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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第5章…魔術コンクール
338/435

331.奴隷少女たちとのファーストコンタクト…と正念場

〔フレデリカ〕


奴隷を買って寮に戻ってきたワタクシたち。


執事にも見せて顔合わせを済ませたところで、ワタクシたちの部屋に移動してきた。

いつも隙あらば嫌味を言ってくる執事にしてはあっさり話を終わらせたので、やっぱりこの男とあの店は繋がってるわね……。


まぁそんなのを知ったところでしょうがないので、ひとまずワタクシたちは奴隷の子たちと距離を縮めようと思ったわけだが……。


奴隷たち「「……(びくびく)」」


…まぁ……警戒されるのは分かる。

この子たちにとってはあんなお店をやってる店主の男も、そこに買い物に来たワタクシたちも、どちらも同じく人の命を物として扱ってるヤバいやつなんだろうから。


だからこっちを見て凄いビクビクされるのは分かる。

分かるんだけど……どうして……


奴隷たち「「……(びくびく)」」

エリーゼ「え~っと……あっちの子ともお話してみない……?」

奴隷たち「「……!(ふるふるふるふる)」」

エリーゼ「う、う~ん…そっかぁ……」

フレデリカ「どうしてエリーには懐いてるの!?」

奴隷たち「「っ!」」

エリーゼ「わわっ、ダメだよフレン!急におっきい声出しちゃ怖がっちゃうよ!」

フレデリカ「うぅぅ……!」


まだ出会って数分も経ってないのに……。

ワタクシとエリーはずっと一緒にいたから差なんてないはずなのにぃ……!

どうしてワタクシは怖がられてエリーには背中に隠れるほどに懐いてるのよぉ……!


この理不尽にしょんぼりするワタクシに、ディエレッツァが声を潜めて話しかけてきた。


ディエレッツァ「おそらく、買った時の印象があるんじゃないでしょうか?」

フレデリカ「買った時の印象……?」

ディエレッツァ「はい。フレデリカ様はあの店主相手に一歩も引かずに毅然とした態度で接しておりましたが、エリーゼ様は終始フレデリカ様の後ろに隠れて様子を見ておられましたよね?」

フレデリカ「えぇ、そうね」


ワタクシも正直逃げだしたいくらいおぞましい場所と相手だったけど、エリーが背中に引っ付いていたのもあって頑張れたのよね……。


ディエレッツァ「ですが、私たちにはフレデリカ様が頑張っているのが分かりましたが、まだそこまで人の感情を読むことが出来ないであろうこの子たちには、フレデリカ様が「こんな店に普通に買い物に来る常連客」として認識されてしまったのではないかと……」

フレデリカ「えっ」


いや……たしかに言った。

というか思った。今さっき。


それにエリーが懐かれたのは良いことだと思う。

ふたりそろってビクビクされるよりは遥かにマシ。

それは分かる。分かるんだけど……。


エリーゼ「あ~…えっと……ふ、ふたりはお名前なんていうの?」

人間娘「あっ、はい…リオンと申します……」

羊っ子「えと……シュシュです……」

エリーゼ「リオンとシュシュだね。私はエリーゼ、よろしくね」

シュシュ・リオン「「よ、よろしくお願いします……」」


あぁ~!

自己紹介してるぅ!


エリーゼ「こっちが私の専属メイドのソバッソだよ」

ソバッソ「ご紹介にあずかりましたソバッソです。何か分からないことがあれば遠慮なくお聞きください」

シュシュ・リオン「「あ、ありがとうございます……!」」


あぁー!ソバッソまで!?

ワタクシなんか(怖がるから)近づけもしないのにぃ~!


そんなワタクシの恨めしい視線に気付いたエリーが、こっちに助け舟を出してくれた。


エリーゼ「そ、それでね!あっちの子がフレン!私の友だちだよ!」


ここで怖くないことをアピールすれば懐いてくれるかも……!


フレデリカ「こほん……ワタクシはフレデリカ。エリーにはフレンって呼ばれてるわ。よろしくね♪」


とびきりの笑顔も付けて自己紹介。

さぁ、これで怖い人というイメージが消え…


リオン「よ、よろしくお願いします……」

シュシュ「よよよよろ…よろしく…おね、おねが…おねがいしゃ…しま…しますぅ……」


消えてない!?

なんで!?


エリーゼ「フレン……そんな怖い顔してちゃダメに決まってるでしょ……?」

フレデリカ「えぇっ!?ワ、ワタクシは笑ったつもりだったのだけど!?」

エリーゼ「うん…笑ってはいたけど……なんというか……」

フレデリカ「なんというか……?」

ソバッソ「うっすら下心が見える感じでしたねぇ……」

フレデリカ「がーんっ!?」


うぅぅ……!

しょうがないじゃない!

仲良くなりたいんだから!


エリーゼ「え、え~っと……そ、それで!」


悲しむワタクシを置いてエリーは無情にも話を戻した。


エリーゼ「フレンの隣にいるメイドがディエレッツァだよ!」

ディエレッツァ「ご紹介いただきましたディエレッツァです。ソバッソ同様、お困りのことがあれば気軽にお声がけくださって構いませんので、どうぞよろしくお願いいたします」

シュシュ・リオン「「よ、よろしくお願いします……」」

フレデリカ「ガガーンッ!?」


ディエレッツァも打ち解けたぁ!

なんでぇ!?

どうしてワタクシだけぇ!!


リオン「え、えっと……さっそくなんですけど…質問いいですか……?」

ディエレッツァ「えぇ、なんなりと」


しかも質問までぇ……。


うぅぅ……。

酷いわ…あんまりだわ……。


ぐすん……マーガレットにうんと甘えたいぃ……このボロボロの心を思いっきり慰めてほしいぃ……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


コウスケ「ハッ!?今誰かが私に甘えたいっ嘆いてたような気が……」

シエル「あんたついにそんな能力を……?」

チェルシー「でもここにいるみんなマギーちゃんに甘えたいっていつも思ってるよ?」

サフィール「わ、私はそんな…いつもなんてことは……」

リオ「オレも別にそこまでは……」


マグ(まぁそうなりますよ)

コウスケ(……せやね)

マグ(ちなみに私もいつも思ってますよ?)

コウスケ(知ってる)

マグ(えへ♪)

コウスケ(うぉっかわいっ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔リオン〕


ソバッソ「というわけでお勉強のお時間です」

エリーゼ「はーい!」

リオン「は、はい!」

シュシュ「はいぃ……」

フレデリカ「は~い……」


突然始まったお勉強タイム。

きっかけは私の質問、「どうして私たちを買ったんですか?」だった。


これにエリーゼ様が少し申し訳なさそうに「授業のため」と答えてくれたのだが、その授業の内容は知らされていないという。


そこでソバッソさんが「そもそも一般的な奴隷の教養をエリーゼ様たちは知らないんでしたね」と言い、このお勉強会が始まったのだ。


ちなみにフレデリカ様は未だに元気がない。

悪い人ではない…っていうのはなんとなくわかったんだけど……それでもやっぱりまだちょっと怖いので……ごめんなさい。


ソバッソ「ではまず基本中の基本です。奴隷は主人の命令には絶対従います。これはこの《奴隷の首輪》の作用ですね」

エリーゼ「うん。命令されたら逆らえないんだよね?」

ソバッソ「そうです。とはいえこれはあくまで命令された部分のみ。例えば、「買い物に行け」とだけ言われれば、何を買うかは奴隷の自由ですし、移動手段も奴隷の自由です。馬車を乗り継いではるか遠くの町まで行ってしまっても、それが「買い物」の範疇であれば命令違反にはなりません」


えっ。


と思ったのは私だけでなく…


シュシュ「えっ…そ、そんなのアリなんですか……?」


隣に座る羊人族の女の子、シュシュも同じことを思ったらしく口に出していた。

なので自分も乗っかって思ったことを口にする。


リオン「それじゃあずっと「お買い物」って体で帰ってこなくなるんじゃ……」

ソバッソ「ところがそうも言えないんです。お二方は何故だか分かりますか?」


ソバッソさんは私から目を離し、エリーゼ様とフレデリカ様の方を見てそう問いかけた。


エリーゼ「えっ?う~ん……」

フレデリカ「…奴隷の首輪があるから」

ソバッソ「正解でございます」


エリーゼ様は頭を抱えていたけど、フレデリカ様はスパッと答えを言った。


最初にちょっと間隔があったのはそこで立ち直りを挟んでいたからだ。


エリーゼ「えっ、どういうこと?」


とはいえその答えがエリーゼ様同様分からない私。

シュシュも頭にハテナを浮かべている。


そんな私たちにフレデリカ様が解説を初めてくれた。


フレデリカ「奴隷の首輪には命令を守らせる力しかないわ。でも付けているだけで周りに奴隷だということを知らせることになる。知っての通り、奴隷はその辺の一般人よりも地位が低いわ。もし仮に誰かに叩かれたとしましょう。そのとき奴隷が兵士に泣きついても兵士は「奴隷の方が地位が低いんだから」と取り合ってくれないわ。でもその奴隷の主を兵士が知っていると対応が変わる。その主が兵士にとって好ましい相手なら助けてくれるかもしれないし、嫌いな相手だったら一緒になって奴隷を叩くでしょうね」

エリーゼ「うわぁ……」

シュシュ「ひぇ……」

フレデリカ「でも、たとえ嫌いな相手でも助けざるを得ない主人の場合もあるわ」

リオン「……貴族…ですか?」

フレデリカ「えぇ、その通りよ。兵士だって雇われてるんだもの。自分の主人の奴隷を助けてあげれば、主人に良い顔が出来るでしょ?たとえ別のところの奴隷だとしても、その主人の地位が高ければ同じ。それに、助けなかったらその主人に何をされるかって考えるかもしれない。怒られるだけならまだしも、仕事を辞めさせられたりするかもしれないしてん最悪、自分が奴隷に落とされるかもしれない」

エリーゼ「そういえばそんなこと言ってる子いたなぁ……」

シュシュ「ひぇぇ……!」

エリーゼ「あっ…!だ、だいじょ―ぶだいじょーぶ!そんなことしないから!」


隣でぷるぷる震えるシュシュをエリーゼ様が宥めている。


良い主に買ってもらえたなぁ…としみじみ。


フレデリカ「だから自分のところの兵士には奴隷を知らせておくのが当たり前。なのはいいんだけど…同じことを自分の領地の人全員に伝えられるかと言われると…う~んってなるわけで……」

ディエレッツァ「そうですね。自分が元居た場所を思い浮かべてください。近所の人が全員良い人でしたか?」

シュシュ「えっと……イジワルな子とかちょっと怖そうな人とかいました……」

リオン「私もそんな感じでした……あ~…なるほど……そういう人たちが奴隷に優しいかなんて分かりませんもんね……」

ディエレッツァ「はい。みんながみんな良い人なんてことはありえません。それが自分よりも地位の低い相手ならば、尚更本性を現すでしょう」

ソバッソ「そうなったとき奴隷が確実に泣きつける相手となるのは自分を買った主人とその周りだけなんです。なので奴隷は自分の主人の近くにいる方が安全なんですよ」

フレデリカ「その主人が嫌なやつじゃなければね」


フレデリカ様の言葉にディエレッツァさんとソバッソさんが静かに頷いた。


シュシュ「人こわい……」

エリーゼ「こわいね……」


シュシュを慰めていたはずのエリーゼ様が一緒になってぷるぷる震えている。

そこにフレデリカ様が来てエリーゼ様の背中をぽんぽんと叩いて慰め始めた。


あっ、シュシュのことも慰めようとして上げた手にシュシュが怯えたからすごすごと戻した。


そしてシュシュはエリーゼ様にスススッ…と隠れ、エリーゼ様はそんなシュシュのことをぎゅっと抱きしめ、フレデリカ様がその光景にショックを受けしょんぼりしていた。


う~ん……


リオン「ふ、フレデリカ様……」

フレデリカ「っ!な、なにかしら?」

リオン「わ、私もちょっと怖くなっちゃって~……」

フレデリカ「そ、そうなのね!仕方ないわねぇ!こっちにいらっしゃい!」

リオン「ありがとうございま~す」


呼ばれるがままにフレデリカ様のもとへ向かうと、さっそくフレデリカ様が抱きしめてきた。


フレデリカ「大丈夫よ~♪ワタクシたちはこれでも上の地位の人間なんだからね。そんな手癖の悪いやつら守ってあげるからね~♪」


そして上機嫌で私の頭を撫でながらそんなことを言った。


う~ん……この人……。

最初はあの奴隷商たちと対等に話してたから怖い人だと思ってたけど、怖がられて悲しがったり私の分かりやすい甘え方に喜びつつも貴族としての尊厳を守ろうとしたり…なんというか……かわいいなこの人……。


それに…


エリーゼ「よかったねフレン♪」

フレデリカ「そうねぇ……ふふふ…♪」

エリーゼ「…なんか怪しい人みたいだねフレン……」

フレデリカ「えっ!?」


このふたりのこの気の置けない関係……良い!


私リオンが奴隷になったのには、私の趣味が関係している。

趣味に没頭したがために奴隷になっちゃったのだが……。


その趣味はある日突然できた。

地元の公園で遊んでいた私は、遊びすぎて帰りが遅くなってしまった。

すっかり暗くなった公園を家までのショートカットとして通り抜けようとしたところで、茂みの奥から少しだけ物音がした。


最初は怖かったけど正体も気になって仕方がなかった私は、結局好奇心に負けて足音を消して確かめに行った。


茂みの向こうをこっそりのぞいてみると、そこには…未知の世界が広がっていた……。


あまりにもな光景だったので詳しくは言えないけど、女の子同士…そういうのもあるのか……と衝撃が走ったということだけ伝えておこう……。


それ以来女の子同士で仲良しな子たちを見ると意識してしまうようになった。

意識と言っても私がどうこうではなく、他の子同士が仲良くしてるとつい…という方だ。


つまり……


ずっと仲良しだったエリーゼ様とフレデリカ様……。

そこに加わった私とシュシュ……。


私はともかく、エリーゼ様にとても懐いているシュシュに、最初は懐いてくれない悲しさが勝っていたフレデリカ様も段々とモヤモヤする気持ちが強くなっていって……。


リオン「ふ…ふふふ…ふふふふふ……♪」

フレデリカ「っ!?(ぞわぁっ)」

シュシュ「り、リオンちゃん……なんか怖い……」

エリーゼ「そ、そうだね……なんかすごい笑ってるし……」

ディエレッツァ「……これはまた…癖の強そうな子が来ましたね……」

ソバッソ「まぁ……仲良くできそうではあるのでよかったですね……というかお勉強……」


この後しばらくお勉強はお休みとなった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〔フレデリカ〕


翌日。

奴隷の躾け方の授業本番だったが、控えめに言ってもまぁ~酷かった。


授業が始まり基本的な躾け方だのなんだのを教えられたわけだが、内容は単純というか雑というか……。


暴力とかご飯抜きとかのお仕置きで上下関係をはっきりさせてやりましょう…ではその際の注意点などを~…ってちょっと待てと。

そんな力技しか無いのかと。

もっとなんか平和なやり方は無いんかと。


というわけで質問してみたのだ。


フレデリカ「先生。そんな野蛮なことでしか躾けは出来ないんですか?」

先生「出来ません」


即答だったわ。


先生「奴隷はペットのようなものですが、犬や猫よりも狡猾な生き物です。ですから余計に立場を分からせてやる必要があるんです」


とも言ってた。


あなたそれ…犬や猫にも同じように暴力振るったり厳しい罰を与えてるってことよね?

というか狡猾な生き物って……ワタクシたちと同じ人類種なんだから、その言い方だと自分たちも狡猾だと言ってるのと同じよ?

まぁ間違ってないけども。


ほんとなんであんなに自信をもって言えたのかしら……?

きっと自己紹介しているのだということを理解できていないのね……。


……多分あの教師よりもシュシュとリオンの方が賢いわね。


で、そのふたりなんだけど……。


シュシュ・リオン「「…………!(ガタガタガタガタ)」」

エリーゼ「よしよし…大丈夫だよ~……絶対あんなことしないからね~……!」


ふたりで身を寄せ合って震えていたところを、エリーがまとめて抱きしめて落ちかせようとしている。


あのふたりがあそこまで怯えてしまったのも無理はない。

授業中、何人かの生徒がさっそく実践し始め、先生もそれを止めずにむしろ推し進めたので、教室内で突然実習授業が始まった。


しかし内容はさっき言った通りの野蛮なもの。

そんなものを数人とはいえ狭い教室内で始めてしまえば……


フレデリカ「はぁ……」


授業はもう数時間前に終わっているのに、未だに頭の中にあの時のたくさんの悲鳴とその光景が焼き付いている。


…教えられたことを「そういうものなんだ~」とあっさり受け入れていた少し前のワタクシたちだったら、こんなに悩まずに同じようにあのふたりに手を出していたのかな……。


教えられたすべてを信じてるわけじゃなかったけど、迷宮都市から帰ってきてからたった2回の登校で学校の教師たちへの信用は地に落ちている。

それまでなんとなく納得していたことが、全部大人たちにとって都合の良い知識でしかなかったのだと理解してしまったから。


1日目はそれが刺激的だった。

よくよく聞いてみたらおかしいことを、ワタクシたちは今まで信じていたんだと悔しくもなった。


でも今日はひたすら感謝した。

迷宮都市に行けたことを……そして、マーガレットに出会えたことを……。


あそこで出会えてなかったら今ごろどうなっていたんだろうと何度も考えた。

答えは家に閉じ込められてエリーとも会えずに大人の都合をひたすら植え付けられたお人形になっていた、だ。


だいぶ飛んでる気がしないでもないが、しかし自分の親はそういうことを平気な顔でやるタイプの人間っぽいよなぁ…と、父親との思い出を振り返りながら思う。


まぁなんにせよ、マーガレットと会ったことで自分たちは変われた。

おかげでシュシュとリオンと仲良くなれた。


シュシュ・リオン「「エリーゼ様ぁ……」」

エリーゼ「よしよし」


……少なくともエリーゼは。


い、いやいや……昨日リオンが甘えてくれたし……ワタクシともこれからこれから……。


と、とにかく。

今のワタクシたちがいるのはマーガレットのおかげってことね。


今ごろマーガレットは何してるのかしらねぇ……。

多分何かに巻き込まれてるか誰かを甘やかしてるかなんでしょうけど。


…って、そっか。

ワタクシがマーガレットの様子を分からないように、マーガレットもワタクシたちがどうなったかを知らないのよね。


心配させちゃってるかしら……?

ワタクシたちが無事に学園に戻れたことをマーガレットにどうにか教えてあげたいわね……。


う〜ん……ディエレッツァに相談してみましょう。


ディエレッツァ「ふむ…それでしたらお手紙を出してみるというのはどうですか?」

フレデリカ「お手紙!」


そっか、その手が……あぁ〜……。


フレデリカ「執事たちにバレないように出さないとよね……?」

ディエレッツァ「迷宮都市に行ったということは伏せてますからね。それにお…マーガレットさんも貴族ですから、名前に聞き覚えがあるかもしれません」

フレデリカ「う〜ん……そうなったら厄介ね……」

ディエレッツァ「そうですね。ですがまぁ問題ありません。私がなんとかいたします」

フレデリカ「え?出来るの?」

ディエレッツァ「えぇ。伊達に冒険者をやってたわけではありませんのでね」


そう言ってウインクするディエレッツァ。


な、なんて頼もしい……!


ディエレッツァ「それでは手紙の用意と、マーガレットさんへ届けるための手筈はこちらで用意いたしますので、フレデリカ様はその間、手紙の内容をお考えください」

フレデリカ「えぇ!ありがとうディエレッツァ!」


ワタクシがお礼を言うとディエレッツァは優雅にお辞儀をして返した。


よ、余裕だわ……!

大人だわ……!

あんな余裕のある大人になりたいわねぇ……。


と、そうだ。

お手紙を書くことをエリーにも伝えなきゃ。


フレデリカ「エリー……あら……ふふっ♪」


エリーの方を見たワタクシは思わず笑いがこぼれてしまった。


なぜなら…


エリーゼ「くぅ…くぅ……」

シュシュ「すやすや……」

リオン「すぴー…すぴー……」


3人がボールのように丸く固まって眠りについていたからだ。


ソバッソ「だいぶお疲れでしたからね。仕方ありません」

フレデリカ「そうね。むしろ安心したわ。あんな授業の後でちゃんと眠れるか心配してたから」

ソバッソ「今のところ穏やかな寝息を立てておりますね。ふふふ♪微笑ましいですね」

フレデリカ「そうねぇ…………どうしたらワタクシはこの輪に入れるのかしらね……?」

ソバッソ「そ、それは…えっと……い、いずれは……」

フレデリカ「うん、ありがとう。そして気を使わせてごめんなさいね……」

ソバッソ「い、いえいえそんなそんな……」


はぁ……嘆いてても仕方ないわ……。

エリーが寝てるなら何書くか考えときましょ。

それでエリーが起きてるときに一緒に書く。

これでいきましょう。


う〜ん…出来ればシュシュとリオンのことも書きたいけど……。


……奴隷だなんて書いたらどう思われるか……。


……友だち……?

いやでもそれはどうなんだろう……?

思いっきりウソ書くことになるんだけど……?

友だちとは遥か遠くの関係なんだけど……?


いやぁでもふたりのことを差し障りなく紹介するにはこう書くのが1番よね……?

でもでも、お世話になったマーガレットにウソを書くのはちょっと……。


ふたりを紹介しないって手もあるけど、それはそれで……う〜ん……。

う〜〜〜ん……!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ワタクシたちはウソを書きました。


フレデリカ「ごめんなさいマーガレット……でもこうするしかなかったのよ……!」

エリーゼ「嫌いになりませんように嫌いになりませんように嫌いになりませんように嫌いになりませんように……!」


リオン「えっと……ディエレッツァさん……?おふたりはどうしてあんなに必死にお祈りをしてるんですか……?」

ディエレッツァ「そっとしておいてあげてください。彼女たちは今正念場なんです」

リオン「はぁ……?」

ついに百合好きキャラ登場。

…だいぶハードな目覚め方させた気がしますが……まぁ、よし!


というわけでまた次週!

ではでは!

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