353.Wお見舞い作戦…の交渉
シエルをめちゃくちゃ甘やかしてから仕事に戻った俺たちは、その後もつつがなく業務を終えてあっという間に帰る時間になった。
チェルシー「みんなじゃあね~!あっ、マギーちゃん。明日シエルちゃんの様子教えてね!」
コウスケ「うん、わかった。じゃあね」
チェルシーとそんな約束をして帰路につく俺たち。
昼休み後の様子が知りたい気持ちは分かる。
俺もどうだったか早く知りたいからな。
まぁでも多分……
コウスケ「ただいま~」
シエル「あっ、おかえり~♪」
うん、声だけで分かる。
絶好調だ。
お昼にしこたま甘やかした甲斐があったようでなによりだ。
その頑張りはシエル本人からお風呂で身振り手振りも添えて教えてもらった。
終始楽しそうにぴょこぴょこ動く姿が可愛いねってマグと話してたらちょいちょい聞き逃したのがなんとも申し訳ない。
しかしこの様子なら翌日以降も心配いらなそうだ。
俺の心臓への負担以外は。
いや、ほんと……明日からも同じようにやるとなるととても大変なんじゃが……。
あのあと他の子たちにも当然ねだられたわけだし……。
つつがなく業務終えたの、厳密に言えば俺以外の子たちだけだし……。
シエルを甘やかす現場を見たから…いや、まぁ見なくても俺だけ呼び止められた時点でみんな察してただろうけど、今回はシエルの方からもめちゃくちゃ来たからなぁ……。
それに触発されたのか、普段恥ずかしがって甘えつつもちょっとまだ一線を引いてる感じの子たちすらいつもに比べてかな~り積極的に来て大変だった……。
いつもは元気なワンコみたいな感じのショコラちゃんですら、今日はちょっとしっとり感が……ううむ……思い出しただけでドギマギしてくる……。
普段はつらつとしてる子のしおらしい場面なんて万人に刺さるというとるに……。(個人の感想です)
なんて思い返してはいるものの、俺にはまだメリーと…大本命であるマグの相手が残っているわけで……。
こんな余裕かましてる場合じゃないんだよなぁ……。
まぁどっちかというと現実逃避してるだけだが。
マグは言わずもがなとして、メリーに関してもモニカちゃんのアレのときに宣言かましてから、普段はちょっと距離置かれたかな~…?くらいなのだが、甘えるとなったらそれはもう…我慢していたものをすべて吐き出すかのごとくどちゃくそ甘えてくるからなぁ……。
で、ふたりとも(厳密に言えばサフィールちゃんやチェルシーもなのだが…)俺が我慢しているのを知っているにもかかわらず。
むしろそれを知っているからこそ楽しそうに誘惑してからかってくるのだ。
それをマズいと思いつつもやぶさかではないので止めない俺も原因だが。
というかそうか。
マグの生理が終わったから、時期的にモニカちゃんのがそろそろ来るな。
そいで、落ち着いてからさらに一週間後にライン超えの緊急医療…と……。
……医療と言ったら医療です。
断じてやましい気持ちがあるわけでは…………ない。
ま、まぁあれだ。
これはモニカちゃんがその期間に入ったら心構えをしておけばいいやつだから。
今急いで覚悟を決めとく必要はないからな。
とりあえず目先の問題から考えていこう、そうしよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なんて考えていた次の日。
アリシア「ごめんね。モニカ、アレの日に入ったみたいで……」
コウスケ「えっ」
日課になっている仕事に行く前のご挨拶をしに行ったら、昨日俺が建てたフラグがさっそく回収されてモニカちゃんがダウンした。
どうして人はフラグを建ててしまうのだろうな?
アリシア「お見舞いに来てくれたらモニカも元気が出ると思うから、出来ればお願いね?仕事が忙しいとかだったら全然かまわないから」
リオ「いえ、大丈夫ですよ。な?」
コウスケ「うん。仕事も特段多いわけじゃないからね」
普通なら毎日終わるか終わらないかの量があるはずなのだが、そこはララさんという人物兵器がいる我が冒険者ギルド。
恐ろしい速さで仕事が片づけられていくので、俺たちはいつも定時帰りが出来るくらいには余裕があるのだ。
ララさんも最近はちゃんと毎日家に帰っているとチェルシーが嬉しそうに言ってたし、ハルキがガチ説教でもしてくれたんだろう。
そうでもないと休みそうにないからな、あの人……。
コウスケ「それじゃあまたお昼に来ますね」
アリシア「ありがとう、お願いね♪」
コウスケ・リオ「「はい」」
とりあえずモニカちゃんのお姉さんであるアリシアさんにすべてを任せて仕事に行くことに。
できれば誰か一人くらいモニカちゃんに付き添わせたいが、いくら人間兵器がいると言えどガッツリ休むのは少なめに抑えたい。
メリーや、今ちょうど練習期間で仕事が無いシエル辺りを…とも考えたが、お昼ご飯だったり他にも何かとアリシアさんたちに世話をかけてしまいそうなのがなぁ……。
それではモニカちゃんの寂しさは埋められてもアリシアさんたちが結局仕事に集中できなさそうなので却下。
だからと言ってフルールさんを派遣するのも気を使わせそうだしな……。
なんにせよあの家の住人でない俺が勝手に決めるものでもない。
ちゃんとアリシアさんなり彼女らのお兄さんであるリンクスさんに相談してからじゃないとな。
勝手に人を派遣するなんて有難迷惑になるだろう。
それは避けたい。
お昼に行った時に聞いてみようかな。
まぁ本人の許可も得ないとなんだけど……。
モニカちゃんも…シエルたちも……。
その辺も含めて聞いてみるか~。
そう考えながらリオと一緒に冒険者ギルドへと向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コウスケ・マグ・リオ「(「えっ!?パメラも!?」)」
ショコラ「しーっ!声が大きいよ…!」
俺たちより少しあとにやってきたショコラちゃんからそんなことを聞かされた俺たちは驚きのあまり思わず声を上げてしまい、揃ってショコラちゃんに怒られた。
デリケートな話題であるとショコラちゃんも理解してるんだな……。
まぁ俺たちも教えたし、教会の人たちも言ってくれてたのかもしれないしな。
ともかく、咄嗟に口を押えて押し黙った俺たちを見て頷きながらショコラちゃんが尋ねてきた。
ショコラ「も、ってことはもしかして誰かもなっちゃったの?」
コウスケ「うん、モニカちゃんがね…」
ショコラ「そっかぁ…そういえばマグの後だったもんね」
リオ「あぁ。でもまさか被るなんてなぁ……」
コウスケ「うん……」
マグ(こんなキレイに同じ日になるなんてびっくりですねぇ……)
コウスケ(ほんとにね……でもパメラちゃんなら、教会で暮らしてるから他の人たちがいろいろ助けてくれるかな)
マグ(ですね。とはいえ様子は気になるので、あとでパメラのとこにもお見舞いに行きませんか?)
コウスケ(うん。ん、あ~でもそうなるとお昼休憩だけじゃ短すぎるなぁ……)
マグ(あぁ~…たしかに……教会と白兎亭も結構離れてますし……)
コウスケ(そうなんだよねぇ……でも今日はこっち、明日はあっちってやるのもちょっと気が引けるというか……)
マグ(パメラもモニカちゃんも寂しがり屋さんですしねぇ……しかもコウスケさん、シエルのことも甘やかさないとですし……)
コウスケ(そうだよ、シエルの分も合わせたら時間がまったく足りなくなっちゃうぞ……どうしよう……)
シエルとモニカちゃんの位置は近いし、なんならシエルは説明すれば一緒にお見舞いに行きたいと言ってくれるだろうからそこは問題ない。
問題はモニカちゃんとパメラちゃんの位置が遠いことだけだ。
それだけでめっちゃ悩むことになっているわけだが……。
う~ん……どうしたもんか……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
結局明確な答えが出ないままもうすぐお昼休みに入ってしまう時間になってしまった。
このままでは俺が考案した苦肉の策、「身体強化して屋根の上を全力疾走する」を実行することになるかもしれない。
街中でそんなバカ強い魔力を使ったらさすがに誰かに止められてお見舞いどころじゃなくなりそうだが、もしかしたらワンチャン許してくれる可能性もあるかもしれないかもしれないんじゃないかなきっと。
いやしかし……!
だからってマグを前科持ちにさせるかもしれないようなことをするのは……!
ぬぅぅぅぅ……!
ココ「どうしたの?」
コウスケ・マグ「(ぎゃあっ!?)」
悩みながら書類を整理する俺の後ろから突然ゼロ距離で声をかけられマグと共に驚きの声を上げた。
慌てて振り向くと、そこにはである最強隠密ダークエルフ…ココさんの姿があった。
コウスケ「コ、ココさん!いつの間に!」
ココ「朝見かけたときから何か困ってたみたいだからずっと様子を見てた」
コウスケ・マグ「(朝から!?)」
ココ「うん(こくり)」
まさかそんな手前から見られていたとはまったくもって気が付かなかった……。
これ過去の観察時間と比べても圧倒的に最長記録を上回ってるだろ……。
というかここ鍛冶ギルドの中のさらに奥の部屋なんですけど……いくらココさんでも職員じゃない人が入ってきていいのか……?
……俺らも似たようなものだし今さらか……?
超絶ガバセキュリティ……。
なんて考えている間に他の子たちとも軽く挨拶を済ませたココさんが俺に尋ねてきた。
ココ「それでどうしたの?」
コウスケ「あっ、え、え~っとですねぇ……」
鍛冶ギルドのセキュリティは心配だが、ここは一旦置いといてココさんの質問に答えるために簡潔に話をまとめようと思考を巡らせる。
さすがに何で悩んでるのかまではバレてないのか……。
まぁさすがにな……。
ココ「教会と白兎亭の距離をどうするか考えてたの?」
コウスケ「は、はい、そうです……」
ピタリ賞です。
というかこの流れはもしや……?
コウスケ「えっと…もしかして、連れてってくれたり……?」
ココ「……う~ん……」
コウスケ・マグ「(えっ!?)」
俺が期待を込めて尋ねてみると、ココさんはいつもの真顔のまま手をアゴに当て考えるポーズを取ってしまった。
まさかの躊躇い!?なんで!?
朝からずっと俺を見てるくらいなんだから多分今仕事ないでしょ!?
あっ、それともそろそろお仕事とか……?
そ、それなら引き留めるわけにはいかないけど……。
俺が引き留めるべきか否か迷っていると、ココさんがじっとこちらを見つめていることに気付いた。
コウスケ「コ、ココさん……?」
ココ「…くすっ。冗談」
コウスケ・マグ「(えぇっ!?)」
じょ、冗談!?
……ココさん冗談とか言えたのか……。
なんて考えが透けて出ていたのか、ココさんが俺に顔を近づけてこう言った。
ココ「失礼」
コウスケ「うぇっ!?す、すみません…!」
この人心まで読めたの!?
ココ「……本当に失礼なこと考えてたんだ?」
コウスケ「え?あっ!」
や、やられた……!
カマかけられた!
やばいやばい……!
モニカちゃんとパメラちゃん、ふたりともお見舞いできるチャンスがなのに……!
というかそれ以前に人として謝らないと……!
コウスケ「あ、あの…ココさん……す、すみません……ココさんが冗談を言うなんて珍しいなって思っただけで……そ、それ以上のことは決して……」
ショコラ「あのあの、マグはいろいろ考えちゃうだけで、悪口言おうとか考える子じゃないんです…!」
リオ「そうです!マーガレットは悪いやつじゃないんです!どうか許してやってください!」
チェルシー「ココさん、お願いします」
ショコラ・リオ「「お願いします!」」
コウスケ・マグ「(ショコラ……リオ……)」
必死にフォローしてくれて、頭まで下げてくれるみんなの姿に感動しつつ、俺も慌てて頭を下げる。
コウスケ「お願いします!」
ココ「うん、いいよ」
みんな『(えっ?)』
なんともあっさり許されすぎて揃って呆気にとられる俺たち。
ひとり、こうなることが分かっていたかのように落ち着いているチェルシーが補足を入れた。
チェルシー「ココさんだってマギーちゃんがそんな子じゃないっていうのは分かってるよ~」
コウスケ「えっと……じゃ、じゃあ……?」
ココ「これもからかっただけ。だからそんな悲しそうな顔をしなくていい」
コウスケ「ほ、ほんとですか……?よかったぁ……」
うぅ…すんごい心臓に悪い……。
自業自得な部分はあるとはいえ、人が悪いよココさ~ん……!
ショコラ「よかったねマグー!」
リオ「ひやひやさせんなよなー!チェルシーもわかってたならもっと早く言ってくれよぉ!」
チェルシー「あはは!ごめんね~?でもアタシだって、怒ってるわけじゃなさそうってことしか分からなかったから、何とも言えなかったんだよ~」
許されて安堵した俺にショコラちゃんが飛び込んできて、リオも大声で話しつつもこっそり俺の服の裾を掴んでいる。
不安にさせてしまって本当に申し訳ない。
ココ「ふむ。これはあんまりしない方が良さそう。うん、覚えた」
コウスケ「?」
ココ「ララが、冗談なんかも覚えた方が人と仲良くなりやすいと教えてくれたから、あなたで練習していた」
コウスケ・マグ「(えっ)」
お、俺練習台っすか……?
ココ「でも相手が本当に悲しそうになってしまうのもあるのを覚えたから、次からは気をつける。ごめんなさい」
コウスケ「あっ、いえいえ全然大丈夫ですはい……?」
逆に謝られてしまった……。
ガチの練習台なんな……。
というか…発言が心を理解しようとするアンドロイドみたいなんじゃが……。
ココ「…やっぱり失礼なこと考えてる?」
コウスケ「い、いえ!そんなことはないです!」
二回目はさすがに引っかからんぞココさん!
そもそもアンドロイドとか言っても分からないだろうし。
コウスケ「えと……それでココさん。白兎亭と教会の間の移動についてなんですけど……」
ココ「うん、協力する。任せて」
コウスケ・マグ「(やった!)」
コウスケ「ありがとうございます!」
ココ「ん」
マグ(これでふたりのお見舞いに行けますね!)
コウスケ(うん、ありがたいね!)
ココ「でも、他の子たちはやめておいた方がいいかも」
みんな『(えっ?)』
コウスケ「どうしてですか?」
ココ「前にララを運んだ時に、物凄く怖かったって言ってたから、子どもはもっと怖いかも」
コウスケ「な、なるほど……言われてみれば確かに……」
チェルシー「ココ姉すごいからねぇ……アタシもちょっと遠慮しとこうかな……」
ショコラ「そんなになんだ……」
リオ「えっと……ちなみに白兎亭から教会までは何分あれば着くんですか?」
ココ「ん…大体10秒くらい。少しゆっくりだと2分はかかるかも」
リオ「じゅ、10秒……」
チェルシー「ゆっくりでも2分なんだ……」
ショコラ「すご~い!はや~い!」
マグ(いや早いすぎるよ……)
ひとりキャッキャッと賞賛するショコラちゃんを除き、俺たちはあまりの速さに驚きすぎて若干引いている。
しかも多分俺を運んでるとき、移動時間的にそのゆっくり目の方なんだよな……。
そっかぁ……あれでゆっくり目かぁ……。
それでも強化魔法でGに耐えるか他の魔法で風とかをシャットアウトしないとなんだけどなぁ……。
しかもユーリさんですら息が上がる速度だったんだけどなぁ……。
そっかぁ……。
コウスケ「ま、まぁでもそんだけ早く着くなら、シエルとモニカちゃんだけじゃなくて、パメラともしっかりお話しできるね!」
チェルシー「そ、そうだね!しっかりお見舞いしてあげてねマギーちゃん!」
リオ「オレたちも明日はパメラの方に行くからな!」
ショコラ「ショコラたちの分までよろしくね!」
コウスケ「うん、任せて」
よし、とにもかくにもWお見舞いの目途が立ってよかった。
さすがに明日以降もココさんに頼るってのは無理だろうけど、今日ふたりに会って事情を説明しすればとりあえずは納得してくれるだろう。
そうすれば明日からはみんなと二手に分かれてのお見舞いも出来るはず。
さらに言えば、多分甘やかすことになるだろうけど、その現場を他の子たちに見られづらくなるのもありがたい。
見られたら恥ずかしいからな。
甘えてた子も。
甘やかして俺も。
…何度もやって何度も見られてるのに未だに恥ずかしさが抜けないのは、やっぱみんなそれぞれの甘え方があるからだろうな……。
それも俺にだけ見せるような特別な甘え方が。
ココ「それじゃあ食べ終わったころにまた迎えに行くね」
コウスケ「えっ?ココさんは一緒に行かないんですか?」
ショコラ「えーどうして!?一緒に食べましょうよー!」
ココ「私は話すのは苦手だから、一緒にいてもきっとつまらないよ?」
チェルシー「そんなことないよー!ねぇ~いいでしょ~?」
リオ「オレもココさんがいた方が楽しいと思います!」
ココ「えっと……」
みんなの純なアタックにしどろもどろなココさんが、助けを求めるように俺の方を見つめてくる。
う~ん、レアな光景だ。
そして残念ながらココさん、俺も参加希望派です。
コウスケ「ココさん、私からもお願いします。それに一緒に食べた方が待たせてるって思わなくて気も楽になりますし……」
ココ「ん……わかった」
子どもたち『(やった~!)』
コウスケ「ありがとうごさいます」
ココ「ん……」
というわけで、俺たちは「Wお見舞い」と「ココさんと食事する」のふたつの権利を勝ち取った。
う~ん……やっぱ純粋な子って強いな!
なんか前も同じような感じでココさんを誘った気がしますが…まぁショコラちゃんが特效持ってることに変わりはないですね。
ワンコ娘可愛い。




