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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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33.路上オークション…ズレた価値観と美人な親子

「この美人親子!親は2万から!子供は1万から始めます!!さあ!さあ!!早い者勝ちだぁ!!!」

「親を3万!」

「俺は4万だ!!」

「子供の方を1万5千だ!」

「こっちは2万出すぞ!!」

(気持ち悪い……)


ハルキと共にギルドに帰る道中、大通りで堂々と違法奴隷を売る悪徳奴隷商人が、体のラインが出るような簡素なワンピースのみを身につけた美人親子の競りをしている現場に遭遇した。


嫌悪感をあらわにした声音で言うマグ同様、俺も熱狂する現場を冷めた目で見ながら、小さな声でハルキに問いかける。


「ハルキ、いつもはどうやって止めてるんだ?」

「匿名で騎士団に連絡したり、隠密ギルドに依頼して事前に潰したりしてたよ」

「なら、今回もそれで行くのか?」

「いや、今からじゃ騎士団は間に合わないし、隠密ギルドから連絡が無いってことは、アイツがとても逃げ足が早いデブか、隠密ギルド内に内通者がいるか…」

「悪いがウチは無関係だぜ」

「(!)」


ハルキと話していたら後ろからいきなり渋オジの声がっ!?


「ああ、やっぱり近くにいたんですね、ダニエルさん」


英語の教科書!?


「よおハルキ、また新しい女連れてんなぁ?しかもまたガキかよ。お前ホントやべぇな」

「残念ながらこの子は違いますよダニエルさん。隠密ギルドなのにそんなことも分からないんですか?」


なんで今日のハルキすぐケンカ売っちゃうの?


「んなこと言って結局あのガキには手ェ出したじゃねぇか…お嬢ちゃんも気をつけねぇと傷物にされちまうぞ?」


そこで俺に降るかぁ〜……。


あのガキってのは多分、チェルシーのことだろうな。


確かに小さい子に手を出すのは頂けないけど、本人幸せそうだし良いんじゃない?


まぁとりあえず答えとくか。


「まだ会ってから日が浅いので、なんとも言えませんね。ただ、良い人だとは思ってますよ?」

「はっはっは!振られたなぁハルキ!」

「だからそういうのじゃ無いですって……それよりもこっちの話ですよ」


話を逸らしたハルキは、今もまだ後ろで賑わっている奴隷オークションの方を見る。


そうだ、このダニエルって人、隠密ギルドって言ってたな。


「ダニエルさん、こういうことは隠密ギルドに依頼してあるってハルキさんに聞いたんですけど、これは対象外ってことですか?あ、私マーガレットです」

「おう知ってるよ。んで、質問の答えだが、確かにオレらは依頼を受けているし、アイツも依頼の対象内だ。だが今はやらねぇ」


…後で潰しはするんだな。


「じゃあ、今あそこで売られてる人たちはどうするんですか?」

「悪いが今回は見逃す」

「っ!」

(そんなっ!?)


マグが悲鳴を上げ、ハルキがダニエルさんを睨みつける。

俺も言いたいことはあるが…何故か不思議と落ち着いている。


…多分、なんとなく分かったからだろうか。

その答え合わせをしてみるべく、ダニエルさんに質問してみる。


「…助けないんですか?」

「無理だな、金が無い」

「…てことは買い主は誰でも良いと言うことですね?」

(え?)

「……!」

「ほぅ…?」


俺の発した言葉に三者三様の反応が返ってきた。


マグはまだ分かってないな、ハルキは光明を得たようだ、ダニエルさんは楽しそうな顔で俺を見てくる。


…多分面倒ごとに巻き込まれるが、今は気にしない。


「ハルキさん、軍資金は?」

「…手持ちと貯蓄を合わせて200万」

「ダニエルさん、今の最高金額って分かります?」

「親が70万、ガキが50万だな」


しめて120万か。


「っ!」

「ストップハルキさん。ダニエルさん、競売のルールとかってあります?」

「…ハルキィ…お前よりよっぽど頭がキレる嬢ちゃんじゃねぇか、ウチにくれよ」

「あげませんよ。いいから早く教えてください」

「はいはいっと…」


早速買おうとするハルキを止めて、俺はダニエルさんに色々と教えてもらうことにする。


彼のもったいぶったようなゆっくりした話し方にハルキはイラつきを隠そうともしなくなってるが、俺は黙って続きを促す。


…多分本当にヤバかったらもう少し急かすと思うんだよね、この人。

なんとなくそんな気がする。


「競売の基本は少しずつ値段を上げることだ。だが刻みすぎても駄目だ、金に余裕が無いと笑われちまうからな。ここにいるような連中は人に笑われるのを嫌う。まぁ、笑われるのが好きな奴なんざいないだろうがな」

「ふむ…今だったら、親に75万、子に55万でどうでしょう?」


合計130万だが、まだいける。


「多分いけるが…あぁ、今、親が72万になったな」

「今競り合っているのは?」

「3人だな。どいつも2人まとめて買おうって奴はいねぇ」


できれば二人とも買いたいところだが、このままだと難しいだろう。


「…マーガレット、ダニエルさん、そろそろ……」

「ん、すみませんハルキさん。そうですね、そろそろ参加しましょう。多分あの人たちもギリギリだと思いますし」

「何故そう思う?」

「さっきの私の予想を下回ったからです。私なら30万超えたあたりから5万ずつ増やすので」

「なんでだ?」

「キリがいい方がなんか落ち着きません?」

「…なかなか鋭い嬢ちゃんだが、その辺はザックリしてるんだな……」


あれ?駄目だった?

相手もキリがいい方が気持ちがいいと思うんだけど。


(…キリの良さよりも高値の方が喜ぶんじゃ……)

(それはそうなんだけどさぁ……なんか気にならない?)

(いえ…特には…)

(そうかぁ……)


よく考えたら万単位いった時点で、向こうじゃキリの悪さとか関係無いな。

最高が1万円札だもんな。


ちなみにこっちの通過は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、黒貨の順に価値が上がっていく。


鉄貨1枚1ゴルで、それが10枚で銅貨、銅貨が100枚で銀貨、金貨は銀貨100枚分、つまり金貨1枚10万ゴルだ。


そして金貨1000枚で白金貨1枚、1億ゴルとなり、これと黒貨については価値が高すぎて扱える店が無いそうだ。


今回の72万、つまり金貨7枚と銀貨20枚。


俺が言った75万と55万、しめて130万なら、金貨13枚でピッタリなのだ。


んで、もう130万いったんなら次は140万にすれば良いと思ってる。


キリがいいから。


「親子で130万!!」

「おーっと!新しい挑戦者だ!親子まとめてとは贅沢な奴め!さぁ!他の方は!?これを超える者はいないかぁ!!」


そんな会話をしている間にハルキが参加、さっきまでの合計金額、122万から俺の提案した金額に吊り上げた。


「様子はどうですか?」

「おーおー、アイツらめちゃくちゃ悔しそうだぜ。いいねー、悪党のそういう顔。おじさんだぁいすき」

「多分150万ぐらいで打ち止めじゃないかと。オークションを荒らしたわけでは無いですし、他の人が誰か個人に援助するなんてことは起こらないはずです」

「そこまで計算ずくかよ。恐ろしいガキだぜ」


(そのためにさっきルールを聞いたんですね)

(そ、どんなとこにもルールはあるし、それを破るやつにいい顔はしないもんさ)

(違法なのに?)

(違法の中のルールは破ると死に直結することがあるから守るんじゃないか?知らんけど)


まぁとにかくそういうわけで。

ダニエルさんと話しながらハルキを見守り、彼は見事、親子を147万で競り落とした。

キリ悪いなぁ……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ハルキがお金を払って、親子を連れて戻ってくる。


うーん…やっぱり目が死んでる。

相当辛い目にあったんだろうな。


「おかえりなさい、ハルキさん。お疲れ様でした」

「うん、ありがとうマーガレット」

「お前はもう少しこのお嬢に感謝しろよ?お嬢がいなかったらもっと高値が付いてたかもしんねーんだからな?」

「分かってますよダニエルさん。彼女には色々助けられていますから」


そんな助けた覚え無いんだけど?

今日2回ケンカ止めたぐらいしか記憶ないんだけど?


(やっぱりコウスケさんはすごいですね!)

(何が?ねぇ、何が?どれが?)


マグにもよく分からん賛辞をもらってしまった。

まぁ普通に嬉しいからいいや…って、おや?


美人親子の子供の方が俺をじっと不思議そうに見つめている。


そういやまず名前聞かないとじゃないか?


「ハルキさん、自己紹介自己紹介」

「あ、そっか。ごほん、僕はハルキ、しがない商人だよ。君たちの名前を教えてくれる?」

「…私はフルール。この子はメリー。この子と一緒に買ってくれたことには感謝してるわ。でも、変なことしたら容赦なく殺してやるから」

「口の聞き方がなってねぇやつだな。オレらが善意で親子まとめて買ったと思ってんのか?」


お金全部、ハルキの物ですけどね。

無一文の俺はともかく、ダニエルさん一銭も払ってないですよね?


さすが隠密ギルド、汚い。


「!…分かってる…ます……」


フルールさん萎縮しちゃった。

怖いよねぇ、厳ついもんねぇ。


そんな失礼なことを考えている俺の服の裾がクイクイと引っ張られた。


メリーちゃんだ。


「…………誰?」


誰ときたもんだ。

いやまぁ名乗ってないから当然だけどさ。


「初めまして、私はマーガレット。これでも公務員だよ☆よろしくね」

「…………ん…よろしく」


俺の特に意味の無いキラキラが効いたのかコクリと頷いてくれたメリーちゃん。

また可愛い生物に出会ってしまった。


「ハルキさん、とりあえず服を買ってからギルドに戻るって感じでいいですか?」

「うん、さすがにそのままってわけにはいかないしね。ダニエルさんは先に戻ってていいですよ」

「そうさせてもらうわ。女の買い物は長いからな」


そういうわけでダニエルさんとは一旦お別れだ。


別れ際にハルキとダニエルさんがアイコンタクトを交わしていたので、まぁ何かあっても大丈夫だろ。


だから俺は全力で、フルールさんとメリーちゃんの服を選ぶのだ。


ものっそ可愛く仕立ててやるのだっ!!


そう意気込む俺に、ハルキが小声で衝撃的なことを教えてくれた。


「彼女たちは《吸血鬼》だから日の下は避けて通るよ。あと日傘を買うのを忘れないで」


吸血鬼ですと…?

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