417.和解後の会話…と新しい姿
里の掟の影響でユーリさんの貞操観念が壊滅的だったので、フォバと一緒に原因となった里の人たちにお説教をして小一時間。
ひとまずこれ以上はやめておこうということでお説教を打ち切った俺たちにおじいさんが恐る恐る話しかけてきた。
おじいさん「お、終わりましたかの……?」
フォバ「うむ。まだまだ言いたいことは山ほどあるが、話が進まんからひとまずはこれで許すことにした」
おじいさん「さ、左様でございますか」
さすがのおじいさんもフォバには強く出られず、さらにお説教の内容も乙女の沽券に関わるものということで口を出せなかったようだ。
ごめんなさいね、興が乗っちゃったもので。
フォバ「して、何用じゃ?何か聞きたいことでもあるような顔をしておるが」
おじいさん「え、えぇ……正確に申せばフォバ様ではなくお嬢ちゃんの方なのですが……」
コウスケ・マグ「(私?)」
フォバ「ふむ?話は終わったゆえ好きにするといい」
おじいさん「はっ」
俺の意思は?
いやまぁ別にいいんだけどさ。
おじいさん「ずっと気になっておったのじゃが……」
コウスケ「はい」
マグ(なんでしょう?)
おじいさん「コウスケというのは、誰なんじゃ?」
コウスケ「(あっ)」
そういえばおじいさんに言ってないっけ?
フォバ「う〜む……まぁ、思いっきり大立ち回りしてしまったし、ここには耳の良いものしかおらぬから会話も全て聞かれておろう。もういっそのこと全部言ってしまえば良いのではないか?口の固い者しかおらぬしのぅ」
コウスケ「う、う〜ん……そっかぁ……」
マグ(それもそうですねぇ……)
ってなわけで俺の素性をバラしました。
おじいさん「……あー…整理させとくれ……?」
コウスケ・マグ「(はい)」
おじいさん「お嬢ちゃんの中にはもう一人青年の魂が宿っていて?」
コウスケ・マグ「(はい)」
おじいさん「その者は異世界から彷徨ってきた来訪者で?」
コウスケ・マグ「(はい)」
おじいさん「お嬢ちゃん本人の承諾を得て体を動かしていて?」
コウスケ・マグ「(はい)」
おじいさん「しかも恋仲でもあると?」
コウスケ・マグ「(そうです)」
おじいさん「…………えぇ……?」
まったく整理できてませんな。
ヤクモ「…なるほど……それならばあの奇想天外な魔法や踊りにも納得がいく」
マグ(!)
コウスケ「ヤクモさん……」
思わず警戒する俺たちに、ヤクモさんはゆっくりと手を挙げ制止した。
ヤクモ「待て。こちらはもう争うつもりはない。ここまで奇跡を見せつけられては、フォバ様のことも本物だと認識せざるを得ぬしな」
フォバ「やれやれ…一発で妾だと判断出来る何かを作るべきじゃったな……」
ヤクモ「当時のフォバ様はお力を使い果たしそこまで頭が回せなかったのでしょう。ずっと崇めていた神を一目で理解出来なかった我々が愚かだっただけです」
フォバ「う、うむ…いや、そこまで自分たちを落とさずとも良いのではないか?仕方のないことだと言うとるわけじゃし……」
ヤクモ「いえ、我々の不得の致すことに限ります」
フォバ「そ、そうかぁ……?」
マグ(これ本当に反省してます……?)
コウスケ(答えが変わっただけで考える方向性としては何も変わってない気がする……)
後ろに控えてる人たちも変わった様子が無いし……。
大丈夫?
フォバが引っ込んだ瞬間に取り押さえられたりしない?
おじいさん「そ、それよりもさっきの話じゃ!あれが真実なのだとしたら色々と申したいことがあるぞ!?」
コウスケ・マグ「(申したいこと?)」
おじいさん「そうじゃ!それにお主、ユーリだけでなく他の子どもらと共に着替えを行ったり、メイカ殿やフルール殿も交えて湯浴みをしたりしていたではないか!」
コウスケ「あー……」
そうだ。
感覚が麻痺していたが、それが世間一般の反応だった。
マグ(…?それくらい普通では?)
コウスケ(普通じゃないです……付き合ってもいない男女が着替えやお風呂を共にするのは決して普通じゃないです……)
マグ(……そういえばそうだった……)
もうすっかり自然になってしまった弊害が出たなぁ……。
おじいさん「エスト殿とシャール殿も!ここまで様々なことを共にしてきたじゃろう!なんともないのか!?」
エスト「えっ、特には……?」
シャール「ん。そもそも私たちは最初から知っている」
おじいさん「なんじゃと!?」
シャール「その上で一緒にお風呂入ってきた」
エスト「背中も流してもらったよ〜。あれは気持ちよかったから今度ご主人ともやろうねーって話もした!」
シャール「ん…それはしたけど今は関係ない」
おじいさん「な、なんと……!?じゃ、じゃが……コウスケ殿は男なのじゃろ……?ほ、本当に気にならなかったのか……?」
エスト「うん」
シャール「ん。むしろ妹みたいな子」
コウスケ「えっ?」
それはマグの見た目だからですよね?
俺のメンタルが幼女って意味じゃないですよね?
おじいさん「ぬっ…い、いや…しかし……う、うぅむ……?」
フォバ「まぁ…言いたいことはわかるが落ち着くがよい」
おじいさん「フォ、フォバ様……」
とても常識的なおじいさんが混乱してしまったのを見かねたのか、フォバ様が助け舟を出してくれた。
フォバ「コウスケにもやむなき事情があってそうなってしまっただけじゃ。こやつはこれで紳士的な男じゃよ」
……スッ……。
マグ「これで?」
フォバ「ぬぉっ!?い、いや、今のはコウスケの人となりを指して言った言葉で、お主の見た目を指したわけではないのじゃ!」
マグ「はーい、知ってま〜す♪くすくす♪」
フォバをからかって満足したところで再びスッと交代。
オーラを見て俺に戻ったのを確認したフォバがさっそく苦言を呈してきた。
フォバ「お、お主ら……そういう心臓に悪いことをするでないわ…!」
コウスケ「じゃあ発言には気をつけていただいてどうぞ」
フォバ「ぐぬぬ……!」
自分でもちょっと思うところがあるのか何も言い返せない様子のフォバ。
そんな俺たちの様子を見てヤクモさんが俺に尋ねてきた。
ヤクモ「……先ほどから気になっていたのだが…やけにフォバ様と親しげではないか?」
コウスケ「まぁ、もう半月以上の仲ですし」
フォバ「あー、もうそんなになるのか……時の流れというのは早いのぅ……」
コウスケ「感想がお年寄りなんよ」
フォバ「なんじゃとぉ!まだ千にも満たぬピチピチ少女じゃぞ!」
コウスケ「神様の寿命的にどうなの?」
フォバ「いや、知らぬ。なんせ前の神がおらんでな。わかりやすく言うなら妾たち今いる神は皆第一世代みたいなもんじゃ」
コウスケ・マグ「(へぇ〜)」
ヤクモ「そうなのですか」
エスト「初めて知ったかも」
シャール「ん。私も」
ってことはこの世界はまだ前世ほどは長生きしてないってことかな?
そうそう追い抜ける気はしないけどな。
数百億年とかなんかそんな数字がしれっと出てきたはずだし。
というかヤクモさんすら知らないって結構貴重な情報なのでは?
おじいさん「…って、それは確かに興味深いお話ではありますが、今はコウスケ殿です!」
コウスケ(おおう、忘れてた)
マグ(すぐにそれちゃいますねぇ)
コウスケ(主犯俺らだけどね)
マグ(えへへ♪)
はい可愛い。
これはおじいさんも笑って許すレベル。
まぁ見えてないから許されないけども。
フォバ「孫を思う気持ちがあるのは良いがなぁ……本人たちが特に気にしておらぬのに、何がまだ問題なんじゃ?」
おじいさん「気にしていないのも問題なのですが……」
それはそう。
フォバ「ふぅむ…わかったわかった。ならば本人たちと話してみるがよい。コウスケよ、手を出せ」
コウスケ「えっ、こう?」
突然の要望にとりあえず手のひらを上にして差し出してみる。
その手をフォバは手に取ると、まだ待機している里の人たちの方を向いた。
フォバ「誰か白紙の式紙を持って参れ」
里の人A「ハハッ!ではこちらを」
フォバ「うむ、礼を言う」
里の人たち『おぉぉ……!』
里の人A「も、もったいなきお言葉にございます!」
ここまで人間味が薄かった里の人たちから初めて感情を強く感じた。
今のは結構神様っぽかったなぁ。
そんな大喜びする人たちをちょっと満足そうに眺めていたフォバが改めてこちらに向き直る。
フォバ「よし。ではマーガレットと代わってくれ」
コウスケ「えっ、うん…」
マグ「…えっと、お呼びですか?」
フォバ「うむ。お主が表にいることが大事なのじゃ。なぁに安心せい。悪いようにはせぬ。むしろ喜ぶと思うぞ?」
マグ・コウスケ「(?)」
フォバ「百聞は一見にしかず。まぁじっとしとれ」
そう言うとフォバは目を閉じ集中…するや否や、俺は何かに引っ張られる感覚に襲われた。
……え?
なんてひと言すら出せない一瞬のうちに俺はマグの体から引っ張り出され…
フォバ「よし、出来たぞ!」
というフォバの声とともに視界に入ったのは、フォバと手を繋いだ状態のマグの姿。
それをやや下から見ているので、多分座り込んでいるのだろう。
……いや、どゆこと……?
困惑する俺とマグの目が合う。
マグ「へっ…?コ、コウスケ…さん……ですよね……?」
コウスケ「えっ……?」
視認されている…だと……?
思わず自分の体を見た俺はまた驚くことになる。
なんか手がちっちゃいような……?
それに座り込んでると思ったけど、俺の両足はキッチリ大地 (床)に2本伸びている。
つまり立っているはずなのだ。
床に刺さっているわけでもなくちゃんと直立できている。
なんなら感覚もある。
それなのにマグよりも低いということは……
コウスケ「……どゆこと……?」
わかんねーよ。
状況整理したってわかんないよまったく。
そんな大混乱な俺にマグは「はわわ……♡」と体を震わせ……ん?なぜ?
と思うや否や…
マグ「か、かわいいーっ♡」
コウスケ「あばぁっ!?」
メイカさんばりのダイビングハグを食らった。
フォバ「はっはっはっ♪お熱いのぅ♪」
おじいさん「フォバ様、これは……?」
フォバ「見ての通り、式紙を使ってコウスケの体を作り魂を移したのじゃ。もっとも、本来の姿ではなく、妾が予想した童の姿じゃがのぅ」
コウスケ「わ、わらべ…ってことは……」
俺は今フォバが想像した子どもの時の俺の姿になっているってこと……?
どうりで視界が低いわけだ……。
……よく見たら服…というか着物は見覚えがあるような無いような……?
あっ、これあれか。
この里の人たちの服…っぽいやつだ。
もしかしたらここの子ども服みたいなものなのかもしれない。
フォバ「む?…ふむ、よし。誰か、もう一枚持って参れ」
俺が自分の状態を確認していると、フォバが何か考えたかのような仕草をした後、急にもう一枚の式紙を要求した。
あれは多分中のユーリさんと話したんだろう。
外から見るとああいう感じなのか……。
里の人たち『ハハッ!』
里の人A「ではこち…」
里の人B「こちらをどうぞ!」
里の人C「いえ、こちらを!」
里の人D「いえここは私のを!」
里の人E「あえてこちらはいかがでしょう!」
里の人F「裏をかいて私のはいかがですか!」
フォバ「お、おぅ……落ち着けお主ら……」
里の人たち『ハッ!申し訳ございません!』
…凄まじい争いだったな……。
これも教えによって植え付けられた価値観によるものなのかと考えればなんとも微妙な気持ちになるが、本人たちは今とっても人間らしい感じがするしひとまずはこれでええんやろなぁ……。
フォバ「やれやれ……では皆から1枚ずつもらっておくとしよう。これで良いな?」
里の人たち『ハッ!光栄にございます!』
でもやっぱちょっと怖いわこの一体感。
これも教育の賜物というやつか……。
さて。
場を丸く収めたフォバは貰った式紙の一枚を持って軽く念じてから俺たちの隣に投げた。
すると…
ぽんっ!
???「わわっ!」
なんて可愛らしい声とともに、これまた可愛らしい褐色肌の子どもの狐人族が生まれた。
この流れだともしかしなくても…
マグ「ユーリさん?」
ユーリ「ハッ!マーガレット!コウスケ!」
コウスケ「どぅえっ!」
マグ「おぉっ!?」
本日2度目タックル…もといハグを食らいました。
サンドイッチの出来上がりだ。
中の具潰れる寸前だけどな。
マグ「わーい♪ユーリさーん!」
ユーリ「マーガレットー♪」
マグ「ユーリさーん♪」
ユーリ「マーガレットー♪」
フォバ「お楽しみのところ悪いが……コウスケが潰れそうじゃから一旦離れよ」
マグ・ユーリ「「あっ!」」
あぁ…助かったよフォバ……。
危うくロリバーガーで絶命するところだった……。
…割と幸せな死に方じゃね?
いやそれ以前に俺死んでたわ。(持ちネタ)
ってちょっと待てよ?
今式紙の中にいるわけだけど、この状態で死ぬとどうなるんだ?
多分魂が解放されるとは思うんだけど、その後無事にマグの体の中に戻れるのか?
そう思った矢先、心でも読んだんかというタイミングでフォバが答えを言ってくれた。
フォバ「まぁ死んでも式紙から抜けるだけじゃ。その後は漂うことになるが、近くに縁の深い者がおればそちらに引き寄せられるから、そうそう漂流なんてこともないぞ」
マグ「やだなーフォバ様。そんなことするわけないじゃないですか〜♪」
ユーリ「そうですよ〜♪それくらい気をつけられますって〜」
フォバ「……そうか?」
今しがた俺をたい焼きの餡にしていたのにこの態度である。
可愛いから許すけども。
チョロいなぁ…と自分を正確に分析していると、フォバがおじいさんに向けて話しかけた。
フォバ「まぁともかく、これで話が聞けるじゃろう?聞きたいことがあるなら聞いてみよ」
おじいさん「はっ…それでは……」
そうだそういう話だった。
体を得られたことではしゃぎすぎたか。
いや、はしゃいでたのマグとユーリさんだけども。
おじいさん「ではコウスケ殿」
コウスケ「は、はい……」
真剣な眼差しでこちらにズイッと寄ってきたおじいさんを見て、アホなことを考えている場合ではないな…と思い直す。
なんたって孫を大事に思うお爺ちゃんからの質問である。
下手な答えを言ったらぶん殴られるかもしれない。
今マグの体じゃないし。
おじいさん「コウスケ殿は…」
コウスケ「……(ドキドキ)」
おじいさん「…ユーリとはどういう関係なのじゃ?」
コウスケ「ど、どうとは……」
おじいさん「親しい様子ではあるが、それはお嬢ちゃんの体にいたからの話。お嬢ちゃんはこの様子を見ればわかるが、コウスケ殿自身はユーリのことをどう思っておるのじゃ?」
コウスケ「えっ…友だち…ですかね……?」
おじいさん「友達…ではそれ以上の感情はないということじゃな?」
コウスケ「そ、それ以上というと……」
マグ「コウスケさん。おじいさんはコウスケさんがユーリさんを恋人にしたいほど好きかどうかが気になってるんですよ」
コウスケ「あ、あぁ…なるほど……」
そりゃ確かに、ようやく可愛がる決心がついた孫が、もうすでに誰かとお付き合い…なんて段階になってたらと思うと気が気じゃないか……。
おじいさん「それでどうなんじゃ?好いておるのか?恋仲になりたいと思っておるのか?子を成したい相手だと思うておるのか!?」
コウスケ「えぇっと……それはだから……」
おじいさんの圧に押されながらも、友だちったら友だちです…と答えようとしたところで、隣のいたずらキツネが動いた。
ユーリ「私はコウスケなら大歓迎だけどな〜?」
コウスケ・おじいさん「「えっ!?」」
里の女性たち『おぉ……』
ユーリさんの言葉に俺とおじいさんが固まり、何故か里の女性たちから感嘆の声が上がる。
そして現恋人であり、実はハーレム推進派な反対隣のマグさんがさらに爆弾を放り込む。
マグ「私もユーリさんならオッケーです!というかむしろそうしてほしいと思ってます!」
おじいさん「なぬぅっ!?」
里の女性たち『おぉぉ……!』
里の女性A「公認だ……」
里の女性B「女性側が外堀を埋めていくのね……」
里の女性C「幼妻とおっぱいお姉さん…二人の猛攻に青年はなすすべなく……くぅー!捗るわぁー!」
里の女性D「やめて?ずっと夢見た自由恋愛の光景に隣人の突然の豹変とかいう狂気を混ぜ込まないで?」
外野、大騒ぎ。
さっきの説教でフォバが「魔力を捧げるのは今まで通り願いたいが、それ以外のやたらめったらガチガチな掟も含めて根本的に見直すように」とのお達しが出たので、おそらくはそれによって今まで抑圧されてきた感情も解放していいと判断したのだろう。
…にしたってはっちゃけすぎである。
ユーリ「そうだ!てんやわんやで汗かいちゃったし、一緒に水浴びしよ!久しぶりに体洗ってよ♪」
おじいさん「な、なんじゃと……!?」
マグ「わぁっ!いいですね♪フォバ様もご一緒にどうですか?」
里の人たち『ざわっ……』
フォバ「わ、妾もか?」
マグ「はい!ずっと眠ってたんですし、久しぶりに水の感触とか感じたくないですか?」
フォバ「それはまぁ……えと…ほんとに良いのか?」
マグ「はい!ねっ?ユーリさん」
ユーリ「うん!それにフォバ様のおかげでこうして一緒にいられるんですから、断る理由なんて無いですよ〜♪」
フォバ「そ、そういうことなら…共に参ろうかの♪」
マグ・ユーリ「「わーい♪」」
コウスケ「いや待てぃ!」
ここまで静観してきたがさすがにやばそうなので止めに入る。
ユーリ「どしたのコウスケ?」
コウスケ「どしたの?じゃないんですが?我今男の身でござるぞ?これで女子の水浴びに混ざるのはさすがに事案だと思うんですよ?」
マグ「今さらでは?」
ユーリ「ねぇ?」
コウスケ「いやまぁそうなんだけども……それはマグの体の中にいたからギリギリ許されていたようなものであって、この男100%で行くのはまた訳が違うでしょうと!」
マグ・ユーリ「「う〜ん?」」
二人揃って小首を傾げるんじゃないよ可愛いな!
コウスケ「フォバはその辺の貞操観念はしっかりしてるでしょ!?俺の言い分分かるでしょー!?」
フォバ「う、う〜む…それはまぁもちろんそうじゃが……この体の持ち主が1番乗り気な以上、妾としては別に断る理由が無いからのぅ……」
コウスケ「フォバ様ーっ!」
良識はあれど持ち主の意見もちゃんと尊重する良い子ねフォバ様ー!
おじいさん「ま、まぁ待て二人とも。コウスケ殿はこう言っておるわけじゃし、無理に連れていくのも良くないのではないか?」
ユーリ「言いたいことはわかりますよお爺様。ですがね?」
そう言ってこちらを向くマグとユーリさん。
わぁ…凄いイヤな予感するぅ……。
ユーリ「ねぇコウスケ〜?ダメ?私もお役目から解放されたし、里のみんなだって自由になった。それにフォバ様がわざわざ体まで用意してくれて、こうしてコウスケとマグと同時にお喋り出来るまたとない機会なんだよ?」
マグ「そうですよコウスケさん?それにユーリさんはこっちにいる間ずっと1人で、しかも監視されっぱなしだったんですよ?そこにようやく私たちが来て安心出来たんですよ?それなのにさっそく水を差すつもりですか?」
ユーリ「それにほら。今は子ども同士、だよ?いつもよりはマシなんじゃない?」
マグ「子どもが一緒に水遊びなら…普通ですよね?」
コウスケ「うっ、うぅぅ……!」
フォバ「おぉう……これはなかなか……」
ヤクモ「良心に訴えかけているのか。なんと容赦のない」
冷静に分析してないで助けて欲しいんじゃが!?
おじいさん「コ、コウスケ殿!気をしっかりせい!ここで流されては今後またどこかで体を持てた時にも同じことが起きるぞ!」
ハッ!
そ、それは確かに…
マグ「いいじゃないですかコウスケさん♪それにそうなったときは多分メリーも一緒にしたがると思いません?」
コウスケ「うっ…メ、メリー……?」
ユーリ「そうだね〜♪メリーちゃんもコウスケのこと大好きだもんね〜♪そんな子のお願いもダメって言うつもり?」
マグ「メリー悲しんじゃいますよ?それに今だって…ねぇ?」
ユーリ「うんうん。私たちも悲しいな〜。ねっ、コウスケ……」
そこで俺の正面で互いの顔を寄せ…
マグ・ユーリ「「私たちと一緒に浴びるのは…イヤ?」ですか?」
なんて上目遣いで言われてしまえば……
コウスケ「……イヤじゃないですぅ……」
と、言わざるを得ない、意思の弱い俺である。
マグ「じゃあ問題ないですね♪」
ユーリ「だね♪それじゃあさっそく行こー♪」
マグ「おー♪」
言質を取ってご機嫌な二人に入り口まで引きづられていく俺。
ヤクモ「…もう止めぬのか?」
おじいさん「ああなってはもう無理じゃ……こうなればもう祈るほかあるまい……」
ヤクモ「……どちらかと言えばコウスケ殿の武運を祈るべきかもしれぬな……」
フォバ「あーれは苦労するじゃろうなぁ……まぁそこはどうにか頑張れとしか言えぬ。それより誰か、人数分の着替えと拭き布を用意してくれ」
里の人たち『ハハッ!』
エスト「エストたちも行く?」
シャール「んー……行っちゃおっか」
エスト「おー♪」
ちょっと悩んだが結局来ることにしたエストさんたちを見てさらなる地獄を想像しながら、俺は楽しそうなマグとユーリさんの鼻歌をぼんやりと聞いていた。
マグ「そういえば式紙って水とか大丈夫なんですか?」
フォバ「式紙自体はただの触媒じゃからな。外に纏う魔力で守ってやれば問題はないのじゃ」
マグ「へぇー!」
その気の回し方をもうちょっとこっちにも欲しかった……。




