54.続・脱出ゲーム…トラップルーム
(そういえば…皆さんはどこまで解いたのでしょうか……?)
(皆さん……?あぁ、迷路で落とされた人たちか)
俺たちは試験官たちと試験の様子を見ていたときの話を思い出す。
☆〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「これって一回でも詰まったらそこで脱落なんですか?」
「いや、全員最後までやってもらうよ。あぁ、でも迷路で落ちたやつはまた別だけどね」
「そうなんですか?なんでそこだけ…」
「迷路で落ちたやつは脱落だと思わせるためさ。それで安心して手を抜くようなやつは駄目だね」
「なるほど、技術はあるけどプライドが高い人とかをふるい落とす為ですか」
「そういうこと。腕のいいやつは大歓迎なんだけどね。輪を乱すやつは結果的に他のやつも危険に晒す。だからこうして、気が緩みそうな場面を作ってあるのさ」
「へぇ〜!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜☆
で、その落ちた人たちは今、ユーリさんたちと同じ内容の試験を、彼女たちよりも多い人数で挑んでいる。
あの迷路はチーム分けの一環でもあるということだ。
(ずいぶんと乱暴なチーム分けもあったもんだよなぁ……)
(えぇ…本当に……)
1度経験したことのある俺たちは、苦笑いを浮かべる。
あれはホント、もう2度と体験したくない経験だ。
(まぁなんにせよ、やることは同じだ。サクサク続きといこうじゃないか)
(はい!…でも…ちょっと手詰まり…ですよね……?)
(……まあね)
あの後ヘビをクルクルしてめっちゃ苦労してあみだくじを解いた俺たちは、その数字を勉強机の一番下の引き出しに入れ、カギを開けた。
中からは数枚のクッキーが入った小袋と、蓋に「♧7」と描かれた、またカギのかかった小箱、そして小さなカギが出てきた。
(この小さなカギで開いたのはこの箱ではなく、最初にクローゼットで見つけたこの薄っぺらい箱……)
(そして、開けたは良いものの中にあったのは「♢K」と「♤、♡、♢、♧」と書かれた紙が一枚だけ……)
(このマークとKや7と言った記号…おそらくトランプだろう……)
(Kはキング…つまり、13ってことですね)
(そうなるとスペードとハート、この二つは多分一桁の数字だ。それでちょうど、絵画裏の金庫の桁数と同じになる)
(あとはその2つのマークがどこかですが……)
(勉強机のカギがかかった2つの引き出し……そしてこれまたカギ付きのこの小箱のどれかだと思うんだけど……)
(それを開けるカギが見つからない、と……)
((う〜ん……))
マグと現状の確認をしてみたが…駄目だ、全然分からん……。
今あるアイテムはカギ付き小箱とクッキー、そしてグラビア雑誌だ。
(……これ、読んでみる?)
(………………)
すこぶる嫌そうな雰囲気を感じる……。
でも他に手段がなぁ……。
(…このクッキー…食べて大丈夫なものでしょうか……?)
話を逸らした……。
そんなに嫌か……。
でもまぁ確かに、このクッキーも怪しいよなぁ……。
(うーん…この部屋にあったってことは、何かに関係があるんだろうけど……分からないなぁ……)
(…ダニエルさん…変なものを入れてたりしませんよね……?)
(……それはさすがに無いはず……だと思いたいけど……)
あのダニエルさんだからなぁ……。
(…とりあえず割ってみるってのはどうだ?)
(…それでいきましょう)
うーん…クッキーねぇ…割ってみて中に何か入ってる…と……か……あ!
(そうじゃん!)
(えっ?)
(マグ、俺の世界にはフォーチュンクッキーっていう物があるんだ)
(フォーチュンクッキー?)
(クッキーの中に占いが書かれた紙が入ってるお菓子なんだ)
(!ということは!)
(うん!このクッキーの中に何か入ってるかも!)
そうと決まれば早速割るのだ!
というわけでガサガサとクッキーの入っている袋を開ける。
クッキーは全部で3枚。
いくぞ!そーいっ!
1枚目!
ハズレ!
2枚目!
((あった!))
当たり!
カギを手に入れた!
「当たっちゃったっ!!」
(えぇっ!?)
2枚目で当たっちゃった。
スッゲー中途半端。
(なんで当たって後悔してるんですかっ!)
(いや、2回目て…!1発目でおおぉぉぉ!!ってなるか、ラストでキタアァァ!!ってなるかの方が盛り上がるのにっ!なんで2回目っ!!?)
(コウスケさんはいつも何と戦ってるんですかっ!?)
(ウンメイウォクァエル!!)
(誰のっ!?何のっ!?)
しばらくマグと漫才を繰り広げた後、手に入れたカギをどこに使うのか調べてみると、小箱を開ける事ができた。
…さて……。
(ゆっくり開けるぞ……)
(はい…お願いします……)
また何かちょっとしたドッキリが入ってないか警戒しながら開ける。
…………。
……またカギ?
「連続でカギ……」
(…ネタ切れ…とか……?)
「ネタ切れ…ふふ……いやいやいや……」
思わず笑っちまったぜ。
変なツボに入っちまった、不意打ちは卑怯だよマグ……。
「ふふふ……まぁとにかく、このカギはどこのかな〜?」
(妥当に行けば…勉強机…ですね)
(よーし…どっちが開くかな?)
上段は…駄目か。
じゃあタイムマシンか……。
カチャ
「…あ、開いぃタタタタタタッ!!」
(コ、コウスケさんっ!?)
「はぁ…はぁ……これ…電気…?」
両手をヒラヒラさせながら机から離れる。
まさか物理的にダメージを与えにくるとは……!
やはりネタ切れでは無かったのか……!
(おいおい…どうすんだあれ……)
(あれじゃあ開けられませんよ……?)
(うーん…なんか痛みを軽減できるやつ無いかな……?)
電気に強いのは…ゴム、かな。
……無いわ、そんなん。
(でも絶対に何かあるはずなんだよなぁ……)
(う〜ん……でも、もうこの部屋にそんなアイテムは……)
そうだよなぁ……。
今あるのはグラビア雑誌だけだし……。
(……耐える?)
(……力技ですね)
(他に方法が思いつかないんだよなぁ……)
(う〜ん…何かを見落としてるんでしょうか……)
(見落としかぁ……)
もう一度部屋を散策し直してみるか……?
あの引き出しの中をどうにか開けられる道具なり、方法なりを見つけないと本格的に手詰まりだ。
ん〜…………?
(あの引き出し…なんであそこだけ痺れるんだろう……?)
(?………確かにそうですね……。他の引き出しはなんともなかったのに……)
俺は机の下からその引き出しを見てみる。
……!
(取っ手の部分だけ材質が違う……?)
(本当だ……ということは…取っ手を触らずに開ければ……?)
(……いけるかも)
俺は机の下に潜ったまま、タイムマシンの位置の引き出しの腹の部分をスライドさせて開けようと試みた。
まずは少し触ってみる。
大丈夫そうなのでガッツリ触ってみる。
「…痺れない……」
そのままスライドしてみる。
「よしっ!」
(開いたっ!)
なるほど、こういうちょっとしたことも大事だってことか。
確かに大事だ。
机の下から這い出て、引き出しの中身を確認する。
「スペードと…またカギか……」
中には「♤6」と書かれた紙とまた小さなカギが入っていた。
まぁこのカギは隣の引き出しのやつだろうが……。
(やだなぁ……)
(また何かありそうですもんね……)
しかもこれに至っては回避方法分からないわ。
下に潜り込めないもん。
(でも開けないと……)
(くっ……!行くしかないかっ!)
マグの言う通り、行くしかない。
「ふぅ〜……よし…いざっ!」
意を決してカギ穴にカギを挿入する。
…特に問題は無い。
カギを回す。
…何も起こらない。
引き出しの取っ手に手をかける。
…痺れない。
(何も無いんでしょうか……?)
(まだだ。開けたら毒霧が吹き出すかもしれない……)
(……ありえるから嫌だ……)
俺は慎重に、勉強机のタイムマシン引き出しの前にしゃがみ込み、不意打ちを警戒しながら引き出しを開けた。
…………。
(…何も起きませんね……)
(…起きないねぇ……)
なんだか拍子抜け…いやいや、気を抜いては駄目だ。
この油断が命取りなのだ。
俺はまだまだ慎重に、引き出しの中を確認する。
……?
…目悪くなったかな……?
俺は目頭を揉んでみる。
そしてもう一度、今度はしっかりと中を見る。
「……無いね……」
(……無いですね……)
引き出しには何も入っていなかった。
「えっ?いや…えっ?」
(な、何か見落とした…!?で、でも…もう探すところなんて……!?)
どゆこと?ドユコト?
えっ?なんで何も無いん?
「いや、いや!待とう。落ち着こう。いったん落ち着いて考えよう」
(そ、そうですね!いついかなる時も冷静でいないと……はぁー…!ふぅ〜…!)
とりあえず落ち着くために深呼吸をする俺たち。
ある程度落ち着いたところで、改めて考える。
(んー……どっか探してないか…見落としがあるか……かなぁ…やっぱ……)
(う〜ん……とりあえず今ある情報を整理しましょう。まだ開けていないのは宝箱と金庫。宝箱のカギは全く見つからない。金庫は5桁の数字の鍵がかかっている。それを解くカギは、このマークと数字の書かれた紙……)
(そして今ある紙は、「♤、♡、♢、♧」と「♢K」が書かれたもの、「♧7」、「♤6」……恐らくこれは数字の順番、そしてそれぞれのマークの位置に入れる数字……)
(Kはトランプで言えばキング、つまり「13」になって、それぞれ当てはめる数字は「♤→6、♡→?、♢→13、♧→7」になりますね)
(そう、そして5桁の数字になるから、これがカギだと思っている。それでおっかなびっくり最後の引き出しを開けてみれば……)
(最後に残った♡マークの紙どころか、何にもないという無駄骨状態……それが今ですよね)
そうなのだ。
♡マークの紙が無かったのもそうだが、あんなに警戒して罠どころか戦利品も無かったとか、完全に手のひらの上で遊ばされているようですごく悔しいっ!
「…もう適当に入れるか……?」
(…確かに、数字はあとひとつですし、たとえ0が入ったとしても全部で10通りですから、出来ないことは無いと思いますが……)
(……まぁ言いたいことはわかる……。多分これも罠だ)
(はい、私もそう思います)
そりゃあれだけやられりゃな……。
誰だって警戒する。
(とはいえ、現状手詰まりな以上、何かアクションを起こさないと何も進まない気がしてならないんだ……)
(それはまぁ…確かに……)
(あとはまぁ、そこの本がなんらかのヒントになってるのかもしれないが……)
(コウスケさん、何か適当に入力してみましょう)
(そんなに嫌っ!?)
なんでそこまで毛嫌いするのっ!?
(コウスケさんは見たいんですか?)
(いや、この部屋にある以上、目を通しておいた方が良いんじゃないか?)
(むぅ〜!)
(いや「むぅ〜!」じゃなくて……)
(むぅ〜〜!!)
(…いったい何がマグをそこまでさせるのか……分かった分かった。とりあえずやってみるよ)
駄々っ子になってしまったマグに押し切られ、グラビア雑誌をベッドに置き、俺は金庫に♡マークの場所以外の数字を入れていく。
そして、「60137」の状態にして、いったん止める。
…んー……とりあえずこれで開くか試してみるか……。
そう考えると、俺は金庫の取っ手に手をかけ、開けようと力を込める。
が、案の定金庫は開かなかった。
「まぁ、さすがにそんな単純じゃ……」
(?コウスケさんどうしまし……!?)
この金庫は部屋に飾られていた女性が描かれた絵画の裏にあったものだ。
その絵画は金庫の下に立てかけといたのだが…
なんでか絵画と目が合っている。
確かこの絵の女性は目を閉じていたような気がしたのだが……。
そこまで考えたとき、絵画がカタカタと動き出した。
「うわっ!?」
(ひっ!?)
俺は思わず後退りをする。
その間も絵画はカタカタ動き…ガタンッ!と一際大きく揺れると、6本の黒い手が絵画から生えてきた。
「(…………え?)」
俺たちが呆気に取られている間に、絵画カサカサとベッドに向かうと、ベッドの上を片付け始めた。
(えっ?なんで?絵画、掃除、なんで?)
(さ、さぁ……?)
いったい何を……?
絵画は無事ベッドの上の物を勉強机の上に綺麗にまとめると、俺に向かって手招きをした。
「えっ?えっと…来いってこと……?」
絵画が頷いた気がした。
よく分からないままベッドの近くにいる絵画に近づく。
「ーー!?」
すると絵画は、いきなり俺を掴むとベッドに押し倒し、馬乗りになってきた。
そして絵画は、不敵な笑みを浮かべた。
な…何する気だ……!?
大丈夫かな……。
なんかやってない謎とか無いよね……?




