278.魔法コンクール…の話と夢の中
今日も特に大きな事件もなく (小さいのは毎日何個かある)1日を終え、夢の中でマグと会う俺。
ある程度イチャついたあと、あぐらをかく俺の上に座るマグが、そういえば…と何かを思い出して話しかけてきた。
マグ「コウスケさん。魔法コンクールのお話って結局まだしてませんよね?」
コウスケ「あっ」
忘れてた。
マグ「結局あれ、お受けするんでしたっけ?」
コウスケ「断るつもり…だったはず……」
マグ「そこすらあいまいに!?」
いや、だって……
コウスケ「なんか……大勢の前で試合したなぁとか、毎日新聞にいらんこと書かれてるよなぁとか思ったら、今さらコンクールに出るぐらいどうってことないんじゃないかって……」
マグ「感覚が変わってきたんですねぇ」
コウスケ「良いんだか悪いんだか……」
こういうイベントに積極的になれるって点では良いこと…なんだろうなぁ多分……。
コウスケ「でもマグは大丈夫なの?」
マグ「?なにがですか?」
コウスケ「だってマグ…あんまり人前に出るのは……」
マグ「…そうですねぇ……」
最近忘れがちだが、俺が表にずっと出てる理由はマグが精神的に弱っていて人と話すことすら怖がってしまったからだ。
だが最近はメイカさんたちやショコラちゃんたちはもちろん、リハビリがてら俺と交代してギルドのお仕事をしているときにギルド職員さんと会話できるぐらいまで回復している。
正直俺が表に出てる理由は、仕事がマグより早いのとショコラちゃんたちを甘やかすためというこの2つくらいしかない。
だが前途した通り、マグが回復したのはギルド職員さんぐらいまで。
冒険者の皆さんとは、軽い挨拶を交わすだけでもまだちょっと緊張が伝わってくるレベル。
そんなマグを、俺が表で参加するとはいえ大勢の前に出して良いのか。
いや、まぁ…ほんと、試合しといて今さら過ぎるというのは分かってるんだけど……。
マグ「確かに、まだちょっと怖いです。でも、冒険者の方々とお話できないのは悲しいですし、いつまでも怖がっていられませんから……」
コウスケ「マグ……」
そう言いながらマグは自分の膝を抱え込むように座る。
自分に言い聞かせて鼓舞しているんだな……。
マグ「それに…」
無意識のうちに抱きしめようとしたところでマグが話の続きを始めた。
そこで自分の手が若干浮いてることに気がついた俺はスッと何事もなかったかのように元の位置に戻した。
多分バレてない。
いやどうだろう。
マグは鋭いからなってバカ!
話に集中しなさい俺!
相変わらず1人でボケツッコミしてる俺の、さっきさりげなく戻した手にマグの手が触れられた。
その感触に気付きそれを確認し、再度マグを見ると、彼女は首だけこちらに向けていた。
その顔に怖がっている様子はなく、穏やかな声音で言葉を繋いだ。
マグ「コウスケさんが守ってくれますから…♪」
コウスケ「っ!」
こっちに世界に来て何度目かのこの衝撃。
誰かに頼られるのはやはり嬉しい。
しかもそれが好きな女の子ならばなおさらに。
さっき空気を読んで戻しておいた自分の手…マグが手を置いているのと反対の手で彼女を抱きしめる。
マグ「えへ…♪」
するとマグはその俺の手の甲を、自分の空いている方の手で優しくなでてはにかんだ。
あ〜、もう絶対守る。
もう何度思ったか分からないけど、何度でも誓うわ。
絶対この子守るわ。
コウスケ「はぁ〜……も〜…も〜……!」
マグ「んふふふ♪も〜、なんですかぁ?」
語彙力が死んで彼女の髪に顔をぐりぐりさせる俺。
首元に息がかかってくすぐったいのか、それともただ単に楽しいのか、マグはくすくす笑いながらされるがままでいた。
ある程度じゃれて満足したところで、再び元の体勢に。
少しぼーっとしてから、マグが唐突に口を開いた。
マグ「私は…コウスケさんに魔法コンクールに出て欲しいなって思ってます」
コウスケ「えっ…それはどうして……?」
マグ「…私のお母さんが魔道士だったのはお話しましたよね……?」
コウスケ「ん…うん、聞いたね」
確か、お母さんが魔道士で、当時名のある冒険者だったお父さんとなんやかんやでゴールインしてマグが産まれたんだよね。
…もはや遠き過去のことのように思えるあの夢……。
[ロッサ村翡翠龍襲撃事件]のあの夢では、土魔法を使ってたな……。
マグ「私も、お母さんの昔のお話を聞いて、自分も魔法が使えるようになりたいって、ずっと思ってました。でもそれはコウスケさんが叶えてくれました。私自身はまだまだ魔法の扱いはダメダメですけど…それでもすごく嬉しかった。私も魔法が使える…頑張ればもしかしたらお母さんのようになれるかもって思えたんです」
コウスケ「それはよかった」
マグ「えへへ♪それに、コウスケさんが私の体を使って、見たことも聞いたこともないような魔法をバンバン使ってるのを見るのも楽しかったんです。知らないことを知れたのはもちろんなんですけど、コウスケさんが魔法を使いこなしてるのを見てると、私まで魔法が使いこなせてるような感覚がして、それも楽しかったんです」
コウスケ「なるほど……」
まぁ同じ体に入ってるわけだしなぁ。
ある意味マグが使ってるってことに違いはないわけだし、そう思うのもおかしくないな。
マグ「もちろん、コウスケさんだからあんなに使いこなせてるだけなんだってことはよく分かっています。私自身は、さっきも言ったみたいにまだまだダメダメですから……」
コウスケ「そうかな?少しずつだけど、魔法の精度が上がってるし、そんなことはないと思うよ?」
マグ「そうですか?えへへ…ありがとうございます…♪」
毎日練習してる甲斐あって、マグも徐々に魔法が上手く使えるようになっている。
主にメリーのお気に入りである 《サンダーオーブ》が、であるが……。
まぁともかく、成長は成長である。
しかし、ありがとうと言いつつも、マグの顔は晴れず、彼女はそのまま言葉を続ける。
マグ「でも、やっぱりまだまだですよ。コウスケさんにも…お母さんにも、全然届きません……」
コウスケ「マグ……」
マグ「だから…というのは変かもですけど……コウスケさんに…私の体を使って魔法を自在に使えるコウスケさんに、私の代わりに出て欲しいんです」
なるほど…………なるほど?
コウスケ「…うんと……それはどうして?」
マグ「…もしかしたら……天国から、私のことを見守ってくれてたりとか……思ったんですけど……」
段々とすぼんでいき、最後の方はぽしょぽしょとしか聞こえなかったが、言いたいことはよくわかった。
マグ「あ、あはは……いいように考えすぎ…ですかね……?」
コウスケ「そんなことない」
マグ「っ!?」
マグの無理した笑い方を見て思わずそう言っていた。
おかげでちょっとマグは驚いていたが、今はそれよりも言いたいことを言ってしまうことにする。
マグ「コウスケさん……?」
コウスケ「マグのその考え方、凄く素敵だと思う。ウチの世界にもそういう考えはあるし、お盆とかそういうのが身近なものだという文化もある」
マグ「おぼん……?」
コウスケ「亡くなった人があの世からこっちに来て、いろいろ見て回って帰っていく日…かな?」
マグ「そんな日が……」
いまいち自信はないけど、確かそんな日だったはずだ。
自分の記憶力を信じよう。
コウスケ「だから、いいように考えてるなんてことはないよ。多分マグのご両親も、ずっとマグのことを見守ってくれてると思う」
マグ「……そう…でしょうか……?」
コウスケ「きっとそうだよ。それに思い出してよ」
マグ「…?」
コウスケ「俺、幽霊だよ?」
マグ「…あ……」
「亡くなっても成仏せずになんかいるということは実在する」という動かぬ証拠、生き (?)証人がここにいるのだ。
俺はただの流れ人だけど…
コウスケ「流れ着いただけのやつがいるんだから、マグのお父さんお母さんがマグを心配して見守ってるっていうのは十分あると思うよ」
マグ「……そっか……そう、ですね……!」
マグの顔から陰りが消える。
たとえ最期の方の思い出が苦いものばかりでも、きっとマグのご両親はマグのことをずっと気にかけてくれていたはずだ。
だから、大丈夫。
きっと、ずっとマグのことを見守ってくれて…
マグ「あっでも…」
コウスケ「ん?」
ここでまさかの「でも…」が出てきました!?
コウスケ「な、何か気になることでも……?」
マグ「いえ、その……もし…もしですよ?もし私のことをずっと見守ってくれていたとしたら……それは…コウスケさんのことになるのかなって……」
コウスケ「…………あ〜…そっかぁ……」
思い返せばここまでの人生 (約1ヶ月)。
マグが表に出てた時間は、俺の出ていた時間の…大体4分の1か5分の1くらいか。
最初はあまり出てこなかったが、ショコラちゃんと会ってから徐々に出てくるようになって、最近では仕事の手伝いをするのに出てくるようになってるわけだし、多分そのくらいだと思う。
もしかしたらもうちょっと少ないかもだが、まぁ大体そんなもんだということにする。
なんにせよ、マグよりも俺が表に出てる時間の方が圧倒的に長いわけで……。
もしさっきの話の通り、あの世から見守ってくれてるのだとしたら……その大半は俺ということに……
コウスケ「…なんか…罪悪感が……」
マグ「だ、大丈夫ですよコウスケさん!もし見守ってくれてたら、コウスケさんがとっても良い人だってこともわかってるはずですから!」
コウスケ「そ、そうかな……?」
マグ「そうですよ!それに、婚約が決まってから急に冷たくなった人たちにとやかく言わせる気はありません!」
コウスケ「うわぁお……」
聞こえますか?
マグのお父さん、お母さん……。
あなたの娘はなんやかんや言ってもまだ根に持ってますよ……。
聞こえるのなら弁明と謝罪を大至急お願いします……。
マグ「だから大丈夫です!(ふんす)」
コウスケ「そっ…かぁ……」
お義父さん泣いてそう……。
なんだか無性にそう思った俺は、これ以上ご両親へのダメージが増える前に話題を戻すことにする。
コウスケ「…なら、うん…それじゃあ、出よっか。コンクール。そんで、マグの元気な姿をご両親に見せつけるよ」
マグ「はい!お願いします♪」
魔法コンクールへの出場を決めた俺たちは、その後少しまったりとしてから本格的に眠りについた。
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翌日。
魔法コンクールに出たいということを、ララさんとリンゼさんに伝えた。
ララ「うん、わかった。それじゃあエントリーの受付を始めたら私の方で出しておくね」
コウスケ「ありがとうございます」
リンゼ「マーガレット様。承知かと思いますが、まだコンクールの開催が決定したわけではありませんので、どうか今しばらくご内密にお願いします」
コウスケ「はい、了解です」
前回の鍛治コンテストも、開催数日前まで発表しないという手段を取っていたので、あまり大きな混乱はなく終わった。
規模がもっと大きくなればこの方法はあまり使えないだろうが、ちょっとしたお祭り程度ならばこれでも大丈夫。
ということで今回も関係者以外には秘密。
今回の関係者は冒険者ギルドと魔術ギルドなので、リオには秘密…だな。
代わりにシエルとは話せるけど…ちょっと残念だ。
ララ「細かいルールとかはまた今度ゆっくり教えるね。それじゃあ…はい。これが今日の分だよ」
コウスケ「はい。ではでは、失礼します」
ララ「うん、よろしくね〜♪」
リンゼ「お気をつけて」
ララさんから今日分の仕事をもらってリオの元へ。
今日はパメラちゃんの日なので、俺はリオとパメラちゃんの2人を連れてさっそく鍛治ギルドへと向かった。
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何事も……まぁ、特になく終わり、夜。
いつも通りマグとお互いにくっついて座ったところで、今日のことを話す。
マグ「コウスケさん。私のわがままを聞いてくれてありがとうございます」
コウスケ「これくらいなんてことないよ。それに、いざ出場となると、俺もちょっとワクワクしてきたしね」
マグ「そうなんですか?」
コウスケ「うん。コンクールの内容がどんな感じになるのか気になるし、コンクールでどんな魔法を披露しようかなとかも考えちゃうんだよねぇ」
マグ「ふふふ♪そうなんですね♪コウスケさんも楽しそうならよかったです♪」
天使かな?
天使だよ。
知ってた☆
相変わらず愛らしいマグとまったりのんびり、たまにイチャイチャ。
そんな風に過ごしていたら、ふと何か違和感を感じた。
コウスケ「…?」
マグ「あれ…今何か……?」
コウスケ「ん…マグも?」
マグ「えっ、コウスケさんもですか?」
コウスケ「うん…なんか違和感を感じた気がして……」
マグ「私もです。なんだか体が変な感じで……」
コウスケ「う〜ん……?」
夢の世界にいても、現実世界のマグの体から伝わる感覚はある程度ならわかる。
この間はリオに抱きつかれてたし、さらにその前はメリーに乗っかられてたというのもなんとなくわかった。
メリーに関しては俺より起きるのが遅いので、余裕で確認できたが。
まぁとにかく。
体に何かがあればなんとな〜くわかるのだ。
で、それが今俺とマグ、両方感じた。
コウスケ「抱きつかれてる感じじゃないね……?」
マグ「はい……どっちかというと…体の中…かな……?」
コウスケ「だねぇ……」
2人で、う〜ん?と考え込んでいると…
???「……グ……!…き……マ……!」
コウスケ・マグ「「!」」
誰かに呼ばれている声が聞こえてきた。
この声は俺たちがよく知る人物の声だ。
俺たちは顔を見合わせた後、夢から覚めるべく意識を集中させた。
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???「…グ……マグ……起きて……!」
コウスケ「ん……」
呼び声に応えるために目覚めた俺が見たのは、俺を心配そうに見つめるリオと、ぽろぽろと涙をこぼすメリーの姿だった。
あけましておめでとうございます。
今年も「異世界で少女とまったりするために頑張る」をよろしくお願いいたします。
そのためにも一層努力…したい…なぁと…思います……。
いや、努力します、はい。(さっそく22:00投稿失敗してるけど……)
こほん。
ともかく、新年と共に新章へ。
章タイトルで察する人もいるでしょうが…その子たちとの進展を書こうと思っております!
4章は年内で終わらせたい。出来れば5章も……。
というわけで頑張ります!
ではではまた来週!




