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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第5章…魔術コンクール
382/434

375.閉会式…勝負の結果

11/26 ちょっと書き足しました。

リンゼ「これより、閉会式を始めます」


ワァァァァァ!!!


日はすっかり暮れ、開催まであんなに待ち遠しかった魔術コンクールも気付けば終わりを告げようとしていた。


やっぱり自分の番が終わってからが早かったな。

シエルと一緒にそれまでの緊張がウソみたいに楽しんじゃった。


そんな俺たちをメイカさんが終始嬉しそうに見守ってたことに気付いたのはある程度経ってからだった。

まさかずっとよだれ垂らして見てたのかと考えてちょっと引いたが、まぁメイカさんだしなぁ…と思い直しそっとしておいた。


そこからあとはまた熱中しすぎて覚えていない。


まぁ、今元気に歩いてきたし大丈夫でしょう。


そんなことより、そろそろグリムさんが閉会の挨拶をするところだ。


リンゼ「グリム様から閉会の挨拶を頂きます」

グリム「皆さん、まずはお疲れ様。朝から始まった魔術コンクールですが、見ての通り日没までかかりましたが、無事に終えることが出来ました。ここまで付き合ってくださった観客の皆さまに感謝を。そして、このコンクールを企画し運営したギルドの職員と、今日この舞台を盛り上げてくれた参加者の皆さまに盛大な拍手を」


ワァァァァァ!!!

パチパチパチパチ!!!


客席から惜しみない拍手と歓声が鳴り響く。

それに対して参加者は、手を振って応える者。

照れる者。

逆にドヤ顔する者。

まったく気にしてない者と人それぞれ個性が出ていて面白い。


ちなみに俺たちは手を振る派閥。

だってショコラちゃんたちが凄い勢いで手を振ってるのが見えたんだもの。

そりゃ振り返す。


ある程度拍手が収まってきたところでグリムさんが再び話を始める。


グリム「今日この会場を訪れた者たちにとって、魔術コンクールは良い刺激になったと思う。次回の開催の予定はまだ決まっていないが、この反響っぷりならそう遠くないうちに開催されるかもしれないね。もっとも、あまり細かく開催されてもネタがすぐに尽きてしまうから参加者たちの中には年1とかで良いと思ってる人もいそうだけどね」


ドッ!!!

ワハハハハハ!!!


観客席から笑いが溢れるが、俺たち参加者の中には苦笑いや静かに首を頷かせている人の姿がチラホラ見えた。


そうね……。

あんまやるとネタ尽きるのはもちろん、見る側も早々に飽きる可能性があるからね……。


年1…あるいは早くても半年くらいは間を置いて欲しいかな……。


グリム「まぁなんにせよ、今回のコンクールで得た学びを早速活かして欲しいと思う。冒険にも研究にも…もしかしたら日常にも役立てられるかもしれないからね。もちろん、安全には十分に配慮すること。今日この場にいる人たちなら魔法の危険性も十二分に感じれたと思うから、余計なお世話かもしれないけどね」


ドッ!!!

ワハハハハハ!!!


再び会場に笑いが起こる。

今度は参加者たちからも笑いが起き、数十人のその危険性を教えてくれた人たちが苦笑していた。


コウスケ「見てて危なかったもんねぇ」

シエル「何他人事みたいに言ってるの。あんたもそっち側よ?」

コウスケ「えっ」

メイカ「あの爆発は驚いたわよ〜」

コウスケ「あ〜れはほら……サプライーズ?」

シエル「事故でしょ?」

メイカ「偶然だよね?」

コウスケ「……はい」


やっぱダメか〜。

そりゃそうだよな〜。

失敗して落ち込んでる俺を慰めてくれてた当人たちだもんな〜。

そら騙せないやな〜。


グリム「けれども、それも含めて「学び」だからね。今回失敗した者は次に活かせばいいし、成功した者も今よりもっと上を目指すための糧にしてくれればいい。そうして実力を高めていくことで、魔法はさらなる進化を遂げるだろう。そうなってくれることを私も望んでいるよ。今日は本当によく頑張った。今一度、参加者たちに大きな拍手を!」


ワァァァァァ!!!

パチパチパチパチ!!!


そう締めくくったグリムさんの言葉に、会場中から三度(みたび)大きな拍手と歓声が鳴り響いた。


リンゼ「はい。グリッジス様、素晴らしいスピーチをありがとうございました。以上を持ちまして、魔術コンクールの閉幕とさせていただきます。会場の皆さま、ご参加いただき誠にありがとうございました。係員の指示に従って、押す、割り込むなどの危険な行為をせず、お客様全員が楽しい気分のままおかえりいただきますようご協力をお願いします」


拍手が治まり始めたあたりでリンゼさんのアナウンスが始まる。

それと同時に観客たちと、俺たち参加者の誘導も始まった。


スタッフ「それでは参加者の皆さまはこちらから順番になられてお帰りくださ~い」


スタッフの声に従って少しずつ参加者たちが退場ゲートへと向かっていくのを眺めながら、俺はのんびりと呟いた。


コウスケ「…終わったねぇ」

シエル「そうねぇ……」

メイカ「いや~!やっぱり参加してよかった~♪見てるのも楽しいけど、私の魔法で会場を湧き立たせたのが最っ高に気持ちよかったわ~!」

コウスケ「誰よりも楽しんでますねぇメイカさん」

メイカ「こういうのは楽しんだもの勝ちだからね♪二人はどうだった?」


メイカさんの言葉に俺とシエルは顔を合わせる。

そして先に答えたのはシエルの方だった。


シエル「アタシも……練習は大変だったし、本番は物凄く緊張しちゃったし、みんなに迷惑もいっぱいかけちゃったけど…また参加したいなって思うくらい楽しかったです」

コウスケ「私もまた出たいな~。今度はわちゃわちゃしないでキチッと決めて満足してステージを去りたい」

メイカ「ふふふ♪そうよね、二人も楽しんでたものね♪私もまた次回も出場したいわ~。今度はユーリちゃんも一緒にね♪」

シエル「あっ、そうですね!ユーリさんの魔法も見たかったです!」

コウスケ「直前で辞退しちゃったからな~。でも多分、昼の様子を見るに今ごろ出ればよかった~って後悔してるかもよ?」

メイカ「うふふ♡ユーリちゃんならそう言ってそうね♪それじゃっ、本当にそうなっているかそろそろ確かめに行きましょ。出ていく人の波も落ち着いてきたわけだしね♪」

コウスケ・シエル「「はい」」


メイカさんに二人揃って返事をして、手を繋いでゲートへ向かう。

もう普通に手を握っちゃう。

別に緊張とかはもう無いんだけど、なんとなくしちゃう。

まぁ落ち着くからね。仕方ないね。


誰に聞かせるでもない言い訳をしながらゲートをくぐったところで幕が話しかけてきた。


マグ(おつかれさまで~す、コウスケさん♪)

コウスケ(うん、マグもお疲れ様~)

マグ(えへへ、楽しかったですね~♪)

コウスケ(そうだね~。自分の番が来るまでは物凄い緊張したけどね~)

マグ(も~、コウスケさん。シエルのことをあんなに励ましてたのに、自分がミスしちゃうなんて~♪)

コウスケ(それ言ったらマグなんかシエルと同じかそれ以上に震えてたでしょ~?)

マグ(震えてませ~ん)

コウスケ(震えてました~)

マグ(そんなことありませ~ん)

コウスケ(そんなことあります~)

マグ(……ふふっ♪)

コウスケ(ふふふふ♪)

マグ(…コウスケさん♪)

コウスケ(ん~?)

マグ(また一緒に参加しましょうね♪)

コウスケ(うん♪)


まだ予定の決まっていない次回の魔術コンクールの約束を交わす。


そうだなぁ。

今度はマグと協力して出来る魔法とか試してみるのもありだな~。


マグが雷出して~、俺が操作して~……う~ん……。

もうちょっとなんか…こう……協力してる!ってビシビシ感じれるやつがいいなぁ……。

どっちにしろ他の人から見たらマーガレット単体であることに変わりはないんじゃが……そこは別に俺らの心の問題なだけなので。


まぁともかく、総じて個人個人ではいろいろと思うところがあるものの、魔術コンクール自体は大成功で幕を閉じた。


が、しかし。

魔術コンクールは終わったが俺たちには…シエルにはもうひとつ決着を着けなければいけない相手がいる。


それはゼリオラ少年との勝負。

そしてグリムさんとの関係だ。


……ふたつだったな!


で、その肝心の二人はどこにいるんだって話だが……別にどこに集まろうとか決めてなかったのよなぁ……。

まぁ、出口あたりにいればどっちかには会えるだろ、多分。

少なくともゼリオラ少年は出場してたわけだしな。


忘れて帰ってたらまた明日でいいしな。

あ~でもできれば今日中に終わらせて明日からスッキリしたいな~。


ジャン「あっ来た!」


は~い見つかった~。

なんだろうね~。

今の今まで今日中に終わって~って思ってたのに、見つかったら見つかったでめんどくせぇなって思っちゃうこの気持ち。


ルーク「おせぇぞ。逃げたのかと思ったじゃねぇか」

コウスケ「ゆっくりする余裕を持ってるだけだよ。キミらと違って」

ルーク「あ?」

コウスケ「ん~?」

マグ(シャー!(威嚇))

グリム「ははは、大会終わりだというのに元気だね」

コウスケ・マグ・ルーク「(「!」)」

グリム「けれどここはまだ人通りが多いのだから自重してくれたまえよ?」

ルーク・ゼリオラ・ジャン「「「グリムさん!」」」


マグの威嚇にネコかな?とツッコミを入れる前にグリムさんがやってきた。


ゼリオラ「ど、どうしてここに?」

グリム「私の手が必要だと思ってね」

ゼリオラ「えっ?」

グリム「決着を着けるのに身内しかいないのは問題だろう?」

ルーク「えっ!?じゃあグリムさんが?」

グリム「あぁ。私が判断しようと思ってここに来たよ」

ルーク「おぉ!」

ジャン「す、すげぇ!《賢王》がジャッジしてくれるなんて……!」


まぁ妥当じゃね?

っていうかグリムさんって本当に憧れられてるんだなぁ。


ゼリオラ「で、でも、グリムさんはシエル(そいつ)の親代わりなんでしょう?それじゃあ結局身内なんじゃ……」

グリム「確かに、そこにいるシエルは私が預かっているが、それとこれとは話が別さ。そもそも魔法に関して私情を持ち込むつもりはないよ。《賢王》の二つ名に誓ってね」

ゼリオラ「グ、グリムさんがそこまで言うなら……」


そうだね、私情は挟んでないね。

挟まなかった結果気になりすぎて夜も寝れなくなっただけだもんね。


グリム「さて、納得してくれたところで早速採点と行こうか。まずはゼリオラくん」

ゼリオラ「は、はい!」

グリム「キミたちは確かEランクだと聞いているけど、合っているかな?」

ゼリオラ「は、はい!合ってます!」


コウスケ・マグ((Eだったんだ……))


グリム「キミの年頃でEランクというのはなかなか優秀だと聞いているよ。そして、今日見させてもらったときにも言ったけど、魔法の腕も年の割に大した腕だ。誰かに特訓を着けてもらったりは?」

ゼリオラ「は、はい!顔見知りの魔法使いの方たちにいろいろ教えてもらったりしてます!」

グリム「素晴らしい。複数の意見を聞くというのももちろんだが、それを吸収して自分なりの答えを出そうとしているのも良い。その調子ならまだまだ伸びるだろうね」

ゼリオラ「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます!」


高評価をもらったゼリオラ少年は嬉しそうにお礼を言う。

それに微笑みながら頷くグリムさんだったが、魔法に関して私情を持ち込まないと言っていたグリムさんは褒めるばかりではなかった。


グリム「うむ。ああでもひとつ良いかな?」

ゼリオラ「あっはい、なんですか?」

グリム「今日の魔法がキミの全力だというのは伝わったんだが、あれはあの魔力量のまま小さくすることは出来るのかい?」

ゼリオラ「えっ、い、いえ……」

グリム「ふむ。では爆発を小さくすることも?」

ゼリオラ「は、はい…できません……」

グリム「そうか。なら、私からのアドバイスはそこから練習をしてみるといいということになるね。今回は広いステージにお客に見せるための魔法ということでよかったが、本来の迷宮内ではもっと狭い所での戦闘の方が多いのだろう?」

ルーク「えっ?え、えぇ…まぁ……」


唐突に話を振られたルークが慌てて答えると、グリムさんはそれに頷いてから話を続ける。


グリム「ボス部屋は広いが、逆に言えばそこでしか全力を出せないということにもなる。迷宮というのは恐ろしい所だ。それは実際に探索をしているキミたちの方がよく知っているだろうがね」

ジャン「で、でもボスに全力が出せるなら別にいいんじゃ……」

グリム「手強いのはボスだけではない。そうだろう?」

ジャン「うっ……」

グリム「もちろん、毎回毎回全力を出していてはすぐに魔力切れに陥ってしまう。それは確かに論外だ。だが「出来ない」と「しない」では意味合いが大きく異なる。もしもキミたちが全力の魔法でないと倒せないような敵と遭遇してしまった時…もしも狭い通路や袋小路で戦闘することになった時……そういう事態に味方を巻き込んでしまいそうな大きさでしか出せないのはあまりにも危険だ。場合によってはそれが原因で命を落とすかもしれない」

ゼリオラ「そ、そんなこと……」

グリム「無いと言い切れるかね?相手は未だに謎を多く残しながら、今なお進化を続ける人知の及ばないものだよ?」

ゼリオラ「そ、それは……」

グリム「…すまないね。こんな言い方をするつもりはなかったんだが、ついね。今のは確かに極端な例ではあるが、そうでなくても手札は多い方がいい。そういった意味も込めてこの魔術コンクールが開催されたわけだしね。長くなってしまったが、魔力操作をもっと鍛える。それが私からのアドバイスだよ」

ゼリオラ「わかりました……」


少し前まで褒められて喜んでいたゼリオラ少年はすっかり元気が無くなってしまった。

そりゃあ俺らの前でガチダメだしなんて食らったらそうなるわなぁ……。


グリム「キツい言い方になってすまないね。だが、私としても若き才能を失いたくないんだ」

ゼリオラ「い、いえ……」

ルーク「グリムさんがゼリオラだけじゃなくて俺たちのことも気に掛けてくれてるのはわかっているので大丈夫です。なっ、ゼリオラ」

ゼリオラ「うん……グリムさん、ありがとうございます。俺、もっとがんばります!」

グリム「うん、その意気だ。これからも無理のない範囲で迷宮探索を頑張ってくれたまえ」

ルーク・ゼリオラ・ジャン「「「はい!」」」


コウスケ(お~、良い感じにまとめた)

マグ(大事なこととはいえ、お説教はやっぱり心に来ますよね~)

コウスケ(怒ってる側もちゃんと伝わってるかドキドキもんだろうけどねぇ)

マグ(通じてないと大変ですからねぇ)


重いなぁ……。

マグさん実体験だから重いなぁ……。

しかもご両親もういねぇってのが余計になぁ……。


グリム「さて、次は……」

シエル「……!(びくっ)」


そんなことを考えている内にグリムさんはシエルの品評に移ろうとしていた。


グリム「シエル。キミは風魔法と踊りを掛け合わせたわけだが……」

シエル「ごくり……」

コウスケ・マグ((ごくり……!))


今の総評を聞いて緊張した面持ちで評価を待つシエル…と俺たち。


グリムさんはシエルの目を見つめながらゆっくりと口を開き……


グリム「…素晴らしい考えだね」

シエル「……へっ?」

コウスケ・マグ((あれ?))


褒めてくれた。

正直もう初っ端からダメだしされるんじゃないかって雰囲気出てたからびっくりした。


グリム「踊りに転用なんてその関係者じゃないと思いつかない。もしかしてユーリくんに?」

シエル「は、はい……」

グリム「やはりか。彼女のダンス魔法も見てみたかったが……まぁそれは今は関係ないことだね。ともかく、攻撃するため、防御のため、身体や精神補助のためなんかの、いわゆる戦闘用魔法が多い中、今回のような魅せるための魔法みたいな、戦闘以外で魔法を活躍させようというのはかなり面白い発想だ。かくいう私も何かとそういう魔法を考えてはいるんだが、これがなかなか上手くいかなくてね。まぁ私が基本的に引きこもって研究ばかりしているからというのもあるんだが……そういった理由もあって私はその手の魔法に目がなくてね。今回は楽しませてもらったよ」

シエル「そ、そうなんだ……よかった……」


早口気味なグリムさんに圧倒されつつも、楽しんでくれていたことに安堵の表情を浮かべるシエル。


ダメだシエル……!

油断しちゃいけない……!

さっきのを見ただろうシエル……!


というわけでグリムさんのアタックフェイズ。


グリム「だから惜しかったね」

シエル「え?」

グリム「途中、踊りが飛んでいただろう?同じ振り付けを繰り返していたよ?」

シエル「うっ……」


コウスケ・マグ「(バッチリ見抜かれてる……!)」


グリム「その途中の踊りが気になったね。あとはそうだな……魔力操作はかなりのものだったが、やはり練習期間が短かったかな?魔法の方が割合が少し多かったとはいえ、半分近くは踊りが主軸に置かれているように感じたね。魔術コンクールなのだから、もう少し魔法にチカラを入れて欲しかった気持ちがあるかな」

シエル「ご、ごめんなさい……」

グリム「ああいや、責めてるわけではないんだ。これは個人的な感想だからね。むしろ短い期間でここまで仕上げたんだから大したものだよ」

シエル「あ、ありがとうございます……」

グリム「しかし…う〜む……私は踊りのことはからっきしだからね。魔法もそれに合わせたもの、と言われてしまえばこちらからは何も言えないけど……それでも言わせてもらうとすれば、もう少し緩急が欲しかったかな?」

シエル「緩急…?」

グリム「うん。例えば、風魔法の範囲や強さ、目に見える量なんかをもっと派手にわかりやすくすればもっと良い…と思ったかな。魅せるための魔法とするなら、やはり見た目の派手さは大事だからね」

シエル「な、なるほど……」


コウスケ(あ〜、それはちょっと俺も思ったかも)

マグ(そうなんですか?)

コウスケ(うん。庭で練習してる時は十分だと思ってたんだけど、いざステージ上で見るともうちょっと派手でもよかったかもって感じたなぁ)

マグ(なるほど……周りの環境が違うから見え方が違っちゃったってことですか)

コウスケ(そゆこと)


ただまぁこれは大体の他の参加者にも言えるだろう。

ゼリオラ少年みたいにその場で最強のやつをぶっぱなすタイプではない他の参加者たちは、おそらくこのステージの広さによるデメリットを受けたはずだ。


ただこれは主催者側としても看過し難い。

ステージは普段練習場として開放されてはいるものの、今後はコンクール用の練習場としても開放してほしいという声が上がってもおかしくなさそうだ。


そうなった時にどうするか……それは…俺が考えることではないな。

一応頭の片隅では考えておくが、ハルキやララさんたちに相談されない限りはお任せしちゃおう。


グリム「さて…とりあえずはこれで両者の評価が出揃ったかな?」


なんて考えているとグリムさんが結果発表に移ろうとしていた。


…結果はっぴょーーーう!って叫んだら……変な子に見られるな。うん。そりゃそうだ。

やめとこう。


グリム「勝負の結果を発表したいところだけど、今回はゼリオラくんが戦闘系。シエルが踊りだから娯楽系かな?それぞれ別のジャンルだから判断が難しいね」

ルーク「戦闘系で勝てないからって逃げんなよな〜」

コウスケ「美しさで勝てないからって僻むのはやめなよ〜」

グリム「こらこらケンカしない。ジャンルが正反対なだけだから、それ以外の部分…魔力量や操作力なんかの基本項目を中心に判断させてもらうよ。というわけでまずはゼリオラくん」

ゼリオラ「は、はい!」

グリム「何度も言うが、キミの年頃の子の中ではトップクラスの威力と魔力量だ。あとは魔力操作で細かい場面にも対応できれば文句なしだね」

ゼリオラ「はい、ありがとうございます!」

グリム「次にシエル」

シエル「は、はい…!」

グリム「シエルは逆に魔力の操作が抜群に上手い。迷宮に潜らないなら威力はそこまで気にしなくてもいいけど、魔力量はもう少し伸ばした方がいいね。それとその緊張癖もね」

シエル「うっ…は、はい……」

グリム「さて。これを踏まえた結果……」


グリムさんの溜めに俺たちも、ルークたちもドキドキしながら静かに結果を待つ。


そして、グリムさんの口が開く。


グリム「勝者!僅差でゼリオラくん!」

コウスケ・マグ「(なっ!?)」

シエル「っ!」

ゼリオラ「や、やったぁー!」

ルーク「うぉぉぉ!」

ジャン「すげぇぇ!」


まさかの敗北。

グリムさんなら魔導書のランク問題も合わせて引き分けあたりにしてくれると密かに思っていたのだが……。

魔法に関しては私情を挟まない…か……。


グリム「現段階だとゼリオラくんの方が上だね。とはいえそれも僅差でだ。努力次第で簡単に抜かれてしまうことは肝に銘じておいてね」

ゼリオラ「は、はい!サボらずがんばります!」

グリム「うむ、よろしい。それと…シエルと今よりも上のランクの魔導書を賭けていたようだけど、残念ながらそれは私としても難しいことでね。代わりといってはなんだが、いくつかキミの助けになりそうな魔導書を用意しておくから、好きな時に来るといい」

ゼリオラ「あ、ありがとうございます!」

グリム「うむ。さて、シエル」

シエル「ぐすっ……」

グリム「……泣くということはそれだけ本気だった証さ。それ言っただろう?僅差だと。ゼリオラくんも負けるつもりはないだろうが、シエルも負けじと練習を続けなさい。それが上達への1番の近道だからね」

シエル「ぐすっ……はい……」

グリム「さ、さぁ、もう暗いし解散しようか。打ち上げとかは好きにしていいけど、あまり遅くなりすぎてはいけないよ?」

ルークたち『はい!』

グリム「そ、それじゃあね!」


そう言うとグリムさんはそそくさとこの場を去っていった。


ルーク「へへっ、ゼリオラの勝ちだったな」

コウスケ「フゥーン…まぁグリムさんが言うなら負けを認めよう……が!油断したら喰われることを夢夢忘れないことだ…!」

ルーク「へっ!次もゼリオラが勝つさ。た・い・さ・で・な!」

コウスケ「シエルの成長力を舐めちゃあいけないよ。精々首を洗って待ってなさいな」

ルーク「覚えといてやるよ。行くぞ!」

ゼリオラ「おう!」

ジャン「ベロベロバー!」


うわキメェ。


衝撃映像を最後に残し、ルークたちも去っていった。


後に残されたのは俺と泣いているシエル……と、子どものケンカなので介入せずに見守ってくれたメイカさん。


シエル「うぅ……くすん……」

メイカ「シ"エ"ル"ち"ゃ"ん"ンンン……!」


どうしよう……。

血涙流し始めたメイカさんの方が心配で堪らない。


コウスケ「メイカさん……私がどうにかするんでみんなのところに先に行ってちょっと遅れることを伝えてもらえますか?」

メイカ「て"も"ぉ"ぉ"ぉ"……!」

コウスケ「二人も面倒見きれないんでメイカさんはユーリさんたちに慰めてもらってください」

メイカ「お"ぉ"ぉ"…こ"め"ん"ね"ぇ"ぇ"ぇ"……!」


誰がどう見ても心配になるが、話しかけるのはめちゃくちゃ躊躇われる顔のメイカさんを送り出したところで、俺はシエルに話しかける。


コウスケ「ちょっと歩こうか」

シエル「ぐすっ……(こくり)」


頷いたシエルの手を取り、俺は控え室となっていた練習場が並ぶ通路へと向かう。


あ〜……グリムさんどうやって仲直りするつもりなんだろうなぁ……?


そんなことを考えながら、シエルを連れてすぐ近くの空いていた部屋に入った俺はカギをかけ…たところでシエルが俺にしがみついてきた。

どうやら我慢の限界が来たようだ。


シエル「ぐすっ……うぅぅ……!」

コウスケ「ん…もう我慢しなくていいよ。ここには私とシエルの二人しかいないからさ」

シエル「うぅっ……うあぁぁぁぁぁ…!」


俺の言葉を皮切りに、シエルは目から涙をあふれさせ、大きな声で泣き始めた。

俺はそんなシエルをただ抱きしめて、背中をさすってあげた。

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