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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第5章…魔術コンクール
339/435

332.あの子の手紙…深夜の目撃

〔フレデリカ〕


手紙を書いてから数日後。

今日も今日とで授業を当たり障りなく終わらせて帰宅したワタクシたちがお風呂と夜ご飯を済ませて部屋に戻ったところで、ディエレッツァがひとつの封筒を取り出して言った。


ディエレッツァ「フレデリカ様、エリーゼ様。お二方宛てにお手紙が届いております」

フレデリカ「また?」

エリーゼ「今度はどこの誰から~?」


ワタクシとエリーはそんなディエレッツァに苦い顔をして答えた。


何故なら、過去に何通も手紙を送られているものの、そのほとんどがワタクシたちやワタクシたちの親を褒めたたえるような内容だったり婚約の申し込みだったりで、とてもじゃないが見ていて気持ちの良いものではなかったからだ。


迷宮都市に行く前だったら、ただのヨイショだということをなんとなく理解しつつも悪い気はしないなんて言っていたものだが、今ではただただ面倒なもの。


婚約の申し入れなど迷惑以外の何物でもない。

これは迷宮都市に赴く以前からの素直な気持ちだった。


だって書いてあることが家の繋がりがどうのこうのという内容ばかりなのだもの。

さすがにうんざりした。


しかし普通はこんな風に自由(?)に学園生活を出来るものではない。

序列が何番目だろうと、一国の姫君がこんなドフリーの状態で学校に通っているなんていうのは非常に稀な事なのだ。


現にお姉様は5歳のころに許婚(いいなずけ)をもらっていたし、お兄様に至ってはわずか2歳の時に結婚相手が決められていた。


どちらも王国で「王国三家」と評されるほど、王族から信頼されており、力も持っているとされる貴族の子だった。


そんなことになっていたというのに何故ワタクシは許されているのか。

それは王国貴族間で牽制しあっているから。


実は先ほどの二家と同じくらい力を持った家があり、ワタクシはその家の子と結ばれるはずだったのだが、その家が《クシャリオス帝国》…領土では王国に劣るものの、軍事力ではどの国よりも優れていると言われている大国と裏で繋がっていることが分かり、謀反未遂の罪で投獄、家財没収の刑に処されたらしく、その空いたポジションに誰が入るかをここ数年の間ず~っと決まらずにいる。


ちなみに謀反の理由は子どもの婚約が三家の中で一番最後になったから。

このままでは他の家の後に回ってしまうから、それならばいっそ…ということらしい。

お父様に聞かれてそう答えていた場面を見たのでよく覚えてる。


正直とても子どもっぽい理由だなと思った。

だって、自分だけ仲間はずれされたからイジワルしてやるって言ってるのと同じようなものだもの。

規模は全然違うけど、だからこそ余計に酷い。


まぁそれはともかく、ひとつ空いたなら次に力のある家がそこに入ればいいじゃない。

誰もがそう思うだろう。

ワタクシも思った。


けれども三家の次に力を持つ家は複数あり、その家たちの力はほぼ互角。

そしてその全てが三家のうちのどれかの派閥に入っている。


この中から一つを選ぶとなると…まず投獄された三家の派閥に入っていた家は共犯の疑いがあるので、徹底的に調べたとはいえ除外。

しかし残りの二家の派閥から選ぶと、選んだ側の力が大きくなりすぎてパワーバランスが崩れてしまう。


謀反されかけた身としては、もし同じようなことがあった際に力ずくでも抑えられる程度にしておきたいというのが本心。


そうなるとやはり謀反未遂を起こした家の派閥から選ばねばならないが……。

そしてそうすると決めたとしても候補は複数……。

どれかを選べばその他が不満を持つ……。


謀反に怯えたお父様たちは決めるに決められないまま時間だけが進んでいき、今に至るというわけだ。


そして、お父様がダメそうならその身内から決めてもらおうと、こうして権力が欲しい親たちに背中を押された者たちがワタクシと、その親友であるエリーにまでも婚約の申し入れをしてきているというわけだ。


ちなみに中には女子からの手紙も混ざっていたりする。


ほとんどはお友だちになってほしいという内容だが、時折同じように求婚をしてくる子もいる。

まぁそれは親の言うことをバカ正直に表現した結果なのだろうと思いそっとしておいたのだが、中にはお姉様になってほしいという手紙もありさすがに困惑した。


……今から姉妹にはなれるものなの……?

だったらマーガレットの妹になりたいのだけど……?


ちなみにちなみに、このような手紙は迷宮都市から帰ってきてから見かけるようになった。

その前までは姉妹になりたいだなんて書かれた手紙はもらっていない。

つまりここ数日の間の話だ。


いったい何故……?

ワタクシたちが迷宮都市に行っている間にこの学園で何が起きたらこんな手紙を書くようになるんだろうか……?

知りたいような知りたくないような……。


あとこんな手紙が来ると決まってリオンのテンションが上がるのも何故なんだろう……?

これも知りたいような知りたくないような……。


まぁとにかく、そういう理由であまり自分たち宛ての手紙は嬉しくないのだ。

学校でもその旨を伝えたはずなのだが、数は減れど手紙はこうしてやってくる……。


はぁ……めんどくさい……。

で、そんな言葉を解せないおバカさんはどこの誰なのかしら?


ディエレッツァ「差出人はマーガレットさんです」

フレデリカ・エリーゼ「「えっ!?」」


マーガレット!?

お返事描いてくれたのね!


ディエレッツァ「ですがお二方はあまり読みたくないようなのでいつものように私が読んで要約させていただきますね」

フレデリカ「待って待って待って待って!?」

エリーゼ「読む読む!自分で読む自分で読む!」

ディエレッツァ「そうですか?ではこちらを」

フレデリカ「もう!冗談に聞こえなかったわよ!」


悪ふざけが過ぎるディエレッツァに文句を言いながら手紙を奪い取る。


…もしかしていつも読ませていたのを根に持っているのかしら……?


リオン「フレデリカ様?マーガレットさんって、おふたりがいつも楽しそ~に話してる方ですよね?」

フレデリカ「えぇ。って、そんなに楽しそうに話してるかしら?」

リオン「はい!ねぇ?」

シュシュ「うん…」

フレデリカ「そ、そんなにだったかしら……」


たしかにエリーは凄い楽しそうに話してるけど……ワタクシもそうだったの?

なんだか恥ずかしいわね……。


シュシュ「エリーゼ様もフレデリカ様も、マーガレットさんのことになると同じお話を何度もするほど嬉しそうにお話してます…」

フレデリカ「えっ!?」


そんなにだった!?


エリーゼ「え~?フレンはそうだけど、私は別にそんなことないよ~?」

フレデリカ「ちょっと!それはワタクシの言葉なんだけど!?」

ソバッソ「どちらもですよ」

フレデリカ・エリーゼ「「えっ!?」」


ケンカするワタクシたちにソバッソがバッサリ言い放った。

その後にリオンが続く。


リオン「うんうん!おふたりともまるで恋人のことを話しているかのようで、見ていてとても捗ります♪」

フレデリカ「んなぁっ!?」

エリーゼ「こここ恋人だなんてそんな…!マーガレットはたしかにちょっと特別な感じだけど、そんなわけじゃなくて……!」

フレデリカ「そうそう!お友だちだから!ワタクシたちの初めてのお友だちだからなんだから!」

リオン「ぐへへへへへ……♪どう?シュシュにもそろそろこのご主人さまたちの可愛さが分かってきたんじゃない?」

シュシュ「たしかにもう怖くはないけど……リオンちゃんの楽しみ方はシュシュには早いかな……」

ソバッソ「別にその道は至らなくてもいいんですよ……」

ディエレッツァ「それよりも、お手紙を読まなくてよろしいのですか?」

エリーゼ「あっ、そうだった!フレン、見せて見せて!」

フレデリカ「わわっ…抱きついてちゃ開けづらいわよ!」


ディエレッツァに進められて手紙を開けたワタクシ。

横から覗き込んでくるエリーはいいとして、覗き込むようなことはしないけど内容は興味がある素振りを見せる他の面々のために声に出して読むことにした。


フレデリカ「え~…エリーゼとフレデリカへ……」


[この穏やかな春の…陽気……日……春…春は…あけぼの……うん、ごめん。分からないことを思いつくままに書くもんじゃないね。

さらば季節の挨拶。]


エリーゼ「諦めちゃった!」

ソバッソ「そして書き直した手紙を用意しないという……」

リオン「もしかしておかしい人……?」

フレデリカ「ま、まぁ…他の子とは全然違うわね……続けるわよ?」


[とにかく、まずはお手紙ありがとうございます。

ふたりからの手紙だよと渡されたとき、私はとても嬉しかったのと同時に無事であることが分かって安心しました。


私が渡した救壁の護符は役に立ったでしょうか?

使っていないというなら、道中そこまで危険なことがなかったということだと思い安心しておきます。]


フレデリカ「あぁそっか。使う機会がないほど安全でしたって書いとけばよかったわね」

エリーゼ「そうだね~。次のお手紙で書かないとだ」

シュシュ「きゅうへきのごふ…?」

エリーゼ「あっ知らない?…んしょ…ほら、これ」


エリーは自分が首元に下げている護符を服の中から出してシュシュに見せてあげた。

ワタクシも同じように服から出して見せてあげる。


エリーゼ「これに魔力を流すと魔法の壁が出てくるんだって~!」

シュシュ「へぇ~!」

フレデリカ「一回しか使えないから、ここぞって時にしか使わないけどね」

リオン「なるほど~……あれ?でもエリーゼ様もフレデリカ様も、マーガレット様からの贈り物を使うなんて出来るんですか?」

フレデリカ「何言ってんの。出来るに決まってるじゃない。これはそういう道具なんだから。もし使う機会が訪れたとしても、大事にして死んじゃうよりも、使ってでも生き延びた方がマーガレットも喜んでくれるわよ」

エリーゼ「死んじゃうと会えないもんね」

リオン「あぁ、それはそうですね。すみません、分かり切ったことを聞いてしまって」

エリーゼ「いいよ~。大事にしたいな~っていう気持ちももちろんあるからね」

フレデリカ「えぇ。大切な贈り物だもの。さっ、続き読むわよ」


[また、学校生活が楽しそうで何よりです。

新しいお友だちの子たちとも機会があれば会ってみたいな~。]


エリーゼ「そうだねぇ。私もリオンとシュシュのことをマーガレットに紹介したいな~!」

フレデリカ「でも首輪が付いてるから奴隷なのが丸わかりなのよねぇ……」

エリーゼ「あっ…そうだった……」

リオン「…なんか、すいません」

シュシュ「ごめんなさい……」

エリーゼ「いやいや!ふたりは悪くないから!ねっ!?」

フレデリカ「そうそう!ほら、続けるわよ!」


[こっちもそちらに負けず劣らず刺激的な毎日を送っていると思っています。

シスターの子とお友だちになったり。

練習試合で死ぬかと思うほどのプレッシャーかけられたり。

魔法暴走した少年をシバいたり。

パジャマパーティーしたり。

ケモノ耳になったり。

ドワーフの友だちが入院したり。

ヤマトの国の商隊が来たりしました。]


ソバッソ「いろいろありすぎでしょう」

リオン「途中途中おかしいのありません……?」

フレデリカ「魔法暴走した少年をシバいたって何……?」

エリーゼ「さぁ……?」

シュシュ「ケモノ耳になるってなんですか……?」

ディエレッツァ「さぁ……?」

フレデリカ「というか友だちが入院って…大丈夫なのかしら……?」

エリーゼ「心配だねぇ……」

リオン「私としては死ぬかと思うようなプレッシャーが気になるんですけど……」

ディエレッツァ「それは恐らく、誰か経験豊富な強者と戦ったからでしょうね」

ソバッソ「猛者は威圧するだけでモンスターを逃げさせることが出来たりしますからね。大人びているとはいえマーガレットちゃんもまだ子どもですから、それはそれは怖かったことでしょう」

エリーゼ「あぁ~……ソバッソが特訓のときにやってきたアレだね」

フレデリカ「あれね……足がすくんで動けなかったわね……」

ソバッソ「ふふふ♪おふたりともまだまだですね♪」

フレデリカ・エリーゼ「「むぅ~……!」」

ディエレッツァ「大人げない……はいはい、それよりもフレデリカ様。続きをお願いします」

フレデリカ「ん…そうね」


[ちなみにドワーフの子はもう退院して私の隣で寝ています。]


ディエレッツァ・ソバッソ・リオン『ぶっ!』

フレデリカ・エリーゼ・シュシュ『?』


再開早々三人が噴き出したのでまた止まる。


フレデリカ「ど、どうしたの……?」

ディエレッツァ「い、いえ…なんでもありません……」

ソバッソ「ちょっと言い回しがツボに入っただけです……」

リオン「げほっ…げほっ……これは不意打ちすぎる……!」

フレデリカ「そ、そう……?」


大丈夫かしら……?


エリーゼ「でもいいな~。私もマーガレットと寝たいな~」

リオン「ㇵッ!?」

フレデリカ「そうねぇ……マーガレットあったかいし柔らかいしで、一緒に寝たら凄く気持ちよさそうよねぇ……」

リオン「やわっ……!?」

エリーゼ「ねぇ~♪でもシュシュの髪もモフモフですっごく抱き心地いいからなぁ~……今から離れるのはちょっと……」

シュシュ「あ、ありがとうございます……///」

リオン「だ、抱き……!」


リオンがさっきから様子が変だが、今はそれよりもエリーのことが羨ましくて仕方がない。


フレデリカ「……いいなぁ……ワタクシはまだ触ったことないのに……」


最近はよくお話してくれるようになったとはいえ、最初に怖がられていたことがずっと頭の中に残っていてつい遠慮してしまうのよね……。


と、そんなワタクシにシュシュが話しかけてきた。


シュシュ「フ、フレデリカ様もいつでも触っていいですよ…?」

フレデリカ「えっ…で、でも……」

シュシュ「えと…最初はちょつと怖かったけど…今はもう怖くないですし……仲良しになりたいので……」

フレデリカ「ほ、ほんと?無理してないわよね?ほ、ほんとに信じちゃうわよ?」

シュシュ「大丈夫です…」


そう言うとシュシュはワタクシに背中を向けてこう言った。


シュシュ「えっと…今でも…大丈夫ですよ…?」

フレデリカ「えっ!?」


シュシュのモフモフの髪……。

羊人族特有の柔らかそうな髪がワタクシの目の前に差し出されている……!


フレデリカ「……さ、触るわよ……?ほんとに触るからね……?嫌だったらちゃんと言わなきゃダメだからね……?」

シュシュ「……(こくり)」

フレデリカ「……(ごくり)」


おそるおそる手を近づける。

シュシュの表情はここからでは読めないが……震えていたり怖がっているような様子はない。


それを確認したワタクシは意を決してシュシュの髪に触れた。


フレデリカ「わっ……」


それはとても、ふわふわしていた……。

なんて肌触り……いつまでも触ってられそうなほどだ……。


シュシュ「どうですか…?」

フレデリカ「すごくふわふわで気持ちいいわ……ずっと触っていたいくらいよ……」

シュシュ「えへへ…ありがとうございます…///」


もうほんとにモフモフ……。

確かにこれを抱いて眠ったらいい夢が見れそうだわ……。


リオン「ここに来てからずっと尊い……はぁぁ……生きててよかったぁ~……!」

ソバッソ「そろそろ止めた方がいいかな……?」

ディエレッツァ「本人も他の子たちに悪影響が出ないように気を使ってるようだし、あまり行き過ぎないうちは好きにさせてあげましょ……」

ソバッソ「あれで悪影響出てないの凄いわよね……」


なんか視界の端で話してるのが見えるけど、それよりもこのモフモフを堪能したいわ……!


そんなことを考えるワタクシに、エリーゼが上機嫌で話しかけてきた。


エリーゼ「でしょでしょ!気持ちいいでしょ~!それで閃いたんだけど、もしもシュシュとマーガレットに挟まれて寝たら絶対気持ちいいよね!」

フレデリカ「っ!エリー…あなた……天才すぎない……?」

エリーゼ「んふ~♪」


シュシュのモフモフの髪に埋まりながら、マーガレットになでなでしてもらう……。

天国かしら?


リオン「そ、そんな……!?フレ×シュが出来てすぐになんて無情な……!ハッ!でもそんなフレデリカ様に私をもっと見てと嫉妬するシュシュはアリ寄りのアリ……!」

ソバッソ「なぁ、やっぱ止めないか?」

ディエレッツァ「クギ差しときましょっか」

シュシュ「あ、あの~……お手紙の続きは……?」


しばらくの間ワタクシたちは手紙を忘れて自由に戯れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔エリーゼ〕


エリーゼ「う~ん……」


その日の夜中。

私は目覚めたと同時に何かを感じた。


ただそれが何かはまったく分からない。

なんとなく変な感じがする…ような気がして目が覚めた感じだ。


エリーゼ「……お水飲も……」


とりあえず水を飲んでひと息つこうと考えた私は、抱きしめていたリオンを離して布団から出る。


フレンはシュシュの髪に埋もれて眠っているし、シュシュも特に寝苦しそうではなさそう。


これなら私が抱きついて寝てたときも大丈夫そうかな?

実はちょっと心配だったんだけど、大丈夫そうならよかった。


部屋の扉を開けると、廊下は異様に静かだった。


見回りの兵士がいるはずなんだけど……。

というかお姫様のフレンがいるんだから、部屋の前に兵士いるんだけど……。


そう思って扉の傍を見てみると…


エリーゼ「…え?」


そこには兵士が横たわっていた。


ど、どうして……?

いや、とりあえず確認……!


横たわる兵士に近寄って耳を当ててみる。

すると寝息を立てていることが分かり、ただ眠っているだけだというのが分かってホッとした。


扉の反対側の傍にも兵士がいるが、見るとそちらも壁にもたれて倒れていた。


そちらも確認すると、やはり眠っているだけだった。


もしかしてと思い寮の中を探索すると、やはりそこかしこで人が倒れており、その全てが寝息を立てていた。


明らかにこれは異常だ。


エリーゼ「でも……どうしてこんなことに……?」


何が原因なのかがまったく分からない。


誰かが魔法薬をばら撒いた?

そんな人はまだ見かけてないし、泥棒だとしてもここまで荒らされた形式がないのは不自然な気がする。

というか起きてる人の気配がまるで感じられない。


う〜ん……こういうときはソバッソたちを頼ろう。

あっでも、こんな不自然な状況で眠っちゃってる人って普通に起こせるのかな……?


ともかく他に手段も思いつかないので、ソバッソたちに与えられている使用人用の部屋まで行くことにする。


が。


エリーゼ「っ!?」


強い気配を感じた。

ソバッソたちと模擬戦をした時に近いような、そんな気配が。


反射的に近くの窓から空を見上げる。

空は雲ひとつ無く、月がとてもキレイに輝いて…


エリーゼ「あっ…!?」


その月が…いや、空が何か大きなものに遮られ、急に暗くなった。


その影はとても巨大で、翼のようなものと尻尾のようなものが付いているよつに見えて、まるでおとぎ話で見たような…


トッ


エリーゼ「っ…」


そこで私の意識は途絶えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔ディエレッツァ〕


ディエレッツァ「ふぅ……」


まさかエリーゼちゃんが起きてるなんて……。

あまりこの子たちを変なことに巻き込みたくないから、今回のことは「おかしな夢を見た」ということで終わって欲しいわね……。


それにしても……。


ディエレッツァ「まさかこんなところでお目にかかるなんてね……」

ロッピー「ディエレッツァ」


エリーゼちゃんを抱えて空を眺める私のところに、廊下の奥からロッピーが走ってきた。


ロッピー「やはり執事がいない。アイツは今回の件に関わってるのは明白だ…って、おいおい。エリーゼちゃんじゃないか。なんでここに?」

ディエレッツァ「今の今まで起きていて、いろいろ動き回っていたのよ。だから私が今しがた寝かしつけたところ」

ロッピー「起きてたって……」

ディエレッツァ「一応言っとくけど、この子は白よ。行く方向を察するに、私たちのところに来ようとしてたみたいね」

ロッピー「ふぅん……まぁさすがにエリーゼちゃんが関わってるわきゃないか……しかしそうなると、エリーゼちゃんが起きてたのはアイツらにも想定外だったろうな」

ディエレッツァ「えぇ。この大規模な眠りの魔法が効かないなんて夢にも思ってないでしょうね。さすがは()()()()と言ったところかしら?」

ロッピー「魔法はほんとに効果が薄かったもんなぁ…エリーゼちゃん。だが、アイツらにバレる前に確保できてよかったな」

ディエレッツァ「えぇ。この件の黒幕たちに気付かれてたら今頃どうなっていたか……殺されることはないにしても、監禁、洗脳…別の口封じの仕方はいくらでもあるものね」

ロッピー「ほんと、危ないところだったぜ……さて…そろそろ誰か見回りに来る頃合いだな。俺は持ち場に戻って寝たふりをしとくぜ」

ディエレッツァ「えぇ。私もエリーゼちゃんを戻したらすぐに部屋に帰るわ。情報のすり合わせはまた後日ね」

ロッピー「あぁ。それじゃあな。一応気をつけろよ」

ディエレッツァ「えぇ。そっちもね」


そう言ってこの場から去り行くロッピーに背を向け、私もエリーゼちゃんを運ぶために彼女たちの部屋へと向かう。


さっそく手紙を書いてマスターに知らせないと……。

でも、まさか……。


まさか翡翠龍がここで見つかるなんてね。

久しぶりだね、翡翠龍。

久しぶりすぎて予測変換に出てこなかったよ。

困った。


ともあれこれでエリーゼ・フレデリカ編は一旦終わりです。

次回からはボケ倒すあの人サイドに戻ります。


しかしそうなるとしばらくリオンという濃いキャラを書かないのか……。

いいんだが悪いんだか……。


まぁともかく今週はこの辺で。

また次週お会いしましょう。

ではでは。

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