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416.炎の神フォバ…オンステージ

〔ユーリ〕


ヤクモ「やはりまだ子供だな。爪が甘い」


里長がそう言いながらこちらを振り向く。


振り向いた先にいる私は、倒れたマーガレットを呆然と見つめるしかできない。


ヤクモ「聞いていたな。この子供はお前の側仕えとする。お前が何かすればこのマーガレットとやらにも責任を取らせるつもりだ」

ユーリ「っ…!卑怯者……!」

ヤクモ「お前が大人しくしていればよかっただけの話だ」

ユーリ「チッ……!」


そもそもアンタたちがふざけた掟なんて作るからでしょうが……!


マーガレット……。

せっかく助けに来てくれたのに……起きてこれを知ったら落ち込むだろうな……。

助けるつもりが逆に枷にされるだなんて…酷すぎる……。


そんなことを考える私に、エストの怒鳴り声が聞こえてきた。


エスト「ユーリ!なんで…なんでマーガレットのことを信じてあげなかったの!?」

里の人「おい、静かにしろ!」

ヤクモ「構わん。言わせてやれ」

里の人「は、はっ!」


里長がわざわざ許すなんて……きっとエストが私を責めるからだろう……。

それで心が折れれば静かになるって……ほんと最低……最悪なほど…理解してる……。


エスト「ユーリが連れてかれてからすぐに作戦を立てたんだよ!夢で神様と話したなんてこと言い出しても、みんな信じて頑張ったんだよ!リオはいっぱい装備作ったし、ローズさんもお洋服作ってくれたし、ご主人が馬も貸してくれた!エストたちだって魔石いっぱい集めたもん!みんないっぱい頑張ってくれたもん!なのにどうして信じてくれないの!?」

ユーリ「みんなが……」

エスト「でもやっぱりマーガレットが1番頑張ってた!毎日みんなのことを支えながら作戦とか考えて…本当は1番不安なはずなのに……!それでも頑張ってここまで来たの!それに信じてくれるためにそんなヘンテコな格好して変なダンスまで踊ったのに!どうして信じてあげられなかったの!?」

シャール「いや、あれは信じてくれるためではないから……」

おじいさん「ま、まぁ…ユーリを思っての行動ではあるし……」


両サイドが疑問の声をあげている。

私も唖然としていたけど……でもそうだ。

あれだって私のためを思ってのことなんだ。


……私が協力してたら本当に助けてくれたのかな……。

いやいや…フォバを呼ぶだなんてそんなこと出来るわけないし…夢で話したなんてのも普通ありえないし……。

普通なら……でも……。


マーガレットは…コウスケは、普通じゃない…よね……。

それに2人がこんな時にそんなウソを吐くとは思えないし……。


じゃあ…私は……2人が神様に手伝ってもらった作戦を……お爺様にエストとシャール…それに他のみんなも手伝ってくれた大作戦を…台無しにしちゃったんだ……。


そこまで考えたところで、頬に涙が伝う感覚を感じた。

しかしそれを拭うことなく、私はゆっくり立ち上がりふらふらと倒れるマーガレットのもとへ向かう。


その傍らには里長が立っているが気にしない。

どうせ抵抗しても勝てないのだ。

なら気にするだけ無駄だ。

止めたければ止めればいい。


なんて自棄になりながらも進む私に、しかし里長は何もしない。


何もしてこないなら進むだけだ。


そうしてたどり着いた私は、うつ伏せで横たわるマーガレットの横に両膝をついてしゃがみ込む。


ユーリ「ごめんね……マーガレット……あの時だって…連れてかれる時だって、頼って欲しいって言ってくれたのに……!私…また信じてあげられなかった……!ごめんなさい……ごめんなさい……!」


ぼろぼろと溢れる涙で視界が歪む。

抱きしめたいのに、自分にそんな資格は無いと躊躇してしまい、結局自分の顔を覆うしかない。


私が信じてあげられれば……私が……私のせい……全部…私の……!


マーガレット?「そういうことは本人が起きている時に言うてやるがよい」

ユーリ「え……?」


さっきまで聞いていた落ち着く声。

でも違う。

マーガレットでもコウスケでもない。


マーガレット?「どっこいしょっと……あーいかん……さっきのやつ思い出してしもうた……あれもやは一種の呪いじゃろ……」


喋り方も、体の動きも違う……。

コウスケもマーガレットも、強化を使わずに両手だけで飛び起きるなんて出来ないはず……。


見えるオーラも完全に別のもの…というか…圧倒されるほどの強いオーラ……!


マーガレット?「むっ…装備が……(パチンッ)うむ、これでよし」


指を弾いただけでずり落ちそうだった装備を体に固定した……。

それも全ての部位を……。

コウスケは1つずつやっていたのに……。


やっぱり違う……。

コウスケでもマーガレットでもない誰か……でも…この状況で出てこれるような存在はもうあの人…いや、あの神様しかいない……!


マーガレット?「さて……本来ならこちらから名乗るつもりはないのじゃが、ここにおる者はみな知っておるゆえ、特別に名乗りをあげてやろう」


そう言ってマーガレットの体を動かすその神様はその場でくるりと回る。


すると先ほどまでとは違う、私たち狐人族のものに似た耳と尻尾が生まれた。

しかも尻尾は1つじゃない。


マーガレット?「4尾か。まぁ大体半分といったところかの。と、名乗りじゃったな」


こほん、と咳払いをしたその神様は、私を見下ろしながら…


フォバ「(わらわ)はフォバ。可愛い弟妹(きょうだい)の願いにより、其方を助けてやろう」


ニッ、と笑ってそう名乗った。


ヤクモ「ふざけるな!」

ユーリ「!」


突然近くから発せられた怒声に驚き振り向くと、里長が拳を戦慄(わなな)かせフォバを睨みつけていた。


ヤクモ「呼び出すだけに飽き足らず、神の名を騙るとは……さすがにそれは看過出来ぬぞ……!」

フォバ「ふぅむ、では妾は偽物であると?」

ヤクモ「それ以外のなんだと言うのだ!」

フォバ「本物じゃよ」

ヤクモ「!?」

お爺様「なっ……!?」


一瞬何が起きたかわからなかった。

瞬きもしていないはずなのに、目の前から姿が消えたと思ったら……


里の人たち『さ、里長ぁ!』


里長が組み伏せられていた。


フォバ「まったく……確かに本調子ではないが、人の子1人どうにもできぬわけではないぞ?」

ヤクモ「き、貴様……!」

里の人A「くっ!今助けます!」

里の人B「里長を離せ!」

フォバ「"止まれ"」

全員『っ!?』


なんてことないいつものマーガレットの声。

それなのに、背筋が凍りつくような感覚に襲われ、その場にいた全員が動きを止めた。


フォバ「おっと…加減を間違えたか。いかんのぅ……思ったより力を振るえるからはしゃいでおるのかのぅ。ほれ、お・ぬ・し・ら、は動いてよいぞ」

ユーリ「っ!はぁ…はぁ……!」


フォバが私とお爺様たち3人を順番に指差しながらそう言うと、体を襲っていた硬直感が無くなり動けるようになった。


シャール「ん…力が抜けてる……」

エスト「あっ、ほんとだ!簡単に抜け出せるよ!」

お爺様「なんと……こうもあっさりと……」


里の人たちはまだ動けないようで、お爺様たちはするりと里の人たちの輪から抜けると、縄を解いてこちらに来た。


ヤクモ「なん…だ……これは……!?まさか…本当にフォバ様だとでも……!」

フォバ「じゃからそう言っておるじゃろうが。まったく……やはり予想した通りになったのぅ……まぁよい」


そう言うとフォバはまた指を鳴らす。

すると今度は動けない里の人たちの体が浮き始めた。


里の人C「う、うわぁ!?体が!?」

フォバ「そう喚くな。ちょっと移動するだけじゃ」


そう言いながらフォバが糸を手繰り寄せるように指をクイっと曲げると、浮いた人たちがゆっくりとこちらに移動してきて、空いたスペースにキレイに並べて座らせられた。


フォバ「さて。残念ながらこの身の証明をする手段が思いつかぬ故強引な手を取ることになってしまったが、ひとまずは信じてくれたかの?」

ヤクモ「……まだ確証はない…が、どうやら力では勝てないことは理解した」

フォバ「ふっ、まぁ今はそれで良い。して…今代の御子よ」


今代の御子……あっ、私だ!


ユーリ「は、はいっ!」

フォバ「お主なら分かるじゃろう?妾が先ほどまでの誰でもないことが」

ユーリ「は、はい……えっと…その……ほ、ほんとのほんとにフォバ…様、なの?じゃなくて…なのですか……?」

フォバ「うむ。正真正銘妾こそが、数百年お主らの一族が守り、魔力を捧げ続けてきた、今のお主が毛ほども信仰しておらぬフォバその者じゃよ」

ユーリ「うっ…も、申し訳ございません……!」


バッチリバレてるぅ……!


フォバ「不敬…と言いたいところじゃが、歪んだ掟の犠牲者と考えれば納得もいくゆえ許してやろう」

ユーリ「あ、ありがとうございます……!」

ヤクモ「歪んだ掟…だと?」


どうにか許してくれたフォバ…様の言葉に、里長が反応した。

まだ信じれてない感じが滲み出ているけど、フォバ様は気にせず教えてくれた。


フォバ「うむ。お主らの一族は代々妾に魔力を捧げてくれた。それ自体は感謝しているのじゃが……ヤクモよ。主らの血筋が御子を回しだしてから何年経ったか知っておるか?」

ヤクモ「…およそ200年と聞いている」

フォバ「正解じゃ。ハッキリ言って、妾は150年前にはすでに顕現できる程度の魔力は蓄えられていた」

ヤクモ「はっ?」

ユーリ「えっ?」


ひゃ、150年前……?

それじゃあウチのご先祖様が御子を務め出して、大体二代目か三代目辺りにはもうこうして来ることが出来たってこと?


ユーリ「そ、それならどうして……?」

フォバ「それはまぁ…単純にその域にまで達せられる者がいなかったからじゃ」

ヤクモ「…どういうことだ?」

フォバ「そのままの意味じゃ。今の今まで妾が憑依できるほどの適正を持つ者がおらんかったのじゃよ」

ヤクモ「ならばその娘は適正があると?500年もの間フォバ様の復活を願い続けた我々ではなく、そんな弱小貴族の娘の方がふさわしかったと?」


ムッ……弱小貴族だなんて……。

確かに話に聞いた感じだと領地としても権威としてもそこまでの力は無かったようだけど、それでも村のみんなから愛されていたのはショコラちゃんやパメラちゃんの話からも知ってる。


小さくはあっても弱いなんてことはない。

ケンカ別れみたいになってしまったマーガレットの態度からも、なんだかんだ好きだったことは分かる……。


少なくとも武力だけのこんな偏屈集団よりもよっぽど立派なお父様とお母様だと思う。

会ったことはないけど、そう言い切れる。


そんな人たちを弱小だなんて言えるような器じゃないでしょ……!


私がそれを口にしようとしたところで…


フォバ「そう言っておるじゃろうが。今の状況を見ても火を見るよりも明らかだと思うが?まさか里長ともあろうものがそんなことも理解できぬと?」

ヤクモ「っ……!」


またさっきの圧を飛ばしたのか、里長が…いや、他にも数人体が硬直してる……?


もしかして…同じように反感を抱いた人だけを的確に……?

威圧ってそんな器用なことも出来るの……?


フォバ「やれやれ…崇める神も見定められぬ愚か者共が……掟だけ守っていたところで何の意味もないと証明しているようなものじゃよ」

ヤクモ「ぐっ……!」


あっ、ぐうの音。


フォバ「さて。大まかな理由としては今言った通りなんじゃが、もう一つ大きな理由があっての」

ユーリ「えっ…そ、それは……?」

フォバ「さっきヤクモが、主らの血筋が御子を務めるようになってから200年ほどじゃと答えておったじゃろ?」

ユーリ「は、はい……」

フォバ「近しい者では魔力も似る。故に妾に捧げられる魔力も似たようなものばかりになる。ということは?」

ユーリ「ということは……」


同じような魔力ばかりもらってると…………あっ。


ユーリ「飽きちゃう!」

エスト・シャール「「んふっ…!」」

フォバ「んんっ!?ま、まままぁ方向性としては間違ってはいないのぅ!うむ!じゃ、じゃがもちろん捧げられる側としてキチンと感謝はしておるし?何より妾は神ぞ?飽きたなどとそんな(わらべ)のような理由ではないのじゃよ!」

ユーリ「ハッ!そ、そうですよね…申し訳ございません……」

フォバ「う、うむ!分かればよろしい!」


その割にはだいぶ焦っていたような……?

それにエストとシャールも笑いを必死に堪えてるし……。


いやでも確かに神様がそんな子どもじみた理由なわけないか。

きっと答えが身も蓋もなかったから驚いたんだ。

ピンと来たものをそのまんまはさすがにダメだったね。反省反省。


フォバ「こほん……ま、まぁ言った通り方向性は悪くない……正確に言えば、似た魔力ばかりじゃと魔力の回復量が減ってしまうのじゃよ」

ユーリ「えっ!?そ、そうなんですか!?」

フォバ「うむ。例えるなら食事じゃな。同じものばかりを食べていては太ってしまう。体を壊してしまうといった、栄養失調に陥ってしまう。それと似たようなものじゃ」

ユーリ「な、なるほど……?」


理解はした…けど……魔力ってそういうものなんだ……。


フォバ「そもそもの話、一つの血筋で神の魔力を補おうというのは烏滸(おこ)がましいと思わぬか?良い魔力を厳選するのはいいが、それならキチンと御子の子孫の中で、ではなくて里全体から探して欲しいものじゃ」

おじいさん「う、うぅむ…耳が痛いのぅ……」

フォバ「しっかり痛めよ。先祖から続く洗脳じみたものの影響とはいえ、気付き変える機会はいくらでもあったのじゃから…む?」

ユーリ「?」

フォバ「この体の持ち主たちが目覚めそうじゃの」

ユーリ「!」


マーガレットとコウスケが?


ユーリ「あっ…ということは、2人が起きたらフォバ様はもう帰っちゃうってことですか?」

フォバ「まぁそうなるの。元々の適正が他の者より優れている程度じゃからな。いくら魔力を底上げしたとしても、意識を共にすることはできぬ。こうして装備を整えてかつ、眠っている間でないと妾はこの体には乗り移れぬようじゃ」

ユーリ「そうなんですね……」

おじいさん「むぅ……まだまだ話を伺いたかったのじゃが……まぁ目的は達しておるし、次の機会を待たせていただこうかのぅ……」


私ももうちょっとお話をしたいのだけど…でもマーガレットたちともお話したいし……うーん……。


と悩んでいるところにフォバ様が待ったをかけた。


フォバ「いや、まだ方法はあるぞ」

おじいさん「む?」

ユーリ「そうなんですか?」

フォバ「うむ。お主ら、そもそもの作戦ではどういう手筈だったか覚えておるか?」

エスト「えっ?それは……」

シャール「あっそうか」


シャールはもう思い当たったみたいだけど、私もさっきのマーガレットとの会話を思い出す。


そこで言ってたのは確か…


お爺様「ユーリに神装具を着けて、フォバ様を呼ぶ……」

フォバ「左様」


そうだ。

そもそも御子である私に降りてもらってどうにかするって作戦だって言ってた。


その時は全く信じれなかったけど、こうして目の前に現れては信じるしかないわけで。


フォバ「それで…あー……ユーリよ」

ユーリ「は、はい……?」


フォバ様が改まった様子でこっちを向いた。


な、なんだろう……?


フォバ「お主が妾を毛嫌いしておるのは重々承知の上で頼む。お主を使わせてはもらえぬか?」

ユーリ「!?」

お爺様「フォ、フォバ様……!」


なんと、フォバ様が私に向かって頭を下げた。


ヤクモ「…神が人間一人に頭を下げるなど……」

フォバ「当然じゃろう。今の妾ではまだ単独で顕現など出来ぬ。誰かの体を依代にしなければこちらに来れぬのじゃから、その貸出し人にはしっかり筋を通す。神だの人だのという問題ではない。もっと根本的な、ただの礼儀じゃよ」

ユーリ「フォバ様……」


この数分間でフォバ様への考えが大きく変わった。


最初はロクでもない人たちが崇拝するロクでもない神様だと思っていた。

それが蓋を開けてみれば、人間への配慮を忘れず、しっかり話の筋も通す。


少なくとも里の人たちよりは信用できる人…いや、神様だと思ってる。


何より、コウスケたちがこの作戦を進めたということは、2人もフォバのことを信用しているということだと思う。


あの2人が…というか、メイカさんや他のみんなもだけど、多分私の身の安全を案じてくれていると思うから、そんなみんなが許したのなら大丈夫なんじゃないかなと。


他の作戦が無かっただけって可能性もあるけど……まぁとにかく一定以上の信頼はあると思う。


だから…うん……。


ユーリ「わかりました。フォバ様にこの身を預けます」

フォバ「…そうか。ありがとう♪」


私の答えに嬉しそうに微笑むフォバ様。

マーガレットの顔なので当然可愛いのだが…その中に神々しさがあるのはさすがは神様といったところだろうか。


フォバ「では妾は一度抜ける。そしてこの体の持ち主がどちらかでも目覚めたら神装具を身に(まと)ってくれ。そうすれば今度はユーリの体を借りさせてもらう」

ユーリ「私も眠った方がいいですか?」

フォバ「いや、ユーリならば大丈夫じゃろう。こうして会話したことで妾の存在を強く認識できておるしの。まったく信じていないものにはどれだけ適正が高かろうと乗り移れぬゆえ、そこをバッチリ越えた今のユーリならばわざわざ魔力を空にせずとも安定して入ることができるはずじゃ」

ユーリ「あっ、そうなんですね」

フォバ「うむ。じゃから…あー……」

ユーリ「?」

フォバ「神装具を着けたらじっとしておるだけで良いからな?奇妙な踊りなどはいらぬからな?」

ユーリ「あっはい。それは大丈夫です」


話の内容的に踊りの部分は関係なさそうだったから。

まぁこうして本人から直接言ってもらえたのはかなり安心できるけど。


フォバ「あとこの下着は無理に着けなくとも良いぞ?ブラはともかく、パンツは頭に被ってしまったわけじゃし……さすがに嫌じゃろ?」

ユーリ「えっ?いえ、特には……」

フォバ「えっ」

お爺様「えっ」

ユーリ「えっ?」


フォバ様とお爺様だけじゃなく、よく見たら里の人たちも目を丸くして…あっ、里長まで驚いた顔をしてる。

レアだなぁ。


ユーリ「少し髪とか匂いが付くくらいだろうし、それにマーガレットの髪はいつも良い匂いしてますから別に問題ないかなって。あっ、でも汗とかで蒸れてたらちょっと……やっぱり下着は乾いてた方がいいので」

フォバ「そ、そうか……まぁ…本人がそう言うのなら好きにするといいが……う、う〜む……仲が良すぎるとかそういう次元を超えてる気がするのぅ……」

シャール「ん、愛だね」

エスト「好きな人の匂い付いてるとか最高だよね♪」

お爺様「えぇ……?そうなの……?外の若者分からん……」


お爺様結構外にいたんじゃ?

そこまで調査してなかったのかな?


フォバ「ま、まぁともかく、そろそろ抜けるでな。手筈通りに頼むぞ」

ユーリ「はい」


そう言って座り込むフォバ様。

その体を覆っていたオーラは徐々に薄くなり消えた…と同時にマーガレットの体から力が抜けてカクンと前のめりになったので慌てて支えた。


そして次の瞬間には、その体からは見慣れたいつものオーラが出てきた。


コウスケ「ん……ユーリさん……?」

ユーリ「っ…!」

コウスケ「んんっ…!?」


名前を呼ばれた私は、体の内から喜びの感情が溢れてくるのを感じて、思わず抱きしめた。


コウスケ「ユ、ユーリさ……」

ユーリ「ごめんね……コウスケも…マーガレットも……心配かけて本当にごめん……」

コウスケ「ユーリさん……?も、もしかして……」

ユーリ「うん。フォバ様から全部聞いたよ。だから、もう大丈夫。助けに来てくれてありがとう♪」

コウスケ「!〜〜〜〜〜っユーリさん!」


ぎゅーっと抱きしめ返してくれるコウスケ。

それでまた嬉しくなって、私ももっと強く抱きしめる。

ついでに頬擦りもしちゃう。


そしたら頭を撫でてくれるものだから、もっともっと嬉しくなってしまう。


あぁ…これこれ……♪

やっぱりコウスケに頭を撫でられるのは気持ちが良いなぁ……♪


お爺様「あ、あー……こほん……」


なんて嬉しみの絶頂にいる私たちに、お爺様が遠慮がちに咳払いをした。


お爺様「感動の再会なのは分かっておるから言いづらいのじゃが……フォバ様のことを忘れてはおらんよな……?」

ユーリ「あっ」


そうだった。

コウスケに甘えてる場合じゃなかったんだ。


コウスケ「フォバ?」

ユーリ「うん。実はかくかくしかじかで……」

コウスケ「はーん、なーほど。それならあんまり待たせるのも悪いですね」


簡単に説明するとさすがの理解力ですぐに神装具を私に渡してくれた。


コウスケ「え〜っと……パンツは……」

ユーリ「濡れてる?」

コウスケ「いえ。ちょっ…と生暖かいだけです」

ユーリ「そっか。じゃあ大丈夫」

コウスケ「被ってた俺が言うのもアレですけど、正気ですか?」

ユーリ「?」

コウスケ「あっはい。どうぞ」


そうして受け取ったパンツは確かにちょっと生暖かいけど、マーガレットの体が身につけてたものなら別に嫌気はない。


というわけでさっそく…


コウスケ「あぁぁぁぁいっ!?」

ユーリ「わぁぁなになになに!?」


着替えようと着物を脱いだらコウスケが全力で腰に抱きついてきた。


コウスケ「あにここで着替えようとしとるんすか!?」

ユーリ「えぇっ!?だ、だって急がないとだし……」

コウスケ「ダメダメダメダメ!ここには何人の(おのこ)がいると思ってるんですか!」

ユーリ「えっ?でもこっちにいる間ずっと監視されてたし……」

コウスケ「あん?」

お爺様「なんじゃと?」

エスト「えっ?」

シャール「うわぁ……」


コウスケたちの里の人たちを見る姿から強い圧が……!

特にお爺様からとんでもない殺気が……!


コウスケ「まぁそれは一旦置いときましょう。あとで必ず拾って全力で振りかぶってやるので、とにかく今はさっさとフォバを呼び戻しましょ。さっ、そういうわけなのでそこの戸の外行きましょうね」

ユーリ「えっ」

コウスケ「いいから、早く」

ユーリ「は、はい……」


多分私はまた何か間違えたのだろう。

お説教モードなコウスケのこの感じも懐かしいなぁ……。

出来れば受けたくなかったけど……。


そんなことを考えながら、私はコウスケと一緒に入口の戸を出てから着替え、全て着け終えてから再び部屋の中に戻った。


そしてすぐに不思議な感覚に襲われ、頭の中にフォバ様の声が聞こえてきた。


フォバ(うむ、上出来じゃ。やろうと思えばあの二人のように意識を交代させることもできるから、何か言いたいことややりたいことがあれば遠慮なくいうがよい)

ユーリ(はい)

フォバ(では少し借りるぞ)


そう言うと、私の体が動く感覚が伝わる。

自分で動かしていないのにこうして感覚が伝わってくるのはなんとも不思議だ。

本音を言えば若干怖い。


これがコウスケとマーガレットがいつも感じてる感覚かぁ……。


友だちと同じ体験ができたことを少し喜んでいると、フォバ様がコウスケと挨拶を交わしていた。


フォバ「大義であったぞ、コウスケ、マーガレット」

コウスケ「そりゃどーも。いやマジで来てくれて助かったよ」

フォバ「ははは♪妾も上手くいってホッとしたわい。さて、それではまた話を再会…するまえに……」


と、そこでコウスケとフォバ様が揃って里の人たちの方を向いた。


コウスケ「先にちょっとお説教じゃな〜い?」

フォバ「その前に取り調べじゃな。説教はそれを聞いた後にまとめて、じゃ」

コウスケ「わぁ〜フォバ様合理的〜♪」

フォバ「そうじゃろ〜♪」

里の人たち『ガタガタガタガタ……!』


う〜ん……いつもの感じだなぁ♪

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