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402.魔力糸作品…の初回納品

さて。

作戦と関係ないところで絆にひび入れて即修復してもらった朝を過ごしたあと、俺たちは早速鍛冶ギルドで昨夜の案を試そうと意気込むリオを応援する。


シエル「で、結局何作るの?」

リオ「今日は小物をいろいろ作ってみようかなって」

ショコラ「小物?」

チェルシー「指輪とかネックレスとか?」

リオ「そうそう」

モニカ「昨日は腰に巻く大きいのを作ってたから、今日はよろいとかかぶととか作ると思ってた」

リオ「それはまた明日以降かな。事前に準備しないといけないことも多いし。今日のところはローズさんの報告を待ちつつのんびりいろいろ作っていこうかなって思ってさ」

モニカ「そうなんだ~」

リオ「?なんか嬉しそうだな?良いことあったのか?」


ニコニコしながらのほほんと答えたモニカちゃんを不思議に思ったリオがそう尋ねた。


モニカ「えへへ♪だってリオちゃんが元気そうだから♪」

リオ「え?そりゃまぁしっかり寝たしご飯も食べてるし……」

モニカ「ううん。昨日まではなんていうか…追い詰められてる感じ?がしたから」

リオ「うぇっ…!?」


コウスケ・マグ((バッチリ気付かれてる……))


まぁそりゃそうだよなとしか……。

むしろ何故リオが誤魔化せていると思えるのかが不思議だ。


パメラ「あぁ~ね。しかも昨日みんなで話してから見るからに焦ってたし」

シエル「そうねぇ……3日しかないって言われたらそりゃあ焦るでしょうけど、なんでそれを誤魔化せると思ってたのかしらねぇ……?」

リオ「そ、そんな分かりやすかったか……?」

パメラ・シエル「「うん」」

チェルシー「さすがに分かるよ~」

サフィール「リオさんは分かりやすいですし……」

ショコラ「ずっとそわそわしてたもんね!」

モニカ「メリーちゃんも心配してたよ?」

リオ「み、みんなにバレてる……!?」

コウスケ「まぁ……」

マグ(でしょうねぇ……)


いやほんと、何をもって誤魔化せると踏んだんだ?


モニカ「でも今日のリオちゃんはそんな焦ってるように見えないから、よかった~って思って♪」

リオ「そ、そうか……」

パメラ「でもどうして急にそんな落ち着いたの?」

リオ「えぁ…それは……」


夜中に俺に弱音を聞いてもらったから…なんて言うのは恥ずかしいリオはパメラちゃんの質問になんて答えるべきか悩みながら視線を逸らした。


が、そこは分かりやすいリオ。

逸らした視線の行き先が俺だったため秒で感づかれた。


パメラ「ほ~う?ほほ~う♪」

リオ「な、なんだよぉ?」

パメラ「べっつに~?」

リオ「うぅ……」


完全に気が付かれていることを悟ったリオが耳まで真っ赤にして俯いた…ところで、パメラちゃんも気を使って言わなかった(からかうネタにしようとしていただけかもしれないが…)ことを大声で言う元気少女がひとり。


ショコラ「あっ、そっか!マグのおかげなんだね!」

リオ「えっ、あっ、えっと……」

パメラ「も~、ショコラ~」

サフィール「あはは…ショコラさんには隠し事は難しいでしょうね」

ショコラ「?」

リオ「う~……」


きょとんとしているショコラちゃんと、みんなに俺と何かあったこともバレて恥ずかしがるリオ。


しかしまぁ……


コウスケ(みんなの反応を見るに、これももう気付かれてたんだろうなぁ……)

マグ(まぁこういうときは大抵コウスケさんのおかげですからねぇ)


どうやら実績を作りすぎたみたいだ。

許せ、リオ。


マグ(でもコウスケさんに頼るのは他の子も同じですから、そんな気にすることでもないと思いますけどねぇ)


だそうだ。

元気出せ、リオ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さてさて、なんのかんのとあったがとにかく作業の始まりだ。

というわけでみんなでリオの応援をしていたわけだが、カウンセリングの効果かどうか、リオは昨日までよりも遥かに快調に作業を進めていた。


やはり金槌はまだまだ全然だが、それでも緊張しすぎて落としそうという心配をしなくていいくらいには体の震えが治まっている。

作るものひとつでここまで心持ちが変わるとはちょっと驚きだ。


驚きと言えば、作業中にちょいちょいこちらを見てくること。

ちゃんとサポートしてくれてるかの確認…とは違う。

明らかに見る回数が多い。

それだけの理由なら普段こんなに見てこない。


となると…昨夜のあれか。

本当に俺のためにアクセサリーを作ってくれているのか。

なんて良い子でしょう……。


これで勘違いだったら非常に恥ずかしいが、多分この予想で合ってると思う。

合ってるといいなぁ。


そんなリオを手伝うこと数時間。

そろそろお昼休憩の提案を切り出そうかと思い始めたところで来客があった。


ローズ「みんなお・待・た・せ~♡」

コウスケ・マグ「(ローズさん!)」


魔力糸の加工どころか、魔石から糸にする工程すら請け負ってくれた服職人のローズさんだ。


ローズ「魔力糸を使った最初の作品が出来たからお届けに上がったわよ~ん♡」

シエル「えっ!ほんとですか!?」

ショコラ・パメラ・チェルシー「「「見たい見たい!」」」

ローズ「うふふ、もちろん♡リオちゃんは今平気?」

リオ「はい、ちょうど一区切りついたところです」

ローズ「よかった♡それじゃあ早速お披露目よ~ん♡」


そう言ってローズさんは魔石を持っていく時にも使っていたハート柄の風呂敷を地面に置く。

機能の終わりに届けられた魔石たちによって再び小さな山が形成されているのと、単純にサイズがあまり大きくないため。

そしてみんなが見やすいように地面に広げてくれたのだ。


お気遣いありがとうございます。


そうしてローズさんが風呂敷を広げて取り出し掲げたものは…


ローズ「じゃん!」

みんな『(おぉぉぉぉ?)』


徐々に勢いを失う歓声。

それを浴びたローズさんの魔力糸作品第一号は一組のピンクの下着だった。


シエル「ブラジャーとパンツ…ですか?」

ローズ「そうよ♡これは最初にもらった糸だけで作ったもの♡ユーリちゃんのお胸は大きいから結構ギリギリだったけどなんとか間に合ったわ♡」

リオ「な、なるほど……」

シエル「さすがユーリさん……」

モニカ「すごい……頭がすっぽり入りそうだよ……!」

ショコラ「おっきいねぇ……!」

パメラ「……勝てない……!」

チェルシー「これに勝てる人の方が少ないよ……」


素直に感心する子に大きさにびっくりする子。

謎の勝負になんか負けてる子と様々な反応があるが、ファーストインパクトでみんなが抱いた疑問をサフィールちゃんが口にした。


サフィール「でも、てっきりお洋服を作るのだとばかり思ってました」

シエル「アタシも。けど時間で考えたら納得かも。あの量の魔石を砕くだけでも時間がかかるでしょうに、それを水にして糸にして布にして服にしてって、やること多すぎるもん」

リオ「あぁ~…そう言われれば確かに……」

サフィール「1日で終わるかも怪しいかもですね……」

コウスケ「糸からでも作れるったって、それももちろん簡単なことじゃないだろうしねぇ……」

ローズ「うふふ♡まぁそんなところよ♡でも安心して。みんな糸にはもうしちゃって、あとは乾くのを待つだけだから♡」

リオ「えっ!?」

ショコラ「はやーい!」

ローズ「うふふ♡頑張っちゃった♡」


そう言ってピースを決めるローズさんと、その真似をしてピースサインを作りピースの先っちょ同士を充てて遊び始めるショコラちゃん。


相変わらずショコラちゃんはひと言でサクッと終わらせるが、俺たちはちゃんと驚いている。


コウスケ「昨日の朝に渡して……」

シエル「自分のお店に戻ってそれを砕いて……」

モニカ「お水が出来るのを待ってから糸を入れて……」

チェルシー「染み渡るまで待ってから取り出して乾かしてるのが、今の進捗と……」

パメラ「早すぎ!」

サフィール「あの量の魔石をもう加工し終えたんですか……?」

ローズ「えぇ♡手の空いてる子にも手伝ってもらったからサクサク行けたわよ♡」

リオ「あっ、なるほど……っていやいや……」


手が多ければそれだけ早くなるのは当然ではあるが、だからで済ませるにはツッコミどころがまだある。


コウスケ「お店の他の方々も魔石を砕いたんですか?」

ローズ「それがねぇ……残念だけど砕けるのはワタシだけみたいで……「店長じゃないから出来ません!」とも言われちゃったのよぉ……」

チェルシー「それは……」

シエル「そうでしょうねぇ……」


同じ硬さの者同士をぶつければ簡単に割れる、なんて理論自体は聞いたことあるが、だからと言って素のフィジカルが関係ないわけでは無い。

ローズさんのお店の従業員さんたちは確か普通の女性店員さんたちだったはずで、誰も砕けなかったということはまぁ…そういうことだろう。


ローズ「んも~……ウチの子たちが情けなくてごめんなさいね?」

リオ「いえいえいえいえそんなそんなそんなそんな……」

サフィール「むしろチャレンジしてくれただけでありがたいといいますか……」

パメラ「私たちも壊せないもんねぇ……」

ローズ「あなたたちはまだ子どもですもの。それに砕けた破片は危ないからね」

チェルシー「それはそうですけどぉ……」

モニカ「それだけじゃないようなぁ……」


言いたいことは多々あるが、なんて言えば理解してくれるのかを悩む子どもたち。

多分答えは出ないと思うので、俺は話を下着に戻す。


コウスケ「まぁそれはともかく、可愛い下着ですね」

ローズ「でしょ?糸が足りなかったから装飾はちょっと控えめになっちゃったけど、その分繊維の美しさが際立って良いと思わない?」

シエル「あっ、はい!それはもう!」

モニカ「でも渡した糸って白かったような……魔力糸も色を変えられるんですね」

ローズ「えぇ♡魔力水を吸わせてあるとはいえ、結局は魔力がこもっただけの普通の糸と同じだからね♡染料くらいなら大丈夫なの♡」

パメラ「ほぇ~」


コウスケ(思ったより幅が効くんだなぁ)

マグ(色を変えられるのはいいですねぇ)


確かにカラフルにできるのは嬉しいな。

糸の色だけだとどうしても制限がかかりそうだし。


ローズ「とまぁこんな感じね♡ここからどんどこ作っていくわよー!」

サフィール「あっ、そういえば…昨夜のことをお話した方が良いのでは?」

コウスケ「昨夜。…あぁ!」


リオのこと…ではなく、おじいさんたちとの会議の内容だ。


ローズ「あら、なぁに?何か大事なことが決まったの?」

コウスケ「ローズさん、実は……」


俺は昨晩の話し合いで3日後には出発することになった事を伝えた。


ローズ「3日後!?そんなのすぐじゃないの!」

コウスケ「はい。その日が襲撃に都合が良い祭日にギリギリ間に合う日だそうで……」

ローズ「なるほど……ならこうしちゃいられないわ!ワタシは戻ってまた制作に取り掛かるわね!はい、マーガレットちゃん!」

コウスケ「あっ、ありがとうございます」


俺はローズさんから魔力糸で編まれたピンクの下着上下セットを受け取った。


ローズ「それじゃあまた出来たら届けに来るわ!もしかしたら誰かに持たせるかもしれないけど……その時はよろしくね!」

コウスケ「あっはい!」

ローズ「じゃあね!そっちも無理しない程度に頑張るのよー!」

コウスケ「はい、お気を付けてー……」


そう言ってローズさんはとてつもない速さでお店へ戻っていった。


コウスケ「行っちゃった……」

シエル「服も時間がかかるもの。仕方ないわ」

チェルシー「でもあの様子ならあと2着3着は持ってきてくれそうだね。それよりどうする?」

リオ「?どうって……」


ぐぅ~……


リオが聞き返そうとしたタイミングで誰かの腹の虫が鳴った。


ショコラ「えへへ…なっちゃった……♪」

チェルシー「もうお昼の時間だもん。でもローズさんがあんなに張り切っちゃてるから……」

サフィール「私たちは食べてしまうのは少し気が引けますね……」

パメラ「でもお腹ペコペコだとチカラが出ないよ~?」

リオ「う~ん……」


ぐぅ~……


どうしようか悩むリオのお腹がちょうど鳴った。


リオ「……メシにするか……」

チェルシー「は~い♪」

シエル「ならどうする?何か買ってきてここで食べちゃうとかなら時間も節約できそうだけど」

ショコラ「でもフルールさんがご飯作って待ってるかもしれないよ?」

モニカ「いつも作って待っててくれるもんね」

シエル「あっ、そうね……」

コウスケ「まぁとりあえず家に戻ろっか。下着(これ)も保管しときたいし」

パメラ「そっか。ランクが高いからマジックバッグに入らないんだっけ」

コウスケ「そうそう」

リオ「そうだな。無くすわけにはいかないしな」


というわけで家に帰ってお昼ご飯といういつものコースに決まった。


ショコラ「じゃあ早く帰ろー!」

パメラ・チェルシー「「おー!」」

シエル「って…下着(それ)そのまま持ってくつもりじゃないでしょうね?」

コウスケ「さすがにそれは……あっでも入れ物が……」


みんなマジックバッグは持っているが、普通のバッグやローズさんみたいに風呂敷を持っているわけでは無い。


あかん。

このままでは下着を抱えて街の中を歩くことになる。


リオ「あーじゃあなんか取ってくるよ」

コウスケ「あっ、ありがとう。助かる~」


が、ここは鍛冶ギルド。

武器防具、その他こまごまとしたものも販売もしている場所。

ちゃんとそういうものを入れるための袋があるらしい。

おかげで俺の体裁は保たれた。


最悪自分の服の中に隠して持っていくという、職務質問されたら言い逃れできそうにない不審者になるアイデアをやらなくて済んだのもデカい。


そんなわけでリオが持ってきてくれた風呂敷に下着を包み、俺たちは何事もなく家に帰れたのだった。


なお、風呂敷を首に巻いて持って帰っていたらオールドスタイルの泥棒じゃね?と思ったのは家に帰ってからだった。


よかった。

ちょっと思い浮かんだけどやめといて。

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