296.待ち人来ず…それはそれとて頼れる大人
コウスケ「…時間だね」
サフィール「えっ…!?あっ…そそそそうですね……!」
パメラ「ね、ねぇマグぅ……もうちょっとだけ…もう少しだけ残るのはダメ……?」
コウスケ「…大体このくらいって言ってたんだから、今からちょっと変えたくらいじゃ会う確率は変わらないよ」
パメラ「そ、そうだけどぉ…そうだけどぉ…!」
言葉だけでなく体も震えているサフィールちゃんの様子を見たパメラの提案を、俺は容赦なく却下した。
そりゃ俺だって、いまの今まで平然と話していたサフィールちゃんが急にこんなにも震えるのを見たら、もうちょっと寄り添ってたいって気持ちになるけど……。
しかし残念ながらダメです。
そりゃあ時間をガッと遅らせたり、ここからすぐのリオの家に泊めてもらったりすれば出会わないだろう。
聖歌隊に会いたくなければ、絶対に会わない方法だってある。
でもそれはもう話して、そして本人が覚悟を決めたことだ。
だから俺たちはそれを応援して、支えてあげないと。
チェルシー「だ、大丈夫…?サフィーちゃん……」
サフィール「だだだだいじょうぶです…!」
シエル「絶対ダメでしょ……」
……とても覚悟を決めたようには見えないとしても!
……やっぱり遅らそうかな……?
決意がぐらつく俺だが、当の本人は諦めていないようだった。
サフィール「だ、大丈夫です……!じ、自分で決めたことですから……!」
シエル「サフィール……」
とはいえ、やはりその声は震えている。
しかしサフィールちゃんは続ける。
サフィール「そ、それに…もしも聖歌隊の皆さんが定期的に来るようになれば、ずっとこうして逃げているわけにも行きませんし……!」
チェルシー「それは…そうかもしれないけど……」
コウスケ(確かにその可能性もあるかぁ……)
マグ(でも、逆にもう来なくなる可能性もありますよね…?)
コウスケ(それもあるけど……それは多分よっぽどのことが起きたときくらいじゃないかな)
マグ(そう…ですね……聖歌隊はただ祈りを込めた聖歌を届けに来るだけなんですし、この迷宮都市は他の国とも近くていろいろとすごいものもたくさんある街……。それなのにもうここに来ないなんてなるのは……)
コウスケ(……まぁ、ロクな理由じゃないわな)
関係を壊して戦争になるとか、なんらかの災害が起きるとか。
災害の場合はまぁ…来るだろう。
ただし、こっちは変わり果てた姿になってるだろうけどな。
と、ここでリオがサフィールちゃんに話しかけた。
リオ「サフィール」
サフィール「リオさん……?」
リオ「不安になるのはわかる。オレも、サフィールとは理由が違うけど、不安でいっぱいになったことがあるからな」
サフィール「……」
リオ「今だってそうなることがある。でも…1人じゃないんだ」
サフィール「はい…ですが、私はマーガレットさんのお家には…」
リオ「あぁ、わかってる。でも、いるだろう?頼りにできる大人が、サフィールにはさ」
サフィール「大人……」
マグ(ジルさんですね)
コウスケ(あっそっかジルさんか)
マグ(コウスケさんっ!?)
コウスケ(いや、忘れたわけじゃないんすよ?なんだかんだサフィールちゃんのことを気にかけてるのも知っておりますのよ?)
マグ(でも思い浮かばなかったんですよね?)
コウスケ(…はい……)
だってぇ…最近会ってないし、サフィールちゃんもあんまりジルさんのお話してくれないしぃ……。
……まぁそうそう話すこともないっちゃないか。
むしろネタに事欠かないシエルんとこのグリムさんがおかしいんだ。
あの人毎日シエルからかってんじゃないのってレベルだからな。
毎度引っかかるシエルもシエルだけど。
チェルシーの保護者たるハルキ、ララさん、リンゼさんとはよく会うし話もするし、モニカちゃんとこも毎日行ってるし。
リオのとこも…たまに帰りに寄って話をするくらいにはなったな。
親方さんは相変わらず気にしてあんまり会おうとしないけど……。
ともかく、それぞれなんやかんや接点はあるんだけど……ジルさんがな。
なかなか会う機会がないわ、シエルみたいにサフィールちゃんから話(愚痴)を聞くこともないわで印象が薄れていってるんだよなぁ……。
言ったら確実に怒られる…とか以前にそもそも言わなくてもいいことだから口には出さないが。
リオ「オレは…頼れなかった。心配かけないようにって元気に見せて、それでもっと自分を追い込んで…結局失敗して、とんでもなく心配をかけちまった……」
チェルシー「リオちゃん……」
パメラ「リオぉ……」
リオ「でもサフィールにはそうなってほしくない……だから…絶対に1人でどうにかしようなんて考えちゃダメだ。そうしたらオレの二の舞になっちまう……」
サフィール「リオさん……」
当時のことを思い出しているのだろう。
リオは自分の腕をもう片方の手で握り俯きながらそう話した。
やはり実体験…しかも起きたのが1ヶ月前で未だリハビリの途中ということで言葉の重みが凄い。
が、しかし。
リオはすぐに手を離し、軽い口調でこう続けた。
リオ「…なんて、そんなことずっと言ってるし、サフィールもわかってたよな。すまんすまん」
サフィール「…いえ、ありがとうございます、リオさん。私、ジルさんと話してみます」
リオ「おう、頑張れよ!」
リオはサフィールちゃんの肩をポンと叩いて激励を送ると、帰り支度をしに自分の荷物の元へと向かった。
……さて。
チラッとチェルシーの方を見やると、彼女は小さく頷いてウインクをした。
「うん、お願い♪」とでも言っているようなチェルシーに、俺も小さく頷いて答えた。
まかせろぃ。
ちなみにウインクは最近練習をしていないせいか未だに上手く出来ないのでやらない。
だってリオやメリーがほぼずっと一緒にいるのに、ウインクの練習なんて出来ないぜ。
もし見られたら恥ずかしくて転げ回るぜ。
そのまま見たやつに「ころがる」攻撃しちゃうかもだぜ。
三半規管ヤりそうだからそれもやらんけどな。
そんなことより。
コウスケ「リオ」
リオ「ん…マーガレット……」
とりあえず今は…
コウスケ「お疲れ様」
リオ「っ!」
自分のトラウマを使ってでも友だちを励ましたこの子を労ってあげないとね。
リオ「別に…そんな大したことしてないし……」
コウスケ「そう?私としては、友だちを思いやるのは大したことだと思うよ?」
リオ「…そ、それなら、マーガレットはいつも誰かを気遣ってるから、大したやつだな?」
コウスケ「ふふん♪崇めてくれてもええんやよ?」
リオ「調子に乗るな」
コウスケ「辛辣ぅ」
リオ「…ふっ♪」
おっ。
自然な笑みが溢れたな。
これでひと安心かな。
リオ「…いつまで撫でてんだよ…?」
コウスケ「気が済むまでかな」
リオ「オレはもういいよぉ」
コウスケ「私が撫でたいので〜」
リオ「まったく……」
みんながいるから恥ずかしがっているものの、一向に手を振り払おうとはしないリオ。
なんだかんだ言いつつも体は正直だなぁ?
可愛いやつめ♪
さて、ある程度撫でたところでみんなの準備も終わったようなのでそろそろ帰路へ。
外への扉に近づく元気づけたとしても、やはり緊張が走るサフィールちゃんとその仲間たち(俺含む)。
だがとりあえず本人を安心させるために手を繋ぐ。
反対側をチェルシーが握り、他の子たちもさりげなくサフィールちゃんの周りに集まって守る。
コウスケ(もし出会ったら当たり障りのない会話だけして切り上げる)
マグ(もう遅い時間ですし、あまり無茶なことは言ってこないはずですしね)
コウスケ(うん。それでももししつこくされても大丈夫なように、ウソは絶対につかない)
マグ(めんどうなことになりますからね)
コウスケ(それでもなお来るようだったら…)
マグ(誰かが隠れて魔法を使った風を装って逃げましょう)
コウスケ(いつものやつだね)
マグ(不可抗力ですよね?)
コウスケ(もちろん。サフィールちゃんと、他のみんなの安全と安寧が第一だからね)
マグ(私のことも守ってくださいね)
コウスケ(当然。代わりに、俺を支えてちょうだいね)
マグ(はい。おまかせください)
コウスケ(ふふっ……よし)
マグ(よし!)
コウスケ・マグ「行こう」(行きましょう)
みんな『……!(こくり)』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【医療ギルド前】
ショコラ「……着いたねぇ……」
コウスケ「そだねぇ……」
チェルシー「何もなかったねぇ……」
サフィール「…ですねぇ……」
モニカ「…聖歌隊の人たち、遅いね……」
シエル「いや遅すぎるでしょ!?」
わぁ助かった。
気合い入れたのに何事もなさすぎてちょっと気が抜けてたから、シエルが大声出してくれたおかげで少し我に帰れたわ。
リオ「ココさんが言ってた時間って大体今くらいだよな?」
パメラ「そのはずだけど…もしかしてまた魔物に襲われたとか?」
ココ「いや。長旅が祟って車輪が壊れちゃって、慌てて直してるところ」
ショコラ「えぇー!車輪が!?」
モニカ「大変だぁ……」
シエル「それは仕方ないわね……」
マグ(街まで持てば直すのも早かったかもしれなかったんですけどね……)
コウスケ(こればっかりはなぁ……予兆はあったかもしれないけど、それが余裕のあるときかどうかは分からないし…それかその前の魔物の襲撃で痛めたって可能性もあるなぁ……)
マグ(あ〜…確かに……)
コウスケ「なんにせよ、もうちょっとかかるってことだねぇ……」
サフィール「そのようですね……」
リオ「いいんだか悪いんだか……」
ココ「多分この街に入れるのは深夜だから、会うとしたら明日でしょうね」
チェルシー「う〜ん…そうですかぁ……」
コウスケ「ココさん、わざわざありがとうございます」
ココ「気にしなくていい」
コウスケ「いえいえ、とてもありがたいことですから……ところでココさん?」
ココ「うん?」
コウスケ「いつからおったんですの?」
ココ「あなたたちが鍛治ギルドから出たときから」
コウスケ「最初からじゃないですか!」
全然気づかなかった!
ハッ!というか…
コウスケ「それならもっと早い段階で教えてくれてもよかったじゃないですかー!」
ココ「言うタイミングがなくて…ごめんなさい」
コウスケ「うぇっ!?うっ…そ、そういうことなら…」
これもまた何か理由があるのかと思って軽いノリで文句を言ったら、思ってたよりもストレートに謝られたので狼狽える俺。
それを見逃さず悪ノリする者がここに。
チェルシー「あ〜!マギーちゃんがココさんいじめてる〜!」
パメラ「いけないんだ〜♪」
コウスケ「いいい、いじめとらんし!」
モニカ「いじめちゃめっ、だよ?」
ショコラ「めーっ♪」
コウスケ「今私がいじめられてない!?」
ひどいや!あんまりだ!
訴えてやる!
コウスケ「えーん、サフィールちゃん助けてー!」
サフィール「へっ!?えっと…よ、よしよ〜し…いい子いい子〜…?」
シエル「小さい子をあやしてるみたいね……」
リオ「ってかそれは助けなのか?」
ショコラ「あっ!ずる〜い!ショコラもなでなでする〜!」
パメラ「ショコラ今、めっ!てしたじゃ〜ん」
ショコラ「う〜ん…じゃあ、めっめってする!」
パメラ「めっめってなに…?」
モニカ「なでなでするみたいにめってするのかな…?」
チェルシー「怒ってるのか怒ってないのか分からないね〜♪」
コウスケ(なんか気になるから受けてみたい気もする……)
マグ(めっめ〜っ♪)
コウスケ(は?かわいすぎか?)
こりゃまた国宝に認定だな。
ココ「…ふふっ」
みんな『(!)』
無表情がデフォ装備のココさんから笑い声が!?
と、全員で一斉にココさんの方を振り向くと…
コウスケ・マグ「(あ、あれ…?)」
モニカ「ココさんが消えた…?」
ココ「こっち」
みんな『(うわぁ!?)』
いつの間にか後ろに回り込まれていた。
耳のいいショコラちゃんやモニカちゃんがまったく気付かなかったということは、まさか無音で……?
ココ「私はそろそろ戻る。あなたたちも、あんまり遅くならないように」
みんな『(は、はい……)』
最後にそう言ってココさんは夕暮れの街に消えていった。
リオ「……やっぱココさんすげぇわ……」
みんな『(うん……)』
さすがは隠密ギルド1の実力者だ……。
チェルシー「それじゃあ…アタシたちもそろそろ解散する?」
パメラ「そうだねぇ……来るのが夜遅くなんじゃどうしようもないし……」
シエル「元から対応は大人たちがやるつもりだったんだろうけど、夜中じゃ本格的にアタシたちの出番はないわね」
サフィール「ですね……みんな寝ている時間ですし……」
ショコラ「う〜ん……なんだか今日、ずっとせーかたいのこと考えてた気がするよ〜……」
コウスケ「確かに……」
ずっといつ来るか、いつ来るか〜って身構えてたなぁ……。
結局今日中に会うことはないって…はぁ…なんか疲れた……。
早く家帰って風呂入りたい……。
と、その前に…
コウスケ「サフィールちゃん」
サフィール「なんですか?」
コウスケ「もしものときはウチまでおいで。どっか叩けばユーリさんが起きるだろうから、夜の内でも気にしなくていいからね」
サフィール「ユーリさんへの配慮は……?」
大丈夫、ユーリさんなら助けてくれる。
コウスケ「だからまぁ…何度でも言うけど、無理はしないでね」
サフィール「…はい!」
ジルさんに頼ってみるって言ってたし、サフィールちゃんもちょっと元気な顔になったし、これで大丈夫だろう。
コウスケ「それじゃあ、また明日」
サフィール「はい。また明日、お会いしましょう」
ショコラ「じゃあねサフィール♪」
パメラ「また明日♪」
チェルシー「ばいば〜い♪」
モニカ「がんばってね…!」
リオ「応援してるぜ」
シエル「無茶しないでね?」
サフィール「えぇ、皆さんも。また明日です♪」
そうして、俺たちは明るく挨拶を交わしてそれぞれ帰宅するのだった。
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〔サフィール〕
結局聖歌隊が来なかったこの日の夜。
普段ならもう布団に入っている時間に、私はマスターの部屋の前に来ている。
お昼にリオさんに言われた言葉……。
それに従って、マスターを頼ってみることにしたのだ。
けど……
そわそわ。
もじもじ…。
サフィール「うぅ〜……」
戸を叩こうと手を上げては、躊躇してしまって引っ込める…これをさっきからずっと繰り返してる。
迷惑じゃないかな……?
こんな時間にって怒られないかな……?
…本当に助けてくれるのかな……?
忘れられない…マスターと初めて会ったときのこと。
あのときマスターは……初めて私の目を見たときのマスターは……
ガチャ
サフィール「っ!」
ジル「…サフィール?誰かと思ったら、意外なやつだったな……」
サフィール「マ、マスター…!」
突然、マスターの執務室の扉が開かれて、中からマスターが顔を覗かせた。
ジル「どうしたんだ?お前がこんな時間に来るなんて珍しいじゃないか」
サフィール「あっ…え、えっと……!」
チャンスだ。
マスターも忙しい方なのだから、あまり時間を取るわけにもいかない。
ここで事情を話さないと……!
サフィール「そ、その……!」
わかってる。
そんなことは。
でも…
もし、断られたらどうしよう?
サフィール「えっ…と……」
くだらないって言われたら?
我慢しなさいって言われたら?
もしも…拒絶されたら?
サフィール「…………」
ジル「…サフィール…?」
あぁ、ダメだ……。
サフィール「…な……」
やっぱり…怖い……。
サフィール「…なんでも…ない…です……ごめんなさい……」
せっかくお話を聞いてくれるチャンスなのに……。
やっぱり…私は……
ジル「…とりあえず入れ」
サフィール「…え……?」
ジル「ずっと廊下にいたんじゃ冷えるだろうが。入って、休んで、ある程度体を温めてから部屋に戻れ。いいな?」
サフィール「…は、はい……」
マスターに勧められて、部屋へと入る。
相変わらずマスターの机の上は物でいっぱいで、一目見ただけでもう多忙なことがよくわかる。
…やっぱり迷惑だったかな……。
ジル「サフィール。そこに座れ」
サフィール「は、はい……失礼します…」
言われるがまま来客対応用のソファーに座る。
すると、私の目の前にホットミルクの入ったカップが置かれた。
ジル「それを飲めばあったまるし、よく眠れるようにもなるだろう」
サフィール「あ、ありがとうございます……」
私はお礼を言ってカップに手を伸ばす。
ミルクはすぐには飲めないほど熱々に温められていて、ちょっと息を吹きかけたくらいじゃヤケドは免れないほどだった。
あっでも…持ってるだけでもあったかい……。
……ううん、やっぱりちょっと熱い…かも……。
ジル「それで、サフィール」
サフィール「は、はい…!」
マスターに突然話しかけられて慌てて返事をする。
そしてどさくさに紛れてカップも置く。
ジル「あ〜…その……あれだ……」
サフィール「…?」
マスターには珍しく、とても歯切れが悪い様子。
なんだろう……?
ジル「……アイツはこれがしれっと出来るんだがなぁ……」
サフィール「…?」
あいつ……?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コウスケ←(アイツ)「くしゅん!」
リオ「おっと、冷えたか?」
コウスケ「ん、いや……誰かにウワサされてるのかも?」
リオ「それは毎日だろ?」
コウスケ「毎日されてるのに今ようやくくしゃみしたの私?鈍感すぎん?」
メリー「……かわいいくしゃみ」
コウスケ「ぐふっ…!」
リオ「…そんなダメージ受けることか……?」
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ジル「あ〜……っとだな……」
サフィール「は、はい……」
ジル「…マ…マーガレットたちとは仲良くやってるか?」
サフィール「えっ?は、はい…とても良くさせていただいてます……?」
ジル「そ、そうか。うん、それはよかった……」
サフィール「……?」
ジル「……」
チクタク、チクタク。
部屋の中に時計の音だけが鳴り響く。
いったい何がどういうことなのか測りかねていると、マスターはまた不意に話しかけてきた。
ジル「そ、その……」
サフィール「は、はい……」
ジル「……」
サフィール「……」
チクタク、チクタ…
ジル「だーっ!やっぱ回りくどいのはダメだ!」
サフィール「っ!?」
と思ったら急に大声を出した。
ジル「サフィール!」
サフィール「は、はい!」
ジル「お前のことはアタシが守る!」
サフィール「へっ!?」
ジル「んで、当然コウ…あーっと、マーガレットもお前を守るだろ!」
サフィール「えっ!えっあっ、えっと、はい!」
ジル「だからまぁ、あれだ!心配いらん!」
サフィール「は、はい…!」
?????
な、何がでしょうか……?
ジル「聖歌隊の連中には、お前に指一本触れさせんようにする!」
サフィール「あっ……!」
ジル「お前のこともバレないようにする!」
サフィール「…っ!」
マスター……!
私がここに来た理由を知って……?
ジル「お前を変な目で見るやつはアタシが葬る!」
サフィール「マスター……!」
ジル「というかお前を舐め回すように見る奴もついでにこの機に叩き潰して回る!」
サフィール「えっ!?そ、そこまでは大丈夫ですよ!?」
ジル「いいや!今じゃ死ぬほど目立つやつが近くにいるからマシになってるらしいがなぁ…!」
近くで目立ってる人……マーガレットさんかな……?
ジル「昔はもっと……くっ…!思い出しただけでも……!」
サフィール「マ、マスター……」
せっかくさっき嬉しくなったのに、この一瞬で……いえ、私のことを考えてくださってるのはわかるのですけど……。
ジル「アタシがガン付けとかないとすぐにさりげなく触ろうと近寄るやつが……おのれ……!アタシはそんなこと狙うやつすら1度たりともなかったというのに……!」
か、考えてくださってるん…ですよね……?
信じていいんで…しょうか……?
ジル「…ハッ!いかんいかん……サフィール!」
サフィール「は、はいっ!?」
ジル「アタシも気を付ける。だがどうしたって穴は出てくる。もしヤバそうだったらアイツ…マーガレットのとこに送る。それでいいな?」
サフィール「は、はい!大丈夫です!」
よ、よかった……。
我に帰ってくれた……。
ジル「よし!じゃあそれを飲んでさっさと自分の部屋に戻れ!」
サフィール「は、はい!」
思っていたよりも時間が経っていたのか、熱々だったホットミルクは、ほどよい温かさになっていてゴクゴク飲み干すことができた。
ジル「とにかくそういうわけだから心配いらんからな!お前は何も心配せずにいつも通りにしてればいい!わかったか!」
サフィール「はい!」
ジル「よし!戻れ!」
サフィール「はい!失礼します!」
私は出来るだけ大きく返事をして、部屋から出ようとする。
けど、それを途中でやめて、半開きの扉から覗くようにしてマスターに話しかける。
サフィール「あ、あの!マスター…!」
ジル「なんだ!」
サフィール「…心配してくださって、ありがとうございました…!」
ジル「……///そういうのはいいから早く戻って暖かくして寝ろ!」
サフィール「は、はい!失礼します…!」
最後に照れ隠しをしたマスター。
サフィール「ふふっ…♪」
その姿が可愛かったのと……思っていた以上に、私のことを見ていてくれたことが嬉しくて、思わず笑みがこぼれた。
そっか……マスターも、心配してくれてたんだ……。
サフィール「…えへへへ…♪」
リオさんの言う通りでした。
マーガレットさんたち以外に味方がいるというのがここまで心強いだなんて。
サフィール「本当に、皆さんありがとうございます♪」
誰もいないのを確認して、小さくつぶやいてから、私は自分の部屋へと戻っていった。
聖歌隊来ないなぁ……。
とはいえ来る来る詐欺もそろそろ終止符を。
…打ちたいね。
というわけでまた来週。
ではでは〜




