256.鍛治のお手伝い…からのいつものやつ
無事に朝を乗り切った俺はリオと共に冒険者ギルドへ向かい、そこで挨拶を交わしてから今日のお出かけ当番のショコラちゃんを連れて鍛治ギルドへ向かった。
着いて早速、昨日メリーが言っていた案を実行しようとして責任者であるグラズさんに許可を貰おうとした。
グラズさんは悩みながらもマーガレットちゃんなら…と、今までの俺の実績を考慮してくれて許可を出してくれた。
のはいいとして。
ショコラ「やだやだやだやだぁー!!」
俺が鍛治ギルドで仕事を始めた日のジャンケンで負け、ようやく自分の番が来たと喜んでいたショコラちゃんがぐずり始めてしまったのだ。
午後は一緒にいたじゃん…とか言ったら絶対拗れるので言わないが、さすがに危ないので今回ばかりは「しょうがないなぁ」と安易に許すことも出来ない。
とはいえ、ずっと待ってようやく…といったところで「1人でお仕事してね」なんて言われたら俺だって文句を言うと思うのでただ「我慢してね」と言うのは気が引けてしまう。
ってか、そんなこと言うなら冒険者ギルドで先に言っとけばよかったなぁ……。
それはそれでぐずりそうだけど、突然お預けされるよりはずっといいと思う。
向こうならパメラちゃんとチェルシーもいるし。
が、俺たち2人してそのことが頭に入っておらなんだ。
そしてこうなった。
THE・手遅れ。
じゃあどうするか。
今俺に強く抱きついて全体重をかけて離れまいとするショコラちゃんをどう宥めるか。
強化魔法を密かに発動してなかったら後ろに倒れ込みそうなほどだから早く決めたいけど…良い案あるかな……?
コウスケ(…明日もショコラちゃんの番にしてあげるとか?)
マグ(ショコラは今日を楽しみにしてたので、結局我慢させることに変わりはなくてあんまり効果はなさそうですね……)
コウスケ(そっか…じゃあ、ショコラちゃんも入れていいかグラズさんに頼む?)
マグ(コウスケさんでも少し渋られていたのに、ショコラまで入れてくれるとはとても……)
コウスケ(う〜ん…なら…リオとショコラちゃんのところに交互に顔を出す?)
マグ(リオをあまり放っておくわけにはいきませんし、だからといってリオとばかり一緒にいたら結局意味がなくなってしまいますから、そこのバランスがとても難しそうですね……)
コウスケ(そうかぁ……)
それなら…う〜ん…やっぱりショコラちゃんに我慢してもらうしかないかなぁ……?
でもやっぱ1人でお仕事させるのはちょっと……。
ん〜……よし……。
グラズさんに頼み込もう。
コウスケ「グラズさん……」
グラズ「う〜ん……壁側で見学するだけならまぁ……」
ショコラ「やったぁー!ありがとうグラズさん!」
思ったよりすんなり許可が降りました。
グラズ「だってマーガレットちゃんは一緒に鍛治をやるって言うんだもの……普通なら絶対に許可しないよ?」
ごもっともです。
というわけでショコラちゃんよ。
それでもよければ俺たちと一緒にいて大丈夫よ。
ショコラ「えへ〜♪えへへ〜♪」
リオ「…マーガレット…大丈夫か……?」
大丈夫大丈夫。
強化魔法使ってるから、ショコラちゃんの全体重をかけたおぶさり攻撃も余裕よ余裕。
でも日頃チェルシーとかメイカさんとかに抱きつかれて慣れてるから耐えれただけで、下手したら最初の頃みたいにぶっ倒れるからやめようね。
最近でもたまに倒れるけどね。
飛びつくのやめような、みんな。
という俺の願いは叶わず、相変わらずデイリーは消化されてますよ、えぇ。
とりあえず許可はもらったので、俺は2人とともにリオが鍛治のリハビリをしている鍛治部屋に向かった。
…ショコラちゃん……降りて?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コウスケ「で、何からするの?」
リオ「そうだなぁ……」
一緒にやること以外、何も決まっていない俺たちであった。
ショコラ「はいは〜い!」
コウスケ「ほいショコラ」
ショコラ「はい!」
コウスケ「良いお返事」
ショコラ「えへへ〜♪」
この子らはあれだよね。
褒めたりなんだりしたらちゃんとリアクションしてくれるから嬉しいよね。
しかもそれがみんな可愛らしいもんだからなおさらね。
コウスケ「ほいで?どったのショコラ?」
ショコラ「えっとね〜。リオがいつもしてることを教えてあげればいいんじゃないかなって思ったから、リオはいつも何してるのかなってことから聞いたらいいと思いました!」
コウスケ「あっ、なるほど…」
リオ「あぁ…そうか……そういうのでいいんだな…うん……」
どうやら俺とリオは難しく考えすぎていたみたいだ。
一緒にリハビリを…ということばかり考えていたからだな。
ちょっとした盲目状態だったわけだ。
ショコラちゃんいてよかった。
という気持ちを込めて…
コウスケ「え〜ショコラさん」
ショコラ「はい!」
コウスケ「とても良い案です。ご褒美になでなでしてあげましょう」
ショコラ「わ〜い♪(パタパタ)」
尻尾をパタパタ揺らして喜ぶショコラちゃんの頭に手を乗せ優しくなでなでを開始。
おぉよしよし、相変わらずのふわふわヘアーだねぇ。
ほれほれ、お耳も忘れずになでこなでこ。
ショコラ「えへ〜♪えへへへ〜♪(ぶんぶん)」
可愛い犬耳を撫でるとピクピクっと反応し、犬尻尾がより激しく右に左にブンブンブブブン。
よかった。
この辺り何も置いてなくてよかった。
尻尾被害が無さそうでお兄さんは安心です。
さっ、ショコラちゃんを褒め終わったところで本題へいこう。
コウスケ「じゃあリオ。いつもは最初何から始めてるの?」
リオ「ん。まずは何はともあれ道具の手入れだな」
コウスケ「手入れ?」
マグ(最初から?)
リオ「そっ。使う前に不備がないかチェックするんだ。作業中にぶっ壊れちゃたまったもんじゃないからな」
コウスケ・マグ「(なるほどぉ)」
言われてみれば確かにそうだな。うん。
マメに点検するのは大事なことだしな。
とはいえ…
コウスケ「う〜ん…さすがにそれは素人の私じゃ手伝えなさそうだなぁ……」
リオ「あ〜…いやでも、チェックは多い方がいいからな。マーガレットも見てみてくれよ」
コウスケ「あぁ…確かに。それじゃあ一応見とこうかな」
ショコラ「ショコラも見ていい?」
リオ「あぁ。頼む」
ショコラ「は〜い♪」
ってなわけでまずは道具の点検から。
さぁて…これは…なんだ?
ハサミ…的な?トング…的な?
多分これでインゴット持って、槌で叩くんだと思う。
マンガとかテレビで見た。
そんなアレをひょいっと…うわ重っ。
強化魔法使っとこ……。
あ〜…言葉に出しといたほうがいいか。
コウスケ「え〜と…… 《【我が身】を[強めよ]、【無垢なる魔力】。[ストラアップ]》」
リオ「ん…?あぁ、強化魔法か」
ショコラ「マグ力無いもんね」
コウスケ「あはは、まぁね」
マグ(う〜ん……ほんと不思議なほど筋肉が付きませんよね…私の体……)
コウスケ(なんでやろなぁ……まぁでも、俺としてはガッチリ筋肉質な感じよりも、ぷにっと柔らかボディの方が好みだからいいんだけどね)
マグ(それならまぁいいんですけど…………コウスケさん、一応聞きたいんですけど……)
コウスケ(うん?)
マグ(…太ってるわけではないですよね?)
コウスケ(おぉぅ…なるほど……健康的な魅惑のボディだから大丈夫やで)
マグ(よかったぁ……えへへ♪魅惑のボディ……♪)
うん、太ってるわけじゃないってのは今朝も確認したからな。
えぇ、ほんと…魅惑のボディですよ……はい……。
よし、この話は終わりだ。
これ以上は今朝のアレを鮮明に思い出しそうだから強制ストップだ。
はいはい、点検に戻りますよ〜っと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コウスケ「…で、ここで一旦挑戦してみるわけか……」
リオ「あぁ……手入れはしとかないと大変だからな……」
みんなで見てみて、リオに最終チェックをしてもらって、一通りの点検は無事に終わった。
で、道具といえばアイツも点検しないわけにはいかないのだ。
そう、金槌である。
リオのトラウマ。
かすかに震えるリオの体が、アレを怖がっていることを証明している。
リオ「大丈夫……大丈夫……」
ショコラ「リ、リオ……?」
リオ「今日こそは触る……ずっと手入れしてないんだから、いい加減手入れだけでもしないと……」
……ダメだな。
ショコラちゃんの声が届いてない。
コウスケ「リオ」
リオ「ふぅ…ふぅ……」
マグの声でも反応なし…と。
よし、ドクターストップ。
今回はあまり刺激しないように、いきなり触ることはせずにリオの視界に入るところから始めてみる。
リオ「っ……マーガレット……」
そうしたら反応してくれた。
よかった。とりあえず一安心。
んじゃあ次は金槌を視界から外す。
コウスケ「ほら、私を見て。まっすぐ、こっちだよ…」
リオ「あ、あぁ……」
ゆっくりと視線を誘導し、リオを体ごと横を向かせることに成功した。
リオ「マーガレット……」
コウスケ「ん」
リオ「……(ぎゅっ)」
弱ってしまったリオに向かって手を広げると、リオは俺の胸に静かに顔を埋めてきた。
そんなリオのポフポフあやすように叩きながら彼女の回復を待つ。
ショコラちゃんも、何も言わずにリオの背中を優しく撫でて宥めてくれている。
ありがたい。
さて、その間俺はマグとちょいとお話をする。
コウスケ(ふむ……)
マグ(リオ…やっぱりまだダメそうですね……)
コウスケ(そうだね。昨日はやれそうな気がしたらしいけど、今のは若干やらなきゃ感が強かったかなぁ……)
マグ(それだとダメなんでしたよね……?)
コウスケ(うん。出来れば自分から進んでやってほしい。その方が後腐れが無いからね)
他人にやらされて克服したとする。
そうなると確かに回復もしてるし本人に任せるよりも早い。
でもその過程が辛い。
下手したらそこで新しいトラウマを植え付けちゃうかも……。
…まぁつまり、リオに何かあったときのことが怖いのだ。
それにリオの味方となってる俺が、今さら強引に押してリオを苦しめたら、俺とリオの関係が悪くなるだけじゃなく、もしかしたら彼女が友人に対して何かしらの不信感を持ちかねない……かもしれない……。
深読みかもしれないが、なんにせよリオが苦しむ姿を見たくないから、強引な手段に出たくないのだ。
…どうするのが正解なんだろうな……。
未だに分かってないが……とにかく彼女に寄り添って、リオが遠慮なく甘えられる相手になってあげよう。
出来れば甘えるのとお仕事のメリハリがしっかりしてくれたらもっと嬉しいんじゃが…まぁこれは俺の要望だな。
でも甘えすぎてダメになりそうだと思ったらさすがに俺も心を鬼にして注意するつもりだ。
……あれだな。
こんなときにあれだけど、「心を鬼に…」とは言うものの、実際の鬼さんに昨日一昨日出会って友だちになった身としては、ちょっと違和感を感じてしまうな……。
何か他のやつに言い換えれるかな……?
う〜ん……
リオ「んぅ……」
ん…リオが頭を胸に擦り付けてきた。
これはもっと撫でてほしいという合図だな。
リオが積極的に甘えてくれるようになってから、なんとなくこういうのが分かってきた俺である。
そういうわけで、俺は彼女の頭を優しくなでなで〜…なでなで〜……。
リオ「……♪」
よし、正解。
なんとなく分かってきた…とはいえ、実際に当たっているかどうかを確認するまではやっぱり不安な俺でした。
まぁそれはさておき。
ある程度リオに余裕が出てきたみたいだから、少しこの後の予定を詰めとくか。
コウスケ「さてさてリオさんや。とりあえず金槌はまだ保留として…次は何をしてるの?」
リオ「ん……点検を終えたら、次は材料の確認だな……作ってる途中に数が足りない…なんてことになったら悲惨だからな……」
コウスケ「あぁ…それは…確かに……」
料理とかでも、作り始めてから「あっ、あれがない」って気付いたりするとちょっと慌てるからな……。
確認は大事だな。
…ちょっと例えが違かったかな?
まぁなんにせよ確認大事。超大事。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
何事も終わったので次の作業を聞いてみる。
コウスケ「次は?」
リオ「あ〜……次は…その……」
何やらリオが顔を伏せてしまった。
何か言いづらいことなのか……。
あぁ、わかった。
コウスケ「着替えか」
リオ「違う」
違った。
リオ「そうじゃなくて…材料と道具の確認が終わったら……」
ショコラ「終わったら?」
リオ「…その…鍛治の作業に入らなきゃなんだけど……そのためには……」
そう言ってリオはチラッと炉の方を見た。
コウスケ「?炉がどうかしたの?」
リオ「えっと……実は……オレ…………」
マグ(…?どうしたんでしょう、リオ……?)
俯いて黙り込んでしまったリオの様子に、マグが疑問を投げかけてくる。
う〜ん……。
何かを打ち明けようとしてて……炉の方を見たってことは多分そっちの方に関係が…
マグ(あっ……)
と、そこでマグが閃いたようだ。
コウスケ(わかったの?)
マグ(えと…多分ですけど、リオは炉も怖いんじゃないでしょうか……?)
コウスケ(炉が……?)
マグ(はい……その…リオはやけどもしてましたよね……?)
コウスケ(うん……ってそっか!)
考えてみればすぐにわかりそうなことだった。
リオは金槌を落としたことによるものであろう骨折と、なんかめっちゃ皮膚が爛れたってジルさんが言っていた……。
さすがに炉に入っちゃったとかではないだろうが、多分熱した金属が当たっちゃって…とかその辺りだろう。
だがそれでも炉の高熱が要因の1つなのは間違いがない。
だからリオは、炉にも苦手意識が芽生えてしまっていたのだろう。
だが、そのことは言わずに金槌が握れないことだけを嘆いていた。
金槌の方が大事なのか…それとも、すでにあれもこれも苦手だなんて言いたくなかったとかなのか……。
…まぁいずれにしろ、リオが弱っているのなら、俺がやることは彼女を元気付けてあげることだ。
コウスケ「リオ。ほら、こっちおいで」
リオ「っ…………(こくり)」
俺が再び手を広げてリオを呼ぶと、リオは少し逡巡してから小さく頷き俺の元へ来た。
そんな彼女を優しく抱きとめ、背中をポンポンしながら静かに話しかける。
コウスケ「いいんだよ、リオ。むしろ少し考えればわかることだったのに気付いてあげられなくてごめんね」
リオ「……(ふるふる)」
コウスケ「ん…お詫びというにはいつもやってることで申し訳ないけど、気の済むまでこうしてていいからね」
リオ「……(すりすり…)」
コウスケ「ん…♪いい子…♪」
今回はちょっと言いづらかっただけっぽい?
まぁそういうことなので回復も早かった。
すりすりと胸に擦り付けて甘えてくる彼女に微笑みながら、俺はまたリオを撫でる。
と、それを横で見ていたショコラちゃんが話しかけてきた。
ショコラ「リオ」
リオ「んぅ…ショコラ……?」
ショコラ「リオ……いくらマグにぎゅってされるのが気持ちよくても、寝ちゃダメだよ?」
リオ「い、いや…さすがに寝はしないって……」
ショコラちゃん……。
今一応立ってるから、寝ることはないんじゃないかな……?
リオ「確かに油断するとこのまま寝たくなるけど……」
なるんかい。
マグ・ショコラ(「わかる〜」)
わかるんかい。
ショコラ「そういうときはもっといっぱい甘えよう!って思えば起きれるよ!」
そういうもんなの?
リオ「なるほど……」
マグ(確かに)
理解したの?
リオ「えっと…マ、マーガレット……」
コウスケ「……」
いやわからん。
理屈は全然わからんが……
コウスケ「…まぁ…好きなように甘えてくれるならなんでもいっか」
リオ「!」
ショコラ「やったー!マグ大好き〜♪」
コウスケ「うぉっと!」
リオ「わっ!?」
危ない危ない!
飛びつかないでショコラちゃん!
リオ「ショコラ……暴れちゃ危ないって……」
ショコラ「あっ、ごめんね…嬉しくなっちゃってつい……」
リオに注意されてしょんぼりするショコラちゃん。
う〜ん……やっぱりこういうのには弱いなぁ……。
コウスケ「…あ〜……うん…そうだね。危ないから、抱きつくときはゆっくり、やさ〜しく、ね?」
ショコラ「っ!ゆっくり、やさしく……うん、わかった!」
ニパッ☆と明るい笑顔で答えるショコラちゃんに、俺はフォローしてよかった〜…と満足した。
リオ「…マーガレットはオレも含めてだけどみんなに甘すぎるぞ?下手したら大ケガするんだからな?」
コウスケ「う、ういっす……」
そったら怒られた。
言葉の重みが違う……。
と思ったら…
リオ「まぁ…だからこそこうやって甘えてるわけだし……そうゆうとこも好きだし…別に無理に直さなくてもいいんだけどさ……?」
なんてボソボソ言ってくれた。
強化魔法を使って体のあちこちを強化しているので、普通なら聞き取れないような小さい声も、強化されたマグさんイヤーはバッチリゲッチュしたのだ。
それはともかくとして……なんだこの可愛い生物は?
撫でるぞ? (もう撫でてる)
リオ「うお……な、なんだよマーガレットぉ…♪」
コウスケ「いやぁ別にぃ?」
リオ「なんだそりゃ……♪」
ちょっとグシャッとなるぐらいのやや乱暴ななでなでを、リオは文句を言いながらも嬉しそうに受け入れる。
は〜…そういうとこだぞ〜。
が、ここにはもう1人、なでなで大好きワン娘がいるのだ。
ショコラ「ショコラもそれやって〜!」
コウスケ「あいよぉ!(わしゃわしゃ)」
ショコラ「きゃ〜♪」
嬉しそうな悲鳴をあげて大喜びするショコラちゃん。
耳と尻尾がピコピコブンブン嬉しそうにはしゃいでいる。
はぁ〜可愛い。
周りに尻尾が当たりそうな物がないから安心して撫でてあげられるしいいわ〜、ほんと。
なんて部屋の一点で固まっていると、コンコンッと扉が叩かれた。
その瞬間バッと俺から離れ…たけどすぐ隣には立ったリオが返事をする。
なおショコラちゃんは一切離れる様子はなかった。
リオ「ど、どうぞ?」
シエル「おじゃましま〜す…って…や、やってるわね……」
部屋に入ってきたのはシエル。
シエルはベッタリくっついている俺とショコラちゃんを見て若干呆れた様子でそう言った。
えぇ、どうも。
変わらずやっておりますよ〜。
そんな俺は見逃さない。
シエルがショコラちゃんを撫でている俺の手をチラチラ見ていることを。
…まぁ、まったく隠せてないので多分リオも気付いてる。
マグ(すごい羨ましそうですねぇ♪)
マグにももちろんバレている。
リオ「そ、それで?シエルはいつも通りか?」
シエル「え、えぇ。魔法薬の勉強をこっちでしに来ただけよ?」
リオ「そ、そっか…………じゃ、じゃあさ……」
シエル「?」
リオ「えと……い、一緒にマーガレットに甘えないか?なんて……」
シエル「へっ!?」
コウスケ・マグ((おぉっ?))
あのリオが。
いつも甘やかす俺を見守る感じだったリオが!
自分から甘えようと言ったどころか、他の人を誘うだなんて!
マグ(成長…しましたね……!)
コウスケ(えっ…あっうんそうだね……)
成長かどうかは怪しい気がするけども、初めとはだいぶ変わったとは思う。
それに対して…
シエル「そそそそんな子どもっぽいことしないわよ!?で、でも?どうしてもって言うなら考えてあげなくもゴニョゴニョゴニョゴニョ……」
落ち着こうシエル。
とまぁいつもなら、わかりやすすぎるシエルの態度にみんな微笑みながら誘ってあげるわけだが、リオはちょっといじわるを仕掛けた。
リオ「う〜ん、そっかぁ……じゃあオレだけお願い、マーガレット」
シエル「えっ!!?」
爆音波やめてシエル。
そして必死に抑えてるけど、笑ってるの気付いてるからねリオ?
シエル「うぅ〜……!」
あぁほら、シエルが泣きそうな顔でめっちゃこっち見てるよ?
どうすんの?とリオを見ると、俺と目が合ったリオはパチン☆とウインクをした。
俺に丸投げですかそうですか。
ウインク上手いねキミ。
俺未だに自信ないよ。
と、そんなことより一芝居っと。
コウスケ「えぇ〜?シエル来ないのは寂しいなぁ〜」
シエル「っ!(パァァ!)」
眩しっ。
良い笑顔だわ……。
シエル「しょ、しょうがないわね〜♪そういうことならアタシもしてあげないとね〜♪」
なんて上機嫌になるシエルを見て思った。
コウスケ・マグ((ちょっといじわるしたくなる気持ちわかるな〜))
マグもそうらしいので、今度ちょっとやってみようかな?
あっでも、本気で悲しむかもしれないな……。
俺はやめといてあげるか。
コウスケ「じゃっ。ショコラ、くっついてていいから2人と代わってあげて」
ショコラ「は〜い♪」
ショコラちゃんは元気なお返事をして俺の背中側に移動した。
ほんとにくっついたまんま移動した。
そして空いたスペースに2人がくる…と思っていたのだが、何故か2人は近くに寄ってきただけで俺のなでなでゾーン (手の届く無理のない範囲)には来ない。
コウスケ「どしたの?」
シエル「え、えっと……」
リオ「その…だな……」
コウスケ「?」
首を傾げる俺に、背中に抱きついているショコラちゃんが答えを教えてくれた。
ショコラ「2人はマグに呼んで欲しいんだよ〜♪」
リオ・シエル「「っ!」」
コウスケ「えっ?そうなの?」
マグ(あ〜、なるほどぉ)
マグはこれだけでわかったらしい。
ショコラ「あのねあのね!マグに「おいで♪」ってされるとすっごく嬉しくなるの!だから「おいで♪」ってしてほしいんだよ!」
コウスケ「そうなの?」
マグ(そうです!)
リオ・シエル「「……(そわそわチラチラ)」」
そうらしい。
あ〜…
コウスケ「それじゃあ……2人とも?」
リオ・シエル「「っ……」」
コウスケ「…おいで?」
リオ・シエル「「……♪」」
わぁ。
これまた可愛らしい笑顔を浮かべて懐に潜り込んできたぞ〜。
リオ・シエル「「……♪(じ〜)」」
そして期待の眼差しを向けてくるぞ〜。
可愛い奴らめ。こうしてやる!
ちょい強めにわしゃわしゃ〜!
リオ「あっ、こら!やめろよ〜♪」
シエル「きゃあ!もっと優しくしなさいよ〜♪」
なんて言いつつ嬉しそうにする2人。
そして2人を撫でる俺の背後に抱きついているショコラちゃんは顔をぐりぐり〜っと俺の背中に擦り付けてくる。
ショコラ「すんすん…んふ〜♪マグの匂い〜♪」
ちょっ、さすがに嗅がれるのはまだ恥ずかしい…
ショコラ「ショコラマグの匂い好き〜♪すごく良い匂いする〜♪」
ふふ〜んそうでしょうそうでしょう?
なんでかマグは良い匂いするのだよ♪
コンコン
リオ・シエル「「っ!!?(びくぅっ!)」」
と、そこで再びノック音。
と共にパッと体を離す2人。
相変わらず動じないショコラちゃん。
リオ「どどどどうぞ〜?」
シエル「良いとこだったのにぃ……」
リオがどもりまくり、シエルが恨めしそうに扉を見つめる中入ってきたのは…
サフィール「失礼しま…あっ、いいなぁ……ハッ!こほんこほん……」
コウスケ・マグ・リオ・シエル「(「「……」」)」
どうやらこのなでなでイベントはまだ続くようだ。
いや〜、まいったな〜。(棒)
毎日暑くて大変ですね……。
クーラーがあるのでいいですが……機械はそう入ってられません。
心なしかフリーズが多い気がします。
おのれ夏。
お話のネタとしては宝庫な季節なんですけどね、夏。
そんな夏の暑さに負けないよう、また来週まで頑張ります。
ではでは。




