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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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25.マグとのお話第2夜…進展編

「むぅ〜……」

「えっと…マグ…?どうしたの……?」

「むぅ〜……!」

「えーっと……」

「むぅ〜!」

「……ちょいや」

「ふにゅっ!?」


ぷしゅ〜……。


「何するんですか!?」

「だってむくれてたから」

「むくれてたら指で押すんですか!?」

「大体は」

「大体はっ!?」


今目の前でなぜかプンプン可愛く怒っているのは、レモンカラーのかわいさお化け、マグことマーガレット嬢本人である。


メイカさんがディッグさんに担がれていくのを見送った後、洗濯機の準備をして明日朝イチで回せるようにし、部屋でストレッチと魔法の練習と研究をした後、眠気に誘われるままベッドに飛び込んだ俺は、昨日のように夢だか心の中だかでマグと出会った。


が、さっきも言ったように何故かマグは機嫌が悪く、俺のことを頬を膨らませて可愛く唸りながら睨んできた。


「で、どうして俺はいきなりマグに威嚇されてたの?」

「別に?威嚇なんてしてませんし、ハルキさんと仲良さそうに笑いあってるのが羨ましいとか思ってませんし」


…そういうことか。


この子は俺が誰かと楽しそうにしてるのが羨ましかったのか。


確かに今のマグの話し相手は俺だけだし、それもマグはずっと中にいるのに、俺は寝ないと話すことが出来ないという、すぐそばに見えているのに言葉が届かないもどかしい状態だ。


「いや、それにしたってなんでハルキ!?」

「えっ!?だ、だってハルキさんと話してる時のコウスケさん、本当に楽しそうだから……」

「え?あ、そういうことね」


なるほどね、本当に羨ましかっただけと。

俺が他の女性と仲良くしているのに嫉妬してるわけじゃないと。

そっか〜……。


…いや別にね?嫉妬してほしい訳じゃないよ?

痴情のもつれは厄介だってよくニュースとか見て知ってるし。


ただね?ただ、今の流れ…そういうことかなって、そういうお約束かな?って、ちょっと期待しただけというか。


ていうか俺は誰に言い訳してるんだ……?


「ん〜…でも確かに、マグはずっと見えてる状態なのに、話しかけられないってちょっと寂しいね……」

「それは…私も多分、頑張れば外に出れるんです……」

「でもまだ踏ん切りがつかないんでしょ?」

「はい……。アイツがいる訳じゃないですし、モニカちゃんもララさんも…チェルシーちゃんも優しい子だって分かってますから、私も仲良くなりたいんです……でも……」


そこで言葉を区切るマグ。


とても言いづらそうに、必死に言葉を探しているような、そんな顔で黙ってしまった。


そんなマグの肩の力を抜いてもらうため、俺はその場に座るとちょいちょいと右手でマグのことを呼び、左手で俺の隣を地面…地面?

壁とか地面とか以前に上も下も怪しくなりそうな空間だが、まぁとにかく隣に座れと促す。


「とりあえず、こっちおいで。言いづらいことなら、無理に言わなくていいからさ」

「コウスケさん……。ありがとうございます」


マグはそう言うと俺の隣に座り込む。


しばらくそうしてお互いに何も喋らなかったが、マグがポツリポツリと話し始めた。


…顔色が悪い……。


「仲良くなりたいのは本当なんです……。でも…どうしても…怖くなってしまうんです……」

「怖い?」

「……また、私の前から消えちゃうんじゃないかって……」


そう言うマグの少し震えており、目には涙が溜まっており今にも泣いてしまいそうだった。


「また…殺されちゃう……また1人になっちゃうのが怖くて……人と話すのが…仲良くなるのが…怖い……」

「マグ……」


これは…やってしまったな……。


俺はこの子の将来や周りの反応ばかりに気を取られていたが、この子はまだ過去にいるんだ。


こうして俺と普通に話していたから気が付かなかった…いや、これも言い訳だ。


一番近くにいるのに、この子の体を借りているというのに、俺はこの子のことを本当に何も知らないのだ。


「マグ……」


俺は彼女を抱きしめた。

いつもはなんやかんやとまごつくのに、今はこれが正しいと言わんばかりに迷いなく実行した。


「マグ…大丈夫…そうしないために俺がいる」


ゆっくりと、優しく話しかける。


「ヤツを落とす…必ず潰す…そしてみんなで笑って過ごす…そうなるように頑張るから…だから……」


マグの頭を撫でる、背中をさする。

…少し落ち着いてきたようだ。


「だから…マグの力を貸してほしい。…俺だけじゃアイツに立ち向かえない……」

「…そうなんですか……?」


マグが不思議そうにこちらを見上げる。

まだ目は潤んでいるが、どうやら落ち着いたらしい。


「そりゃあな…俺だってアイツが怖い…1人だったら多分…マグと同じように引きこもるかもしれない……」

「…私がいるから……無理してるの……?」

「…そうかも。でもマグがいなければそれすら出来なかったと思う。ただ毎日ビクビク生きてるだけのつまらない人生になってたと思う。だからマグ、約束しよう」

「約束…?」

「俺は君を1人にしない。だから君も俺を1人にしないでほしい」


…すごくかっこ悪いこと言ってる気がする……。


でも、マグの顔色が戻ってきたのでこれでよかった……いや、マグの顔が戻るどころか赤くなってるような……。


「マグ?」

「えっと…えっと…それって、わ、私と一緒にいたいってことですよね……?」

「? うん」

「わ、私と、さ、ささ支え合おうってことですよね?」

「うん、そうだね」


急にどうしたんだろう?

そんなにさっきの言葉が気にいったのかな?


さっきの…さっき……あれ……?


支え合って生きていこう。

確かにそんな意味合いも込めたが…あれ?


これって…プロポーズ…してないか……?


お、お互いに1人で生きていけないから、これからは2人で生きていこう…って…おおおおおっとぉぉ!???


やっちゃった!?

やっちゃったまた!??

やっちゃったな!!?


やばいやばいやばいやばい!

いやまだだ、まだ終わらんよ……!


まずは相手の出方を見て…


「あ、あの!」

「は、はい!?」

「ふ、ふちゅちゅかものでしゅが…よ、よよよよろしくおねがいします……」


了承されたぁぁぁぁ!!!???


この答えってことは俺が考えてたような意味で受け取ったってことで、それを了承したってことはつまりそういうことじゃん!!?


いやいやいやいや!待て待て!

相手は子供、しかも10も離れた未成年だぞ!?


それに手を出すとかヤバいというか俺はロリコンではあるがそういう本もあるがじゃあよりアウトじゃねぇか!!


ハッ!

マグがこちらの様子を伺っている!?


返事しなきゃ!返事…


「よ、よろしくお願いします……」

「は、はい……」

「……」

「……」


了承しちゃったぁぁぁぁ!!!!


相手ロリBBAとかそういうのじゃないぞ!?普通のロリだぞ!?アウトだぞ!バーカ!!バーカ!!!


今日ちょいちょい「マグに体を返したら…」って考えてたのにこんな約束したら出てけねぇじゃん!!

将来考えて行動してたのに一番将来に不安残してんじゃん!?


ええい待て待てとりあえず誤解を解くのだ俺よ……!

さすがに10歳の子にプロポーズしましたとかヤバいぞよ俺よ……!!


(じゃあ成人してれば問題ないのか?)


そやなぁ…10歳年下とはいえ相手が成人してるのならば十分歳の差カップルでいけるし、マグ可愛いし将来が楽しみだし、相手が俺を望んでいるなら俺も答えるのは(やぶさ)かでは…誰だ今の?


(俺だ、俺よ)


お、俺…だと…!?

てことはつまり…もう1人の俺…リトル俺……!!??


(まぁそれでいいけど……で?どうするんだ?)


どうするとは…?


(お前はマグとそういう関係になりたいのか?)


ぶっちゃければ、なりたい。


(じゃあいいじゃん)


いやいや相手は子供だし、何よりさっきのシチュエーション的に弱みにつけ込んだみたいでなんか……


(いいか俺、よく聞け…)


な、なんでしょう……。


(人は誰しも弱みがある、それは分かるな?)


うん、まぁ…弱みのない人間なんていないだろうけど……。


(で、人は元々支え合って生きていく生き物だ。そうだろ?)


そう…さな…人という字は人と人が支え合って出来ているってよく言われるし……何より1人で出来ることって結構限られる。


(なら自分の弱みを(おぎな)ってくれる相手が必要だ。違うか?)


いや……。


(そしてその弱みを補う相手の弱みを、自分が補えるなら?)


そりゃ、助けてくれたお礼もしたいし……あ……。


(そういうことだ。それが支え合い、ギブアンドテイク、win-win、というやつだ)


な、なるほど……。


(それに、今の彼女の理解者はお前しかいないんだ。メイカさんやハルキ達も事情は知ってるが、実際に見たのはこの子と繋がってるお前だけ、頼れるのはお前だけなんだ)


そ、そうか……!


(弱みにつけ込む?結構じゃないか。雑誌やテレビでも「傷心の女性に優しくして交際に発展した」とかやってんだぞ?常套手段だぞ?みんなやってんだぞ?)


それは集団心理入ってない?


(入ってはいるがこういう時は乗るんだよ!それに傷ついた知り合いを助けるのは普通だろうが!?そっから発展するかもって下心がある奴もいるだろうが、そもそも助けてくれないって時点でもうそいつの信用ガタ落ちだろ!?)


ま、まぁ…助けたいなとは思うけど……。


(間違ったらもっと傷つけそうで怖いか?)


怖い。


(そこは頑張れ)


ザツい!?


(慰め方なんか人それぞれだから分かんねぇよ!大体俺はお前なんだから、俺が人慰めるのがクソ下手くそなのは知ってるだろうが!?)


そういやそうじゃった!?


(だからとにかく今はマグを元気付けろ!この子が元気になれば嬉しいし、何より満更でも無いんだろ!?)


そ、それはそうだけど…俺とこの子は同じ体だぞ?

仮にあの子とけ、結婚したいとか思ってもそういう関係には……。


(いやなれるだろ)


え?


(恋人だろうと夫婦だろうと、それは体だけの関係じゃ無いだろ?心が伴ってこその関係だろ?じゃあなれるじゃん)


あ、あれ?た、確かに……?


(ようは覚悟が無いんだろ?マグを幸せにする覚悟が。あの子の人生を背負う覚悟が)


それは……。


(ほらな?いいか?あの子の人生はあの子のものじゃなくなるが、お前のものでも無い)


それはどういう……。


(お前ら2人のものってことだ。お前の人生もそう。お前とあの子のものだ)


そ、そうなのか……。


(だから自分の人生だっつって好き放題するなよ?お前のやったことがあの子の人生にも関わるんだからな)


……。


(あぁ、その点なら今も似たようなもんか。だが随分と重みが違うだろう?)


……あぁ。


(フッ…それで?決まったんだろ?)


もちろん。


(じゃあ最後にひとつだけ)


ん?


(一応婚約という形にしておけ。さすがに未成年はまずい)


……分かった。


「コウスケさん…?どうしたんですか……?」


マグが俺のことを心配そうに見上げている。


「ふぅ〜…いや、覚悟が決まっただけ」

「?」


不思議そうな顔をするマグの顔と同じ高さになるようにしゃがみ、マグの目を見つめる。


「あ、あの?コウスケさん……?ち、近いですよ……?」


また顔を赤くしてもじもじしだしたマグに俺はそのまま話しかける。


「マグ」

「は、はい!なんでしょう?」

「さっきの話だけど…もしかしてプロポーズとして受け取っちゃった?」

「え?ち、違うんですか……?」


赤かったマグの顔が青ざめていく。

違う、そうじゃない。


「いや、確かに違うけど違わない」

「ど、どういうことですか……?」

「さっきのはただ君の助けになりたかったからっていうのと、そう言ったらマグが自分も何か出来ないかって気にしそうだから助け合おうって言っただけ」

「そ、そうなんですか……」

「だから…その…ちゃんとさせてほしい……?」

「ちゃんと……?何を……?」


俺の意図が分からず困惑してしまったマグの左手を取る。


「え、えっと…ゔ、ゔん!!すぅー…はぁー……マグ」

「は、はい……」

「俺と…婚約してください!」

「…………えっ…ええええええぇぇぇぇ!!!!!!????」


マグは最初何を言ってるんだと困惑し、次に言葉の意味を理解して驚き、最後に顔をさっきよりも真っ赤にして声を上げた。


「へぁっ!?えっ!?こ、こここ婚約?婚約!?えっ、えっ!?」

「マグ」

「だ、だだだだってさっき違うって…あれでも違わないとも言ってて…」

「マーグ!」

「は、はい!!」


耳まで真っ赤にして慌てるマグの様子を見るのはとても楽しいのだが、今はそんな余裕はない。


「……返事は?」

「……!」


さっき答えは聞いたようなもんだが、こっちもちゃんと聞きたい。


マグはゴクリと喉を鳴らすと、息を整えた後、未だ真っ赤な顔に瞳を潤ませながら、


「はい!不束者ですが、よろしくお願いします!!」


今度は噛まずに、とても幸せそうな顔でそう言ってくれたのだった。

リトル俺の出番は限りなく少ないと思います。

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