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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第5章…魔術コンクール
362/436

355.鳥少女のお見舞い…とタクシー依頼

パメラ「ぐすん…ぐすん……そっか……モニカも……」

コウスケ「うん…だからココさんにも手伝ってもらって急いで来たんだけど……ごめんね……(なでなで)」

パメラ「ぐすっ……モニカも心配だけど……私だって怖かった……!」

コウスケ「ほんっとごめん……(なでなで)」


モニカちゃんのお見舞いに時間をかけすぎて泣かせてしまったパメラちゃんを撫でながらひたすら謝り続ける俺。

パメラちゃんを見てくれていた他の方々は気を使ってすでに退出済みだ。


お昼ご飯の関係上モニカちゃんの方が近いからという理由でパメラちゃんを後にしてしまったが、この子が実は超絶おビビりだということを完全に失念していた結果がこれだ。

猛省しなければ。


しかしこの様子じゃあみんなと班分けしてモニカちゃんのところと交互にお見舞いする作戦が使えないな……。

こんなことになる子を1日でもほっとけるわきゃないやろと。


だがパメラちゃんのところに入り浸ればモニカちゃんを寂しがらせることになる……。

あの子もあの子で寂しん坊だからなぁ……。


でも教会(ここ)と白兎亭は離れてるから、ココさんでもない限り生身で休み時間内に移動して話したり甘やかしたりするなんてのは不可能だ。


昼ご飯を適当に済ませることで短縮…ココさんにまたお願いする…あるいは、あとでララさんや見回りの兵士の皆さんとかに怒られてもいいから魔力をフル活用して全速前進するか……。


魔力でイバラも作れるからそれで某自由戦争みたいに立体軌道も取れるし、スイングアクションなんかも出来る。

何より空中には通行人や建物がないから一直線にいけるというのがデカい。


問題はやっぱり怒られる点と、前に試したときにマグを怖がらせたことなんだよなぁ……。

事情を説明すれば恐らく心優しいマグは承諾してくれるだろうが、身近なふたりの少女の笑顔のためにすぐそばの恋人を恐怖させるというのはいささか間違ってる気がしてならないのよな……。


ココさんの高速運搬を体験してるわけだし耐性は付いてるかもしれないが、それがココさんを信頼しているからという理由の場合はやっぱり危ないかもしれない。


となるとそのココさんに頼むのが1番良いことなわけだが、ココさんだって仕事がある。

隠密ギルドのナンバーワンなのだからきっと凄いある。

そうなると今日みたいに運んでもらうというのは難しいだろう……。


じゃあやっぱマグが高速移動に慣れたという方に賭けて空中移動か……?


パメラ「ぐす…ぐす……」


ん…ちょっと落ち着いてきたかな?

とりあえず明日以降のことはココさんに聞いてみてから考えよう。

今はパメラちゃんを寂しがらせた分甘やかしてあげよう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


さて、普段ならもうそろそろ戻らないと間に合わないくらいの時間なわけだが、パメラちゃんが離してくれる気配が無い。


まぁここまでで大体モニカちゃんのとこにいた時間と同じくらいなわけだし、最初の数十分を1人にしてしまった分、せめてモニカちゃんよりも長く一緒にいてあげないと納得もしてくれなさそうだしなぁ……。


う~む……やっぱ最初に誰も来なかったのってのが痛いなぁ……。

そこら辺も話し合っておくべきだった……。


と、それもまたあとでにして、パメラちゃんをどうするかだ。

まさか連れてくわけにもいかないし、誰かにギルドに行ってもらって事情を説明してもらうか……。


…そういえばこっちに着いてからココさんの姿を見てないな……。

他の皆さんと同じように気を使って部屋の外で待っててくれてるのかもしれないけど、ワンチャン仕事が入っちゃってる可能性もあるからな……。

もしそうならなおさらどうするか早く決めないと……。


パメラ「マグぅ……」

コウスケ「ん、どうしたの?」

パメラ「もう行っちゃうの……?」

コウスケ「えっ」

パメラ「だって…時間……」

コウスケ「あ~……」


俺に甘えつつもしっかり時間は見てたのね……。

う~ん…この流れなら抜け出せそうではあるけど……。


パメラ「……(そわそわ)」


…ダメだ!

こんな悲しそうな目で見つめてくるこの子を放っておくわけにはいかない!


コウスケ「もうちょっといるよ~」

パメラ「えっ?でも…大丈夫なの……?」

コウスケ「大丈夫大丈夫。ここに来るのにココさんに手伝ってもらったわけだしさ」

パメラ「ココさん?そっか、それならたしかに間に合うね。ココさん早いもん」

コウスケ「そゆこと」


まぁ今もまだいるかまでは分かんないけどね。

もしいなくて遅刻確定した場合は素直に全力で謝らせていただきますんでどうかお許しくださいララさん、リンゼさん。


パメラ「じゃあ…もう少しこのままね…?」

コウスケ「うん」


パメラちゃんのこの嬉しさで緩み切った顔に免じて許してつかぁさい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


パメラ「それじゃあお仕事頑張ってねマグ…」

コウスケ「うん」

パメラ「明日は先にこっちに来てね…?」

コウスケ「うん、そうするよ」

パメラ「でもモニカにも私みたいな思いさせちゃダメだからね…?」

コウスケ「う、うん。重々承知しております……」

パメラ「それならいいけど……」


ココさんに送ってもらえばギリギリ間に合うであろう時間までたっぷり可愛がったあと、パメラちゃんに見送りの言葉をかけられた。


そんな思いをさせたくないって気持ちは同じなんだけど、そのためには結構策が必要というか、無茶と無法も必要というか……。

ただまぁそれは明日からの話でもない。

このあと早速やるかもしれないことだ。

だってココさんいないかもだし……。


パメラ「それじゃあね…」

コウスケ「うん、またね」

マグ(お大事に)


まだちょっといてほしそうな雰囲気が出てるパメラちゃんだが、頑張ってそれを押し殺して見送ってくれた気持ちに答えて別れを告げる。


さて…あとはココさんがいるかどうか…


ココ「ん、終わった?」

コウスケ・マグ「(うわぁっびっくりしたぁ!)」


扉を閉めて2、3歩進んだところで背後から話しかけられた。

なんで今の今まで誰もいなかったところから話しかけてくるんだこの人は……!?


むぅ…しかしそんな今さらなことよりも大事なことが今はある。


コウスケ「え、えっと……もしかして待っててくれたんですか……?」

ココ「うん。あなたのことをギルドに送らないとだから」

コウスケ「あ、ありがとうございます…!」


なんと。

そこまで面倒見てくれるなんてありがたい限りだ。


ココ「それじゃあもう行く?」

コウスケ「はい、お願い…あっ、とその前に教会の方々に挨拶してからでいいですか……?」


マグの地元の方々との交流兼、パメラちゃんを見守ってくれたお礼を言わないとだからな。


ココ「わかった。それなら外で待ってる」

コウスケ「はい。ありがとうございます」


よし、OKをもらったとはいえこれ以上お待たせするわけにはいかないし手早く済ませるぞ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


パメラちゃんのことを見てくれていた教会のシスターやロッサ村のパン屋さんらしいルネというおばちゃ…えー…お姉様。

そして教会の管理者であるナバロさんにもしっかり挨拶してきたところで教会を出る。


と同時にフライアウェイ。


コウスケ・マグ「(うわぁぁぁ!?)」

ココ「そろそろ慣れて」

コウスケ「瞬きしたらいきなりお空は慣れませんて!」

ココ「むぅ」


しかも自分のチカラだったりなんらかの仕掛けを作動させたみたいな、自分の認識の範囲内ならまだしも、他の人のチカラによるものなんてそうそう慣れるもんじゃないって!

自分の身体能力が高すぎてちょっと麻痺してるんじゃなかろうか……?


なんて若干失礼に当たりそうなことを考えてたらまた感じ取られそうなのですぐに切り替える。


あっ、そうだ。大事なことを聞かないとだった。


コウスケ「あの、ココさん」

ココ「ん?」

コウスケ「えっと……明日以降のスケジュールと言いますか……近い内にお仕事があったりしますかね……?」

ココ「いや、特にない。他のメンバーが私が出る幕が無いほど頑張ってるから」

コウスケ「ほんとですか!そ、それなら、もしよければしばらくの間こうして運んでもらえないでしょうか!」

ココ「ふむ……」


屋根を飛び移りながら目を閉じて考え始めるココさん。

……目を閉じてる!?


コウスケ「こここここココさんっ!?目、目開けて!?怖い怖い怖い怖いっ!」

ココ「ん…大丈夫。見えなくなったくらいで落ちるようなミスはしない」

コウスケ「ココさんが大丈夫でも私の精神衛生的にはよろしくないんですが!?」

ココ「そう……もろいのね」

コウスケ「もろいのねっ!?」

マグ(強者の感想だ……)


強者すぎるよ。

というか強い弱いの問題なのかこれは?


俺の必死の訴えをとりあえず聞いてくれたらしいココさんはちゃんと目を開けてから再び考え込むように唸る。


ココ「友達のために体を張るのは良いと思うけど、私を足として使おうというのはまた別」

コウスケ「うっ…そ、そうですよね……」


コウスケ(それはまぁそうだな……)

マグ(馬車代わりに使われるなんて良い気分はしませんよねぇ……)


とても当たり前な理由で断られてしまった……。

う~む……こうなりゃやはり自力で立体起動するしか……


ココ「…勘違いしてる」

コウスケ・マグ「(えっ?)」

ココ「お見舞いのためなら私も力を貸すのはやぶさかじゃない。でもタダで便利な足扱いは私だって思うところがあるだけ」

コウスケ・マグ「(え~っと……?)」


マグ(足扱いに怒ってるってことですか……?)

コウスケ(いや、ちょっと違うような……?)


怒ってるっちゃ怒ってるんだろうけど、それだけじゃない感じ……。

ん~……あっ、タダ……?


コウスケ「もしかして……報酬次第…ということですか……?」

ココ「……(にやり)」

マグ(あっ、なるほどぉ……)


そういうことだね。

ココさんも仕事人。

依頼ということなら足代わりもやってあげると。

今日やこれまでのものはココさんの善意によるもので、こちらがタクシー代わりにしようというならしっかりもらうものをもらうということだ。


まぁ確かに、甘えすぎではあったか。

仕事が無いなら!なんて言われたら、暇なら手伝ってよ的なニュアンスで捉えられてもおかしくないしな。

こうして考えるとなかなか酷いな……。


マグ(それじゃあ報酬を考えないとですね)

コウスケ(報酬かぁ……やっぱりお金とか?)

マグ(そうですねぇ……でも運んでもらうのって大体おいくらくらい払えばいいんですかね……?)

コウスケ(わからん……馬車とかと同じ相場かな……?)

マグ(でも馬車は何日かかけて他のところに行くからの値段ですよね……街の中だとどうなんでしょう……?)

コウスケ(え~っと……)


他の街に行く馬車の値段から逆算……いや、ダメだ。

俺そんなの知らんもの。

まったく出る気が無いのがバレちゃうな。


んー…あっ、そうだ。

確か街の端からいくつかの中継地点を挟んで反対まで行く、街中馬車があったはずだ。

言うなればバスだな。

この街かなーり広いからな……。


人通りが多い大通りからちょっと外れた道を中心に走ってるから見る機会はほとんどないけど、体力の無い人や足腰の悪い人用にそういうものがあると教えてもらったことがある。


それを参考にすれば分かりやすそうだ。

まぁ……そんな後から思い出すようなものの料金なんざ覚えてるわけ無いんだけどさ。


でもそれなら自分で調べるなり人に聞くなりすればすぐに分かるだろうし、タクシーということで少し色を付けた値段にしてもそんなお高くつくということは無いはずだ。


…少なくとも、毎月やることになりそうだから俺の月給を上回らなければどうにかなる……。

よしっ。


コウスケ「ではココさん!私から依頼があります」

ココ「うん。どんなの?」

コウスケ「……ちょっと待ってくださいね!」

ココ「あっうん」


依頼内容まとめてなかった。

ココさんが気を利かせて俺を下ろしてくれたので落ち着いて考える。


マグ(コウスケさ~ん……)

コウスケ(ごめんて)


マグに呆れられながら話をまとめて改めてココさんと向かい合う。


コウスケ「ココさん。私からの依頼です。パメラちゃんとモニカちゃんが治るまで、お見舞いに向かうときの行きと帰りに私を運んでください」

ココ「報酬は?」

コウスケ「それは…その、相場が分からないので、街の中を移動する馬車の値段を調べてからでもいいですか?」

ココ「ん~……」


俺の答えに悩むココさん。

もしかして馬車一回分って思われた?


コウスケ「えと…もちろんちゃんと回数分払いますので……」

ココ「あっ、そうじゃない」

コウスケ・マグ「(えっ?)」


そうじゃないとは?


ココ「依頼をするときに、相場を知らないとか言わない方がいい。足元を見られるから」

コウスケ「あっ…は、はい…すいません……」


引っかかったのそこだったか……。

確かにちょっと迂闊な頼み方だったな……。

相手が悪いやつなら絶対吊り上げられてる。


ココ「それとお金はいらない」

コウスケ・マグ「(えっ)」

ココ「依頼とはいえ友達の、しかも子どもからお金をもらうのはさすがに気が引ける」

コウスケ・マグ「(な、なるほど……)」


そういうの気にする方なんだ……って、お昼ご飯のときにもその繊細さがちょっと見えてたか。

あれ?


コウスケ「えっと…それじゃあ何を報酬にすれば……?」

ココ「……期間中だけでいいから、またみんなと食事がしたい……」

コウスケ・マグ「(へっ?)」

コウスケ「そ、そんなことでいいんですか?」

ココ「……(こくり)」


ココさんには珍しく両手の指の先だけ合わせて少しもじもじした様子を見せる。


わぁ……とても……


コウスケ・マグ((かわいい……))


普段の様子からは想像も付かない乙女的反応に俺とマグの感想が揃う。


そうかぁ……それが報酬……。


コウスケ「いや、それぐらいなら別に報酬とか関係なしにいつでもご一緒いたしますよ?」

ココ「う、うん……あなたもあの子たちもそう言ってくれる気はしたのだけど……その……あまり他人と食事をすることが無いから……少しずつ慣れさせて……」

コウスケ・マグ「(な、なるほど……)」


ココさん……フィジカル極めすぎてコミュ障なのか……。(凄く失礼)

しかし気持ちはよく分かる。

俺も別に人付き合いが得意なわけでは無いしな。

むしろ苦手分野です。


コウスケ「まぁでもそういうことならぜひぜひお願いします!みんなも喜びますよ!」

ココ「そう……?」

コウスケ・マグ「(はい!)」

ココ「そう……///」


今度は明確に照れるココさん。

う~ん…良き……。


ココ「……(サッ)」

コウスケ・マグ「(あっ!)」


ココさんの照れ顔を眺めていたら目を手で覆われてしまった。

むぅ~……。


そんな俺の視界を奪ったままココさんが話を続ける。


ココ「…とにかく、依頼はそれで受けるから」

コウスケ「あっはい、よろしくお願いします」

ココ「ん……それじゃあそろそろ……あっ」

コウスケ・マグ「(?)」


また俺を担ごうとしたココさんが何かに気付いたような声を出した。


コウスケ「どうしたんですか?」

ココ「…ごめん」

コウスケ「えっ、どうしたんですか!?」

ココ「時間…もう過ぎちゃったかも……」

コウスケ・マグ「(時間……)」


言われて俺は首にかけてある懐中時計を服の中から出して時間を見る。


その針はとっくにお昼休みの時間を過ぎたところを指していた。

作者は遅刻が決まると逆にゆっくり行っちゃおって思うタイプです。厄介。

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