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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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51.返事と条件…キツネっ娘の苦悩

「ダニエルさん」

「あぁ…」


俺は頭を下げて謝罪する彼にゆっくりと話しかける。


「とても怖かったです」

「あぁ…」

「死ぬかと思いました」

「あぁ……」

「涙も流しました」

「…そうか……」

「…思い出すと体が寒くなります」

「…すまない……」


ダニエルさんに、俺とマグの気持ちを伝えていく。

彼は頭を下げたまま、小さく、だがハッキリと返事をする。


律儀な人だ。


まぁ、恨み言はこのぐらいで良いだろう。


「ダニエルさん、私は…あなたのことを許したくありません」

「……そうだろうな……」


どこか自嘲気味に答えるダニエルさん。

まぁ待て。


「ですが…」

「……?」


まだ続きがあるんだから。


「それと同時に…あなたとギクシャクした関係になるのも嫌です」

「…!」


驚いた顔で頭だけを上げて俺の顔を見るダニエルさん。


俺はそんな彼の目を見て、ハッキリと言う。


「なのでダニエルさん、あなたを許す代わりに私の出す条件を1つ、あなたにお願いします」

「その条件は…?」


若干食い気味に聞いてくるダニエルさん。

俺は、マグと話し合って決めたことを、彼に告げた。


「それがまだ決まって無いんですよね」

「……はっ?」


うん、ごめん。

結局考えつかなかった。


だからこうしようと2人で決めた。


「なので、ダニエルさん。1つ「貸し」です」

「!」

「何か思い付いたら言いますよ。それまでは…まぁ…もう少しいたずらを控えめにしてくれるならいつも通りで良いですから……」

「…分かった……」


許す条件を伝えたが、ダニエルさんの表情は変わらず暗い。


…あぁ…アレ言ってないや。


「ダニエルさん。貸しと言っても、命を危険に晒すような無茶なお願いはしませんよ。龍関係の事も(しか)りです」

「なっ!?」


あぁ、やっぱりそうだったか。

ダニエルさんは俺たちのことを知っているから、今回の件を理由に、龍に関しての何かをやらされるだろうと覚悟を決めていたんだろう。


悪いけど…いらんよ、そんなん。


「だってそんな事頼んで、万が一の事があったら、それこそ私は塞ぎ込みますよ?私のせいでぇ!って」

「い、いやっ!?だが、龍に対抗するためにあれこれ計画をなってるんだろ!?だったらこれはちょうどいいチャンスじゃないのかっ!?」


確かにそうだ。

実際に考えた。


だが、俺もマグもそんなことは望まない。


「ダニエルさん、私は確かに龍を落としたいです。そのために有効な手段や龍の情報を集めています」

「ならっ!」

「ですが、私の第一希望は龍狩りではありません」

「なっ!?」


さっき言ったはずだけどな……。

…いや、言ってないや。


いややっぱり昨日聞いたはずだ。


俺たちは龍狩りよりも…


「誰も、死んで欲しくないんです」

「!」

「これ以上誰かを失いたくないんです」

「……」


ダニエルさんだけでなく、ヘンリエッタさんやベックさんも何も言わない。


だからちょっとぶっちゃける。


「それに、ぶっちゃけ龍なんてついでです」

「…はぁっ!?」

「野放しにはしたくないし、仇も取りたい。でも、それよりも私は誰も失いたくない。だからこういう機会で頼む気はありません。その時はキチンと報酬を用意して依頼を出しますよ」

「…………」


さっきまであんなに暗い顔をしていたこの部屋の人たちが一様に唖然とした顔を向けてくる。

あのココさんですら、そんな顔をしていた。


はっはっは。

悪いがこれはちゃんとマグと話し合って決めた事だからな!


そうだ、それもちゃんと伝えておこう。

ボカした感じで伝えておこう。


「これはちゃんとした()()考えですよ?マーガレット・ファルクラフト本人の言葉です」

「!?」


他の人たちはまだポカンとしているが、真実を知っているダニエルさんは気がついたようだ。


んじゃ、そろそろ締めるか!


「そういうわけなので、何か思い付くまでは「貸し」ということで、お願いします」

「……ハハハ…本当に恐ろしい嬢ちゃんだったんだな…アンタ……」


(やったじゃん、マグ。プロに褒められたぞ)

(恐ろしいって…あんまり嬉しくないです……)


この場合の「恐ろしい」は最高の褒め言葉なんだけどなぁ〜。


「わかった。何かあったら力になる。それでいいんだな?」

「はい、もちろん私に出来ることなら、こちらも協力しますので」


俺はそう言いながらダニエルさんに手を差し伸べる。


彼は少し驚いたようだが、すぐにふっ、と笑みを浮かべると、俺の握手に応じてくれた。


「さて…それで、ダニエルさん。試験に私を使うプランを教えてくださいな?」

「あいよ。とはいえ、さっきの今じゃさすがに怖ぇから、細かいとこまで調整する必要があるがな。手伝ってくれるだろ?」

「もちろん、私のことですから」


そうして無事に仲直りを終えた俺たちは、部屋にいた審査官も交え、俺の出番があるらしい最終試験の計画を話し合った。


なお計画の中には割と危険なものがいくつかあったので…


「…ねぇダニエルさん」

「…おう」

「これ実行してたらまた「貸し」が増えてましたよ?あなたは私の力を過信しすぎです」

「……すまん」


無事に撤回させることができた。


危ねぇなぁ…ホント……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔ユーリ視点〕


「ふぅ……」


仕掛けられていた罠を解除し、私は一息ついた。


ある一定の時間に全て罠がリセットされ、復活する迷路を、その時間の間に突破しなければならない、という試験だったが、私はどうにか最後の罠を解除し終え、ゴールに到達できた。


『迷路の突破を確認、道を進み、先の空洞でお待ち下さい』


出口にあるテレフォンオーブから、声が聞こえる。


最初は驚いたし、どこから見られているのかと探しもしたが、結局見つけることは出来なかった。


私は、不正は出来なくなるだろうし別にいいか、と諦めた。


それはさておき、この試験は1人ずつ順番に迷路に入り、突破するか脱落するか、1度スタート地点まで戻ってきたら次の人が入る。


このいずれかの要因で迷路の中から人がいなくなったら、入り口にもあるテレフォンオーブから審査官の連絡が入る仕組みだ。


ただ合否は明らかにされないが。


戻ってきた人は最後に回され、再び順番を待たなければならないが、ある程度の迷路内の情報を持った状態で再戦できるので、その分試験を突破しやすくなる。


だからほとんどの人は何回かに分けて攻略していた。


私も、5回目の挑戦でゴール出来た。


無謀にも初回突破を狙う人もいたけど、突破報告は流れなかったので、脱落したのだろう。


…その脱落方法はマーガレットのように突然穴に落とされる仕様だった。


こっちに戻ってこようとした受験者が脱出目前で穴に落ちていったからだ。


「マーガレット…大丈夫かな……?」


友達のことを考えながら道を進む。

穴に落ちていった受験者たちも心配だが、やはりまだ幼いあの子が心配だ。


ココさんは大丈夫だと言っていたが……。

やっぱり自分の目で見るまでは安心できない。


そうこう考え事をしているうちに、さっき言われた待機場所の空洞に到着した。


そこにはいたのは6人だけだった。


私の後にまだ3人ほど残っていたが、それを合わせたとしても最初の半数ほどの人数だ。


「はぁ……」


私は誰もいない一角の壁に背を預け座り込む。


…ここまででかなり体力と精神力を使ってしまった。


「でも…頑張らないとね……」


この先の試験で待っているであろう友達のために、ここでリタイアするわけにはいかない。


私は、万全の状態で次の試験に挑めるように、体を休めつつ、武器や道具のメンテナンスをして、その時を待った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『迷路の試験、全員の終了を確認しました。踏破者は7人です。道を進み、次の試験に挑んでください』


結局、そのあと迷路を突破した人はいなかった。


私を含めた7人で洞窟を進む。


その途中で1人の冒険者が話しかけてきた。


「なぁなぁユーリちゃぁん、やっぱりさぁ…俺とパーティを組もうってぇ」

「何度も言ってますが、私はあなたと組む気はありません」


この男の冒険者に話しかけられるのはこれが初めてではない。


それどころか、こうして試験の合間合間に話しかけてきては、何度もパーティを組もうと誘ってくるのだ。


この人や他の男の人たちからそういう視線で見られていることは分かっていたので断っているのだが、とてもしつこい。


しかもそのたびにイヤらしい視線で私の体を舐め回すように見るものだから、私は何があろうとこの人たちと組む気は無い。


というか話したくない。

関わりたくない。


はぁ……マーガレットとお話したい……。


あの子も私の体を見てはいたのだが、なんというか…変わった反応だった。


まるで、見惚れていたのを恋人に咎められたときのような反応をしていた。


そんなオーラを出している人はいなかったし、隣にいたあの男も私の体を見ていたし違うだろう。…あの男もイヤらしくは無かったが、それでもやっぱり男の人にジロジロ見られるのは居心地が悪い。


そのあともマーガレットは私の体をチラチラ見てはいたが、私とあの子では身長が違うし、女の子同士だし、何より見てもすぐに気恥ずかしそうに視線を逸らす様子がなんだか可愛かったから咎めなかった。


私に配慮しているけど、どうしても目線がいってしまうというどうしようもなさを気にしている様子がなんだか微笑ましかった。


「なぁなぁ〜、無視すんなよぉ〜」


…それに比べてこの男はどうだろう。


私のことなど何も考えていない、無遠慮な視線を私に投げかけ、気持ちの悪い顔と声でしつこく絡んでくる。


…本当に鬱陶(うっとう)しい……。


「おい、無視すんなって」

「っ!?」


無視し続けられて、イラつきを隠せなくなった男が私の腕を掴んできた。


その手を振り解こうとしたとき、前を歩いていた冒険者が声を上げた。


「お、おい!なんだアレ!?」


その声に気を取られた隙に、腕を掴んでいる男の手を振り解きそちらに向かう。


「あっ!?……チッ…」


後ろで舌打ちが聞こえる。

危なかった……。


…試験が終わったあとも気をつけないと……。

宿までつけて来たりしないよね……?


とにかく、私は先に進み、さっき声を上げた冒険者…この人も男性なので距離は取っておく…のところまで行った。


そこは広く、下にまあまあ長い吹き抜けになっていた。


壁側に螺旋状(らせんじょう)に、そこそこ横幅のある道が続いていて、下に行けるようになっている。


そして2週ほど続くその道を降りた先、吹き抜けとなっている中央に…


「マーガレットっ!」

「あっ、ユーリさん」


そこに彼女がいた。

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