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396.上質な糸…を手に入れる条件

翌日。

朝ご飯を食べ終えた俺たちは早速魔力水の様子を見に鍛治ギルドへ向かった。


ショコラ「どうどう?」

パメラ「どんな感じどんな感じ?」

リオ「急かすな急かすな」


二人にせっつかれながら水につかないようぴっちり張ってある布を慎重に外すリオ。


リオ「んー……よし。魔石のカケラ無し!」

シエル「てことは?」

リオ「成功だ」

チェルシー・モニカ「「おぉー!」」

ショコラ・パメラ「「やったぁー!」」


リオの言葉に歓声が沸く。


かく言う俺とマグも密かにぶち上がっているが。

隣のサフィールちゃんの手を取って「わーい♪」って一緒に上げてるが。


サフィール「……♪」

マグ(う〜ん、さすがです……)

コウスケ(んね!リオ、知識はバッチリだもんね)

マグ(…そうですね!)


なんか間があった気がするけど…まぁいいか!


シエル「あとはこれに糸を漬けるのよね?」

リオ「あぁ。糸の質も出来に関わるから良質なのがいいんだけど……」

パメラ「これはダメなの?」


そう言って指したのはさっきリオが用意していた糸。


リオ「それも魔力糸用なんだけどな。一応まだ上のランクの糸があって、そっちの方が適してるんだよ」

モニカ「その糸は手に入りにくいの?」

ショコラ「ものすごく高いとか?」

リオ「ん〜、まぁ高いは高い。なんせ高ランクの魔物が落とす素材だからな。そもそもの流通量が少ないんだ」

シエル「それもディッグさんたちに取ってきてもらえないの?」

リオ「ダメだな。一回冒険者ギルドでこの迷宮の魔物図鑑を見せてもらったけど、そこに書いてなかったんだ。だからまだ誰も見つけてないか、そもそもここにいない可能性が高い」

サフィール「そうなんですね……」

コウスケ「いないんじゃどうしようもないかぁ……」


普通なら、ね。(チラッ)


チェルシー「……(こくり)」

コウスケ「……(グッ)」

チェルシー「……(グッ)」


チラッと見たらチェルシーと目が合い頷いてくれたので、俺が親指を立てるとチェルシーも同じように返してくれた。


チェルシー「そうだ。ちょっとお兄ちゃんに聞いてくるよ。もしかしたら持ってるかもしれないし」

リオ「えっ、そうか?う〜ん…さすがに超高級品だからあったとしても買えるとは思えないけど……そうだな。一応聞いてみてくれ」

チェルシー「うん!じゃあ行ってくるねー!」

ショコラ・パメラ「いってらっしゃーい!」

モニカ「転ばないようにね〜」

チェルシー「は〜い♪」


そう元気に返事をしたチェルシーが部屋から出ていく。


これでハルキの迷宮内モンスターのレパートリーに、その高級糸素材を落とすヤツが追加されるだろう。


それか本当に手持ちにあったりするかもしれない。


どちらにしてもすぐには難しいだろうが。


シエル「それじゃあチェルシー待ち?」

リオ「いや。ほっとくとせっかく水に溶け込んだ魔力が逃げちまうから、これはこれで作る。もし手に入るんだったらまた改めて、今度はAランクの魔石だけで作った魔力水に漬け込ませるさ」

モニカ「作業するなら作りたてで新鮮な内にってことだね」

リオ「そういうこと」

シエル「なるほどね〜」


マグ(ん〜、そういうことなら今日ならもとりあえず製作かな?)

コウスケ(だろうね。でも昨日は結局腕輪しか作らなかったし、違うやつに挑戦したいとも言ってたから何か別の物になるんじゃないかな?)

マグ(そうですね)


そう、昨日は腕輪を作るだけで1日が終わってしまったのだ。

といっても、最初に作ったあの力技で魔石を嵌めたやつだけではなく、ちゃんと作業工程の途中で魔石を固定する加工が施されたちゃんとした腕輪も作っていたのだが、腕輪は腕輪なので「今日の成果!」と言って並べた際にちょっと物足りなさを感じてしまった。


リオもそれは感じたようで、今日は別の部位の装備品を作ると言っていたのだ。


そして、話の流れはやはりそういう方向…今日は製作という流れに行った。


パメラ「それで今日は何を作るの?」

リオ「今日は脛当てを作ろうかなって」

ショコラ「すねあて?」

リオ「あぁ。まだ腕輪の出来に納得したわけじゃないけどさ。だからって同じ部位のものばかり作るわけにはいかないだろ?」

サフィール「そうですね。着けようと思えば着けられるでしょうけど……」

シエル「さすがに量が多いと邪魔よね……それにそんなユーリさんの姿、想像するだけでもちょっと…なんとも言えないというか……」

コウスケ「まぁオシャレに決まる気はしないよね」


でもその姿のユーリさんに「俺から見れば…」ってあのセリフ言って腕にシルバー巻くとか勧めてみたい気持ちもある。


でもユーリさんなら言ったら本当に着けそうだ。

やるなら身内だけの時にしよう。


リオ「それに足もとの装備なら腕輪と脛当てのどっちかをユーリさんに着けてもらってる間にもう片方をマーガレットが手伝えるだろ?」

モニカ「そっか!着付けの分担ができるんだね!」

パメラ「ユーリさんと合流して終わりじゃないんだもんね」

リオ「そういうこと」


マグ(どんなに急いでも1箇所ずつ着けてくしかないですもんね)

コウスケ(うん。とにかく早くするなら分担は必要不可欠だろうね)


問題はそれすら許してもらえるか怪しいということなんだが……。

そこはまぁ…どうにかなることを祈ろう……。


不安要素はあるものの、リオが作ることに関しては特に異論は無いので、俺たちは魔力水に糸を漬けるのと並行して脛当て製作の準備をリオの指示のもと進めていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


お昼前。

無事(?)にひとつ作って現在充電中のリオをあやす充電器の俺たちのもとにチェルシーが帰ってきた。


チェルシー「ただいまー!おっ、リオちゃんがマギーちゃんに抱きついてるってことは…もしかして何か出来たの?」

ショコラ「うん!すねあてだって!」

チェルシー「へぇー!」


しれっとショコラちゃんは答えたが、リオが俺に抱きついている=何か作った後というのがチェルシーの中で固定されてしまったようだ。


ほらリオ。

それでいいのかリオ。

何か言い返さないのかリオ。(背中ぽんぽん)


リオ「んぅ〜……♪」


ダメだこりゃ。

夢見心地だ。

そうだね、マグはやわこいもんね。

抱きしめてると気持ちいいよね。


待った、今のなし。

それだとよく抱きしめてる俺がそういうこと考えてたんだってなっちゃう。

さすがに成人男性のそれはアカンやろ。


…今さらか、そうか。

なんなら別に誰にも聞かれてなかったわ。

ひとりで盛り上がっちまったぜ。フッ。


なんてバカなことを考えている横で、他の子たちがチェルシーに成果を尋ねていた。


シエル「それでどうだったの?」

チェルシー「ダメだった。リオちゃんの言う通り元々の数が少ないから、信頼出来るものすごい腕前の人に優先して売ってるんだって」

ショコラ「そんな〜……」

リオ「身内がいるし、信頼の部分はいいんだろうけど……」

コウスケ「さすがにリハビリ卒業したての子どもには売れないかぁ……」

サフィール「それほど貴重な物なのですね……」

モニカ「超高級素材なら、腕の立つ人に渡してすごい物を作ってくれた方がいいもんね……」

シエル「合理的ね……でもお金だけ持ってるコレクターとかに渡るよりはいいかも」

パメラ「素材なんだから使わないとだもんね」

チェルシー「もったいないって気持ちもわかるけどね〜」

コウスケ・マグ「(うんうん)」


俺もよく貴重なアイテムとか持ったままゲームクリアとかしたもんだ。


一応取り出しとこう、保険保険、ってところまではいくんだけどね?

なんか使わなくてもいけそうって思ったらもう使わないよね。

保険は保険のままが一番いいしね。


リオ「でもそれじゃあ期待できないか……いや、まぁ元々手に入るとは思ってなかったからいいけどな……」


ともあれ結果としては入手出来ずじまいということで、口では仕方ないと言いつつも見るからにガッカリした様子のリオ。


それに慌ててチェルシーは更なる情報を開示する。


チェルシー「期待させちゃってごめんね…?でもでも、ララ姉に聞いたらその魔物が迷宮内で見つかったらしいの!」

リオ「えっ!?マジか!」

チェルシー「うん!」


魔物を見つけたという情報でリオのテンションが上がり、それに伴ってチェルシーも喜んだ。


どうやら無事に魔物の設定は出来たようだ。

そんなサクッと出来るもんなのかと少し不安だったが、なんとかなってよかったよかった。


なんて思ったのも束の間。


リオ「ん〜…でもやっぱりオレたちが手に入れられるようになるのはまだまだ先だろうなぁ……」

チェルシー「えぇっ!?な、なんで…?」

リオ「なんでって…今見つかったってことはかなり下の階層か、上の方でも滅多に見つけられないってことだろ?街の外から入ってくる量にプラスして多少は増えるかもしれないけど、それでも焼け石に水っつーか…それにちょっと増えたくらいじゃ大手が独占するのに変わりは無いだろうし」

チェルシー「そ、そっかぁ……」


続くリオの言葉にしゅーんとしてしまった。


リオ「わるいな。わざわざ聞いてきてもらったのに……」

チェルシー「ううん…それならしょうがないよ……」


そう口では言っているものの、やはりしょんぼりから立ち直れていない様子やチェルシー。


う〜む……ハルキならなんとか出来るんじゃね?と視線を送った俺もちょっと申し訳なく思うな……。


とはいえ俺に出来ることなど限られている…ので。


コウスケ「チェルシー、ありがとね。ほら、おいで?」

チェルシー「うぅ…マギーちゃ〜ん……」


とりあえずメンタルケアしましょ。

気にしまくってるなんてハルキが知ったら、そっちも何か問題起きそうだし。

最悪多少強引にでもその魔物を倒しやすいところに配置したりしそうだし……。


やめろよ?

市場価格が暴れて商人涙目になっちゃうよ?

ミュイファさんに何言われるかわかんないよ?


チェルシーをよしよしして…ついでにチェルシーの落ち込みように罪悪感を持ったリオもよしよししてから、俺たちはいつも通りお昼ご飯兼成果報告のために家に戻った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


おじいさん「ほぉ…そんな素材があるのか……」

リオ「はい。それがあればもっと良いものが出来るんですけど、やっぱり手に入りそうになくて……」


昼ご飯を食べに集まったところでさっきの話をするリオ。

そんなリオの話をもぐもぐしながら聞いていたメリーが、口の中のものを飲み込んでから言った。


メリー「……それ、おやかたはもってないの?」

リオ「えっ?」

メリー「……しんようできて、うでのたつひと。ギルドマスターのおやかたならもってるとおもう」

リオ「……そうじゃん!」


メリーの言葉に天啓を得たかの如く反応するリオだが…


コウスケ「えっ、親方さんありなの?」

サフィール「口に出さないのでてっきり頼らない方向でいくのかと……」

モニカ「私も……」

リオ「あれ?」


その案自体は何人かすでに思いついていた。

が、それぞれリオが元から除外しているものだと思って口に出していなかった。


まさかただ気付いていなかっただけとは思わないじゃん?

だって実父だよ?

リオが密かに目標にしてる人でもあるわけだし……。


シエル「それにそんな簡単に使わせてくれるとは思えないし……」

リオ「うぐっ…そ、それは……」


そう、その問題もある。

今回親方さんは手伝ってはくれないが手助けくらいはしてくれる立ち位置だ。


だがさすがにモノがモノなだけに、果たしてホイッと渡してくれるかどうかとても怪しい。


なんなら今忙しそうにしていることのために使っている可能性もある。

というかそれが一番高い気がする。


総じて、やっぱり入手は困難な気がする。


パメラ「そもそも持ってるの?」

リオ「いやいや、それはさすがに持ってるさ。オヤジはこの街1の鍛治職人だし、鍛治ギルドのギルドマスターだし。それに持ってるところをオレも見たことがあるからな」

パメラ「そうなんだ」

ショコラ「武器投げるのに?」

リオ「さ、最近は投げてないから……」

フルール「1回でも投げちゃダメなのよ」

リオ「うぐぅ……」

コウスケ「改善しようという意思はあるからまだいいけどね……」


何度もぶん投げられた経験のある俺としてはそう言うほかない。


う〜ん…でもそれのお詫びはもうもらっちゃってるしなぁ……。

何か他に…ゆすれるようなネタ無いかな……?


いや、脅迫前提はアカンか。

平和にいこう、平和に。


おじいさん「とてもワイルドなお父上を持っているのじゃな……」

リオ「あ、あはは……」


ワイルドで済ませてくれたおじいさんに苦笑いを浮かべ答えるリオ。


ワイルド……うん…まぁ……そうだね……。


サフィール「それで糸のことですけど、一応ダメもとで尋ねてみてはいかがでしょう?」

パメラ「もう別の魔力糸は作ってるんだし、無いならないでそれ使えばいいだけだしさ。とりあえず聞いてみようよ」

リオ「う〜ん…そうだなぁ……確かにこのまま聞かずにいたら気になって集中力が落ちるだろうし…聞くだけ聞いてみるかぁ……」


あんまり気乗りはしない様子のリオだが、確かにリオの性格上、選択肢があるのに自分の感情を優先して選ばないなんてのは心残りになるだろうから、ここは見守りに徹する。


マグ(親方さん、糸くれますかねぇ……?)

コウスケ(ん〜……よっぽど加工が難しいとかじゃなければくれる気がするんだよね)

マグ(あ〜…たしかに……なんだかんだリオのこと認めてますもんね)

コウスケ(そうそう)


リオが腕輪を作ったことを密かに教えたら、めっっっちゃ嬉しそうなのを死ぬ気で押し殺している様子が見れたからな。

あのめんどくさい親バカおじさんなら割と譲ってくれる可能性はある。


でも…


マグ(でも、ただではくれないでしょうねぇ……)

コウスケ(だろうねぇ……)


めんどくさい親バカおじさんだからなぁ……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


というわけで鍛治ギルドに戻ってきた俺たちは、早速親方さんの元へ。

あまり大所帯で押しかけるのも迷惑なので俺とリオだけで向かった。


ガリオン「いいぞ」

リオ「えっ!?い、いいのか!?」


そして話をしてみると、あまりにもあっさり答えが返ってきてリオが思わず聞き返した。

が…


ガリオン「そう言ってんだろ?ただし、条件がある」

コウスケ「はいきた」

マグ(それきた)

コウスケ・マグ「(試練の時間だ)」


あまりにも予想通りだったのでマグと合わせ技をしてしまった。

今とってもハイタッチしたい気分だ。


リオ「し、試練…?」

ガリオン「…まぁ…そういうこった。こっちだって仕事に使うんだ。貴重なもんをそう安安と渡せねぇよ」

リオ「あ、あぁ……それで、内容は?」

ガリオン「簡単なことだ。言うだけならな」

コウスケ・マグ((それ難しいやつぅ……))


俺たちが揃ってげんなりする中、親方さんはその内容を言った。


ガリオン「俺を満足させる物を作れ。それだけだ」

リオ「っ!」


試練の内容に息を呑むリオ。

それに対して大体予想できてた俺たちはまた揃ってこう思った。


コウスケ・マグ((曖昧すぎて逆に大変なやつじゃん……))


と。

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