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400.質問の意図…と朴念仁

〔マグ〕


コウスケさんの案はこう。


鍛治は職人の魂が込められると親方さんは言っていた。

それはリオもわかっている。


しかしリオとユーリさんは確かに友だちと言えるけど、それはあくまで友だち止まり。

恋人や家族って感じではない、と言われ、リオもそれには納得した。


だからコウスケさんは考えた。

じゃあもっと特別な感情を持った相手のことを想って作ればいいんじゃね?と。


要は、今のユーリさんに作ろうと思うと利便性や性能が重視されて想いは二の次三の次となっているのではないかと。

それならいっそ別の大事な相手のことを思い浮かべたらイメージも湧きやすいのではないかということらしい。


あと3日しかないこのタイミングで別の人のために作るなんてかなり大きな賭けになるけど……でも、一理あると思う。


それにここで決められれば最高の素材が手に入る。

そしてそれを扱うのは最高の服職人であるローズさん……。


つまりこの峠さえ越えられれば、成功は決まったも同然と言っていいのだ。


だからコウスケさんは可能性が高いものとしてこれを提案したんだ。


相変わらず突拍子のない提案の仕方だったけど、やっぱりちゃんと考えがあってのことだった。

う〜ん、さすが。


リオ「な、なるほどな……う〜ん…確かに試す価値はあると思うけど……でもやっぱり残り少ない準備期間を削ってやるのはかなり勇気がいるな……」

コウスケ「そうだね。だから提案するだけ。実際にやるのはリオだからね。でもこれならリオも息抜きになったりしないかな〜って思ってさ」

リオ「息抜き?」

コウスケ「うん」

マグ(同じ鍛治作業ですし、納得するものを作るっていうところは変わらないですよ?)

コウスケ「まぁ皆まで言うな」

リオ「いや何も言ってないけど……」


私への返事と混ざっちゃったかな?

でもそこまで会話は破綻してないし大丈夫でしょ。

割といつも通りだし。


コウスケ「息抜きって言ったのは、作りたいものが作れるからだよ。さっきも言ったように、今ユーリさんに渡すものを考えたら他にも諸々考えなきゃいけないことがあるでしょ?でもその別の誰かにはそんな制限は無いわけだよ。魔石を使いさえすればいいんだからね」

リオ「あぁそういうことか。確かに装備のバランスとか着けやすさとかはあまり考慮しなくてもよくなるからな。それならイメージしやすくなるってのもわかる話だ」

コウスケ「でしょ?それにその作業自体が好きでも、趣味と仕事じゃ心持ちも変わるっていうか…なんとなく息苦しい感じがあったりしない?あっもちろん、どっちにしたって本気で取り組んでるっていうのはわかってるつもりだよ?」

リオ「あぁ大丈夫、わかるよ。良いものを作ろうって気持ちは同じだけど、自分のやりたいように作るのと誰かの要望に答えるために作るのとじゃ違うもんな」

コウスケ「そうそう」

マグ(なるほど〜)


そういうことか〜。

好きなものと依頼されたものじゃ確かに考えることが違ってくるよね。


コウスケ「んでさ。ぶっちゃけ今諦めムードでしょ?このままじゃ親方さんもリオも満足できるようなものは作れないと思うの。だからここらで1発息抜きキメて、それで良いものが出来たら万々歳。そこまでいかなくても、少しでもリフレッシュ出来ればいいんじゃないかなって思うんだけど……どうかな?」


そこまで流れるように喋っていたコウスケさんは、最後の最後で小さく首を傾げて、リオの様子を窺うように尋ねた。


…この人これが天然で出るんだもんなぁ……。

そりゃあいろんな人に可愛がられるよ、まったくもう。


そしてその()()()()()の中にはもちろんリオも入っているわけで…


リオ「…わかったよ。明日はその方向でやってみる」


ここまでの理論的な説明と最後のひと押しによってリオの明日の予定が変わった。


コウスケ「やった♪」


それを聞いたコウスケさんは手を合わせて喜ぶという、またかわいらしいことをしていた。


やっぱりコウスケさんは私よりもかわいいを極めてると思う。


リオ「つっても、誰のこと考えて作るかなぁ……」

コウスケ「あー、自由になったらなったでどうすればいいか悩んじゃうやつだ」

リオ「そうそう。ん〜…やっぱ今だとユーリさんのことを考えちゃうなぁ……これじゃ息抜きにならないよな」

コウスケ「そうだねぇ……いや、それならそれでいいかも?」

リオ「っつーと?」

コウスケ「どうしても考えちゃうってのはそれだけ想いがあるってことでもあるわけだし、今までの実用的な理由のない、純粋にユーリさんに使ってみてほしいものにしてみるってだけでも息抜きにはなると思うよ?」

リオ「あ〜、あくまで自由に作るのが目的だからか」

コウスケ「そうそう」

リオ「ふぅむ…なるほどな」


最初好きな人を聞いてた割には、だいぶ現実的な落とし所に落ちた感じがする。


でも今のリオにはそれくらい気楽な方がいいかも。

ここ数日ずっと頑張りっぱなしだったもんね。


コウスケ「それでも気になるようなら親御さんとか、お世話になってる人…グラズさんとか。そういう人を思い浮かべてお礼の品を〜ってのもアリだよ」

リオ「お礼か〜。確かにグラズさんには世話になってるし、オフクロにも何か送りたい気持ちはあるな……しばらく家に帰ってないのもあるし……」


リオはずっとウチにお泊まりしてるもんね。

たまに顔は店に行ってるみたいだけど……。

少なくとも神装具作りが始まってからは1度も帰ってないから、ちょっと思うところがあるみたい。


リオ「あとお世話になってるといえば……」


そう言ってリオはこっちをチラッと見る。


うんうんそうだね♪

リオが1番お世話になってる人がいるよね♪


コウスケ「ん?私?」

リオ「ま、まぁな。言うまでもないくらいいつも世話になってるし……」


くすくす♪

リオってば照れちゃって♪


リオ「え〜っと……それで、その…参考までに…うん、あくまで参考にするために聞くんだけどさ……マーガレットは何もらったら嬉しいとかあるか……?」


あ〜、なんてわかりやすい♪

かわいいな〜♪


う〜ん…でもコウスケさん物欲が薄いからな〜。


コウスケ「ん〜…なんだろう?リオが作ってくれたものならなんでも嬉しいよ」


やっぱり思いつかないみたい。

コウスケさん、自分の世界にあったものなら結構欲しがることが多いんだけど、それ以外だとあんまり欲しがることがないからなぁ……。


美味しそうな匂いがしたから、とか…似合うと思ったから、みたいな感じで、その場その場で判断してることが多いから、いざ欲しいものって聞かれてもすぐに出てこないみたいなんだよね。


でもコウスケさんも「なんでもいい」は1番困る答えだってわかってるから、ちゃんとその後も言葉を続けた。


コウスケ「でもそうだなぁ……欲を言えば、普段身につけられるようなものとか?」

リオ「身につけられるものか…アクセサリーとかのが良い感じか」

コウスケ「んーまぁそうなるかな?」


マグ(リオが作ってくれたものなら、できる限り毎日でも身につけたいですもんね)

コウスケ(そうそう。でもいざもらったら汚れないように大事に保管しちゃいそうな気もする)

マグ(あ〜、わかるな〜)


リオ「なるほど……うん、わかった」

コウスケ「なぁに?私のために作ってくれるの?」

リオ「そりゃ…あっいや、あくまで参考だから!」

コウスケ「そっか〜、残念♪」

リオ「むぅぅ……」


全然残念そうではないコウスケさんの態度にリオは不満げな表情。


見透かされてるのが恥ずかしいのか、それとも最初から作ってくれると思ってなかったかのように見えてモヤモヤするのか。


…コウスケさんの場合後者の可能性も割とあり得るからなんとも……。

いやでもさすがにここまでわかりやすいんだからちゃんとわかってるはず……。


…わかってますよね……?


コウスケ「まぁそれはともかく、とりあえず何が作りたいかは決まってきたかな?」

リオ「ん…そうだな。さっきよりも全然気持ちが楽になったよ。ありがとなマーガレット」

コウスケ「どういたしまして。でも私は代案を出しただけ。それをどうするか決めたのはリオだよ」

リオ「その道を作ってくれたのはマーガレットだよ。それが無きゃオレは止まって動けなくなってたさ」

コウスケ「そうかなぁ?」

リオ「そうそう。だからこの話はこれで終わり。今話したことを明日早速試すんだから、そろそろ寝ようぜ」

コウスケ「う〜む…逃げきられてしまった……まぁいっか」


リオに話を打ち切られてちょっと不満そうだったけど、リオが元気になったからよし、と気持ちを切り替えるコウスケさん。


コウスケ「じゃあその前にお手洗いに行ってくるね」

リオ「ん?あぁ、わかった……」


と、そこでリオの動きが止まる。


ちなみにリオは暗いところが大の苦手である。


リオ「えっ…と……オ、オレも行こうかな…?」

コウスケ「あっうん、じゃあ一緒に行こうか」


そう言ってさりげなく手を繋いでおトイレへと向かったコウスケさんとリオ。


(主にリオが)寂しくないようにお互いに声を掛け合いながらそれぞれお手洗いを済ませ、ふたりはぎゅっとくっついた状態でオフトンに入って眠りについた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〔コウスケ〕


マグ「って感じなんですけど、どう思います?」

フォバ「いや〜…それは完全にあれじゃろ〜」

マグ「ですよね〜?」

コウスケ「……」


夢の中に入ったら早速マグとフォバにヒソヒソ話をされている俺です。

泣きそうです。


コウスケ「あ、あの〜……?俺何かやっちゃいました……?」

マグ「コウスケさん……やったといえばやりましたし、やらなかったといえばやらなかったです」


どっち……?


フォバ「お主が(わらべ)たちに好かれる理由がなんとなくわかったわい。苦労するのうマーガレット」

マグ「でしょ〜?そこもまた素敵なんですけど〜♪」

フォバ「あっ、くそ。惚気られた」


ここ数日会話を続けた結果、フォバはだいぶ砕けた口調も使うようになってきており、距離が近付いているのを感じる。


もう神の威厳とかはいいのだろうか?


フォバ「まぁよい。しかしマーガレットよ……コウスケはそなたの恋人なのじゃろ?仲の良い友人とはいえ、あんなにベッタリしているところを見ていて不快になったりはしないのか?」

マグ「う〜ん……そりゃまぁ少しは……」

フォバ「少しだけなのか?」

マグ「そうですね。でもそれ以上にみんながコウスケさんと仲良くなってくれてるのが嬉しいんです♪」

フォバ「ふぅむ…友達想いなのじゃな」

マグ「えへへ♪それにまぁみんなならコウスケさんとお付き合いしてもいいかなって思ってますし」

フォバ「急にぶっ込まれた。えっ?いや、恋人じゃよな?」

マグ「はい」

フォバ「なのに他の子供達がコウスケと付き合っても良いと申すのか?」

マグ「はい♪」

フォバ「……」


マグにぶっ込まれたフォバが助けを求めるようにこちらを見る。


まぁ驚くよね。


コウスケ「みんなと今と同じような関係は続けたいけど、恋人だって大事にしたい…じゃあそのふたつもくっつけちゃえばいいんじゃない?って感じなようで……」

フォバ「えぇ……?いや、それは…どうなんじゃ……?」


数百年寝ていても常識はしっかりしているフォバに尋ねられた現代を生きる10歳児のマグは、待ってましたとばかりにその理論を説明し始めた。


マグ「好きなものがあるっていいことじゃないですか?」

フォバ「そうじゃな?」

マグ「それをみんなと共有できたら素敵じゃないですか」

フォバ「まぁ確かに」

マグ「恋だって素敵じゃないですか」

フォバ「まぁの」

マグ「じゃあそのふたつ合わさったら最高じゃないですか?」

フォバ「なんで合わせる方向に行くのかが本当にわからん」

マグ「えー?」


説得失敗。


マグ「でもでも、みんなと同じ人を好きになって、同じ人とくっつきあえたら、みんなでその人のことをいろいろ共有できますし、その人だって多くの人に好かれて幸せだしでとっても良いと思うんですよ!」

フォバ「うぅむ…しかしのぅ……それはあくまでお主の考えじゃろ?他の者がそれを理解できるかどうかはわからぬし、その考えの違いがきっかけで仲違いをするやもしれんぞ?」

マグ「大丈夫です!みんなならわかってくれます!」

フォバ「えぇ…凄い自信……」

マグ「すでに大半落としてるようなものですし!」

フォバ「それは……話を聞いてる限りそうなんじゃろうが……」


えっ、そうなの?


マグ「それにもうすでにメリーは予約済みみたいなものですし!それにみんなもみんなが大好き!なら大丈夫!でしょ?」

フォバ「そうかな…そうかも……」

マグ「むふん!」


あかん。

さすがはチョロ神様のフォバ様だ。

あっさり流されてしまった。


フォバ「ま、まぁ…幸せは人それぞれじゃしな……これ以上は言うまい……それよりも、明日の策が上手くいかなかった場合はどうするつもりなのじゃ?まさか無計画というわけではあるまいな?」

コウスケ「ん?あぁいや…その時は潔く諦めて神装具作りのつもりだよ」

マグ「えっ、そうなんですか!?」

フォバ「おいおい……それではそのリオという女子(おなご)の心に(しこ)りを残してしまうのではないか?」

コウスケ「そう言われてもな……鍛治は素人だからそもそもろくな案も出せないわけだし…だからこんな精神論なわけだし……」


さすがにわからんもんの対策なんてできるわけがないのだ。


コウスケ「でも多分、今のリオなら良いものを作ってくれると思うよ」

マグ「それはたしかにそうですね。寝る前のリオ、すごいリラックスした顔をしていましたから」

フォバ「うぅむ……話しかできぬ(わらわ)には信じることしかできぬからなぁ……そなたたちのその自信を信じて待つかのぅ……」


いささか不安げなフォバにマグとふたりで薄い根拠を掲げ、その日はお開きとなった。


俺ももちろん不安はあるが、明るくなったらリオのあの顔を俺も信じて今は寝るとしよう。


マグ「コウスケさんコウスケさん」

コウスケ「うん?どしたの?」

マグ「明日のリオの作るものなんですけど……」

コウスケ「うん」


マグも不安なのかな?


マグ「指輪とかだったらどうしましょう!しかも薬指にピッタリだったら…キャーッ♪」


全然不安そうじゃなかった……。

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