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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第5章…魔術コンクール
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374.魔法使いのお姉さん(変態)…の本気魔法

メイカ「シエルちゃんお疲れ様ー!」

シエル「わぷっ!メ、メイカさん……!…ありがとうございます……♪」


発表が終わり、俺とシエルは元の控え室へと戻ってきた…ら、シエルがメイカさんに捕獲された。


突然抱きつかれたシエルは驚いたものの、出番が終わった安心感とメイカさんの奇行への慣れ、今日俺と共に支えてくれたことへの感謝……そしてふにふに中毒初期症状によりすぐに笑顔でお礼を言った。


しかしそんな着実に深みにハマっていってる友人を、俺は放っておいた。

というか今はツッコミを入れられるメンタルじゃない。


メイカ「それで…え〜っと……マーガレットちゃんは大丈夫……?」

コウスケ「だいじょばないです……」

シエル「マ、マーガレット……」

マグ(コウスケさん…おいたわしや……)


はい、俺こそコウスケくん。

現在メンタルズタボロです。


なんでこうなったのかというと……


メイカ「途中まではよかったんだけど……後半少し調子に乗っちゃったわねぇ」

コウスケ「うぅ……つい楽しくなっちゃって……」

シエル「アタシからしたら、楽しめるメンタルがあるだけで十分すごいけどね……」


そう、途中までは順調にいっていたのだ。

ネコをちょっとずつ増やしたり、大きさを変えてみたり、なんとなく模様に見えるようにしてみたり。


しかし気づいたのだ。

そういやフィニッシュ決まってないわ、と。


そしてすぐにピンときたのだ。

合体させたら面白いんじゃね?と。


というわけで合体させようとしたわけだが、このまま普通にくっつけて大きくしても面白みにかけると考えた俺は、某ゲームのぷるぷるのあいつが8匹合体するときのように一芸入れてやろうと思ったのだ。


しかしネコはその時点で12匹ほど呼んでしまっていた。

思い浮かべたやつは8匹でいいんだよなぁ……とまた少し考えたのだが……。


シエルの発表が上手く終わったことで油断していたのか、「まぁなんとかなるやろ」と、途中で思考を放棄してしまったのだ。


元の1.5倍になってるものを「なんとかなるやろ」で当然なんとかなるわけもなく、合体フォーメーションはバランスが悪くなり、それに動揺して合体時の煙幕がもはや爆風と呼べるレベルの代物になってしまい、さらに煙から出てきたものはネコと呼ぶには何か違う謎の生命体になっていた。


そのもろもろでテンパった結果そのデカいネコのようなものの挙動もちょっと怪しくなってしまい、それを慌てて修正しようとわちゃわちゃやった結果……魔力を多く注ぎ込み過ぎてしまったようで、巨大ネコは爆発四散。


幸い大した爆発ではなかったのでケガ人などは出ていないし、破裂までが発表ですと言わんばかりに無理くり切り上げたものの、残念ながら誰がどう見ても成功とは言い難い発表になってしまった。


つまり失敗である。


散々シエルの心配しといて自分はこの様という不甲斐なさの極みになってしまった俺だったが、退場ゲートで待っていてくれたシエルが…


シエル「おつかれ…えっと……や、やっぱり…アタシの練習に付き合わせちゃったから…かな……?」


と死ぬほど気にしていたのが俺の心に大打撃を与えた。

心配していた子にものっそ気を使わせてしまうという大失態……心にクる……とてもクる……。


もちろんそれは全力で否定したのだが、同時にシンプルに慢心したというとても恥ずかしい凡ミスを暴露する羽目になり、それを聞いたシエルがこの控室までずっと励まし続けてくれたのが逆にトドメになった。

発表の行きと帰りで立場が逆転してしまったことが自分の情けなさを加速させたのだ。


そうゆうことで、今意気消沈してるというわけ。


とはいえこのままぐったりした情けない姿をシエルに見せ続けるわけにもいかないのでそろそろ回復しなければ…


メイカ「そうだ!今度はシエルちゃんがマーガレットちゃんを元気付けてあげれば?」

シエル「えと…励ましてはいますけど……」

メイカ「そうだけど、マーガレットちゃんの元気付けはいつも言葉だけじゃないでしょ?」

シエル「…ハッ!」


…なんかシエルに行動で励まされる流れになっている。


いやいやいやいや…それはさすがに情けなさを加速させるだけだからご遠慮したいんですが……?


シエル「で、でもアタシので喜んでくれるかどうか……」

メイカ「そんなの今さら気にすることじゃないでしょ!マーガレットちゃんが喜ばないと思う?」

シエル「……思いません……」


悩んだ末にシエルはそう答えた。


うん…事実だからこれにはなんも言わんけどさ……。


メイカ「なら大丈夫よ!ほら、やっちゃって!」

シエル「は、はい!マーガレット…し、失礼します!」

コウスケ「うぇっ!?」


メイカさんに唆されるや否や、シエルは何故か敬語になりながら俺をベンチへと連行した。


そして俺を座らせ、少し間隔を空けて自分も座ると、俺の肩をぐいっと引っ張って自分のひざに寝かせた。


そして…


シエル「よ、よしよし…いい子いい子〜……(なでなで)」


俺の頭をなでながらあやして始めた。


コウスケ(……もう情けなくてもいいかなぁ……)

マグ(コウスケさんがシエルのバブみに屈した……)


マグの口から「バブみ」という単語が出るとは……。

多分俺がどっかで口を滑らせたんだな……。

迂闊ボーイ。


そんなわけでシエルに屈した俺は甘んじてシエルのバブみを享受することにした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


その後お昼ご飯休憩まであやされた俺はおかげで無事に復活。

みんなと合流した際にちょっと心配されたが問題なく答えることができ、みんなを安心させることができた。


やっぱり誰かにガッツリ甘える機会って大事だね。

俺ももっと頑張ろう。


というわけでみんなと楽しく食事を終えた俺たちは、コンクールの再会をアナウンスを聞いて再び別れた。


できれば一緒に楽しみたいけど、選手は閉会式もあるしあまり観戦席を占拠するのも申し訳ないと思ったからである。


なので午前と同じく比較的空いているスペースで観戦。

自分の番はもう終わっているので、午前の時よりも発表に集中できて楽しかった。


リンゼ「グリムさん、あれは?」

グリム「雷魔法の発射速度に着目したんだろうね。雷魔法は他の属性に比べて発射から到達までがほんの一瞬で終わるから、その雷に乗れば超高速で移動できる…って思ったんだろうね」

リンゼ「なるほど……発想は理解しましたが……当たったら痺れるものにただ乗るだけでは当然痺れて終わりですよね」

グリム「うん。というか乗れたとしてもあの速度で移動したら着地で大変なことになるだろうね」

リンゼ「高いところから落ちる、というのを真横にした感じですからね。備えがなければただでは済まないでしょうね」

グリム「顔が青冷めてるね。そこまで考えてなかったようだ」

リンゼ「失敗してむしろ助かったということですね。私共もしても大会がおじゃんにならなくてよかったです」


…相変わらず意味わからんとか無茶苦茶な理論に基づく魔法がそこそこの頻度で出てきたが、それもまた一興。


いや、やっぱ危険なやつは次から事前に弾こう。


リンゼ『120番の方、ありがとうございました。続きまして121番の方の発表です』

メイカ「そろそろ私の番だから行ってくるわね」


なんてやってる間にメイカさんの番が近づいてきた。


コウスケ「えぇ、いってらっしゃい」

シエル「応援してますね!」

メイカ「ありがと〜♪…………」

コウスケ・マグ・シエル「(「?」)」


何故か一向に向かおうとせずにこちらを見つめるメイカさん。


コウスケ「え〜っと……どうしたんですか?」

メイカ「……ついてきてくれないの?」

シエル「え?」

コウスケ「あ〜ん…なるほど〜……」

マグ(いつものやつか〜……)


この緊張のきの字も無さそうなお姉さんは、ただ単に寂しいから一緒に来て?と言ってるのだ。


コウスケ「だってメイカさんは大丈夫そうですし」

シエル「もう発表の終わったアタシたちが行ったら邪魔になりそうだし……」

メイカ「え〜!途中まででいいから来てよ〜!お願いお願〜い!」


めんどくさいなぁ……。


マグ(めんどくさいなぁ……)


言っちゃった。


シエル「えぇっと……そ、それくらいなら……」

コウスケ「ダメだよシエル。この手の人は1回甘やかすと味を占めて毎回こっちが折れるまでしつこくおねだりするようになるから」

メイカ「マーガレットちゃん辛辣すぎない?」

コウスケ「体験談なもので(じー)」

メイカ「え〜?(てへぺろ)」


反省の色ナッシング。

まぁ今さらだけどさ〜。


コウスケ「ほれ、応援はするんで早く行ってください」

メイカ「雑〜!もっとこう可愛く♡できないの〜?」

コウスケ「メイカお姉さん♡(きゃるるん)」

メイカ「お姉ちゃんって言って♪」

コウスケ「メイカお姉ちゃん♡」

メイカ「きゃ〜♡」

コウスケ「はよいけ♥︎」

メイカ「は〜い♪いってきま〜す♪」

シエル「いいんだ…それで……」


おっと余計なことを言わないでもらおうか。


幸いメイカさんには聞こえていなかったのか、それとも単純に遊んでる時間が無くなったからなのか、彼女は楽しそうにこの場を後にした。


メイカさんが見えなくなるまで一応見送った俺たちは改めてステージへ向き直った。


シエル「…やっぱりマーガレットは手慣れてるわね……」

コウスケ「まぁ、ねぇ……」


いつもそうだが、この手のことで褒められてもな〜んも嬉しくないな……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


リンゼ「続きまして128番の方の発表です」


さて、メイカさんを見送って数人の発表を見た後、いよいよメイカさんの番号が呼ばれた。

それに応えて現れたメイカさんの姿に、主に冒険者を中心にした観客たちが盛り上がる。


観客「おぉ!Aランクパーティ、《イシオン》のメイカさんだ!」

観客「いったいどんな魔法を見せてくれるんだろうな?」

観客「これは期待できるぞ!」


シエル「メイカさんって人気者なのねぇ……」

コウスケ「普段が普段だから気づきにくいけど、メイカさんたちは有名だからね〜」

シエル「そうね。魔術ギルドでもメイカさんたちの話をしているのをよく聞くわ。それも良い話ばっかりね」

コウスケ「ハイランクなのに親しみやすいのも合わさってのものだろうね。実際ディッグさんとケランさんはともかく、メイカさんはあのノリの軽さだからそうは見えないでしょ?」

シエル「うん。でもたまに見せる真剣な顔は頼り甲斐のあるお姉さんって感じがするわ」

コウスケ・マグ「(それは確かに)」


ほんと、あの可愛いもの狂いだけをなんとかしてくれればな〜。

でも今さらやめられても逆に心配になるしな〜。

慣れちゃったんだもんな〜。


シエル「それで、メイカさんはどんな魔法を使うのかしらね?」

コウスケ「確か適正のある属性は風と土だから、やっぱそのどっちかかな?」

シエル「あるいは両方だったりして?」

コウスケ「ありそうありそう」


なんてシエルと盛り上がっている間にメイカさんは所定の位置に着いていた。


リンゼ「それでは128番の方、発表をお願いします」

メイカ「は〜い♪」


リンゼさんの声に返事をするメイカさんからは微塵も緊張を感じない。


やっぱり心配いらなかったじゃないか……。


マグ・シエル(「わくわく♪」)


しかし現役ハイランク魔法使いがどんな発表をするのか楽しみなシエルたちはそんな些細なことは気にせず発表を心待ちにしていた。


メイカ「それじゃ、やっちゃうわよ〜♪」


あまりにも軽く言い放ってから、メイカさんは小声で詠唱らしきものを唱え…そして、メイカさんの前に巨大な土の柱がそびえ立った。


シエル「大きい……」

マグ(立派ですねぇ……)

コウスケ「…そうだねぇ……」


ちょっと言い淀んだのは、俺の頭がピンクなのを自己嫌悪したからである。

理由は……分かる人には分かるということで……。


そんな俺を置いて、メイカさんは次の魔法を唱える。


すると今度は柱のてっぺんに風が集まり始めた。


シエル「わっ!すごい風……竜巻でも作るのかしら?」

コウスケ「でもなんで柱の上に……?」


メイカさんの意図が分からないが、あまり深く考える前に、シエルの予想通り土柱の上に竜巻が出来上がった。


しかし…


マグ(ちょ、ちょっと強すぎませんか……?)

シエル「すごいわね……近くにいたら吸い込まれそうだわ……」


メイカさんはまだ竜巻を大きくするつもりのようで、徐々に風のチカラを強めていった。


俺はというと、自分と感心して下が疎かになっているシエルのスカートをさりげなくプロテクトしていた。


だって吸い込まれるように風が発生してるから、スカートが客席側に向かって広がっちゃってるんだもの。


…まさかこれを狙ってるわけじゃないよなあの人?


なんて邪推してしまったが、さすがにそんなことはなさそうで、メイカさんは真剣な眼差しで竜巻を大きくしていた。


そしてある程度大きくしたところで今度は竜巻を縦に縦に伸ばし始めた。


シエル「う、上に伸ばすの?」

コウスケ「それに合わせて横幅を細めてってるねぇ……」

マグ(竜巻ってあんなペン先みたいになるんですねぇ……)


確かに……。

マグの例えは分かりやすいが、しかし俺的には風の回転が分かるのも加味して、どことなくドリルのように見える。


……ドリル?

えっ、もしかして……?


俺がなんとなく予想を立てているのをよそに、メイカさんはドリルのような竜巻を1度土柱から離し宙に浮かせ…風のチカラをより一層強くした。


高度が上がったことと竜巻が縦に細長く伸びたことで、風の適用範囲が狭まりスカートをガードする必要が無くなったのだが、メイカさんの発表に夢中の俺はそんなことはどうでもよくなっていた。


下から見られるかもだしとりあえず守っとけ、と思ってるというのもちょっとあったが。


とにかく、チカラを強めた竜巻は上空で停止。

そして…


メイカ「ふっ!」


メイカさんの気合いのこもった声が聞こえると同時に、竜巻は土柱へ急降下。


…どうやら俺の予想は正しかったようだ。


急降下する竜巻は土柱のど真ん中を突き破り、掘削していった。

そして削られたことで周囲に散るはずだった土の破片や塊たちは竜巻に巻き込まれていく。


そして竜巻がステージの地面に着く頃には、竜巻の表面の大半が巻き上げられた土柱の残骸で埋まっていた。


さながら土の竜巻(ランドストーム)である。


なんにせよ近づいたら大ケガでは済まなそうな危険な土の竜巻がそこにはあった。


その大きさと土柱をいともたやすく打ち砕いたパワフルさに会場も唖然としている。


そんなことは気にもしていない様子のメイカさんは、杖を左手で持ち右手の拳を握る。


すると土の竜巻は一瞬で小さな球体にまでまとめられ……。

メイカさんが拳を振り払うと、球はそれに合わせて炸裂。

会場全体に強風が吹いた。


強風と言っても当然吹き飛ばされるような代物ではなく、言うなればちょっと強いビル風みたいなレベルのものだった。


まぁあれも油断したら飛ぶんじゃないかってくらい強いやつがあるが……。

体を斜めらせないと進めないほどのとかもたまに起こるし……。


まぁそれはそれとして、あんなド派手な…しかも土がたっぷりと混ざり込んでいた竜巻が、圧縮からの破裂でそんなビル風レベルになるのはさすがにおかしい。


となるとやはりそこには魔力操作がされているのだろう。

土はおそらく圧縮の際に全て握りつぶしている。

砂粒にすらならないほどに。


そして破裂の際に魔力を操作。

観客に向かう風を弱め、残りのチカラは…空にでも放ったのだろうか?

なんにせよどこかに逃しているはずだ。


あのほんのちょっとアクションの間にそれらをやってのけるとは……


コウスケ「メイカさんってちゃんと凄い人なんだなぁ……」

シエル「そうね……」

マグ(ですね……)


俺たちはいったい何度目になるかの、メイカさんの評価改めをすることになった。


…多分またすぐに修正されるんだろうけどなぁ……。

日頃の行いがアレだから……。

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