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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第5章…魔術コンクール
352/435

345.改めて練習…したかった

人で言う心臓部が真っ黒、他が真っ赤になった的人形。


大体の生物を一撃死できるほどの恐ろしい威力の魔法を放った張本人たる俺の脳内は、「翡翠龍に対抗出来るかな?」という思考1割と、「あれこれ子どもたち怯えちゃってるんじゃ……?」という心配9割。


つまり今、とても背後が気になる。


だ〜れもなんにも言わないこの時間がとても居心地が悪いので、早く振り向いて軽口なり言い訳なり叩いて場の空気を変えたいところだが、もしドン引きorギャン泣きしていた場合俺の心に甚大な被害が出るので怖くてなかなか振り向けない。


しかしこのまま的を見つめていてもどうにもならない……。

覚悟を決めなければ……。


1つ深呼吸をして気合を入れた俺は意を決してバッと振り返る。


すると目の前に1つの大きな影…


どむっ


コウスケ「ぐえっ!?」

マグ(!?)


そう認識するや否や、俺はその影による突進を喰らい押し倒された。


咄嗟に強化魔法でダメージを軽減した俺が押し倒した犯人を見ると、その相手はショコラちゃんだった。


コウスケ「えっと……ショコラ……?どうしたの……?」

ショコラ「……」


尋ねた俺の顔を見てショコラちゃんは一拍置いたのち…


ショコラ「雷怖かったぁぁぁ!!!」


と泣きながら叫んだ。


そうかぁ…やっぱり怖かったかぁ……。

そうだよなぁ……。

でも…


コウスケ「…それで発生源である私に飛び込むもんかね?」


普通距離を置くもんじゃないのかい?


ショコラ「だって……マグもなんだか怖がってる感じがしたから……」

コウスケ「私が?」

ショコラ「うん……」


怖がってる……いやまぁ怖がってはいたか……。

でもそれ自分の魔法にじゃなくて、君たちの反応に怖がってただけで……ってそうだ。

他の子たちは?


そう思い他の面々を見渡してみると、みんな心配そうにこちらを見つめている。

怯えてる感じは全くなし。


う〜ん…なんというか、凄い胆力……。

いやぁしかし…


コウスケ「ほんっと、もったいないくらいみんな良い子だよね〜……」

ショコラ「?」

コウスケ「ふふっ♪なんでもないよ(なでなで)」

ショコラ「♪」


はぁ〜、ほんま癒しだわぁ。


俺のなでなでにショコラちゃんが嬉しそうに耳と尻尾をピコらせながらスリスリ頬擦りしてくる。

その様子を見て他の子たちも安心したようで、「ずる〜い!」と言いながらこっちに駆けてきた。


そんな子たちを順繰りに撫で回しながら、俺はマグとさっきの魔法について話をする。


コウスケ(マグは大丈夫?びっくりしなかった?)

マグ(もちろんびっくりしましたよ?前に見たやつよりも明らかに強くなってましたもん)

コウスケ(だよねぇ……)


俺もガチでビビったもん。

何これってなったよマジで。


マグ(毎日欠かさず朝練していたとはいえ、あそこまで強くなるものですかねぇ?)

コウスケ(なんならあれでも抑えた方なんだよねぇ……)

マグ(それじゃあ……本気でやったらどうなるんですかねぇ?)

コウスケ(気にはなるけど……今はやめておこう。さすがに今度はヤバそう……)

マグ(あはは…そうですね。みんながいないときに試してみましょう)

コウスケ(うん)


問題はこの子たちがいないときっていつだよってことだが……。

ま、まぁどうにか作れないこともないだろう多分。

そのときまでのお楽しみとして取っておこう。


さて、マグとの話も終わったところでみんなを撫で回すのも終了。

2周目に入る前に立ち上がる。


「あぁ〜…」と残念そうな声が聞こえてくるが気にしない。

床冷たいねん。

せめて座らせてくれ。


というわけで部屋の隅にあるベンチに移動。

すでに座っているフルールさんの元へ向かう。


フルール「あなた…相変わらず何しでかすか分からないわね……」


近づくと早速苦言を呈すフルールさん。


いや、言いたいのは分かる。

分かるがしかし待ってほしい。

俺にだって言い分はあるのだ。


コウスケ「私もこうなるとは思ってませんでしたよ」

フルール「だから余計何が起きるか分からないんでしょう?」


そうですね、グゥの音も出ません。


フルールさんに論破されつつとりあえずベンチに座ると、その両隣にショコラちゃんとメリーが座った。


まるで最初から決まっていたかのようなスムーズな位置どり。


そこから広がるように座っていく子たちはグーやらチョキやら出しながら悔しそうにしている。


君らいつの間にじゃんけんしたん?


見えないところで行動の早いみんなのことはさておき、俺はまた頬擦りしてくるショコラちゃんとメリーを撫でたりほっぺたをもちもちしながら思ったことを口にする。


コウスケ「ん〜……威力があるのも驚かれはするだろうけど、私的にはやっぱりもっとこう…芸術性?で驚かれたい気持ちが強いかなぁ……」


みんなを驚かせちゃったし、勘違いとはいえ心配させちゃったし。


そんな俺の考えにリオがまず賛同してくれた。


リオ「そうだな。マーガレットの魔法は結構派手なもの多いし、オレも単純な高火力よりはそっちの方が見たいな」

モニカ「うん。私もお花とかもう1度見てみたい!」

メリー「……うん、キレイなやつがいい♪」

コウスケ「ふむ……」


他の子たちも頷いてるし、やっぱり俺は芸術(そっち)方面で考えていこうかな。


チェルシー「アタシもお花畑見た〜い!ねぇマギーちゃん、見せて見せて〜♪」

コウスケ「えっ、今?」

チェルシー「今!」


と、ここでリクエスト。

まぁどっかで出されるだろうとは思ってたし、別に断るつもりもなかったからいいんだけどね。


マグ(私も見たいで〜す♪)


コウスケ「ん、よし。じゃあ練習がてらやっちゃおっかな!」

子どもたち『(やったー!)』


この喜びよう。

期待されるのはやはり嬉しいものである。


コウスケ「さてと……」


じゃあまた詠唱文を思い出すところから始めなきゃだな。

え〜っと…確か………ん〜、よし。


コウスケ「《【我が周りに】[凛然(りんぜん)と咲け柔き花よ]。【領土を増やし、静かなる(いかづち)にて楽しませよ】[S・ブルーム]!》」


俺がそう唱え終えると、俺を中心に円形状に黄色い花が広がっていく。


みんな『(わぁっ!)』


その光景に湧き立つ子どもたち。

いや、フルールさんも楽しんでいるように見える。


ふふふ。

やっぱこういうエンタメ系の方がやってて楽しいな。

あの子たちが素直だから、楽しそうな反応をしてくれるとなおのこと嬉しくなる。


モニカ「キレ〜イ!」

リオ「相変わらずスゲェ魔法だなぁ」

シエル「ほんっと……やっぱり勝負しなくてよかったわ……」

チェルシー「さっきの雷の段階でもう負けてた気もするけどね」

サフィール「あれはマーガレットさん本人も驚いていたくらいですし、仕方ないですよ……」


うん、あれはもう事故みたいなもんよ。

危ないね、気を付けよ。


ショコラ「触りたい…けど、触るとビリビリなんだよね……」

メリー「……つよいびりびりはヤ……」


あっ、言ってなかったけか。


コウスケ「今回のやつは攻撃性能かなり削ったから大丈夫なはずだよ」

ショコラ「ほんと!?」

コウスケ「うん。いつも出してる小さな《サンダーボール》くらいになってるはず」

ショコラ「おぉっ!」

メリー「……じゃあぴりぴり?」

コウスケ「うん。そのくらい」

メリー「……おぉ…!」


俺の言葉にふたりが目を輝かせる。

詠唱文から物騒な要素を外したし、魔力もだいぶ抑えめにしたから、弱電流の花畑になってるはずだ。

名前もソフト(soft)のSにしたし。


まぁでも、大丈夫って言ったってさっきの今でそんな躊躇なく触るとはさすがに…


ショコラ「おぉ〜!ほんとだ〜!」

メリー「……ぴりぴり♪」


行ってたー。

躊躇いなく触ってたー。


もうちょっと警戒心とか……いや、まぁ…う〜ん……今さらかぁ……?


パメラ「じゃあ私も触る〜!」

チェルシー「アタシもアタシも〜!」

モニカ「わ、私も…!」


そんなショコラちゃんとメリーの反応を見て他の子たちも触りに来る。


君たちもしかしなくてもショコラちゃんとメリーを実験台にしました?


いや、そういう決めつけはよくない。

ただキチンと警戒していただけだ。

むしろ褒められることだ。

単にあのふたりが俺のことを信用しすぎてるだけだ。

嬉しいことだけども、やっぱもうちょっと警戒心というものをね……?


なんだかんだと考え始める俺をよそに、シエルは花畑をじっと見つめて何か考え込んでいる様子。

そんなシエルにリオとサフィールちゃんが話しかけた。


リオ「シエル?なにをそんな真剣に考えてんだ?」

シエル「ん〜……やっぱり難しいなって思って……」

サフィール「何がですか?」

シエル「魔法の調整よ。マーガレットみたいにあんな花畑を作るとか、その威力を調整するなんて細かいこと、アタシ出来ないもの」

リオ「やっぱり難しいのか?」

シエル「難しいなんてものじゃないわよ。魔法ひとつ自在に動かすのも練習がいるのに、あんなたくさんの花をいっぺんに操るなんてどれだけがんばれば身につくのか考えるだけでも気が滅入っちゃうわよ」

リオ「はー…そりゃ大変だなぁ……」

シエル「なのにマーガレットは簡単にやってのけちゃって……そりゃああの子が毎日練習してるのは知ってるけど、だからってあっさり使いこなしすぎだと思うの……」


シエルの視線を背中に感じるが、ここは気付かないふりで乗り切ろう。


コウスケ「…って…あっ!ダメだよショコラ!抑えてるとはいえビリビリするところに飛び込もうとしちゃ!」

ショコラ「えー!」

コウスケ「メリーもこっそりやろうとしないの!」

メリー「……えー」

コウスケ「そもそも下がただの床なんだから、飛び込んだら別の意味で痛いよ?」

ショコラ「そっか〜……」

メリー「……しょんぼり……」


いやシンプルに目を離せないわこの子たち。

ちゃんと見てないと危ない。


リオ「…その分大変そうだけどな」

サフィール「あはは……私も人のことは言えないですけどね……」

シエル「それを言ったらここにいるみんなそうじゃないのよ。…あっ、みんなっていうのはアタシたち子どもだけって意味で…」

フルール「大丈夫、分かってるわ。それに、私もそこまで変わらないしね」

シエル「えっ?」

サフィール「そうなんですか?」

フルール「えぇ。マーガレットだけじゃなくて、他のみんなにも実は何かと甘えてるのよ?私」

シエル「えぇ?意外……」

リオ「そんな甘えてるところ見たことないですよ?」

フルール「ならちゃんと隠し通せてるってことね。安心したわ」

リオ「うむむ……そんな言い方をされると気になってくるな……」


マグ(フルールさんの甘える姿かぁ……たしかに貴重ですよね)

コウスケ(そうだね。でも割と見る機会はあると思うなぁ)


フルールさんの相談役はメイカさんが担うことが多いからな。

要所要所で頼りになるメイカさん。

だからほんと、「普段のあれはその反動説」の信憑性が凄いのよね。


フルール「ほら、それより考えなきゃいけないことがあるんじゃないかしら?」

シエル「そ、そうでした……」


フルールさんはこれ以上話す気はないと、脱線した会話内容を修正し、シエルは現実を突きつけられ脱力した。


シエル「う〜ん……とりあえずまずは魔力を細かく操れるようになるところからかしら……」

サフィール「そうですね。それに覚えて損することのない技能ですから、ここで扱えるようになればコンクールの後も何かと使える場面があるかもしれませんよ?」

リオ「それこそ第二回コンクールの時とかな。逆に言えば、今ここで焦んなくてもまた次があるって思えるわけだし、そこまで気負わずにやった方がいいと思うぞ?」

シエル「う〜ん……焦って失敗したリオが言うと説得力あるわね……」

リオ「おま…お前……言ってくれるじゃねぇかコラ……」

フルール「ケンカしないの。それで、マーガレット」

コウスケ「えっ?あっはい、なんでしょう?」


急に振られて戸惑いつつもなんとか返事を返した俺にフルールさんが問いかける。


フルール「あなたはどうするの?」

コウスケ「どう…とは?」

フルール「コンクールに向けてどうするか。もう課題は見えてるんでしょ?」

コウスケ「……」


う〜ん……やっぱフルールさんには敵わんわ。


コウスケ「そうですね……出来れば新しい魔法を…と思ってるんですけど、そのアイデアがまるで思いつかなくて……」

リオ「その花畑じゃダメなのか?」

サフィール「それに他にもいろいろ試合で見せてない魔法があったような……」

コウスケ「まぁそれでもいいんだけどね〜」


ウチのお姫さまが新しい魔法をご所望だからな。

期待に応えたいのよ。


な〜んてのは言えないので…


コウスケ「まぁせっかくだからね。こういう機会でもないとこんなじっくり考えることもなかなかないし」

フルール「そう」


…なんですかフルールさんその目は?

えぇそうですよマグのためですよ。

なんか文句あるんですかおぉん?


リオ「いいじゃないか。マーガレットならきっとまた見たことないような魔法を作れるさ」

サフィール「えぇ。もしも何かお困りの時は遠慮なくおっしゃってくださいね?微力ながら精一杯お手伝いさせていただきますよ♪」

シエル「あ、アタシは別に全然だからね!マーガレットの新しい魔法なんて全然なんだからねっ!」


三者三様。

それぞれの言葉で俺に期待を寄せてくれている。


すんげぇ申し訳ない。

ごめんね、俺そんなみんなの期待を一身に受けられるような立派な志しじゃないの。

ただ彼女にいいカッコしたいだけのカッコマンなの。


フルールさんの呆れ目線も効いたが、それよりもこの子たちの純粋な期待の目が痛い痛い……。


これはもう後には引けなくなったな……。


フルール「とりあえずシエルはマーガレットにいろいろ教えてもらったら?近くで見てるだけでも勉強になりそうだし。それでマーガレットは教えながら考えていけば良いんじゃない?人に教えるのも良い刺激になるわよ?」

コウスケ「ん、なるほど……」

シエル「フルールさんがそう言うなら……」


勝手に背水の陣になった俺と、そんなことはつゆも知らないシエルのとりあえずの練習方針を決めてくれたフルールさん。


コウスケ「このままあれこれ話しててもまた脱線しそうだし、しばらくはそれでいこうか」

シエル「そうね。まずは動くことが大事よね。それじゃあマーガレット、さっそくと言いたいところなんだけど……」

コウスケ「うん?」

シエル「あれ…いいの?」

コウスケ・マグ「(あれ?)」


ってどれ?


と、シエルが指差した方を振り返ると……。


ショコラ「おぉぉぉ……♪」

メリー「……すごくぴりぴり♪」

チェルシー「これはクセになりそう…♪」

パメラ「結構気持ちいいかもぉ…♪」


はしゃいでた子たちが俺が目を離した隙に花畑に寝転がっていた。


コウスケ(ダメって言ったのに……)

マグ(あはは…でもほんとに気持ちよさそう〜。いいな〜)

コウスケ(マグはあとでね……今はとにかく練習を…)


モニカ「ふぁ…♡これ……なんだか…変な感じ……♡」


コウスケ(やべぇ最優先で止めなきゃ!!)

マグ(モニカちゃんそれはちょっとなんだか複雑な気持ちだよ!?)


…結局シエルとの練習が始まるのはもう少し後になった。

順調にセンシティブ力の上がっているモニカちゃん。

どうしてこうなった。


まぁいいや。(よくない)

また来週お会いしましょう。

ではでは!

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