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382.誘拐直後…情報提供者

数十分後。

気絶した子たちを寝かせている間に帰ってきたメイカさんたち、そしてユーリさんたちを追ってくれていたらしいココさんを交えて、何が起きたかを細かく説明した。


メイカ「そう……とりあえず、みんなにケガが無くてよかったわ……」

ディッグ「あぁ……よく我慢したな嬢ちゃん」

コウスケ「はい……ですが、あの時不意打ちを決められていればもしかしたら……」

ケラン「無駄な被害を出さないのも大事なことだよ」

フルール「そうよ。それに…ココにも気配を悟らせないような実力者だもの。下手に手を出さない方がいいわ」

コウスケ「ココさんにも……」

マグ(そんなに強い人だったんですか……)


それは仕掛けなくて正解だったかも……。

あのとき感じた圧というか、ちょっとでも変な行動を起こそうとしたら襲われそうって感覚は正しかったんだなぁ……。


メイカ「そのココは、ユーリちゃんを追ってくれたのよね?」

ココ「えぇ。でも外に待機していた仲間に足止めされてる間に逃げられてしまった。ごめんなさい」

ディッグ「いやいや、手助けしてくれただけでもありがてぇよ」

ケラン「はい。それに街中にも仲間がいたのを倒してからだそうで……むしろこちらがお礼を言わないとですよ」

ココ「……でも…間に合わなかった……」


そこでココさんはチラッと眠っている子どもたちの方を見た。


マグ(ココさん……)

コウスケ(気にしてるね……)

マグ(ショコラたちと仲がいいですからね……気にするのはしかたないですよ……)


仲が良い…というよりはショコラちゃんたちがグイグイいってただけな気がするけど……でもココさんもなんだかんだ嬉しそうだったか……じゃあ仲良しかぁ……。


ともかく、落ち込むココさんをメイカさんたちが慰める。


メイカ「間に合わなかったのは私たちも同じよ……」

フルール「そうよ。むしろ私は助けてもらった側だし、感謝はすれど文句なんか言うはず無いわ」

ケラン「ちょっと待ってください?フルールさん、危なかったっていうのは……」

フルール「あっ」


す~っ…と目を背けるフルールさん。

ココさんが侵入者と戦っていたことは話したが、その時にフルールさん自身に危険が迫っていたなどひと言も聞いていない。


メイカ「フルール?」


というわけでメイカさんが若干の圧の込もった笑顔でフルールさんを見る。


フルール「ちょっと近くに飛んできただけよ」

ココ「毒の塗られたナイフがね」

コウスケ・マグ「(えっ)」

モニカ・サフィール「「ど、毒……!?」」

メイカ「フルール???」


メイカさんがさっきよりも強くプレッシャーを感じる笑顔でフルールさんに詰め寄った。


フルール「ちゃ、ちゃんと柄の部分を掴んで止めたから大丈夫よ…えぇ……」

ディッグ「えっ、掴んだ?」

ケラン「ココさんでも倒すのに時間がかかった相手のナイフを?」

コウスケ「ちゃんと柄の部分を掴めるってことはバッチリ見切ってるってことですよね……?」

サフィール「フルールさんって意外とお強い……?」

モニカ「すご~い…!」


フルールさんが割とヤバいことをしていることに驚愕と尊敬の眼差しが集まる。


フルール「…ごほんっ!私の事より!今はユーリの事でしょ?」


それに耐え切れなくなったフルールさんは強めに咳払いをして無理やり話題を戻した。


フルール「ココ。さっき何人か捕まえてたわよね?」

ココ「えぇ。そろそろ尋問してるはず」

メイカ「そいつらがユーリちゃんの居場所を知っているのよね?」

ココ「恐らくは。でもユーリを追いかけたときに足止めに来た相手と同じような戦い方だったから、無関係ではないはず」

ディッグ「その外で足止めに来たやつらは?」

ココ「そっちも回収した。だから少なくとも情報は持っているはず」

ケラン「とりあえずはそれ待ちですかね……」


コウスケ(行き先は間違いなくユーリさんの故郷なんだろうけど……)

マグ(それがどこにあるか分かりませんもんね……場所もだいぶ遠いようですし……)


そういう結論で終わりそう…なところで、メイカさんがココさんに物騒なことを尋ね始めた。


メイカ「ねぇねぇ、その尋問って私たちも参加できないの?一刻も早く知りたいの!」

コウスケ(凄いこと言い出した……)

マグ(気持ちはわかりますけどねぇ……)


ココ「ダメ」

メイカ「なんでぇ!?」


コウスケ・マグ((そりゃそうよ……))


ただでさえ隠密ギルドは何かと守秘義務があるのに、尋問なんてそんな大事なところに当事者とはいえ部外者な俺らが入れるわけがない。


という理由を話したココさんは、それでも諦めきれない様子のメイカさんのためにさらなる理由を足した。


ココ「それにあまり人に話すような内容では無くなると思う。彼らの意思は固そうだから。そんなものを他人に見せるつもりは無い」

メイカ「ぐぬぬ……はぁ…分かったわよ……大人しく待ってるわ……」

ココ「うん、そうしてほしい」


……この世界は前世でいう中世ヨーロッパ辺りというか、鉄砲とかがまだ無い時代辺りの世界なわけで……。

そんな世界の尋問っていうと……多分俺の想像を遥かに超えるやべぇやつかもなぁ……。


現代の恐喝とか自白強要なんか比べ物にならないような凄惨なものになってそう……。

おぉ…怖い怖い……。


チェルシー「んぅ……」

サフィール「あっ」

モニカ「チェルシーちゃん…!」

チェルシー「…モニカちゃん……?」


今度こそ終わった…ところでチェルシーが目覚めたようだ。


モニカ「よかったぁ…!(ぎゅぅ~)」

チェルシー「ぐぇっ…モ、モニカちゃん……?ちょ~っとチカラが強いかな~って……」

モニカ「よかったよぉぉぉ……!ぐすっ……」

チェルシー「モニカちゃん……うん……ごめんね…心配かけちゃって……」


最初は強く抱きしめられて苦しそうにモニカちゃんを引き離そうとしていたチェルシーだったが、モニカちゃんが泣いていることを知るとその手をモニカちゃんの後ろに回し、抱きしめ返してあげていた。

隣ではサフィールちゃんも密かに涙を流している。


コウスケ(美しい友情だねぇ♪)

マグ(チェルシーまだ苦しそうですけどね……)

コウスケ(まぁモニカちゃんのチカラ問題は解決してないからねぇ)


でもこれに関しては突っ込んで倒れたチェルシーが悪いから、頑張ってね。チェルシー。


リオ「うっ……」

シエル「う~ん……?」


コウスケ(おっ)

マグ(リオたちも起きた?)

コウスケ(みたいだねぇ)


モニカ「リオちゃん…!シエルちゃんも…!」

リオ「モニカ……?あれ…オレ……」

シエル「んぅ~……なんか記憶が……」

モニカ「二人も起きたぁぁぁ…!」

リオ「うぉっ!?」

シエル「きゃあっ!?モ、モニカ!?」

モニカ「よかったぁぁぁ……!」

チェルシー「あはは……好きにさせてあげて……アタシたちのせいですんごい心配かけちゃったみたいだから……」


モニカちゃんが二人に抱きついたことで解放されたチェルシーが先達としてアドバイスをする。

だが、チェルシーよ。

心配してたのはモニカちゃんだけではないんだぞ?


サフィール「ふふっ、生きているとは分かっていても、やはり実際に目覚めるまでは心配でしょうがないですからね」

チェルシー「あはは、そうだね…サフィーちゃんもごめんね…?」

サフィール「許しません♪」

チェルシー「えっ」

サフィール「んっ」


にこやかに謝罪を蹴ったサフィールちゃんはチェルシーに向かって両手を広げる。


チェルシー「あっ…あぁ~……」


チェルシーはすぐに意図を察して、サフィールちゃんのことを抱きしめた。


サフィール「あったかいです」

チェルシー「そう?」

サフィール「はい。あったかくて……生きてて…本当によかった……!」

チェルシー「うん…ごめん……サフィーちゃん……」

サフィール「ぐすっ……ほんとですよ……!脈があっても、もしずっと目覚めなかったらとか考えちゃうんですよ……!わかってるんですか……!」

チェルシー「ごめんね……」

サフィール「許しません……!お説教ですから……!」

チェルシー「え~?」

サフィール「えーじゃないです!リオさんとシエルさんもですよ!」

リオ「えっ!?」

シエル「いやその前にモニカを離してほしいんだけど……こんなチカラあったのこの子……?」

チェルシー「え、待って?今から?」

サフィール「今からです!」

チェルシー「えぇぇぇ!?」

リオ「そ、それはちょっと……あっ、そうだ!ショコラたちは?ショコラたちが起きてからでも…」

サフィール「ショコラさんたちは戦ってないのでいいんです!」

リオ「そ、そうなのか……」

シエル「えっ、じゃあなんで眠ってるの……?」

サフィール「それも含めてお話です!」

チェルシー「別々がいい!」

リオ「寝起きは勘弁して……」

シエル「っていうかモニカ…そろそろ離して……」

サフィール「問答無用です!」


マグ(お~ぅ……サフィールちゃんがこんな激おこなのはなかなか無いですよ?)

コウスケ(普段温厚な人ほど怒らせると怖いっていうし……う~ん…まぁここは……)

コウスケ・マグ((ドンマイ))

マグ(ですねぇ)

コウスケ(そういうこと~)


サフィール「マーガレットさん!」

コウスケ・マグ「(んぇっ!?)ななななんでしょう?」

サフィール「マーガレットさんもこっちに来てください!」

コウスケ「私もですかぁ!?」

マグ(なんでぇ!?)


俺情けなくも倒れてはいませんよ!?


しかしヒートアップしたサフィールちゃんはそんなことは知らないとばかりに床をペチペチと叩いて俺を呼び続ける。


サフィール「マーガレットさんは私の側にいるだけでいいんです!」

コウスケ「えっ、あっ…そ、そうですか……それならまぁ……」


怒られないならまぁ…ええかぁ……。


モニカ「でもマーガレットちゃんもやられちゃうんじゃないかってすごい心配だった……」

サフィール「たしかに。じゃあ一緒にお説教です!」

コウスケ「それはちょっと理不尽じゃないかなぁ!?」

ショコラ「ん~……」

パメラ「なにさわいでるの~……?」

メリー「……うるさい……」

サフィール「ほら、ショコラさんたちにも言われて…」

モニカ「あぁぁぁショコラちゃんたちも起きたぁぁぁぁ!」

ショコラ「わーっ!?」

パメラ「なにっ!?なにっ!?」

メリー「……くるしい……」

シエル「よ、ようやく解放された……」

リオ「オレちょっと水…」

サフィール「水は私が飲ませてあげますから、次は私の番ですよ?」

シエル「えっ……?」

リオ「いやー…オレ今は街の水が無性に恋しいと言うか~……」

サフィール「私の水が飲めないと言うんですか!?」

リオ「いや飲みたいな~!サフィールの水飲みたくなっちゃったなー!」

サフィール「はい!いくらでも飲ませてあげますよ♪」

リオ「い、一杯でいいです……」

サフィール「わかりました!()()()()ですね!」

リオ「あっ、なんだろう!多分勘違いしてる!」


コウスケ「……う~ん……めちゃくちゃだなぁ……」

チェルシー「あはは……そうだねぇ……」

コウスケ「あっ、解放された」

チェルシー「サフィーちゃんも結構チカラが強かった……」

コウスケ「そうなんだよねぇ……見た目よりも割とあるんだよねあの子……」


で、お胸が大きいから抱きしめられるとこっちの背中がちょっと反れて若干体勢がキツいというオマケ付き。

その分そのソフティなボールの感触を楽しめ…げふんげふん……。


いかんな……。

最近忙しかったからちょっと欲が溜まってるかも。

しかしこの非常時にそんなことしてる暇は無いし、倫理的にもちょっとアレだし……。


とりあえず煩悩退散と本筋への帰還のためにちょっと出来事を整理しようかな……。


ココ「ん」


というタイミングでココさんが何かを感じ取ったような声を上げた。


フルール「どうしたの?」

ココ「誰か来る」

ディッグ「何?」

メイカ「ハルキとかじゃないの?」

ココ「違う。知らない気配」

ケラン「まさか、さっきの残党……?」

ココ「敵意は感じないけど…一応あなたたちはここにいて。様子を見てくる」


そう言うが否やココさんは姿を消した。


メイカ「……本当に一瞬で消えるわね……」

ディッグ「全然目で追えん……」

フルール「言ってる場合じゃないでしょ?子どもたちはどうするの?」

ケラン「う~ん……下手に部屋に戻して襲われたら危ないですし、さっきのこともあるので目の届くところにいてもらった方がいいのでは?」

メイカ「そうね。私とフルールが子どもたちの側に。ディッグとケランはそれぞれ扉と窓を警戒して」

ディッグ「あいよ」

ケラン「了解です」


ココさんの速さに驚きつつもこちらもスムーズに役割を決めて防衛態勢を整えるメイカさんたち。


メリー「……またてき……?」

フルール「大丈夫よ。今度は私たちが付いてるから」

シエル「でも…ココさんでも気配を感じれないような人だったんでしょ……?ほんとに大丈夫なの……?」

コウスケ「今回は先に感じ取ってたし、敵意も無いって言ってたからきっと大丈夫だよ」


再びの不審者の訪問が近いということで不安になる子どもたちを落ち着かせつつ知らせを待つ。


ほどなくして、ココさんが帰ってきた。


ココ「私。とりあえず問題は無かった」

メイカ「そう…それで、結局誰だったの?」

ココ「あなたたちの知り合いらしい」

ディッグ「知り合い?」

フルール「こんな時間に?名前は?」

ココ「名乗ったことはないらしい」

ケラン「えぇ…?そんな知り合いいたかな……?」


なんだそのめちゃくちゃ怪しい人は……。


メイカ「通したの?」

ココ「いや、待たせてる」

ディッグ「ふむ……とりあえず特徴を教えてもらえないか?」


まぁそうよな。

特徴が分かれば誰か予想が付くかも。

でもそんな怪しい知り合いに覚えはないけどなぁ……。


ココ「大きな刀を持った老人の男」

コウスケ・マグ「(あの人だぁ……)」


めちゃめちゃ覚えのあるおじいさんの顔が脳裏に浮かんだ。


そうだぁ……あの人めちゃくちゃ怪しい人だった~……。(超失礼)


他の面々も思い当たったようで、あ~…という顔をしている。

一部まだあったことの無い人はキョトンとしているが、ディッグさんたちが思い当たっていることでとりあえず大丈夫そうだと判断したようで少し緊張を解いていた。


コウスケ「え~っと…わかりました……その人は大丈夫なので通してもらっていいですか?」

ココ「わかった」


俺がそう言うとココさんはまた一瞬で消え去った。


チェルシー「知ってる人でよかった~」

シエル「どんな人なの?」

チェルシー「優しいおじいさんだよ~。ちょっと不思議は所はあるけどね~」


多分ドーナッツを買った時のボケ疑惑のあのセリフの事だろうな。

いやそれ無くても不思議か。(ちょい失礼)


なんてことを話している内にココさんがその訪問者を連れて戻ってきた。

一応人違いかもしれないのでディッグさんが代表して確認のために玄関へ赴く。


俺たちは壁に顔を近づけて話し声を盗み聞く。


ディッグ「おっと…こんばんは」

おじいさん「こんばんは。夜分遅くにすまんのぅ」

ディッグ「いえ…しかしどういったご用件で?今は少し立て込んでまして……」

おじいさん「知っておる」

ディッグ「えっ?」


なんだって……?


ショコラ「知ってる……?」

リオ「どういうことだ……?」


おじいさんの言葉にざわつき始める俺たち。

なんか雲行きが怪しくなってきた気がするが、二人の会話は進んでいく。


ディッグ「それはどうゆう…」

おじいさん「それも含めて、少し話さねばならないことがあってな。マーガレットのお嬢ちゃんはいるかね?」


俺?


マグ(私?)


ディッグ「先に内容を教えてもらえますか?」


突然のご指名に戸惑う中、ディッグさんがしっかり警戒してくれていることに頼り味を感じる。

そんなディッグさんの問いかけにおじいさんは衝撃的な返しをした。


おじいさん「なに、儂の息子と孫の話じゃよ」

ディッグ「息子と孫?それがマーガレットの嬢ちゃんとどう関係があるんで?」

おじいさん「関係も何も当事者じゃよ」

ディッグ「何?」


メイカ「マーガレットちゃんまた変なことに巻き込まれたの?」

コウスケ「いや、身に覚えないっす……」

シエル「あんたに無くてもどっかで巻き込まれてても不思議じゃないのよ……」

パメラ「その息子さんとお孫さんになにかやっちゃってたとか?」

メリー「……マグ…とりあえずあやまる……?」

コウスケ「私がやらかした前提で進めないで?」


第一そんな問題を起こした親子と接点ないぞ俺。


ディッグ「え~っと……うちのマーガレットが何かやっちまったんでしょうか……?」


コウスケ(ディッグさんにも疑われている……つら……)

マグ(コウスケさん、トラブルに愛されてるから……)

コウスケ(愛されるならマグが良い……)

マグ(はわっ!?んも~!なに恥ずかしいこと言ってるんですかも~♡)


あ~……マグのデレボイスでSAN値がぐんぐん回復していく~。


おじいさん「ほほほ♪お嬢ちゃんが何か問題を起こしたというわけでは無いから安心しておくれ♪」

ディッグ「そうですか……」


ほら見ろ~!

俺関係ない~♪


いや関係はあるんだっけ?

えっ、じゃあ何の用だろう?


ん~……これはもう俺が出た方が早いか。

多分もう出ても大丈夫だろ。


コウスケ「メイカさん、行ってきてもいいですか?」

メイカ「う~ん……そうねぇ……まぁココもいるし大丈夫でしょ。一応私もついて行っていい?」

コウスケ「はい。大丈夫ですよ」


むしろ安心感が増すからありがたい。


コウスケ「おじいさん?」

おじいさん「おぉ、お嬢ちゃん。こんばんは」

コウスケ「こんばんは~。なんか私に用があるみたいな話をしてたみたいですけど……」

おじいさん「うむ。正確に言えば、お嬢ちゃんが一番関わりが深いと言ったほうがいいか」

コウスケ「ふむ?」

おじいさん「儂の息子と孫の事なんじゃがな?」

コウスケ「はい」

おじいさん「ケンカ…というには少し一方的なのじゃが、とにかくあまり仲が良くないのじゃ」

コウスケ「あれまぁ」

マグ(大変ですねぇ)

おじいさん「それで孫の方が家出をしていた…というのはいつだか話したかの?」

コウスケ「どっかで聞いたような?」

ディッグ「どっちも記憶ないのか……?」


しょうがないじゃん!いろいろあったんだもん!


おじいさん「まぁともかく家出をしておったのじゃ」

コウスケ「大変ですねぇ」

おじいさん「うむ。しかしとうとう居場所がバレてのう。息子は怒り心頭と言った感じで孫を連れ帰りに来たんじゃよ」

コウスケ「おやおや…………スゥー……ん~……?」


な~んか……どっかで聞いた話だな……?

しかもだいぶ直近でそんな光景を見たような……?


おじいさん「で、じゃ。結果的に息子は孫を連れ帰ったわけじゃが、その代償は大きくての?」

コウスケ「代償ですか」

おじいさん「うむ。大勢連れてきた仲間の大半を囚われてしまってのう。当人たちは使命のためだと納得しておるんじゃが、同郷の儂はさすがに放っておくわけにはいかなくての」

コウスケ「ほぉん……身内のやらかしの火消しですか」

おじいさん「そうじゃ。まったく、面倒なことをやってくれたわい」

コウスケ「お疲れ様です。それで、私に何をしてほしいんですか?さすがに釈放の手伝いをできるようなチカラはないですよ?」

おじいさん「なに、簡単なことじゃよ。交渉の橋渡し役になってほしいんじゃ」

コウスケ「荷が(おめ)ぇです」

おじいさん「重々承知の上じゃ。それに、これはそなたに関わりが深いと言ったじゃろう?」

コウスケ「そうですねぇ。でも交渉するにも、相当な手土産が無いとお話も聞いてくれないのでは?」

おじいさん「それはまぁ問題ない。今知りたい情報であろうからな」

コウスケ「へぇ~……」


コウスケ(……ねぇマグ)

マグ(……多分同じ予想が立ってますよ)

コウスケ(そっかぁ……まぁそうかぁ……)


ヒントが多かったもんねぇ……。

もし違かったら……今回はご縁が無かったということで……。


コウスケ「え~っと…おじいさん?」

おじいさん「なんじゃ?」

コウスケ「お孫さんは女性の方で?」

おじいさん「うむ」

コウスケ「息子さんは仕事人間で?」

おじいさん「まぁそうじゃな」

コウスケ「成果を得るために子どもも気絶させる強硬派で」

おじいさん「そうじゃなぁ……あれは正直どうかと思うのぅ……」

コウスケ「おじいさん」

おじいさん「うむ?」

コウスケ「おじいさん実は狐人族ですか?」

おじいさん「お~、なんでバレたんじゃ~?」


棒読みでそう言うとおじいさんからポンっと煙が出ると共にキツネの耳と尻尾が生えた。


うんうんそうかそうか。


コウスケ「おじいさん♪」

おじいさん「なんじゃ♪」

コウスケ「話は聞くとして、回りくどかったので血糖値上昇の刑に処しますね♪」

おじいさん「ろ、老体になんという刑を……」


というわけで、おじいさんから話を聞くべく。

そしておじいさんに、元々お孫さんであるユーリさんのために買ってきたドーナッツを食わせるべく、俺たちはおじいさんを寮の中に招き入れた。

攫われた直後だとは思えないノリですが、若干現実逃避してるだけです。(そういうことにしといて)

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