352.過保護マンの苦悩…と知らずに甘えるエルフ娘
リオ「グリムさんどうだった?」
コウスケ「めちゃくちゃ落ち込んでた」
チェルシー「も~…あの人は……落ち込むくらいならもっと別の方法にすればよかったのに……」
魔術ギルドから帰ってきた俺は、庭で魔法の練習をするシエルを眺めながらリオとチェルシーと話していた。
他の子たちはシエルの練習の応援。
声援を送ったり、ノートを一緒に書いたりと様々な応援の仕方によってシエルを支えてくれている。
ありがたやありがたや。
それはさておき、今のチェルシーの発言が気になったので聞いてみる。
コウスケ「チェルシーはグリムさんがシエルのためを想って追い出したのを知ってたの?」
チェルシー「ううん、今聞いたのが初めてだよ。でもグリムさんがシエルちゃんをそんな簡単に手放すとは思えないからね。それにあんなに魔法のお勉強に役立つ物ばかり持たされてたら誰だって分かるよ」
コウスケ・マグ・リオ「(「それはそう」)」
マグ(まぁ、なんだかんだシエルのことを大事に思ってるでおなじみのグリムさんですからねぇ)
コウスケ(そうだね。なんだかんだシエルを大事に思ってるでおなじみのグリムさんだからこそ、俺たちも一応真相を突き止めに行ってきたわけだし)
マグ(ですね~。でもまさか探偵な気分からお見舞いに言った気分になるとは思いませんでしたけどね)
コウスケ(シエルより先に絶望でぶっ倒れそうだったよね……)
シエルの成長を促すにはいいのかもしれないけど、お互いの心の耐久力も勘定にいれてくれ。
この2日間、シエルが1人だとトラウマを刺激されて怯えてしまうから4人で寝てるんだからな。
子どもと言えどさすがに4人は狭いて。
リオ「で、それシエルには言うのか?」
コウスケ「う~ん……」
コウスケ(別に口止めはされてないけど……)
マグ(言ったらグリムさんがわざと怒って追い出した意味が無くなりそうですよねぇ)
コウスケ(2人の精神衛生的には伝えた方がいいんだろうけどね……)
誰が見ても愛されてることが分かるような荷物で追い出された(送り出された)シエルだが、当の本人はそのことにマジで気付いてないっぽいからなぁ……。
コウスケ(でもそれも込みでのことみたいだし、グリムさん的にはそこも乗り越えてくれたらって思ってるのかもねぇ……)
マグ(う~ん……シエルの誕生日のときにちょこっと乗り越えてた感じはしましたけど、昨日までの感じだとやっぱりまだまだですからねぇ……)
コウスケ(うん……)
マグ(まぁそんな簡単に乗り越えられたらこんな苦しまないでしょうからねぇ)
コウスケ(……そだね……)
他人事じゃないもんね……そりゃ実感込み込みでしょうね……。
え~っと……マ、マグは一旦置いといて、今はシエルだ。
俺らで支えて今でこそ落ち着いて真面目に魔法の練習に打ち込んではいるが、それでもやっぱり肉親代わりである人に追い出されたというのはかなり応えているわけで、特に夜、寝る時なんかが1番顕著に表れているだろう。
誰かが必ず手を握ってあげたり抱きしめてあげないと眠ることが出来ず、また、寝た後でも油断するとうなされているのでガッツリぬくもりを与えて落ち着かせてあげなければならないのだ。
おかげでただてさえ狭いベッドで全員で抱き合って眠るという、寝返りも打てないほどの超省スペース睡眠をしている。
そろそろ誰か寝違えそうなのでなんとかしなければならない。
シエルに真実を伝えればその辺も緩和されるだろうが、それはやはりグリムさんが心を鬼にしてシエルを魔術ギルドから追い出した意味が薄れてしまう。
それに…
ショコラ「わっ!すご~い!ボールふたつ全然違う動きしてるよ!」
サフィール「この数日でかなり魔力の扱いが上達していますね」
シエル「……っ!はぁっ……!ふぅ~……やっぱりまだ滑らかに動かせないわね……」
モニカ「それでもすごいよシエルちゃん!昨日まではふたつの風のボールどっちも同じ動きだったのに!」
パメラ「うん!この調子ならすぐに1個のときと同じようにスラスラ~って動かせるよ!」
シエル「そ、そう?」
メリー「……うん、たのしみ♪」
シエル「え~と……メリーの遊び道具のために頑張ってるわけじゃ……あっでも、それくらい余裕があった方がいいのかしら?」
グリムさんの思惑通り、シエルは着実に腕を上げている。
ついこの間まで苦戦していた魔法の精密操作を、ひとつなら余裕…ふたつでも今ちょうど出来たみたいだ。
なら、少し思うところはあるものの、策に乗ってこのままシエルを見守ろう。
それにまぁ……理由はどうあれシエルを泣かせたわけだし、グリムさんには多少苦しんでもらっとこう。
すでに十分苦しんでた気もするが。
というのを実はここに来るまでの帰り道でもマグと話し合っていた。
で、結局同じ結論には至っていたのだが……こんな運命左右しそうな問題、一度決めても答えが揺らいでしまうのは仕方ないことだと思う。
そう思うな~俺は。(自己暗示)
シエル「あっ……」
ショコラ「う?あっ!マグ!おかえり~♪」
モニカ「おかえりマーガレットちゃん♪」
コウスケ「うん、ただいま」
と、ここで休憩に入ったシエルが俺に気付き、次いで応援していた子どもたちもこちらに気付いて迎えの言葉を投げかけてくれた。
みんなに挨拶を交わしたところで、シエルがおずおずと俺に話しかけてきた。
シエル「え、えっと……その……」
しかし口ごもってしまうシエル。
だが聞きたいことはなんとなく分かるので、こちらから話を切りだしてあげる。
コウスケ「グリムさんのこと?」
シエル「!…うん……まだ怒ってた…よね……?」
コウスケ「ん…まぁ、そうだね」
シエル「うぅぅ……」
うん。怒ってはいた。
この選択をした自分に。
で、責めすぎてウルトラネガティブになってた。
だからウソ言ってない。
ただまぁさすがにこれだけだとかわいそうだから、一応仲直りが早くなるための布石も打っておこう。
コウスケ「心配もしてたけどね」
シエル「……また変な約束しないかって……?」
コウスケ「いや、普通にシエルの身を案じてただけだから……無茶してないかとか、言いすぎたかもしれないしもう戻ってこないくらい落ち込んでたらどうしようとか……」
シエル「ほんと……?」
コウスケ「うん」
シエル「ほんとにほんと……?」
コウスケ「ほんとのほんと」
シエル「……でも本当は……?」
コウスケ「ちゃんと心配してたから信じておくれ……」
シエル「う〜……マーガレットがそう言うなら……」
そう言いながらまだ全然納得してない感じがするシエル。
コウスケ(超絶ネガティブになるのはグリムさんと同じなのね……)
マグ(似たもの師弟ですねぇ)
コウスケ(ほんとだねぇ)
マグ(でも私たちだって1回落ち込んだらすごいですから似たもの同士ですもんね!)
コウスケ(マグさん俺こんなところで張り合いたくないよ)
そりゃまぁ俺も確かに引きずるタイプだけども!
マグも繊細な子だけども!
マイナス部分で張り合ったらキリないぜマグさん!
ともかく、シエルがとりあえずは引き下がってくれたのでヨシということで、俺もぼちぼち練習を始めるかね。
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次の日。
今日もギリギリ寝違えなかった俺たちだったが、それとはまた違う問題があった。
一昨日までは俺が生理による体調不良で家にいて、昨日に至っては普通にお休みだったのでみんなで集まっていたわけだが、体調が回復した今俺も仕事に行かないとなので、シエルのことを見守れるのがフルールさんとメリーだけになってしまうのだ。
フルールさんがいるし、メリーもシエルにベッタリくっつくだろうから大丈夫と言えば大丈夫なのだが、それでもやはり心配になるわけで……。
それにみんながいないというのはかなり寂しい。
俺だってみんなが帰ってしまったあとは部屋がとても広く感じて寂しさが込み上げてきたものだ。
メリーとフルールさんだけでなくマグだっている俺でさえそうなったのだから、きっとシエルも寂しくなるに違いない。
ううむ…これはやっぱりもうちょっと休んだ方がいいか……?
というのをフルールさんに相談してみた。
フルール「気持ちは分かるけどもう少しあの子のことを信じてあげなさい。もし何かあったらその時にまた相談するから」
と、いうわけで(フルールさんに追い出されて)仕事に行くことになりました。
そんな道中、テクテク歩きながらもソワソワが止まらない俺の口から無意識にその思いが零れた。
コウスケ「う~…心配だなぁ……」
メイカ「フルールとメリーちゃんがいるんだから大丈夫よ」
ケラン「それにお昼に様子を見に来るんでしょう?」
コウスケ「それはそうですけどぉ……」
1回考えるとずっと頭の中に残っちゃうんだよなぁ……。
リオ「心配なのは分かるけど、ちょっと過保護すぎるんじゃないか?」
ユーリ「そうだね~。もうちょっと信じてあげなよ~」
コウスケ「う~ん……一応意識してるつもりではあるんですけど……」
いろんな人に言われてるわけだし、俺だってもっと信じてあげたいが……
コウスケ(リオとかサフィールちゃんとか、ほっとけない子がいるわけだし……)
マグ(あ~…まぁ……はい……)
事が起きた後に個別面談を毎回してる俺からしたらやっぱり事前に救えそうならそうしたいわけで……。
しかし意欲に満ちた子を必要以上に囲うのも確かに……うむむむ……!
ディッグ「こういうときこそいつも通りに接してやるのも大事なことだと思うぞ?一番気にしてるのはその当人なわけだしな。他のやつが気を揉んでるなんていう方がシエル嬢ちゃんは気にしちまうんじゃねーか?」
コウスケ「うっ…そ、それは確かに……」
ディッグ「だからまぁそうだな……心配なのは仕方ないとして、それと普段通りとをうまいこと混ぜられるのが理想じゃないか?」
メイカ「混ぜちゃうの?」
ディッグ「あまりにも普段通りを徹底しすぎても気をつかわせてるって思われそうじゃないか?」
メイカ「あ~……いやでも……う~ん……」
ディッグ「まぁなんにせよ、あんま気を揉み過ぎないことだ」
う~む……それもそうか……。
何事もバランスが大事だと、平常時の俺も言った記憶があるようなないようなだし……。
コウスケ「ん~…わかりました」
メイカ「ふふふ♪でもマーガレットちゃんにずっと支えられるっていうのは悪くないわね♪」
ユーリ「そうですね~♪いつでも甘え放題……お世話をするのもされるのも好きな時に…って考えると……んふふふ~♪」
リオ「絶対ダメ人間にされるから気をつけないとですけどね」
コウスケ「人をなんだと思ってんの」
メイカ「人をダメにする美少女♡」
ユーリ「超甘やかし上手な女の子♪」
リオ「劇薬」
コウスケ「劇や…劇薬っ!?」
リオ「効果が確実な分頼りすぎると危ない感じが似てるかなって」
コウスケ「だからってそこまで言う!?」
さすがに心外だよ!?
メイカ「リオちゃん危ないところだったもんね」
リオ「はい……もう少しで抜けられなくなるところでした……」
メイカ「もう、マーガレットちゃんったら♪罪な女♡」
コウスケ「うわーやかましいー!」
ディッグ「ほれ、あんま騒ぐなよ。人の邪魔になるぞ?」
コウスケ・メイカ・リオ「「「は~い」」」
ディッグさんに言われて大人しく歩き始めた俺たちは、その後もなんやかんやと話しながら冒険者ギルドへ向かった。
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昼休み。
ご飯を食べ終えてから様子を見に行った俺たちが見たのは…
シエル「あっ、おかえりなさい!見てっ!試してみたら一気に4個の《ウインドボール》が出せたのよ!」
めっちゃ練習が捗ったっぽいシエルの姿だった。
ショコラ・パメラ・チェルシー・モニカ『すご~い!』
メリー「……でしょ♪」
リオ「あぁ、すごいな!日に日に上手くなってってるじゃねえか!」
サフィール「この調子でいけば勝負も勝てますよ!」
チェルシー「余裕すぎてつまんなくなっちゃうかもね~♪」
シエル「そう?ふふ~ん♪まっ、負ける気は最初からないけどね~♪」
コウスケ(お~、わかりやすく調子に乗っておられる)
マグ(でも実際すごい成長っぷりですからね~。あながち言い過ぎってわけでもなさそうですよね)
コウスケ(まぁね~)
向こうも迷宮に潜ってるわけだし実力はあるんだろうが、シエルのこの成長速度なら勝負に勝つのも夢じゃないな。
グリムさん…作戦は順調だよ……。
だからちゃんと生きてねグリムさん……。
くいくい
そんなことを考えてると、メリーが俺の服の裾を引っ張ってきた。
コウスケ「ん?どしたの?」
メリー「……ん(指を指す)」
コウスケ「ん~?あっ」
メリーが指差した方を見ると、シエルがなんだかソワソワしながらこちらをチラチラ見ていた。
メリー「……ほめてあげて」
コウスケ「あ~そっか」
俺だけ口に出して褒めてなかったか。
それは悪いことをした。
コウスケ「やるねぇシエル!このままだとちょっと私の立場が危ういかもねぇ……」
シエル「そ、そうかしら?…ふっ…ふふふ…♪ってことは、アタシがマーガレットの先生になる日が来るかもしれないわね♪」
コウスケ「え~?それはどうかな~?私だって練習してるんだよ~?」
シエル「ふふん♪そう言ってられるのも今のうちよ♪アタシ今すっごくやる気出ちゃったし♪今日のお仕事終わりにまた驚かせちゃうかもしれないわよ~?」
コウスケ「ふふ♪そりゃ楽しみだこと♪」
なかなか調子に乗っておられるが、今のシエルには本当にやり遂げそうな自信が見受けられる。
これは…想像以上に策がハマってますよグリムさん……!
あんたやっぱ賢王だよ……!
そのあとちょろっとみんなでワイワイおしゃべりし、気が付けばお昼休みギリギリになっていた。
コウスケ「おっと、そろそろ戻らないと間に合わないかも」
チェルシー「え?あっほんとだ。やっぱりお話してると早いな~……」
サフィール「お昼休みの時間もそんなあるわけでもないですしねぇ……」
パメラ「ちぇ~」
なんて残念がってるが、これを俺が休んでた日のほぼすべてで言ってた。
毎日言うほど残念なんだろうな。
気持ちは痛いほどわかるぞ。
しかし行かなければいけないことはどうしても変わりないので、諦めて出発準備を始める子どもたち。
その動作も慣れたものである。
さて、俺も準備しないとな。
といったところで今度はシエルに服の裾をくいくいされて呼び止められる。
シエル「えと……ちょっとだけ…いい…?」
コウスケ「ん?うん」
ススス~っと静かに他の子たちの視覚になる場所に連れてきたシエルは先ほど同様もじもじしている。
何だろ?
褒めたりなかったとか?
シエル「えっとね……?その……ちょっとだけ……ちょっとだけなんだけど……」
コウスケ「うん」
シエル「その……き、昨日まではマーガレットも練習見ててくれたじゃない……?」
コウスケ「そうだね」
シエル「だ、だからね……?その…ほんとにちょっとだけなんだけど……今日いないんだって思ったら……さ、さみしいなーって……」
コウスケ・マグ「(あら~♪)」
シエル「ほ、ほんとにちょっとだから……!ほんとのほんとなんだからね……!」
コウスケ「うんうん、わかってるよ~♪」
シエル「むむぅ……///」
なんとも可愛らしい告白に俺が微笑ましさを隠しきれずにいると、シエルは耳まで真っ赤にしながら恨めしそうにこちらを睨みつけた。
それもまた可愛らしいと言ったら本格的に拗ねそうなので、どうにかその言葉を飲み込んで、代わりに彼女の要望を尋ねた。
コウスケ「それで?私にどうしてほしいの?」
シエル「っ!えっと……だから……ちょっとだけでいいから……」
そしてシエルが再び俺の服の、今度は袖をつまんで言った。
シエル「……ぎゅっ…て……してほしい……///」
コウスケ・マグ((あらあら~♡))
なんかすんんんごいめんこいこと言い出したぞこの子。
そんなおねだりされたら一も二も無く叶えてあげたくなるでしょ!
そこまで考えたところで俺はすでにシエルのことを抱きしめるべく動き始めていた。
さすが俺の体だ。
可愛いを逃がさない。
シエル「あぅ…///」
コウスケ「ふふ♪どう?こんな感じでいい?」
シエル「うん……あっ…えと……もっと…強くしてもいい……///」
コウスケ「ん♪」
ほぅれぎゅぎゅ〜っと。
シエル「……♡」
要望に応え抱き締める力を痛くない程度に強めると、シエルは俺の腰に腕を回し、俺の胸に顔をスリスリしてきた。
どうやら満足してくれているようだ。
シエル「んふ……♪マーガレットあったかい……♪」
コウスケ「そう?シエルもあったかいよ」
シエル「にへ…♪マーガレットがぎゅってしてくれてるから……♪」
コウスケ「そっ……かぁ……///」
あかんな……やっぱ素直甘えんぼなシエルの威力高いわ……。
こっちが恥ずかしくなるようなことをしれっとね…もう〜……。
俺が照れながら心の中で文句を言ってると、腰に回されていたシエルの腕の力が緩み拘束が解かれた。
コウスケ「ん…もういいの?」
シエル「うん。マーガレットのぬくもりでポカポカだから♪」
コウスケ「さ、さよか……///」
その言い方はなんか凄い恥ずかしいよシエルさん?
シエル「メリーとフルールさんも一緒にいて心強いけど……やっぱり、マーガレットが1番安心する…♪」
マグ(あら〜♪)
コウスケ「そ、そうなの?」
シエル「うん♪それも、ぎゅってしてもらうのが1番あったかいの…♪体だけじゃなくて、心の奥までポカポカするの…♪」
コウスケ「そ、そうなんだ?」
シエル「うん♪」
マグ(わぁ〜!わぁ〜!シエルが今までで1番あまあまだぁ〜♪)
ちょっとマグさん楽しんでない!?
俺今顔から火が出るんじゃないかってくらい恥ずいんだけど!?
シエル「だからね?今すっごく良い気分♪今ならなんだって上手くいきそう♪」
コウスケ「そ、そんなに喜んでくれるなんて嬉しいなぁ…///」
シエル「ほんと?えへへ…やったぁ♪」
マグ(きゃあぁぁかわいいよシエルかわいいよー!)
くそっ!俺も同意見だけど!
叫びたいけど!
今叫んだら絶対心の中に収め切れないからそもそも叫ばないようにしないといけない!
ツラい!
シエル「ねぇマーガレット…?」
コウスケ「は、はい…なんでしょう…?」
シエル「最初にあんなことしたのに、友だちになってくれてありがとう♪」
あんなこと……。
《ウインドボール》で不意打ちしてきたあれね。
コウスケ「それはもう気にしなくて大丈夫って……」
あれ言ったっけ?
どうだっけ?
周りの大人は一生擦ってやるってのは覚えてんだけどな……。
まぁともかく、思考が脱線したおかげでちょっと冷静になれたぞ。
シエルには悪いが、ここからどうにか素早く丸く収める方法を…
シエル「ね、マーガレット」
コウスケ「う、うん、なぁに?」
考えたかったんだが……
シエル「アタシ、あなたのこと好きよ♡」
コウスケ・マグ「(ふぇっ……?)」
シエル「リオもチェルシーも、ほかのみんなのことも好きだけど…あなたが1番好き♪」
コウスケ「…あっ…なるほどね…?へへへ…ありがとシエル。私も好きだよ♪」
シエル「…えへ…♡」
コウスケ(びっっっくりしたぁ……!)
マグ(わ、私もびっくりしました……!急に告白なんてシエル大胆な……!って思っちゃいましたよ……!)
コウスケ(大胆さもそうだけど…雰囲気も相まって、本気の愛の告白に聞こえたよ俺ぁ……!)
なんて心臓に悪い……!
いや嬉しいけどぉ……!
俺にはちょっともう抱えてるもんが多すぎるからガチだった場合なんて言えば……。
なんて気恥ずかしさと申し訳なさでシエルから目線を外す俺。
コウスケ・マグ「(っ!?)」
みんな『……(ドキドキ)』
そしたら物陰からこちらを見守っていたらしい子どもたちと目が合った。
いつから見てたの?
どこまで聞こえてたの?
どっちにしてもさっきの告白 (友愛)は聞かれてたよな?
などといろいろ聞きたいことが込み上がってきたが、今はそれよりも…
シエル「?」
コウスケ「あ、あはは…!えっと…そ、そろそろ戻ろっか?あんまり遅いとみんなが来ちゃうからさ?」
シエル「…ハッ!そ、そうね!見られたら恥ずかしいし……」
すみませんそれはもう手遅れです……。
俺はシエルが見えない位置で手を動かして覗いてるみんなに戻るようにお願いする。
1番にハッとしたチェルシーがコソコソっとみんなに伝えてくれて、どうにかシエルにバレる前に退散してくれた。
ふぅ…危ない危ない……。
今のやりとりをバッチリ見られてたなんてシエルが知ったら、もう多分今日1日か、下手したら明日まで寝込むほどの深刻な精神ダメージを負いそうだからな……。
そうなったら今やる気をチャージした意味が無くなってしまう。
ただただ俺がめちゃくちゃ照れ臭いこと言われただけになってしまう。
それは避けねば。
シエル「じゃ、じゃあ戻りましょっか!」
コウスケ「う、うん!」
ふぅ……どうにか無事に切り抜けたな……。
俺も…シエルも……。
なかなか(心が)大変だったが、これでシエルがより一層練習に気合を入れて臨むのであればまぁ安いものだ。
いややっぱかなり高いけど……うんまぁうんまぁ…ね?
シエル「あっ…マーガレット」
コウスケ「うん?」
と、戻る前にシエルが俺を呼び止めた。
そしてちょっともじもじしながらこう言った。
シエル「えっと……あ、明日も……お願いしていい……?」
コウスケ「……ンいいよォ……」
そのお願いを断る力を、俺が持っているわけがなかった。
シエルはちゃめちゃ甘やかし回。
順調に幼女の心を奪ってますね。
ヨシ。




