367.休日のレッスン…事故と筋肉
なんかいろいろと不安になった俺たちは休日、どんなことをしているのかしっかり目に焼き付けようと決めた。
で、当日。
せっかくなので朝練ついでに、一緒に柔軟から参加させてもらった。
コウスケ「ぬわぁぁぁぁ…!」
リオ「うぉぉぉぉ…!」
シエル「んぅぅぅぅ…!」
…揃って体が運動不足を訴えてきた。
コウスケ「んんん…ふへぇ……バカな……これでも一応毎日運動してるのに……!」
リオ「はぁ……はぁ……運動してるっつっても、朝だけだろ…?それ以外は基本的に同じような姿勢でずっと仕事じゃねぇか……だからだよ……」
コウスケ「そっかぁ……」
動いてるといえど、朝だけじゃあこんなもんかぁ……。
シエル「ふたりはまだマシでしょ……?アタシなんかまったくやってなかったところにいきなりこれなんだから……」
リオ「いやいや……オレだってたいして変わらないからな……?確かに鍛治仕事は体力使うが、使うところは決まってるからな?こんな全身くまなくやったらそりゃ疲れるって……」
シエル「そういうもんなのね……」
あ〜…そうねぇ……。
あっちぃところでひたすら作業をする鍛治仕事は体力使うだろうけど、だからって体が鍛えられてるかどうかは別問題よなぁ……。
ユーリ「え〜っと……もうちょっと休む?」
コウスケ・リオ・シエル「「「お願いします」」」
ユーリ「あはは……まぁそうだよねぇ……」
すみませんねユーリさん……。
でももうちょっと……あと5分だけ休ませて……。
メリー「……おみず」
コウスケ「お〜…!ありがとうメリー…!」
メリー「……むふん♪」
「気が利いてるでしょ?」と、得意げに胸を張るメリーが持つトレイから水を受け取った俺は、お礼に彼女を撫でてから窓際に腰掛ける。
リオとシエル、そしてユーリさんも同様にメリーにお礼を言いながら水を受け取り、頭を撫でてから俺の隣に並ぶように座った。
みんなに撫でられて上機嫌なメリーも同じように並んで座り、トレイに残った自分の分のコップを手に取り口に運んだ。
それを見て俺たちも一気に水をあおる。
疲れた体に冷たい水がとてもよく沁み渡る。
しかし美味いは美味いが、やはりサフィールちゃんが出してくれた水の方が美味しく感じるのは何故だろう?
どちらも魔力によって生み出された純度の高い水だというのに。
ハンドメイドと機械化作業の違い…みたいなものだろうか?
リオ「にしても、柔軟からこれじゃあ先が思いやられるな……」
シエル「うぐっ……な、なによぉ…!リオだってぐったりしてるんだからとやかく言う資格は無いでしょ!」
リオ「まぁそうなんだけど……でもこの後ダンスの練習もするんだろ?」
シエル「うっ……」
ユーリ「その前に体幹トレーニングもしないとだよ?ふらふらしてたら危ないし、ダンスの見栄えも悪くなっちゃうから」
シエル「うぬぬぬ……」
そうだ…体幹トレーニングも必要だった……。
はぁぁ……こりゃ大変だぁねぇ……。
しかしシエルはむしろ心に火が付いたようだ。
シエル「…よし!そろそろ大丈夫!ユーリさん!次のトレーニングお願いします!」
ユーリ「うん、わかった。それじゃあ早速体幹トレーニングに移ろっか」
シエル「はい!」
元気な返事をしたシエルは空になったコップを置いて再び庭へと戻っていった。
コウスケ「…元気だねぇ……」
リオ「そのセリフはちょっと年寄りくさいぞ」
コウスケ「うるさいです〜」
正直自分でもそう思ったがとりあえず言い返しとく。
シエル「ほらふたりも早く立って!アタシよりは体力あるんでしょ!」
コウスケ「ういうい」
リオ「わかってるって…よっと」
シエルに急かされ俺たちも立ち上がって庭に戻る。
それから俺たちはユーリさん直伝の体幹トレーニングを始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ショコラ「つんつん」
チェルシー「ぷにぷに♪」
コウスケ「やめてー……」
昼。
子どもたちが遊び…いや、様子を見に来た。
そしてトレーニングによってリビングでぐったりしている俺たちを発見し、今ほっぺを突つかれて弄ばれている。
それに反撃する体力はもちろん残っていないので好き放題やられっぱなしである。
まぁほっぺつんつんなんて可愛いもん…あっ、こらてめチェルシー。
脇腹はやめなさい。
モニカ「もしかして午前中ずっとトレーニングをやってたんですか……?」
ユーリ「う〜ん……休み休みやってるんだけどなぁ……」
サフィール「それでマーガレットさんもリオさんもこれって……」
パメラ「さすがに笑い事じゃないね……」
マグ(この惨状を見て笑える人は悪魔ですよ……サフィールちゃんみたいな可愛い小悪魔じゃなくて、正真正銘本物の悪魔です……)
コウスケ(そうだね……この疲れた体に鞭打ってでもぶん殴りにいくと思う……)
魔法で念入りに拘束してな……。
安心せい…1発で勘弁してやる。
代わりにそれで確実に仕留めにいくから。
と、ここにいもしない仮想の敵への牙を研いでいるところに、フルールさんがやってきた。
フルール「みんなお昼は食べた?」
チェルシー「あっいえ、マギーちゃんたちを誘ってからと思っていたので……」
フルール「そう。ならここで食べてく?」
モニカ「えっ、いいんですか?」
フルール「えぇ。その子たちも今はあまり動きたくないでしょうしね」
コウスケ・リオ・シエル『ありがとうございま〜す……』
フルールさんの配慮に3人でお礼を言うと、他の子たちが苦笑した。
パメラ「あはは……それじゃあごちそうになっちゃおうか」
サフィール「ですね」
フルール「それじゃあパパッと作っちゃうわね」
ユーリ「あっ、私も手伝いますよ〜!」
さすがユーリさん……。
まるで堪えた様子もなく軽い足取りで手伝いに向かっていった……。
シエル「……アレくらいにならないといけないのね……」
コウスケ「いや…あの人は上澄みの上澄みだから……」
リオ「少なくとも付け焼き刃のオレらじゃ到底無理だから……必要最低限すら怪しいってのに……」
シエル「…それもそうね……」
そんなユーリさんに、俺たちは改めて格の違いを思い知るのだった。
ショコラ「ぷにぷに」
コウスケ「それでショコラもまったく飽きないね」
ショコラ「?楽しいよ?」
コウスケ「そら何より……私も触っていい?」
ショコラ「いいよ〜♪」
じゃあ遠慮なく。
つんつん
うん。
いつも通り触り心地のいいやわらかほっぺですな。
ショコラ「んふ〜♪」
モニカ「あっ!マ、マーガレットちゃん!私も…!」
コウスケ「ええよ〜」
チェルシー「じゃあアタシリオちゃんつつこ♪」
リオ「やめんか」
メリー「……つんつん」
リオ「うにゅ……やめい」
パメラ「シエル〜♪」
サフィール「シエルさ〜ん♪」
シエル「んぁぁ〜……」
みんなに伝染したほっぺのつつきあいをして、俺たちはフルールさんのご飯が出来るのを待った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お昼を食べて少しお腹がこなれてきたところで練習再開。
ダンスしながら魔法を使うというのを披露する関係上、体を動かしながら魔法を操るという高度な技術が必要なため、午後はその練習をするらしい。
本当はひとつずつじっくり腰を据えて教えたいらしいが、なにぶん時間がないのでそれは無理。
多少賭けになるが他の必要なことと並行して覚えさせようとなったそうだ。
なんか学校のカリキュラムみたいだな。
国、数、英、理、社etc.…と1日にいろんなのぶちこむところが。
卒業してから数年経って初めて思う、「あの時もっと勉強頑張ってればなぁ」と。
こういうのって必要になってから必要性を実感するのよな。
まぁそれ以上に必要なかったよなって思うことが多いんだけどさ。
ともかく、そういうわけでこの凝縮メニューになったわけだ。
もちろん1番大事なこの「動きながらの魔法」の練習が最も長いらしいが。
さて、そんな大事な練習はまず、簡単な動きをしながら簡単な魔法を使うところから始めるそうだ。
だがこれ、俺は以前試合の時にしれっとやっていたから分からなかったが、結構難しいものらしく、シエルもリオもかなり苦戦していた。
とはいえリオは鍛治仕事の関係上、ふたつ以上のタスクを同時進行させることに多少の慣れがあるようなので、単純に魔法の制御の問題だった。
基本的に使うときは座って狙いを定めて…といった具合なので、このように体を動かしながらというのは勝手が違って難しい…とは本人談だ。
なので1番苦戦しているのがシエルだ。
魔法の制御はずっと練習を重ねていただけあってなかなかの腕前だが、やはり体を動かしながらというのに苦労している。
そして元々の体力が無いのとお昼ご飯後というのが相まってとても眠そう。
この睡魔に負けたのが昨日の光景なんだな……。
今日は俺とリオも参加しているだけあって、さすがにシエルも寝ないと思うが…
シエル「……zz……」
リオ「うおっ!?」
ユーリ「シエルちゃ…!?」
シエル「…ハッ!?」
《マナウォール》。
なんか突然飛んできた風の球を咄嗟に魔力の壁で防ぐことに成功した。
おかげで俺もリオもケガはない。
しっかし…フラグ回収が早すぎる……。
ある意味優秀だな……。
サフィール「だ、大丈夫ですか!?」
リオ「あ、あぁ……なんとかな……助かったぜマーガレット……」
コウスケ「うん。でもびっくりしたねぇ」
リオ「ほんとにな……」
よしよし。
咄嗟のことで無詠唱で魔法を使ったことはバレてなさそうだ。
まぁこの子らならバレても問題なさそうではあるんだけど、一応ね。
壁に耳あり障子にメアリ―とも言うし。
誰だよメアリ―。
ショコラ「シエル!危ないよ!」
シエル「ご、ごめ…ごめんなさい……!わざ…わざとじゃない…ないからぁ……!」
モニカ「シ、シエルちゃん!?」
チェルシー「だ、大丈夫!?」
コウスケ(あっ、これは……)
マグ(何かを思い出してますね……)
コウスケ(まぁ十中八九俺らの初対面だろうね……)
マグ(あぁ~……)
初対面で魔法で不意打ちしてきたアレ。
もう完全に俺らよりシエルの方がトラウマになってるな……。
しっかり反省してるのはいいが、さすがに気に病みすぎだとも思うぞ?
とにかく落ち着かせよう。
というわけでいつものハグ療法。
コウスケ「は~いはい、大丈夫だいじょ~ぶ。わざとじゃないのはよく分かってるから」
シエル「うぅぅ…でもぉ……」
コウスケ「ん~……まぁそうだねぇ……寝ぼけて魔法撃つのは危ないね。これから気をつけようね?」
シエル「うん……」
コウスケ「ん、よろしい。もうバッチリ目ぇ覚めたでしょ?」
シエル「うん……」
マグ(そりゃそうでしょうねぇ……)
まぁ誰でも飛び起きるよな……。
コウスケ「がんばらなきゃ~ってのが先走っちゃったねぇ。お~よしよし、怖かった怖かった」
シエル「ぐすっ……ごめんなさい……」
コウスケ「いいよ~。リオは?」
リオ「え?あぁ…マーガレットが守ってくれたからな。次から気をつけてくれればオレもそれでいいぜ」
コウスケ「だってさ」
シエル「ありがとぅ……」
コウスケ「ん、お礼も言えて偉いよ~」
シエル「んぅ……」
ふぅ…だいぶ落ち着いてきたな。
そろそろ大丈夫だろう。
コウスケ「じゃっ、練習に戻ろっか?」
シエル「う、うん……」
俺がそう言うとシエルは不安そうに、それでもどうにか頷いてくれた。
まぁ怖いやなぁ。
コウスケ「大丈夫。私が支えてあげるから。ほら、こうして……」
俺はそう言いながらハグを維持した状態のままシエルの後ろに移動する。
そしてシエルの手をそれぞれの手で握ってクイクイっと動かしてみる。
う~ん……ほっそい腕してんなぁ……。
人並みかそれ以上くらいには食べてるはずなのに、この子の腕はいつ見ても変わらず真っ白でほそっこい。
心配になるレベルではないが、こうして手に取るとちょっと心配になる程度には細い。
マグの体なんて油断するとお腹がちょこっと出てきたりするのに……。
これが体質格差か……それかエルフ特有の体の構造だったり?
エルフって基本スタイルがいい印象だし。
前から思ってるけど、やっぱりシエルは将来美人さんになるんだろうなぁ。
スラっとした色白美エルフなシエル……。
楽しみな反面、変な虫がたかりまくりそうで心配だ……。
恐らく胸はまったく成長しないだろうことが救いか…
シエル「マーガレット?」
チェルシー「マギーちゃんぼーっとしてどうしたの?」
コウスケ「んぇ?」
やべっ。
脱線しすぎたみたいだ。
コウスケ「なんでもないよ~。ちょっとシエルの腕ほっそいな~って思っただけ」
パメラ「あ~、たしかに細いよねシエル」
サフィール「指まですらっと伸びていてキレイな腕ですよね」
チェルシー「ねっ!肌も真っ白で羨ましい~♪」
シエル「えっ?えっ?」
突然の褒めタイム突入に振り回されるシエル。
いっぱい褒められなさいシエル……。
あなたにはその資格があるわ……。
と、それはさておき…
ショコラ「メリーも細いよね~」
メリー「……むんっ(力を込める)」
リオ「まったく力こぶができないな」
メリー「……むぅ」
コウスケ(メリーはまぁしゃあないやねぇ)
マグ(ふふふ♪かわいいですねぇ♪)
コウスケ(可愛いねぇ♪)
向こうではメリーが力こぶを作らずしょんぼりしてたり…
モニカ「ユーリさんも、大きな武器を持ってるのに細いですよね」
ユーリ「えっ、そうかな?」
モニカ「はい。…ちょっと触ってみてもいいですか?」
ユーリ「いいよ~。はいどうぞ」
モニカ「ありがとうございます!わっ…見た目よりがっしりしてる……!」
ユーリ「ふふっ♪鍛えてるからね〜♪」
モニカ「でもお肌すべすべ……」
ユーリ「えっ」
モニカ「それにもちもちで気持ちいい……」
ユーリ「あ、ありがとう……///」
コウスケ(…二の腕って胸と同じ柔らかさって説があるんだよね)
マグ(えっ!?じゃあ確かめましょう今すぐ!今すぐっ!)
コウスケ(あーやっぱ無し。今の無しで)
マグ(もう遅い!)
コウスケ(くっ…強い……)
モニカちゃんがユーリさんの腕を触って照れさせていたりしていた。
収集をつけて練習に戻るべき…なのだが、シエルも楽しそうに笑ってる(照れ隠しに怒ってる)からもうしばらく見守ってあげようと思うし、今の失言でマグの探究心に火が付いちゃったしですぐには戻れそうにない。
まぁある程度落ち着いてからの方がいいか……。
半ば諦めた俺はマグの探究心を満たすため、哀れなターゲットであるユーリさんの元へと向かった。
その後、事態が収縮したところで練習は無事再開された。
なおユーリさんの二の腕は筋肉などによってお胸ほどふにふにではなかった。
残念だったな、マグ。
マグ(やっぱりユーリさんのふにふには至高ですね……)
気にしてないっぽいね、マグ。




