357.トリプル見舞い作戦…コンクールの開催日程
コウスケ「それではこれより会議を始めたいと思います!」
マグ・リオ・ショコラ(「「はい」」)
チェルシー「……zzz……」
サフィールちゃんまでもが周期に入っちゃったということで、俺たちはショコラちゃんたちが到着したのを確認してすぐにララさんに断りを入れて二階の会議室を借りて会議を始めた。
ちゃんと今日使用する予定が無いことも確認してあるので誰か呼びに来ない限りは大丈夫だろう。
それと会議室と繋がっているハルキとの通信部屋だが、こちらも隙を見て事前に話を付け、開けたとしても隣の物置と繋がるようにしてもらった。
まぁ開ける確率なんて本当に万が一程度なのだが、バレないに越したことは無いので念には念を入れておく。
さて、議長席(または誕生日席)から各々が飲み物を持って席についているのを確認した俺は、しっかり返事をしてくれた良い子たちに向けて頷く。
チェルシーがすんごく眠そうにしているが、お見舞いに行きたい一心で早起きし、家で寝過ごすということを力技で解決している頑張りを評価してそのままにしておく。
でも飲み物持ったままは危ないから…リオ、頼んだ。
あと初めて会議室で会議するからってソワソワしっぱなしのショコラちゃんはもうちょい集中してもろて。
とりあえずその辺りをどうにかしてもらったところでひとつ咳払いをしてから本題に入る。
コウスケ「こほん。さて…それじゃあ会議を開くに当たって軽く理由は伝えたけども一応もう一度。さっきララさんが、ジルさんからの連絡をもらってサフィールちゃんにもあの日が来たということを教えてくれました。なので俺たちはパメラ、モニカちゃん、サフィールちゃん3人のお見舞いに行くわけなのですが……そのためにはチームも3つに分けなければならないんですが……」
ショコラ「が…?」
リオ「……」
チェルシー「zzz……」
コウスケ「……そうなるともはや個別のお見舞いじゃんねということになります」
マグ(私たち9人のうち3人がお休み…シエルはともかく、メリーをひとりで帰らせるわけにはいかないから誰かが一緒じゃないといけなくて…そうなると同じく寮戻って練習をするシエルと一緒に行動してもらうのがよくて……)
コウスケ(残るは俺たち4人なわけだが……俺はみんなを甘やかす関係上1ヵ所に留まらないから除外して……)
マグ(シエルとメリーを合わせても5人……必ずどこかひとりになる所が出来ますね……)
コウスケ(うん……)
2・2・2で分かれても俺が移動する都合上一緒に行った子ひとりを残すことになり、じゃあ最後に合流するようにすると今度は最初に分かれる段階でひとりで向かわせることになる。
しかも時間的に高速移動できるココさんありの俺と違ってもうひとりは徒歩なので先に戻ってしまい結局残るのは俺ひとり……。
人目を気にせず甘えられるという点では喜ぶかもしれないが、ちょっと寂しいというのも否めない。
とはいえ最初に誰も行かないというのも無し。
それはパメラちゃんの件で懲りている。
じゃあどうすっか。
というのを決めるための会議です。
リオ「とりあえず、シエルとメリーは昨日モニカのところに行ってもらったし、今日は別のやつのところに向かわせるか?」
コウスケ「そうだねぇ……となると……サフィールちゃんのとこかな」
ショコラ「パメラのとこじゃないの?」
コウスケ「う~ん……本人たちは何も言ってこないから分からないんだけど……イメージ的に教会と吸血鬼っていう組み合わせがちょっとなぁ……」
リオ「あぁ~……」
ショコラ「?」
リオが反応を示したのは、おそらくそういう逸話やらおとぎ話やらが残っているからだろう。
実際おとぎ話の存在と思われていた我らがにっくき翡翠龍も実在していることが(最悪の形で)判明したことだし……。
だがここでさっき理解を示したリオからある情報が告げられた。
リオ「いや、でも前にフルールさんに聞いたとき、存在が知られたら面倒だろうけど誰かが口を滑らせない限り大丈夫だし、マーガレットの知り合いならまぁ変なことにはならないだろうって言ってたぞ?」
コウスケ・マグ「(えっ、そうなの?)」
リオ「あぁ。でもあくまでちょっと遊びに行く程度にしてほしいとも言ってたけどな」
コウスケ・マグ「(なるほど……)」
コウスケ(まぁ、教会には不特定多数の人がお祈りなりなんなりしに来るしな……変に交流関係を広めるのも心配か……)
マグ(いつの間にか知らない人と仲良くなってて、それが原因で何かあったら怖いですもんね)
コウスケ(そうだね……)
前世で言う、アプリやらゲームやらで知り合った人とリアルで会う…みたいな?
多分まともな絆も紡いでるんだろうけど、それ以上にトラブルになってるイメージが多いんだよなぁ…あれ……。
この世界じゃ誰とでも繋がれるなんてそんな便利で恐ろしいものはまだないけど、だからこそ余計に「いつの間にかいなくなってる」が起きやすいのかもしれないねぇ……。
奴隷とか実際その辺で捕まえてくるとかで調達する悪徳商人がいるらしいし。
というかメリーもフルールさんもその被害者側だし。
そう考えると結構譲歩してくれているのでは?
俺たちのことを信じてくれているのか、はたまたハルキのことを信用しているのかまでは分からないが、その心を裏切るようなことをしないようにしよう。
まぁ今回バリバリに散開する予定なんだけども。
ごめんなさいねフルールさん。
街の憲兵さんとかそこらに潜んでるらしい隠密ギルドの人とかが守ってくれるはずだから許して……。
この前ハルキが検挙率が高すぎて牢屋を増設したんだよ~とか言ってたから、それくらい頑張ってくれているっぽいわけだし……。
まぁそれだけ大なり小なり犯罪者がいたってことでもあるんだが……。
と、それよりも今はトリプルお見舞いだよ。
コウスケ「ん~…そういうことならまぁいいか……でもその理屈なら医療ギルドはどうなの?」
リオ「そっちはジルさんのあの感じを知ってるから教会よりはマシって言ってたぞ」
コウスケ「なるほどね」
マグ(ジルさんはそういうの嫌いそうですもんね)
コウスケ(うん)
まぁそれでもサフィールちゃんの姿には慣れないみたいだけど。
怖いね、固定概念って。
コウスケ「でもそれなら大丈夫だね。ん~…でもまぁやっぱ今日のところはサフィールちゃんのところで、明日パメラのところに行ってもらおう」
リオ「あぁ、それが良いと思う」
ショコラ「そっかぁ……でも来てくれるならいっか」
ショコラちゃんもあっさり承諾してくれたのでシエルたちはこれでよし。
あとは俺たちなわけだが……
コウスケ「……(じっ…)」
リオ「?」
ショコラ「マグどうしたの~?」
チェルシー「zzz……うへへ…おにーちゃ~ん……♪」
コウスケ「……誰をひとりにしても不安だなぁ……」
リオ・ショコラ「「えっ!?」」
ショコラちゃん、言わずと知れた寂しがり。
リオ、実は結構寂しがり。
チェルシー、想定の10倍 (精神的に)打たれ弱い。
結論、とても不安。
リオ「待て待て待て待て!さすがにひとりになるくらいで心配されるほどじゃないと思うんだが!?」
ショコラ「そうだよー!それにショコラは今日も昨日も一昨日も朝ひとりでギルドまで行ってるんだからね!」
コウスケ「ごめんごめん、冗談だよ」
半分くらいは。
その後、リオとチェルシーはパメラちゃんの方へ。
パメラちゃんと毎日会えるショコラちゃんは昨日と同じくモニカちゃんの方へ行くことに決まり、俺は順番的にもシエルの位置的にも最初にモニカちゃん、次にパメラちゃん、最後にサフィールちゃんの順に向かうことにした。
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ココ「着いた」
コウスケ「よっと…ありがとうございます、ココさん」
ココ「うん」
モニカちゃん、パメラちゃんへのお見舞い(&プラスαへの甘やかし)を遂行した俺はココさんに医療ギルドへ連れてきてもらった。
シエルとメリーがいるはずなので大丈夫だとは思うが、一度やらかしたトラウマからどうしても気持ちがはやってしまう。
それを頑張って抑えつつ受付で入館証をもらって、早歩きでサフィールちゃんの部屋へ向かう。
扉の前でシエルたちが困っている…なんてこともないようで一安心したところで、俺はサフィールちゃんの部屋の扉を叩いて中に呼びかけた。
コンコン
コウスケ「サフィールちゃん、マーガレットだよ~…?」
シエル「あっ、マーガレットが来たわよ」
中からシエルの声が聞こえてまた安心。
その声が切羽詰まってるわけじゃなさそうでこれまた安心したところで扉を開けたシエルに誘われて部屋の中に入る。
サフィール「マーガレットさん、ココさんも。わざわざありがとうございます」
コウスケ「やっほ、サフィールちゃん。大丈夫…そうだね?」
部屋の奥にあるベッドにいたサフィールちゃんは体を起こして普通にこちらに挨拶をくれた。
サフィール「はい。思っていたよりも大丈夫でした。私は軽い方みたいです」
コウスケ「そっか、よかった。苦しくないに越したことはないからね」
そっかぁ、サフィールちゃんは軽い方か〜。
軽いっつってもやっぱりいつもと比べて元気がだいぶないけど、それでも話すのもダルいほど悪いわけじゃなくてよかった。
でもそっかぁ…………いいなぁ……。
まだ2回しか経験してないとはいえ、あれの辛さはよく知ってるからなぁ……。
それが少しでも軽めだってのはとても羨ましい……。
サフィール「……(じっ…)」
コウスケ「ん?どしたの?」
サフィール「あっ…い、いえ…なんでも……」
心の中で羨ましがってる俺をサフィールちゃんがじっと見つめてきていたのだが、何故かなんでもないと言われてしまった。
う〜ん……?
マグ(コウスケさんコウスケさん。サフィールちゃんは比較的元気だから甘やかしてくれないのかなって今思ってるんですよ!)
コウスケ(あっ、なるほど……)
確かにサフィールちゃんならそう考えてもおかしくない。
最初に比べたらだいぶ甘えてくれるようになってきてはいるものの、今俺がトリプルお見舞いの最中で、しかも自分のとこが最後だということも多分知っているので、俺が疲れてるんじゃないかと気遣ってくれているんだろう。
確かにモニカちゃんとショコラちゃん。
パメラちゃんとチェルシーとリオ、とここまで時間の許す中で素早く甘やかしてきたのでちょっと疲れはあるものの、移動はココさん任せだし何より甘やかすことに体力的な苦は今のところない。
あるのは理性削りだけ。
だからサフィールちゃんは気にせず甘えていいんやで!
というわけで。
コウスケ「ちょっと失礼」
サフィール「?はい、どうぞ」
サフィールちゃんにひと言断ってからベッドに腰掛ける。
サフィール「?……!」
俺の行動に首を傾げていたサフィールちゃんだが、すぐに何かに気づいたようで顔を赤くしてソワソワし始めた。
うんうん。
君の想像しているようなことを今からしてあげるからね。
コウスケ「ほいじゃあサフィールちゃん。とりあえず撫でていい?」
サフィール「は、はい…!お願いします……!」
コウスケ「ん♪」
俺に若干遠慮していたサフィールちゃんだが、俺からの提案だというのもあり自分の欲にあっさり負けて俺に身を委ねてくれた。
うむうむ、素直なのが1番だよ。(どの口発言)
コウスケ「あっ、シエルとメリーももちろんするからね?」
シエル「そ、そう?アンタがやりたいっていうなら仕方ないわね〜♪」
メリー「……すなおじゃない(やれやれ)」
シエル「にゃっ!?」
わかりやすいから全然オッケーよ~。
とか言ったらシエル不貞腐れそうだから言わないどこ。
そんなこんなでご機嫌を取りつつ、平和な時間を過ごした。
なお今回はギリギリ遅刻する前に戻れた。
~~~~~~~~2日後~~~~~~~~
ララ「あっ、おはようマギーちゃん、リオちゃん」
コウスケ・リオ「「おはようございます」」
昨日の休みにみんなでローテーションを組んで、ガッツリと1日中お見舞い祭りを敢行した次の日のこと。
冒険者ギルドに着いた俺たちはララさんとあいさつを交わしたところで、彼女が持っているものが目に留まった。
リオ「あれ?ララさんそのチラシってもしかして?」
ララ「うん。魔術コンクールのお知らせ。念入りに……それはもう念入りに!見直しを済ませたから、日程の発表と同時に配ってもらおうと思ってね」
コウスケ・マグ・リオ「(「おぉ!」)」
ついに発表するのか!
まさか2週間近く確認作業を続けるとは思わなかったけど……。
とはいえ、その甲斐あって完璧なものが出来たのだ。
これで魔術コンクールも、シエルとゼリオラ少年の勝負も始まる。
…そしてグリムさんの後悔の日々がようやく終わってくれるかもしれない……。
まったくもうだねほんと……。
リオ「あっ、それじゃあオレ…こほん…私たちもまた手伝った方がいいですか?」
ララ「うん、お願いできるかな?」
リオ「はい、もちろんです」
コウスケ「了解です」
ララ「それとリオちゃん私の前でも「オレ」って言っていいんだからね?」
リオ「いや…それはちょっと……やっぱり態度が悪い気がするので……」
ララ「気にしないのにぃ……」
マグ(あはは……たしかに敬語だとちょっと距離を感じちゃいますよねぇ)
コウスケ(正しいことではあるんだけどねぇ)
俺と一緒に暮らすようになってから必然的会話する機会が増えたから、ララさん的には俺やチェルシーたちと同じ…とまではいかずとも、もうちょっと砕けてほしいんだろうなぁ……。
まぁ……そのうち砕けてきますよ。多分。
そんな無責任なことを考えつつ、俺とリオはひとまずギルド内に貼る分のポスターだけ受け取る。
この程度ならショコラちゃんたちが来る前に終わるだろう。
ララ「ちょっとだけ!一回だけでもいいからぁ…!」
リオ「それ逆に悲しくなるんじゃ……」
…そのうちと言わず、今にもリオが折れそうな勢いだな……。
まぁとりあえず俺は先に貼りに行っとくか……。




