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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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35.コーディネイトタイム…&慰めタイム?

フルールさんとメリーちゃんに合う服を探しに行ってくれたローズさんが戻ってきた。


その手には大量の服が抱えられている。


…いや、多いな!?


「お待たせぇ〜♡似合う服をって思ったら、あれもこれもって悩んじゃって。これでも厳選した方なのよ?」


というわけでその大量の服の中から、まずはメリーちゃんに合う服を探し始めることにした。


最初は真面目に考えていたのだが、途中から全部似合うんじゃね?ということに気付き、全部着せてみることにした。


決して面倒になったからではない。


そして着せ替えを始めて20分ほどで、ローズさんが持ってきたメリーちゃん用の服は全て着終わった。


結論は全部似合っていた。


中でもメリーちゃんが反応を示したのは、黒いフリフリふわふわな上下服、ゴスロリファッションだった。


紫の髪に黒い服は重くなってしまわないか少し心配だったが、むしろ黒い服が紫色の髪の美しさを際立たせ、本物のお人形のように可愛らしかった。


個人的にも吸血鬼とゴスロリの組み合わせは大好物なので、めちゃくちゃテンションが上がった。


そうじゃん吸血鬼じゃん。


というわけで俺は、ローズさんに日傘はないか聞いてみた。


「ローズさん、ここに日傘って置いてますか?」

「日傘!良いわね!この服にぴったり合いそうなやつがあるのよぅ♡」

「わっ!ホントですかっ!?見たいです……けど!それもありますけどそうじゃなくてですね……」


危ない危ない……。

危うく本来の理由を忘れるところだったぜ……。


俺はどうにか落ち着きを取り戻し、ローズさんを手招きして、彼…彼女の耳元で小さく喋る。


「先ほどの話で彼女たちが人間ではないと気付いているとは思います」

「そうねぇ…「人間」って思いっきり言ってるしねぇ」

「はい、私もちょっと気になることがありまして……。彼女たち、心なしかし日差しに苦手意識があるような気がして…なので、そういう意味でも日傘を用意して欲しいんです」


さすがに彼女たちの種族が《吸血鬼》だとは言わずに、それらしいことを言って誤魔化した。


それを言えばハルキの能力のことを話さねばならなくなるし、彼女たち自身から聞いたことではないので、彼女たちの身のことを勝手に話すのはなんだかなぁっと思ったからだ。


「そういうこと…。分かったわ。少し大きめのやつも無いか探してみるわね」

「ありがとうございます、お願いします」


程なくして、彼女は何本かの日傘を持ってきてくれた。


「うーん…やっぱり今のメリーちゃんの服に合うのは、服と同じ色とフリルのついたこれかなぁ……」

「そうね、それが一番だと思うわ。変に冒険するのは危険だもの」

「メリーちゃん、メリーちゃんはこの傘どう思う?」

「…………(コクコク)」


お気に召したようだ。

心なしか目が輝いている気がする。


…なんだか、ようやく年相応の女の子の顔をしてくれた気がする。


「……」


そんな、楽しそうなメリーちゃんとは対照的に、フルールさんはまださっきのローズさんの言葉を引きずっているようで、ずっと暗い顔をしたままだ。


「フルールさん」

「……」

「フルールさん」

「……何?」


案の定反応が薄いフルールさん。


さすがにこの状態で「ショッピングしようぜ☆」なんて言えないので、まずは彼女を元気付けなければ。


ローズさんとメリーちゃんは服選びに熱中しているし、あまり子供の前で弱みを見せるとは思えないので、今のうちに聞いておこう。


「…さっきの話を考えているんですか?」

「……えぇ」

「…今は何を考えているのですか?」

「……自分の事」

「自分の?」

「えぇ、そうよ……」


てっきりメリーちゃんのことかと思ったんだけど……違うのか?


「……さっき、あの筋肉の人…」

「ローズさんですね」


危ねぇよフルールさん。

今筋肉って言った時点でギラっとこっち向いたぞあの人。


どんな聴力してんだ。


「……ローズに言われたことがずっと頭に残っているの」


フルールさんも不穏な気配を察知したようで、今度はちゃんと名前で呼んだ。


2人でチラッとローズさんを見やると、彼女はまたメリーちゃんの残りの服選びに戻っていた。


…よし、話を進めよう。


「…さっきの言葉…というと、「あなたの行動でメリーちゃんの運命が変わる」…ですか?」

「…えぇ、そう……。私だって、そのぐらいは分かっているわ…。それどころか、この身で実感もしている……」


それはつまり……


「…あの子を人質に、襲われたってことです…よね……?」

「……」


フルールさんは黙ったまま、首をゆっくりと縦に振った。


…これも異世界物の定番ではあるけどさ……。

出来ればそんなことは起きてほしくなかった……。


…薄々分かっていたが、この世界はとても残酷だ。

今こうして、マグやハルキと一緒にいられるのがとても幸せなことだと改めて実感する。


だがそれを噛み締めている場合では無い。


「…メリーちゃんは、それを見ていたのですか……?」

「……」


彼女はまた、ゆっくりと肯定を示した。


そりゃあそうだ。

人質なのだから、相手の見えるところでナイフを突きつければ、嫌でも状況を理解する。立場を理解する。


それなのに俺は、もしかしたらと思ってしまった。


…そのせいで彼女に嫌な事を思い出させてしまった。


くそっ……。


「…ちょっと…なんであんたが泣いてるのよ……?」

「……え?」


泣いてる?俺が?

んなわけ…ホンマやっ!?


え?こんなボケかませるのに、俺今泣いてるの?


「え?え?なんで…?」

「自分のことなのに分からないの…?」


分かりません。

しかも涙が止まりません。


確かに悲しい、悔しい、憎たらしい、のトリプル・ネガティブ・エモーションだったけど、泣くとは思わなかった。


いや、薄情だとは思うけども、正直想像がつかないというか、そういう作品をいくつか知ってはいるのだが、そういうのとかホラーとかが苦手なので本当に知っているだけだ。


俺はハッピーエンドが好きなのだわ。


「ぐすっ…すんっ……ひっく…」

「もう…どうしようかしら…ハンカチなんて持って無いし…」

「ほら、これを使って」


心の中で韻を踏んだり、曲名みたいなことを言ったりしているのに、俺の目からはずっと涙が溢れて止まらない。


フルールさんが困ってしまったところに、ハルキがハンカチを渡してくれた。


「ぐすっ…ありがとうございます…ハルキさん……」

「うん、落ち着いてからでいいから、ほら、深呼吸深呼吸」

「あい…すぅー、はぁ〜…すぅー、はぁ〜……ふぅ…」


どうにか涙も落ち着いてきた。

それにしてもどうしていきなり……。

俺の心はあんなにボケかましていたのに……ん?心……?


…もしかして……


(マグ?)

(ぐすっ…ごめ…なさい…コウスケさん……私……私……)


そういうことか。

今朝と同じように、マグの感情が溢れ出してしまったのだ。


(大丈夫、それが普通だから。悲しいときは泣くのが当たり前なんだから)

(ぐすっ…コウスケさん…違うんです…私…怖くて……私ももしかしたらそうなってたかもって考えたら…怖くなって……コウスケさんやメイカさんが助けてくれなかったらって考えたら…恐ろしくなって……本当はフルールさんの方が泣きたいはずなのに…私…自分のことばっかりで……)

(…なるほど。それで罪悪感で頭ん中ぐるぐるなっちゃって、悲しいやら何やらが混じって泣いちゃったわけだ)

(ごめんなさい…ごめんなさいぃ……)


マグは、フルールさんの体験を自分もしたかもしれないと怖くなった。

そして、そんな自分が嫌になって、どうしたらいいか分からなくなってしまい、結果泣いてしまったというわけか。


(なるほど、確かに自分勝手だ)

(…ご…ごめ…)

(でもそれが普通じゃないか?)

(………ふえ?)


普通だろう、そんなの。


(むしろ人のことばっかり考えてるやつの方が正気疑うぞ?)

(え?で、でも…コウスケさんも、私のために色々してくれてますし……)

(そりゃ可愛い婚約者のために頑張るのは当然だろう)

(ぴっ!?…で、ででででもさっきと言ってる事が…)

(そりゃあ出会って数分の人と婚約者を同列には考えられんよ)

(え?え?どういうことですか?)


ならば教えて進ぜよう。

人間の汚さというやつを。


(いいかい?マグ。世の中の人は大体、自分が知ってる人か知らない人かで分けられる。ここまではいいな?)

(えっと…暴論な気はしますけど理解できます……)

(よろしい。で、ここで問題です。今、あなたの目の前でチェルシーと知らない女の子が困っています。どちらから事情を聞きますか?)

(それは、友達のチェルシーちゃんから聞きます。知ってる人の方がスムーズに聞き出せると思いますし)

(そういうことだよ)

(えっ、分かりません)


あれ?ダメだった?


(今のちょっとした事でも自分の意見は入ってるんだよ?)

(えっと…確かに知り合いの方が話しやすいとは思いましたけど…それは普通では?)

(普通だねぇ)

(ですよね)

(うん)

(……)

(……)

(え?)

(え?)


伝わんない?

あっれおっかしいな……。


(えーとつまりほら…どんな事でも自分の考えってのは絡んでくるんだから、次気をつければ良いって話だよ)

(そ、そういう事だったんですか?)


ごめん、正直俺も何言おうとしたのか忘れた。

はちゃめちゃ迷子になった。


(ま、まぁそういうわけだから、マグのそういう優しい所も素敵だけど、考えすぎたことは上手くいかないとも誰かが言ってたし、なんかこう……)


なったじゃないわ。

現在進行形で絶賛迷子に()()()()だったわ。


(ね!)

(ね!?)

(とにかくそういうことさ!)

(え、いや、えっと…あ、はい、分かりました…)


ごめんね!

慰めようとして、逆に気を使わせてごめんね!!


「落ち着いた?」

「うぇ!?あ、はい!だいじょぶです!」

「ほ、本当に大丈夫なの……?」


フルールさんにも気を使わせてしまった!


もうだーめだ今日、頭全然回ってないわ!!

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