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395.準備はトントン拍子…冒険者間のちょっとした事

話し合いを終えた俺たちは再びそれぞれの作業へ戻る。


俺たちは引き続き鍛治作業。

チェルシーはハルキに何か良い移動手段がないかの相談&それの確保。

他の子どもたちはリオの応援だ。


そしておじいさんだが、自分の装備のメンテナンスの後、望み薄ではあるがもう一度かつての仲間たちの説得をするらしい。


一度メンテナンスが入ったのは、俺たちの作戦進捗達成の速度が思ったより早かったからだそうだ。


そうだね。

まだ作戦出来て2日目なのに必要なものはあらかた揃ってきてるもんね。


移動手段だってチェルシーが今交渉に行っているのだ。

帰ってくるなり、「確保出来たよ!」とか言われても驚かないよ。


なんて考えていたら…


チェルシー「マギーちゃん!お兄ちゃんが超速いウマ2頭貸してくれるって!」

コウスケ「ほんとにそうなるとは……」


確保出来たことよりも、自分の予想がピッタリ当てはまったことに驚いてしまった。

どちらにしろ驚く運命だったということか……。


チェルシー「?」

コウスケ「いや、自分の予想が当たって驚いただけ。ありがとうチェルシー」

チェルシー「えへ〜♪どういたしまして♪」


とりあえずチェルシーにお礼を言って詳細を聞いた。


どうやら貸してくれるのはヤマトの交易品を見に行った際に見かけたあのウマ。

ヤマトまで一月かかる道のりを10日分以上縮められたあのウマだ。


そしてそいつは馬車無しで行けばもっと早いそう。


そりゃそうか。

荷馬車だって重いし、中の物を傷付けないように運ばなければいけない関係上下手に速度を上げるわけにもいかないからな。


それに荷馬車の後ろってドアとかじゃなくて布で遮られてるだけなのがほとんどだから、速度を出したら荷台のモノが放り出されてしまう恐れもある。


…あれ?

俺そんなヤバいのに乗るんだよな?

しかも今回は全力出してくれた方がありがたい条件なわけで……。


……最悪の場合、おむつの出番があるかもしれんな……。

覚悟だけ決めとこう……。


尊厳を守るために尊厳が壊れかねない選択をしながらチェルシーの頭を撫でる俺。


チェルシー「んふ〜♪」


満足そうな顔をしておられるチェルシー。

う〜ん、癒し。


俺のSAN値が回復したところで作業に戻った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


パメラ「いや〜……」

サフィール「なんと言いますか……」

シエル「話には聞いてたけど…想像以上だったわね……」


仕事終わり。

撤収準備を手伝ってくれたパメラちゃんたちのそんな声が聞こえた。


みんなは午後の間、俺と共にリオのメンタルケアに励んでいたのだが、リオの様子が想像以上だったことで


ショコラ「リオ、すごく大変そうだったね……」

モニカ「うん……すごい辛そうだった……」

チェルシー「マギーちゃん…昨日もこんな感じだったの……?」

コウスケ「まぁ大体は」


そう答えながら、その大変だったリオに抱きつかれつつ肩やら腰やらをマッサージする俺。


リオ「んぅ〜……」

コウスケ「ん、強かった?」

リオ「んぅ(ふるふる)」

コウスケ「良い感じ?」

リオ「ん」

コウスケ「よかった」

リオ「んふ〜……」


マッサージされているリオはときおりこうして声を出すため、その反応を見ながら揉む箇所と力加減を変えていく。


まぁマッサージするならまずは体勢をどうにかしたほうがいいんだかな。

座イスに座ってる俺の胸にリオが顔を埋めるように抱きついているため、彼女は今膝立ち。

あまり体によろしくない体勢なのだ。


寝転がれれば互いに一番楽なのだが、掃除を欠かしていないとはいえさすがに作業場に直はちょっと抵抗がある。

座るくらいならワンチャン…いやぁでもなぁ……。


それにリオもこれで満足そうなのだ。

それにどうせみんなが帰る準備を整えるまでのちょっとの時間だけだし多分大丈夫だろう、というわけでこの判断になったのだ。


ただまぁ…他の子たちがちょっと羨ましそうにこちらをチラチラ見ているので、お風呂か寝る前あたりにでもやってあげないとな。


みんなもリオのメンタルケアを手伝ってくれたわけだし。


モニカ「おまたせ〜♪」

ショコラ「準備できたよー!」

コウスケ「はいよ〜。じゃあリオ、行こっか」

リオ「う〜……」

コウスケ「ほらほら、ご飯とお風呂が待ってるよ?」

リオ「むぅ…わかった……」


まだ甘えたりなさそうなリオをどうにか動かす。

昨日帰るのが遅くなった要因であるメイカさんたちには「先帰っちゃっていいよ〜」と言われているので、遠慮なくお先に帰らせてもらおう。


と、その前に。

俺は部屋の隅にある桶の、埃よけにピチッと被せておいた布の隙間からチラッと中をチェックする。


よしよし…砕いた魔石がしっかり水に溶けていってるな。


ショコラちゃんたちのおかげで魔力糸を扱える職人にも目処が立ったため、協力を取り付けられたらすぐにでも依頼出来るようにと、あらかじめ魔石を砕いて水に入れてあるのだ。


明日には魔石の魔力が染み渡っているはずなので、そこに糸をつけ込んで魔力糸を作る予定だ。


俺は布をまたピッチリ張るように戻して立ち上がる。


コンコンコン


と、そこで扉がノックされた。


パメラ「ん?わっ!?」

シエル「こ、小窓から誰か見てる…!」


俺も確認すると、確かに廊下の明かりが入ってきていたはずの小窓は何かに遮られており、代わりに誰かの目のようなものがこちらの明かりに反射して光っている。


怖っ。


だがその相手を知っている子がこっち側にいた。


チェルシー「あっ、エスト姉だ!」

モニカ「えっ?」

チェルシー「あの目の色と形はきっとそうだよ!」


そう言って扉を開けに行くチェルシー。


それホラーなら死ぬムーブやでチェルシー。


チェルシー「エスト姉〜♪」

エスト「やっほーチェルシー♪」


幸いこの街はホラー要素は極めて低い警備レベルをしているので、小窓から覗いていたのは正真正銘本物のエストさんだった。

そんなエストさんは両手いっぱいに魔石を抱えており、それはいずれもAランクの魔石だった。


魔石を抱えていたから開けずに小窓から覗いていたのか。

いや、だったら最初のノックは?


となるわけだが、エストさんがいるなら当然シャールさんもいる。


シャール「ん、魔石取ってきたよ」


エストさんの後ろからひょっこり顔を出したシャールさんがそう言ってバッグから魔石を取り出した。


それはBランクの魔石。

シャールさんのバッグは最低でもBランク以上の超高級品か……。


というかこれ見た感じノックしたのシャールさんだよね?

なんで後ろに隠れてるん?

エストさんのビタ付け止めなかったってことはわざとってことだよな?


まったく、イタズラ心のあるお茶目なお姉さん方だ。

チェルシーが懐くのもよく分かる。


コウスケ「ありがとうございます。しかし…凄い量ですね……」


とにもかくにも、今日の作業でだいぶ魔石を使ってしまったのもあって補充してくれたのは非常にありがたいため、キチンとお礼を言っておく。


が、それはそれとして改めてエストさんの抱える魔石を見る。


エストさんも細いくびれに反して豊満なモノをお持ちなのだが、それの上に載せるかのようにして抱えた魔石が山のようになっていた。


確か今朝鍛治ギルドの前で話して集めてくれるってなったはずなので…あれからおよそ9時間ほど。

その間にこれだけの量の魔石…それも昨日ディッグさんたちが頑張って取ってきてくれた量を上回る数のAランクの魔石を、彼らより後に迷宮に入ったはずのエストさんたちが、彼らより早く帰ってきて持ってきた……。


よく考えるとかなりとんでもないことだ……。

助っ人を依頼出来たのほんと心強い。


エスト「ふふん♪頑張ったよ!」

シャール「ん。久しぶりに死線を超えた気がする」

コウスケ・マグ「(えっ……)」


死線て……。

とんでもないことをサラリと言うなぁ……。


シャール「それで魔石(これ)はどこに置いとけばいい?」

リオ「あっ、え〜っと、そこの机の上に…」

エスト「は〜い!」


リオの言葉の終わらないうちに、エストさんが軽い足取りで机に向かって行き、そして魔石をゴロゴロっと置いた。


う〜ん…やはり多い……。


改めてそう感じていると、今度はシャールさんが机に向かって行った。

そして自分のマジックバッグを腰から取り外すと、机の上で逆さにして軽くゆすった。


ゴトンッゴトンッゴトッゴトン!


するとバッグの中からBランクの魔石がゴトゴトと音を立てて大量に出てきた。


チェルシー「シャール姉すごーい!」

シャール「ふふふ♪」

エスト「エストもがんばったんだけどー?」

チェルシー「うん!エスト姉もすごい!」

エスト「ふふーん♪」


チェルシーに褒められて胸を張るエストさん。

喜び方がチェルシーのそれとかなり似てる。

もしかしたらチェルシーのあれはエストさんのマネだったりするのかもしれないな。


と、それはともかく、エストさんとシャールさんが持ってきてくれた魔石たちにリオが目を輝かせている。


リオ「凄い……!これだけあればまだまだ作れるぞ!」

シエル「そうね。でも無理しちゃダメよ?」

サフィール「これだけあれば装備としては十分な量を作れそうですね。ですが無理はいけませんよ?」

モニカ「また糸にしたりもできそうだね。でも無理しないでね?」

ショコラ「好きなだけ作れるね!でも無理はダメだからね!」

リオ「なんでみんなしてそんな言うんだ!?」


そらぁあなたのあの姿を見たからですよ。


リオ「大丈夫だって!ちゃんと休憩もこまめに取るからさ!」

チェルシー「う、う〜ん…それは良いことなんだけど……」

パメラ「そうなんだけどそうじゃないっていうか……」

リオ「?」


なんでこの子はこんな本当に何も分からないゼ!って顔が出来るんだろうか……?

記憶処理でも施されているのか……?


エスト「ん?」

シャール「ん…(ピクッ)」


と、そこでエストさんとシャールさんが揃って急に扉の方を見た。


チェルシー「どうしたの?」

シャール「ん、誰か走ってくる」

リオ「え?」

モニカ「ん……あっ、ほんとだ!」

ショコラ「ショコラも聞こえるー!」

サフィール「さすが、みなさん耳がいいですね」


イヌ、ネコ、ウサギの獣人だもんな。

聴力の鋭さは折り紙つきだろう。

そしてその問題の走ってくる相手に心当たりがある子もこの中にいた。


ショコラ「これメイカさんたちだ!」

パメラ「そうなの?」

ショコラ「うん!この走り方聞いたことあるよ!」


コウスケ(走り方のクセとか覚えてるのかショコラちゃん)

マグ(ショコラはそういう直感的なことは鋭いですからね〜。それにメイカさんたちと仲良しなのもあってしっかり覚えているんですよ)

コウスケ(なるほど。好きだから覚えてる、か。ショコラちゃんらしいね)

マグ(でしょ?もちろん私たちの足音もそれぞれ把握してるはずですよ)

コウスケ(すごいなぁ)


ショコラちゃんしれっと凄い特技があったんだなぁ。


マグ(あと匂いも嗅ぎ分けられるはずですよ)

コウスケ(あぁ、なるほど……)


それは…予想がしやすいな……。


なんて納得してる間に…


コンコンコンガチャ!


メイカ「来たわよー!」

ケラン「メイカさん!返事を待たないとダメでしょ!」


メイカさんたちがやってきた。

その手には昨日と同様に魔石が抱えられている。


ディッグ「今日は早めに切り上げてきたぜ」

メイカ「昨日よりちょっと少ないかもだけど、その分ランクの高い相手を…って何これぇ!?」


嬉しそうに魔石を見せ、昨日と同じように机に置こうとそちらに目を向けたメイカさんがそれを見つけて大きな声を上げた。


ケラン「凄い……高ランクの魔石がこんなに……」

ディッグ「これはもしかして、そこにいるネコの嬢ちゃんたちが取ってきたのか……?」

シャール「ん、その通り」

エスト「えへん♪」

メイカ「そ、そんな……なんてこと……!」


高ランクの魔石が積み上がっている光景に唖然とするディッグさんとケランさん。

そして自分たちの成果がこの若い少女二人に抜かされているという事実にショックを受けるメイカさん…


メイカ「悔しいはずなのに……!こんな可愛い子たちに負けたのはむしろ興奮してぐふっ!?」

ディッグ「すまねぇ……死ぬほど疲れてるんだ……」

シャール「そ、そう……」


腹パンで黙らされたメイカさんの代わりに、腹パンしたディッグさんが答えた。

そのあまりにもスムーズな流れにさしものシャールさんも若干引き気味である。


うん、ほんと。

ごめんなさいねウチの人が。


ケラン「しかし本当に凄い量だ……あはは…これじゃあ僕たちが頑張らなくても大丈夫かな?」

リオ「あっ…ケ、ケランさん…!」

ディッグ「おいケラン。子どもちに気ぃ使わせんじゃねぇ」

ケラン「すみません……ちょっと自信を無くしちゃって……」

ディッグ「まぁ気持ちはわかるがなぁ……」


そう言うディッグさんも少し遠い目をしている気がする。


そりゃあこんなん見せられたら自信も無くなるよなぁ……。

悪いことしちゃったかな……。


そう思っていたらエストさんとシャールさんがディッグさんたちに話しかけた。


エスト「エストたちもがんばったのはそうだけど、それだけじゃないの。だから純粋な実力だけじゃないんだよ」

シャール「ん。シャールたちはご主人のお嫁さんだからちょっと贔屓してもらってる」

エスト「いつもは違うんだよ?そういうのはエストたちも嫌いだからさ。でも…」

シャール「ん。ユーリがピンチだって聞いたから」

エスト「使える手は使おうと思って」

ディッグ「…そうか……」


二人の話を聞いたディッグさんは静かにそう言った後、こう続けた。


ディッグ「そういうことならむしろ詫びをしねぇとな。そんな信念があんのに曲げさせちまって、その上こっちは勝手に傷付いて気にさせちまってすまなかった」


そう言って頭を下げるディッグさん。

それに続いてケランさん、メイカさんも頭を下げる。


ケラン「僕も…すみませんでした。こんなことを言っている場合ではないと言うのに……」

メイカ「私もごめんなさい。一人で盛り上がっちゃって……」

ディッグ「お前は本当にマジで覚えとけよそれ。他所様に迷惑かけんなっていつも言ってんだろうが」

メイカ「ほんっとごめんなさい……」


うん。それは猛省してもろて。


エスト「わわわっ!?そ、そんな謝らなくてもいいよー!」

シャール「ん。エストの言う通り。でも謝罪は受け取る。だから頭をあげてほしい」

エスト「そうそう!エストたちはユーリを助ける仲間でしょ?」

ディッグ「…あぁ、そうだな。ありがとよ」

ケラン「ありがとうございます」

メイカ「良い子たちだわ……」


一人感想言ってる人おるんじゃが。

まぁなんにせよ丸く収まったみたいでよかったよかった。


ディッグ「よし!じゃあ俺たちの魔石も置かせてもらうぜ」

ケラン「また明日も取ってくるからじゃんじゃん使っちゃってね」

リオ「はい!ありがとうございます!」

メイカ「ねぇねぇ。あなたたちはこの後予定とかある?もし無いのなら情報共有も兼ねてご飯食べに来ない?」

エスト「えっ、いいの!?」

シャール「ん♪いつもチェルシーが美味しかったって言ってる人の料理、気になる」

チェルシー「そうだよ〜!フルールさんのお料理本当に美味しいんだから♪」

エスト「楽しみー!」

シャール「ん♪」

ディッグ「また勝手に…まぁ大事なことだしな。多めに見てくれるだろ……」

ケラン「一応食材を買い足しておきましょうか……」


なんかあっという間にウチでご飯を食べる流れになっているが、ディッグさんの言う通り必要なことなのでまぁよし。


勝手にまた人数増やしたことでフルールさんからのお小言が怖いがまぁ…今回は俺悪くないしヨシ!


というわけでみんなで寮へと大移動。

案の定フルールさんのお小言が炸裂したが、今回は事が事なのと、あと俺たち子ども組は無罪(チェルシーはグレーな気もするが)なのでスルーしてくれたのもあって大丈夫だった。


その後、なんかナチュラルに一緒に入りに来たエストさんとシャールさんも含めて女性メンバーでお風呂に入り、フルールさんの料理に舌鼓を打ち、なんだかんだ嬉しそうなフルールさんの顔にホッとしたのち、情報共有を始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


コウスケ「って感じ」

フォバ「お主もう本当に男扱いされとらんのな……」

コウスケ「言わんといて……」


その日の夢の中。

今日も待っていたフォバに本日の出来事を話したらちょっと気にしていたことを言われて若干凹んだ。


そしてじゃあおやすみ、という時にフォバが尋ねてきた。


フォバ「のうコウスケよ……」

コウスケ「なんですか?」

フォバ「今(わらわ)の出番…スパッといった気がするんじゃが…気のせいかの……?」

コウスケ「ちょっと何言ってるかわかんないっす」

フォバ「そうか……うぅむぅ……?」


まぁ新しい情報出なかったしな。

是非もなし。

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