288.お箸を購入…お風呂で小話
豆腐、お昼ご飯とごちそうになり、その後もなんやかんや居座らせてもらってからお暇。
いつも帰る時間より早めなのだが、それは行くところがあるため。
というわけでやってきました、モーリッツさんのお店。
売り切れていなければヤマトの品がまだ置いてあるはず……。
ちなみに、チェルシーも同行しています。
理由はまだみんなといっしょにいたいからだそうです。
可愛いやつめ。
さて、俺とユーリさんが狙うはお箸。
ユーリさんはうっかり金欠のため。
俺は単純にうっかりしたために買えていない品だ。
それに、もしいたらカエデさんたちに挨拶もしておきたいしな。
ユーリ「置いてあるかなぁ……?」
コウスケ「祈りましょう」
さすがにちょっと時間が経っちゃってるから難しいとは思うけど、それでも諦められないのだ。
じゃあ忘れるなと言う話だが、それはまぁ置いといて。
ユーリ「うぅ~……!お箸ありますように、お箸ありますようにぃ~……!」
コウスケ「ユーリさん……行きましょう」
ユーリ「うん……!」
ガッツリお祈りを始めたユーリさんを促し、俺たちは店の中へと入った。
コウスケ「ごめんくださ~い」
モーリッツ「はいよ~。おっ?お嬢ちゃんじゃないか。お友だちも一緒に…どうしたんだい?」
コウスケ「ちょっと買い忘れたものを思い出しまして。それに、そろそろヤマトの皆さんが帰ってしまうと耳にしたので挨拶もしたいなと」
モーリッツ「なるほどね。あぁでも、品物の説明をするためにいる人以外はみんなあまりここには来なくてね。泊まっている宿は教えてもらっているから、そこに直接訪ねてもらった方が確実かな。地図を描くから少し待っていてね」
コウスケ「ありがとうございます」
う~ん、そりゃそうか。
ちゃんと宿取ってそっちで宿泊してるよな。
店で寝泊まりするのもちょっと難しそうだし。
広さとか。男女問題とか。
モーリッツ「はい、お待たせ」
コウスケ「ありがとうございます」
マグ(ん…近場ですね)
コウスケ(だね。でも今日はもうちょっと遅い時間だから、明日会いに行こうか)
マグ(そうですね)
モーリッツ「それで、買い忘れたものって?」
コウスケ「えぇ、実はお箸を忘れてまして……」
モーリッツ「おはしかい?それなら残ってるよ」
コウスケ「ほんとですか!やりましたね、ユーリさん!」
ユーリ「うん!」
モーリッツ「あぁ、なるほど。ユーリさんが買い忘れたのか。大豆を大量に買っていったからねぇ」
ユーリ「いや〜、あはは……お恥ずかしい」
コウスケ・マグ((恥ずかしいって自覚あったんだ……))
あれはテンションが上がりすぎた結果なんだろうな……。
モーリッツ「おはしならそっちにありますよ」
ユーリ「はーい!…って、あれ?なんだかいっぱい残ってるような……?」
モーリッツ「えぇ…実は……ヤマトの方が使い方を教えてくれたのですが、これがなかなか難しくて……」
コウスケ・ユーリ「「あぁ〜……」」
箸、むずいよね。
モーリッツ「ですので、ぜひお好きなものをお選びください」
ユーリ「そういうことなら遠慮なく♪」
コウスケ「じゃあ私も〜♪」
モーリッツ「えっ!?う〜ん…お嬢ちゃん…それは本当に難しいよ……?」
コウスケ「大丈夫です。ユーリさんに手取り足取りフレンドリー教えてもらうので」
ユーリ「えっ、あっはい!手取り足取り教えます!」
モーリッツ「う〜ん…まぁ確かに、ヤマト出身のユーリさんがいるなら大丈夫か……すまないねお嬢ちゃん。いろんなお客さんが試しては諦めていったのを見ていたから心配になってね」
コウスケ「いえいえ、それはまぁ仕方ないと思いますよ」
食事でストレス溜めるのも良くないしな。
諦めるのも賢明な判断だろう。
そう、食事っていうのは、自由でなければ…ってね。
…もうあの飯テロドラマを見れないと思うと、とても残念な気持ちになるな……。
感傷に浸りつつ、俺とユーリさんはそれぞれお箸を選んで購入。
ユーリさんは紺色のお箸を。
俺は他のみんなとの協議の結果、ピンクのお箸に決定した。
なんでさ。
そう思ったが、ピンクのお箸を使う自分の姿を想像したら萌えたので買ってしまった。
可愛いって罪だわ。
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さて、その後お喋りしながらまったり解散してそれぞれ帰路に着いた。
寮に帰って早々、ユーリさんはメイカさんたちにも豆腐を振る舞うべくキッチンへ。
大豆は前日から漬けておいたので、あとは同じ要領で作るだけらしい。
フルールさんも夕飯の支度と豆腐作りの見学。
ディッグさんとケランさんにはお先にどうぞと譲られた。
というわけで、ちびっこたちとメイカさんだけでお先にお風呂へ入ります。
メイカさんもメリーもリオも、もう見慣れたもんです。
女性の裸を見てそんな感想が出る……。
日に日に男性としての何かを薄れていくのを感じています。コウスケです。
しかしそれはそれとしてみんなの体を洗わせていただきます。
もちもちの玉肌を触っているのに、「うん、健康」としか思いません。
大丈夫でしょうか?コウスケです。
さて、そんな俺ですが…仕事は終わったのでマグに代わります。
せめてものライン引きです。
はい、コウスケでした。
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〔マグ〕
私を含めてみんなまとめて流しっこしたあとに湯船にのんびり浸かる。
と、そこでメイカさんに今日のことを聞かれた。
メイカ「今日はハルキのとこに行ってきたんでしょ?大丈夫?何かされなかった?」
リオ「いえ、何も。ユーリさんがおとーふを作って振る舞ってくれたのと、お昼ご飯をいただいたあとしばらく遊ばせてもらっただけですよ」
マグ「も〜、メイカさん。まだあのこと恨んでるんですか?」
メイカ「恨んでるわよ〜。だってマーガレットちゃんを泣かせてチェルシーちゃんも傷つけたんだもの」
「あのこと」とは、コウスケさんが私の体に入った日に起きたこと。
ハルキさんの指示でチェルシーちゃんが、まだ心の底で塞ぎ込んでた私を無理矢理引っ張り出したことを言っている。
正直、私はもう気にしてないんだけど……。
メリー「……うん、それはダメ。わたしもゆるさない」
マグ「メリーはまだいなかったでしょ〜?」
メイカ「それでも許せないってことよ。ね〜?」
メリー「……(こくこく)」
マグ「も〜……」
息ピッタリなふたりに呆れながらも、大事にされてるんだと感じて心があったかくなる。
マグ「でもその話をチェルシーの前でしないでくださいね?チェルシーは繊細なんですから」
メイカ「わかってるわかってる。だからこそ今聞いたのよ〜。あんな良い子で可愛い子を悲しませたくないもの」
最初のころは警戒してたくせに〜。
まぁでも、今はすっかり仲良しなんだからよかったですけどね〜。
と、ここまであまり参加しなかったリオが違う話題を切り出してきた。
リオ「あぁ、そうだ。今日はハルキさんとチェルシーの他にも、エストさんとシャールさんがいたんですよ」
メイカ「あらそうなの?それなら安心だわ」
リオ「ははは……それでですね」
さらっと流したなぁ。
リオ「おふたりに冒険の話をいろいろ聞かせてもらったんです」
メイカ「そうなの。確かにあのふたりなら凄いことやってそうねぇ」
マグ「あれ?そういえばメイカさんって、エストさんとシャールさんのことを知ってるんですね?」
メイカ「えぇ。同じ冒険者仲間…っていうのもあるけど、やっぱりマーガレットちゃんとチェルシーちゃんがお友だちだからっていうのが大きくてね。初めて出会ったのはマーガレットちゃんが試合をしたときの祝勝会の時かな?そのときは軽く挨拶をしたくらいなんだけど、あのあと迷宮の中で偶然会ってね。そのときに、いつもウチのチェルシーがあなたのところのマーガレットちゃんにお世話になってます〜って言われちゃって!」
マグ「えぇ〜?」
リオ「親同士の挨拶みたいだな……」
メリー「……(こくり)」
メイカ「まぁ保護者だから同じようなものではあるわね。でも私まだそのとき割り切れてなくて、ハルキの関係者にはちょっと冷たく当たっちゃってて…つい、「マーガレットちゃんがお世話になりました」って言っちゃって……」
マグ「うわぁ……」
リオ「それはキツいな……」
メリー「……うん、おとなげない」
メイカ「ぐふっ!え、えぇ……それはあとでちゃんと謝って、今は仲良くやらせてもらってるわよ……」
そっか、よかったぁ。
メイカ「で、まぁ返ってきたのは苦笑いだったんだけど……」
マグ・リオ「「でしょうねぇ」」
メリー「……(こくり)」
メイカ「うぐっふ……そ、それでそのあと見かねたディッグが仲良くなろうと気を使って少しだけ一緒に探索しないかって持ちかけて、ふたりとも頷いてくれてね……」
リオ「う〜ん、さすがディッグさん」
マグ「大人ですねぇ」
メリー「……(こくこく)」
メイカ「そうね。ディッグはいつも冷静で助けられてるわ。おかげで私もそこで頭を冷やせて、そこでちゃんと謝れたのよ」
マグ・リオ・メリー「「「おぉ〜」」」
メイカ「ちなみにケランは終始居心地悪そうにしてたわねぇ」
マグ・リオ・メリー「「「あぁ〜……」」」
まぁ、しょうがないと思うなぁ……。
メイカ「あぁそうそう。それでね?そのあとも一緒に行動してたんだけど、あのふたり、ちょこちょこ出てくる魔物をもう赤子の手をひねるようにスパスパッと倒してってね」
マグ「おぉ〜!」
メイカ「で、あんまりにも簡単に倒すもんだから、もしかして普段はもっと下の階層に潜ってるの?って聞いたら、まだ誰も踏み込んでない、罠や敵の情報なんか何もない状態の危険な迷宮を踏破していく、《探索者》だって言われて驚いちゃったわ!」
リオ「探索者!?どおりで……」
メリー「……?」
マグ「探索者?」
リオは何か納得したみたいだけど、私とメリーはいまいちピンと来てない……。
冒険者とどう違うんだろう……?
メイカ「探索者っていうのはさっき言った通り、なんの情報も無いような危険な場所に行って情報を持ち帰る人のことでね。冒険者はある程度情報を集めて、対策なんかをするんだけど、探索者はそもそも情報がないから対策も何もなくてね。だからどんな状況にも耐えられるように準備をして、何が起きても慌てず騒がず冷静に対処できるような人のことで…ん〜…いわば、エリートな冒険者ってところかしら?」
マグ・メリー「「へぇ〜…!」」
すごい…!
カッコいい……!
メイカ「そりゃあ強いわけよね〜。シャールちゃんはいつも物静かだから分かるけど、エストちゃんは意外だったわ〜。相手の攻撃とか罠とか全部避けて、カウンターに重たい一撃を浴びせていって……凄かったわぁ……野生の勘…なのかしら?」
野生の勘かぁ……。
マグ「それだったらユーリさんも負けてませんね」
リオ「あぁ、確かに。ってか、ユーリさんとエストさんっていい勝負してたよな?」
メイカ「えぇっ!?そうなの!?」
メリー「……うん、すごかった…!」
してたねぇ。
まだルークとの試合の前、エストさんがお手伝いに来てくれたときに、ユーリさんと模擬戦をしてたね。
結局なんの参考にもならなかったけど。
メイカ「へぇぇ〜!やっぱりユーリちゃんって凄いのね…!」
マグ「そうですね。でもすっごく優しくて親しみやすいですよね」
リオ「だな。ユーリさんもパッと見じゃ実力が分かんないタイプな気がする」
メリー「……!(こくこく)」
メイカ「そうねぇ…。ユーリちゃんは見た目だけじゃ、ただの褐色銀髪巨乳美少女狐娘だものねぇ……」
みんな『…………』
いや、見た目も只者じゃないね、ユーリさん。
情報が多すぎる。
リオ「それに加えて大きな槍にあの衣装…だったもんな……」
メイカ「あぁ…只者じゃないわねぇ……むしろあの格好で痴女扱いされなかったのって凄いわね……」
マグ「ユーリさんからエッチな気配が微塵もなかったんでしょうねぇ……」
中身はあんなにエッチッチなのに……。
メイカ「あっ、そういえば、ユーリちゃんが今作ってるおとーふってどんなのだった?」
リオ「そうですね……白くて、柔らかくて…」
メイカ「ふんふん…」
マグ「四角くて、食べるとお豆の味がブワーってくる感じで…」
メリー「…へぇ……」
マグ「あとは……」
メイカ「あとは?」
チラッ。
リオ「……(フッ)」
マグ・リオ「「あとは出来上がってからのお楽しみです♪」」
メイカ「えぇ〜!?気になるぅ〜!」
メリー「……メイカ、はやくあがろ…!」
メイカ「そうね。こうなったら早く上がって早く見に行きましょ!」
そう言ってメイカさんは足早に脱衣所の方へと歩いていき、それにメリーも同じように着いて行った。
あとに残ったのは私とリオだけ。
リオ「どうする?」
マグ「私たちも上がっちゃおっか?」
リオ「おう。オレもおとーふ楽しみだしな」
マグ「お昼に食べたでしょ〜?」
リオ「だからこそです〜。気に入っちまったんだよ、あれ」
マグ「そっか。まぁ私もだけどね〜」
そんな話をしながら、私とリオはメイカさんたちとは対照的にゆっくりとお風呂を上がった。
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コウスケ(……ここまで来たらマグが拭いてあげなよ……)
マグ(だってコウスケさんのほうが気持ち良さそうなんですもん……)
リオ「〜♪」
メイカさんにはああ言ったけど…私も未だにこれは納得できないな、うん。
久々のお風呂会。
今回はメンバーは少なめですけどね〜。
みんなでわちゃわちゃ〜っていうのもいいですが、少人数でまったり…というのも楽しいですね。
さてさて、割と長引くお豆腐編。
まだ続きます。
ではまた来週。さようなら〜




