合じゃないですよ!?早く助けを呼ばないと……!)

(近くにはいるはずだよ。ただ、こっちに注意が向いてるとはいえ、この数だとそうそう手は出せないかもね)

(そんなっ!?)

(どうにか隙を作って片方を潰すのが手っ取り早いかな。本当は乱戦になる前にやりたいとこだけど……)


アイツらの腰にあるのは、狭い路地でも取り回しやすいナイフやショートソード。

かたやこちらは、偃月刀と素手。


しかもタッパで負けている。


不利ってレベルじゃない。


「お?なぁあのガキってもしかして…?」

「そうそう、あれが今噂の《戦慄の天使》ちゃんだぜ?」

「へぇ〜!確かに可愛らしいなぁ!」


こいつらに言われても嬉しくないね。


あれ?ちょっと待って?

俺も日頃「かわいい」と連呼しているが…まさか……俺も……?


(かわいいって言うの控えようかな……?)

(そうですね、コウスケさんはちょっと「かわいい」を使い過ぎだと思います)


マグにまで言われてしまった……。

なんてこったい……!


(…もう……コウスケさんてば……確かにモニカちゃんもメリーちゃんもユーリさんもかわいいですけど……私だって……ぶつぶつ……)

(え?なんか言った?)

(なんでもありません!それよりどうするんですか、この状況!)


なんか小声でぶつぶつ言い出したマグだったが、俺が聞くと強めに返されてしまった。


うぅ…なんかしたかな……?


「戦慄の意味は分からんが、確かに天使と言われるのは分かる」

「あぁ、良い声で()いてくれそうだぜ……!」

「お前は相変わらずガキを虐めるのが趣味なんだな……」

「いいだろぅ、別に!俺ぁガキが泣きながら必死に謝るのを見ながらヤるのが大好きなんだよ!!」

「はぁ…今度は壊すなよ?」


((…最っ低……))


ペド野郎までいんのか……。

マジで最悪だわ……。


…なんとなくブーメランな気がするけど、一応合意の上でプラトニックな関係なんでセーフだと思う。そう思いたい。

そうなら良いな……。


半ば思考が現実逃避気味になっている俺だったが、次のペド男の言葉で一気に現実に引き戻される。


「昨日のチビはあの母親のせいでヤれなかったからな!ったく、あの()()()ってガキ、良い声で啼くと思ってたのによぉ!」

(……あ?)

(なっ!?)


…………今…なんつった……?

次回


悪党、散る(ネタバレ)

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