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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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32.モーリッツの骨董店…なお店主不在

プロローグの最後に、「プロローグの登場人物」を追加しました。


プロローグ終了から2週間ほど経ってしまった……。

時の流れって思ったより早いね……。

「コウスケ、この後モーリッツさんのお店に行くんだけど…まだお店に行ったことは無いんじゃない?よかったら一緒に来る?」

「モーリッツさんのお店に?…そうだね、この前のお礼も改めてしたいし、行こうかな」

「了解、というわけでララ、コウスケ借りてくよ」

「そういうことなら、分かりました。でもあまり遅くならないようにしてくださいね?」

「分かってるよ。じゃっ、行こっか」

「はい、ハルキさん♩」


お店での用事が終わったところで、ハルキがモーリッツさんのお店に誘ってきた。


初日に別れて以来出会ってないし、改めてお礼をするのも兼ねて、俺はハルキについて行くことにした。


ララさんの許可も貰ったし、せっかくだからこの世界の骨董商のお店をじっくりと見てこよう。


前の世界の骨董品のお店知らないけど。


「え?えっ?あの人、さっきまでハルキと楽しそうに遊んでた人と同じだよね!?」

「ん、すごい切り替えの速さ…只者じゃない…」

「あー…すごいよね…ホント…あたしもまだなれないよ……」

「私は、見習うべき技だと思うなぁ」


…俺の外モードと身内モードの切り替えで話し合っているあそこの女子組はギルドに向かうのでお別れだ。


いろんな人と話していれば勝手に身につくと思うから、そこまで真剣に考えなくても良いですよ?ララさん。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


さて、モーリッツさんのお店に到着した俺たちを迎えてくれたのは、年若い青年だった。

のだが……


「だから、ハルキが来たと伝えてくれればいいだけじゃないですか」

「ダメだって言ってるだろっ!聞き分けのない人だなぁ!こっちは忙しいって何回言えば分かるんだ!!」

「一言伝えるだけで良いと言ってるんですよ?それとも喋れないほど忙しいんですか?」


店に入って、近くにいたこの青年にモーリッツさんとの取り次ぎを頼んだハルキだったのだが、青年はハルキのことを聞いていないのかなんなのか、まるで面倒な客が来たかのような対応をした。


これには流石のハルキもややキレ気味で言い返し、現在に至るというわけだ。


はぁ…話が進まないし、止めるか……。


「あー…ハルキさん、少し落ち着いてください。そちらの方も、あまり店先で怒鳴り散らすものじゃないですよ?」

「…そう言う君は誰なんだ?」


ギルドの制服を着てるんじゃけど……まぁいい。


「申し遅れました、私はマーガレット。故あって冒険者ギルドで働かせてもらっています。以前、モーリッツ様がこの街に来た折、護衛の冒険者の方と共に馬車に乗っていまして、無事にここでの生活も安定してきましたので、遅ればせながらご挨拶に伺いました」


(コウスケさん…そんな丁寧な言葉、よくすらすら言えますね……難しすぎます……)

(ふふ…まぁこれも必要なスキルだったからな……)


相手に対して必要以上にかしこまり、穏やかに今回の目的を伝える。

挨拶の際に、スカートの端をつまむのも忘れない。

マグの呟きに答えるのも忘れない。


「そ、そうだったのか…それはすまなかった……だが、君とこの人はどういう関係だ?」


俺の丁寧な挨拶に動揺したのか、少しクールダウンした青年は、それでも怪しげにハルキの方を見ながら俺に聞いてきた。


「こちらのハルキさんは冒険者ギルドとも懇意にしてくださっている商人の方で、同時に今私が借りている、ギルドの第3寮舎の管理にも関わっています。今回一緒に参ったのは、ハルキさんの好意と共に、私の落ち度が原因です」


少し申し訳なさそうな顔をする俺。


「お、落ち度?どういうことだ?」


動揺する青年。


「ここに来た初日、モーリッツ様と別れる際に、お店の場所を聞いたまでは良かったのですが、なにぶんこの街は広く、又私の身長ではこの行き交う人たちの先を見るのもひと苦労で…そこにハルキさんがモーリッツ様に御用がおありだということで、ご一緒させていただいたのです」


ウソではない。

だが、俺たちの関係についてはぼかさせてもらった。


「そうか…すまない、こちらも忙しさで心に余裕が無くなっていたみたいだ。怒鳴り散らして悪かった」


そのことに気付かない青年は俺に、そしてハルキに頭を下げて謝罪をした。


それにこちらも落ち着きを取り戻したハルキが答える。


「いえ、用件を言わずに店主を呼べば警戒されるのは当然のこと。僕の方こそ、申し訳ありませんでした」


うむ、これで落ち着いたな。


この青年も、忙しかったからぞんざいな態度を取ってしまっただけで、本当は自分の非を認められる礼儀正しい青年で良かった。


非を認めないでめちゃくちゃ言ってきたら俺もキレるところだった。


「それで、店主はどちらに?」

「すまない、モーリッツ店長は今、魔道具を売りたいと言った人の家に行ってて、いつ帰ってくるかまでは知らないんだ。本当にすまない……」


いや、これ気にしすぎだな……。

もしかして、もともと雇っていた人じゃなく、新しく雇ったバイト君とかかな?


それで緊張やら何やらであんな態度を取ってしまったと……ありえるな……。


気持ちは分かる。

接客業ならより分かる。


なので許そう。

頑張れ青年。


「では、帰ってきたら「ハルキが来た、また明日この時間に伺う」とだけお伝えください」

「それと「マーガレットがお礼を言いに来た」ともお伝えお願いします」

「分かった。…本当にすまなかった…」


大丈夫だ、青年。

その失敗を次に活かすならば大丈夫だ。


「いえいえホント、お気になさらず」

「はい、あなたは職務を全うした。それだけですよ。それでも気になるなら…そうですね、笑顔の練習をしましょう!」

「え、笑顔?」

「はい!とりあえず笑顔で相手をする、というのは接客業では必須能力なので!」


困ったときとかもとりあえず笑っとけば、少なくとも相手にキレて飛びかかるまでワンテンポ開くはずだ。


「そ、そうか…分かった、努力するよ」

「はい!」

「では、僕たちはこれで、失礼します」

「失礼しました」


そうしてモーリッツさんのお店を後にした俺たち。

少し歩いたところでハルキが話しかけてくる。


「ごめん、マーガレット。間に入ってくれて助かったよ」

「本当ですよ。相手もカリカリしていたとはいえ、用件も言わず「店主はいるか!」の一点張りですんなり話が済むわけ無いじゃないですか」

「いやホント、ぐうの音も出ない……」


まったく、なんであんないつものハルキらしからぬ力技を取ったのか。


「…もしかして、私が何か疲れさせてしまいましたか?」

「ん?…あぁいや、そうじゃないよ!ただ、僕もあまり人付き合いが上手い方じゃなくてね。ああいう攻撃的な態度を取られると、こっちも身構えちゃって……」

「商人としてはなかなか致命傷だと思うんですが……」

「まあ褒められることではないよね」


いやそんな苦笑いで済むポイントだとは思えませんが?


常に冷静であれ、とまでは言わないが、多少は耐性を付けておいた方が良いのは確かだろうに。


「…なんでハルキさん商人になったんですか?」

「ぐはっ!」


いかん。

俺の本音がハルキの心に刺さってしまった。


「さ、最初はダンジョンも小さかったから、他の村や街でダンジョンから取れた素材を売ったりして生計を立てていたんだ。だから「商人のハルキ」としていろんな人に覚えてもらったから、こっちでも表の姿は商人で通してるんだよ」

「なるほど〜…」


最初の方…転生したての頃か。

そういうことなら納得だ……と、うん?


「さあさあ!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!」

「ハルキさん、あの人だかりはなんですか?」

「うん?んー、あれは…………あぁ、くそ……」


ハルキが人だかりを見て毒づいた。

どうした?


「…あれは奴隷を売ってるんだ……」

「奴隷……」

「そう、しかもあれは違法奴隷だ。くそっ…!この街では禁止してるってあれほど言ってるのに……!」

「はっ!?違法なのにこんな街の大通りで堂々と売ってるんですか!?」


馬鹿なの?


「いや、確かに違法なんだけど、突発的に売り出して、しかも結構な数の人が関わるから、他の街じゃ黙認してるところもあるんだ。アイツはこの街もそうだろうと踏んで、堂々と売ってるんだよ」

「また社会の闇だよ……」


ホント勘弁してくれ……。

無性に腹が立つからさぁ……。


「今回の商品はこちらの二人!」


人混みで見えない奴隷商人の言葉に、周りの見学者が、おぉ〜、と歓声を上げた。


「マーガレット、こっちなら多分見れるよ」

「ん……お、見えた………!」


ハルキに教えられ、どうにか人の少ないところから中心を見た俺は息を呑んだ。


俺の目には、モーリッツさんとは似ても似つかない、気持ちの悪い薄ら笑いを浮かべる脂の乗ったデブが二つの縄を握って演説をしていた。


そしてその縄の先には…


「このナイスバディな美女と、将来が楽しみな美少女!!こちらの親子をお売りしたいと思いまぁす!!」


紫色の髪をした綺麗な親子が、共に虚ろな目をしてそこに立っていた。


…ていうかナイスバディのとこだけ発音良いなっ!!?

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