247.ヤマト文化…と尊みと暴走狐
両手を上げて大喜びしたせいで、通信が終わったあとダニエルさんたち隠密ギルドの人になんかあったかい目で見られたが気にしない。
事情を教えたらユーリさんも「地元の味〜♪」と喜んで、それも「よかったねぇ」みたいな目で見られたがもちろん気にしない。
でもユーリさんは気にした。
まぁとにかく、午後には到着する予定らしいので、それまでは予定通りゆっくりさせてもらおう。
そうしてのんびり帰宅し、寮のみんなにいろいろと報告。
そしてお昼になったところで、護衛云々関係無しに故郷の品が見たいユーリさんと、朝置いてったのを地味に気にしてるっぽいリオ (本人は無自覚らしい)、そんなリオと遊んでたが同じく若干不満げ (むしろ利用して甘えてきた策士)なメリーと一緒に白兎亭へ向かった。
ちなみにメリーの日傘はリオが持った。
リオってばお姉ちゃんしてるぅ。
さてさて、白兎亭に着いたものの、そこにチェルシーの姿はなかった。
多分ハルキと一緒に来るのだろう。
なのでとりあえず他のみんなとお昼を食べながらその話をすると、予想通り食い付いた。
ショコラ「ユーリさんの故郷のモノか〜。どんなのだろ〜?」
シエル「ヤマトの国の品物かぁ……う〜ん…行商に出せそうな物だと……」
パメラ「シエル。せっかくだからお楽しみに取っておこうよ♪」
シエル「それもそうなんだけど……でもどうしても考えちゃうのよね〜」
サフィール「考えるのも楽しいですからね〜」
パメラ「あ〜、わかるかも」
モニカ「ヤマトの国の食材ってどんなのかな?」
ユーリ「ふふふ、それもお楽しみ♪でも多分気にいると思うよ♪」
メリー「……あんな風にぽいんぽいんになれる料理があるのかな……」
リオ「ど、どうだろう……とりあえずそれはパメラには言うなよ……?また発狂しかねないから……」
メリー「……ん(こくり)」
なんて盛り上がっていた。
かく言う俺たちもめちゃくちゃ楽しみにしている。
マグ(コウスケさんコウスケさん。ご飯を食べる手が止まってますよ?)
コウスケ(ん?あぁ、ごめんごめん)
マグ(そんなに楽しみ…なんですよね。コウスケさんにも馴染みの深い食べ物が来るかもしれないんですから)
コウスケ(いや〜、ここでの食事も美味しくて満足してたんだけど、やっぱり懐かしのあの味があるって聞いちゃうとね〜)
マグ(う〜、気になるぅ……私も早く見たいな〜、知りたいな〜……!)
なんてソワソワしていた。
だがまぁそれはそれとして、白兎亭のご飯はしっかり堪能した。
いつもお世話になってます。ごちそうさまでした。
さて、そんなわけでお昼を食べ終えた我々はモーリッツさんのお店へ向かう…前に、一度冒険者ギルドへよってチェルシーたちがいないかを確認。
リンゼ「チェルシーさんでしたら、ハルキ様とご一緒にモーリッツ様のお店へと向かいましたよ」
コウスケ「えっ!じゃあもう荷物が到着していると言うことですか?」
リンゼ「はい」
コウスケ「わかりました、ありがとうございます!」
リンゼ「いえ。では、お気をつけて」
というわけで今度こそモーリッツさんのお店へ向かう。
しばらく歩き、モーリッツさんのお店が近くなってきたところで、急にモニカちゃんが俺の服をつまんできた。
コウスケ「どうしたのモニカちゃん?」
モニカ「う、う〜ん……よくわからないんだけど…なんだか不安…なのかな……?」
かな?と言われましても。
まぁモニカちゃん1人がくっついてきたところで別に困ることは無いしいいんだけどね。
だってもう両手をサフィールちゃんとシエルと繋いで埋まってるし。
なんなら今までもっともみくちゃにされたことあるし。
今さらだよ今さら。
だから気にしなさんな。
と言ったらマジでみんなくっついてきてもみくちゃにされそうなので、それとは別の言葉を口にしといた。
コウスケ「なら、もうちょっとくっついてもいいよ?」
モニカ「!…えと…じゃ、じゃあ……(ぽふっ)」
うん、モニカちゃん。
くっついてもいいとは言ったけど、背中に顔埋めちゃ歩きづらいでしょ?
歩きづらくない?
モニカ「……♪(すりすり)」
そんなこと気にならねぇと。
なるほどね。
じゃあもういっか。
パメラ「あっ……」
と、そこでパメラちゃんが声を上げる。
そしてなんだかソワソワし出した…って、ショコラちゃんもピクッてした。
ショコラ「マ、マグぅ……」
パメラ「えと…私たちもくっついていい……?」
そしておねだりと。
え〜っと……私さん、ほぼ定員オーバーと言っても差し支えないと思うんですけど……
ショコラ・パメラ「「……(ソワソワ)」」
コウスケ「…あ〜……どこくっつく?」
ショコラ・パメラ「「…!(パァァ!)」」
断れないよなぁ〜……。
パメラ「じゃあモニカちゃん、隣いい?」
ショコラ「あっ…ショコラも、ショコラも〜!」
モニカ「うん、いいよ。私の方こそ、くっついてほしかったし…♪」
なんで?
ねぇ、なんでみんな背中行くの?
ショコラ「えへ、ぎゅ〜♪」
パメラ「ぎゅ〜♪」
モニカ「えへへ♪ぎゅ〜♪」
なんで俺の背中で尊い波動出してんの?
せめて前来ない?
笑顔見たいんですけど?
もはや諦めてそんなことを考え始めた俺に、マグが冷静な口調で尋ねてきた。
マグ(う〜ん……?3人ともどうしたんでしょう?)
コウスケ(ん…う〜ん……)
おかげで冷静になれた。
ふむ…3人とも、いつもみたいなただくっつきたかったから、って理由では無いのはなんとなく分かる。
じゃあなんで?というのが問題なんだけど……。
う〜ん…とりあえず他の子はどうかな?
コウスケ「メリーは?大丈夫?」
メリー「……うん。何も感じない(こくり)」
リオ「オレもだな。そっちはどうだ?」
シエル「アタシも何も」
サフィール「私もです」
ユーリ「…私は分かる」
みんな『えっ?』
静かにそう言ったユーリさんに、みんなの視線が集まる。
ユーリさんは道の先…俺たちが向かっている方をジッと見ている。
コウスケ「……何かいるってことですか?」
ユーリ「うん、何かはいる。でも敵意は無いし…むしろ友好的?」
コウスケ・マグ「(えっ)」
じゃあそれじゃなくない?
ユーリ「う〜ん…でもこの存在感は絶対にアイツなんだよねぇ……」
コウスケ・マグ「(アイツ?)」
ドイツ?
ユーリ「…この先に…というより、これから行くお店の前に馬っぽい何かがいるの。多分ソイツの存在感を感じて落ち着かないんじゃないかな?」
コウスケ「ふむ……?」
存在感……う〜ん、ダメだ。
やっぱり何にも感じない。
サフィール「あっ、もしかしたら……」
コウスケ「ん?何か心当たりがあるの?」
サフィール「いえ、存在感の主のことはわかりませんが……獣人族は、人族よりも優れた感を持っていますから、本能的に何かを感じてソワソワしてるのではないかと思っただけで…すみません…紛らわしいことを……」
コウスケ「いやいや、そんなことないよ。むしろソワソワの理由が分かってスッキリしたし。ありがとうね、サフィールちゃん」
サフィール「あっ……はい、どういたしまして…♪」
マグ(じゃあさらに安心させるためにサフィールちゃんにもぎゅっとしてもらって…)
コウスケ(マグ?)
マグ(だって絶対安心させることができるじゃないですか!)
コウスケ(折れなくなったね君)
言ってることは一理あるんだけど、下心も混じってるからイマイチ頷きづらいんだよなぁ……。
まぁ一理あるから行動は起こすけどさ。
俺はサフィールちゃんと繋がっている手をちょこっとニギニギしてアピールしてみる。
サフィール「……♪」
どうやら成功なようで、サフィールちゃんもニギニギして答えてくれた。
……ちょっと手付き違くない?
サワサワモミモミでくすぐったい感じなんですけど?
しかもいつの間にか指を絡ませてきて恋人繋ぎに移行してるんですけど?
サフィール「♪〜(パァァッ)」
あ〜はい可愛い可愛い許す許すも〜許す。
すんなり受け入れた俺が言うことでもないしな。
うん、しゃーないしゃーない。
と、どうにか落ち着いたところで、歩きづらいのを我慢して、あと柔らかい感触も我慢して、俺たちは再び歩を進める。
そしてしっかり視認できる距離まで来た俺たちは、揃ってソイツらを見てひと言。
みんな『(……何あれ……?)』
ユーリ「う〜ん……近くで見てもやっぱり初めて見るやつだなぁ……」
だいぶ前から見えていたユーリさんを除き、俺たちはただただ目の前のソイツらに圧倒されていた。
敵意は無い。危険も感じない。
でもひたすらに気になる。
コウスケ「馬…っぽい…けど……ねぇ……?」
シエル「か、形は馬…よね……?」
ショコラ「おうまさん…だねぇ……」
メリー「……ウマってあんな黒いの……?」
リオ「あ〜…黒いのはまぁ…いないことはない…けど……」
パメラ「ツノ生えてるねぇ……」
サフィール「は、生えてますけど…ツノくらいなら珍しいことじゃないですよきっとえぇ……」
パメラ「あっ…う、うん、そうだね。ツノは珍しくないね、うん」
モニカ「でも…それじゃあやっぱりあのウマさんは、普通のウマさんじゃない…よね……?」
サフィール「ツ、ツノが生えてても普通の馬はいますよ……!」
モニカ「あっ…そ、そうだね…ごめんね……」
……とりあえずサフィールちゃん落ち着かせよう。
コウスケ「大丈夫だよサフィールちゃん。ツノが生えてるくらいなんてことないんだってみんな分かってるよ」
サフィール「あっ…そ、そうですよね……ごめんなさい…取り乱しました……」
コウスケ「ん。まぁもしあれなら私がツノ着けるけど」
サフィール「えっ…な、何故……?あ、でも見てみたい……」
そうかー、見たいかー。
じゃあやるしかないな!
コウスケ「よぉし、それじゃあさっそく…《【雷よ】、[カッコ可愛いツノ]ください!【 纏雷】!》」
サフィール「それ詠唱文としてどうなんですか!?」
そんな疑問を受けた俺の額から、可愛らしい小さなツノが2つ生え、前髪からちょこんと飛び出した。
コウスケ「いけたわ」
サフィール「いけるんですか!?」
まぁ無詠唱でもいい系な人類なので。
パメラ「わっ、可愛い〜♪」
モニカ「うん!すごく可愛いよ、マーガレットちゃん!」
コウスケ「ほんと?ありがと〜♪」
まぁ当然。
だってマグはかぁいーかんなっ!(ドヤッ)
他の子からの反応もバツグンだし、これまたいつかモデル頼まれたときにやってやろうか。
いろんなツノを試してみて、さりげなくサフィールちゃんの小悪魔ホーンも混ぜ込めばワンチャンいけるんじゃないか?
う〜む…しかし……とりあえず《纏雷》って言っといたけど、ツノ着けるだけならそれ用の簡単な魔法の方がいいかもなぁ。
名前物騒だし。
割とどうでもいいっちゃどうでもいいことではあるけどさ。
さてさて、ツノを生やした俺なわけですが、何故か目の敵にされるらしいサフィールちゃんの小悪魔ホーンっぽい円錐三角形をしている。
だがこれはどうだろう。
生えてる場所がちょっと違うだけで小悪魔感は薄れ、どちらかと言えば…
ユーリ「可愛いねぇ♪ちょっと鬼人族っぽい?」
コウスケ「はい、ちょっと意識してみました♪」
そう、鬼っぽい。
小鬼っぽいのだ。
鬼人族なら少数ながらこの街にもいるし、このツノなら表に出しても問題は無いだろうと思ったからだ。
……う〜む……
コウスケ「なんで鬼人族とか他の種族のツノは良くて、悪魔族のツノはダメなんだ……?」
ユーリ「あぁ〜……多分宗教が問題なんじゃないかな……?」
コウスケ「宗教……」
たったひと言でここまでゲンナリする言葉もそうそう無い…こともないな。
残業とか、税金とか、エラーとか、人間関係とか、月曜日とか……うん。
やっぱウチの世界ヤバいわ。
サフィール「そうですね……《セインディア様》は光の神様……対して悪魔族は基本的に闇の神様、《ダラス様》を信仰する方が多い…そうです……こっちにきてから知ったので、あまりピンと来ませんけど……」
コウスケ「ふむ……」
マグ(光と闇……確かに仲悪そうですね……)
コウスケ(まぁねぇ……でも、光あるところに闇があり、闇があるからこそ光があるわけだし、もしかしたら神様同士は仲良かったりするかもよ?)
マグ(おぉ〜…さすがコウスケさん……!確かに光も闇も、片方が無いと分かりませんもんね……!う〜ん…でも、神様同士が仲が良いとしたら…それってつまり、人が勝手にアレコレ言い始めて、勝手にケンカしてるかも…ってことですよね?)
コウスケ(そうだねぇ)
マグ(……ちょっっとなんとも言えないですねぇ……)
コウスケ(世知辛いねぇ……)
ありえないって言い切れない世の中。
もっとしっかりしろよ大人。
俺もどうにか頑張るから。
しかしそうなると、モデル仕事でツノお披露目はやめた方がいいか。
無用な争い起きそうだし、それが商業ギルドへのクレームとして向かいそうだし。
よっぽど会社側がヘマしたわけじゃない限り、基本的にクレームって嫌がらせの部類だと思ってるんだよねぇ……。
普通に業務妨害だし。
文句があるならイヤホン外せスマホから目を離せ人の話聞けっていうかちったぁこっちのことを考えろ機械相手にしてんじゃねぇんだぞと、こっちにも言い分はあるし。
まぁそんなアホどものことなんか置いといて、とりあえず宗教のお話でまたちょっと元気が無くなっちゃったサフィールちゃんを再び元気付けるために手をニギニギしつつ、俺たちはツノの生えた馬へと近づく。
言っておくと、もちろん俺たちはツノが生えてるくらいで困惑はしない。
サフィールちゃんがいるし、さっき言ったようにツノの生えた種族も多少なりとも見たことがある。
じゃあなんでこんな団子状態になるような事態になったのかというと…
ユーリ「それにしても……やっぱり凄いね…この筋肉……」
シエル「はい……普通の馬よりもひと回り大きいくらいなのに、筋肉が倍以上ある気が……」
はい、筋肉です。
なんかやたら凄い筋肉をお持ちです。
脚がごんぶとです。
控えめに言って若干怖いです。
ちなみに、ちゃんと胴体もゴツくなってます。
乗りづらそう……いや、逆に乗りやすいかも……いややっぱり乗りづらいかな……?
ウマA「ブルルル…」
ウマB「……」
…鳴き声は変わらないのね……。
なんて考えながらお店の戸を開ける。
チェルシー「あっ!マギーちゃ〜ん♪」
コウスケ「ん?あぁチェルシっ!?」
サフィール「ひゃっ!?」
シエル「きゃあっ!?」
モニカ「ふぇぇ!?」
ショコラ「わわっ!」
パメラ「危なっ!?」
お店の中にいたチェルシーのあいさつタックル。
団子の中心にいる俺はダメージを受け吹き飛びかけたが、後ろにモニカちゃんとショコラちゃんとパメラちゃんがいたので支えてくれて、倒れることは免れた。
生じたダメージも、すかさずサフィールちゃんが治癒魔法をかけて治してくれた。
サフィール「か、《【かの者】の[痛み]を【和らげよ】、[ヒール]》!大丈夫ですか、マーガレットさん……?」
コウスケ「ありがと〜、サフィールちゃ〜ん……」
シエル「も〜!危ないでしょチェルシー!」
チェルシー「えへへ、ごめんね〜♪」
まったく反省しとらん。
まぁほぼ毎日の恒例行事みたいなもんだからだいぶ今さらな感想だけど。
と、チェルシーがいるなら…
ハルキ「やぁ、相変わらずモテモテだね、マーガレットちゃん」
モーリッツ「久しぶりだねお嬢ちゃん。新聞とか噂話とかで毎日のように話は聞くから、僕は正直久しぶりって感じはしないけどさ」
コウスケ「お久しぶりですモーリッツさん。そしてこの傷害現場を見てその感想のハルキさんはちょっと呪われてください」
ハルキ「ははは、酷い言い草だ」
コウスケ「爪から割れた感じのささくれ出来てください」
ハルキ「やめてください、地味に痛いし気になっちゃいます」
やっぱりハルキがいた。
そして久しぶりモーリッツさん。
お店はほぼ休止状態だったし、俺もいろいろ忙しかったから顔が出せなかったんだよな。
あとシンプルに用がない。
が、今後はちょくちょくここに来ることだろう。
何故なら…
コウスケ「それでモーリッツさん。ヤマトに行ってた商隊が帰ってきたって聞いたんですけど!」
モーリッツ「あぁ、ほんのついさっきね。今は荷物を下ろしてそれぞれの保存方法に適した場所に移してるところさ。ほれ、これが今回卸した物のリストだよ」
コウスケ「おぉ!」
モーリッツ「はい、ハルキさんも」
ハルキ「ありがとう」
モーリッツさんからリストをもらい、そこに書かれている品名に目を配らせる。
目を配らせ…
みんな『……(じ〜)』
コウスケ「モーリッツさん」
モーリッツ「うん」
コウスケ「もう1枚ありますか?」
モーリッツ「うん、必要だろうなとは思った。はい」
コウスケ「ありがとうございます」
俺の持った紙をみんなで見るのは無理があると思うの。
なおチェルシーはハルキにべったりくっついて見てた。
お熱いことで。
あとモーリッツさん。
思ったのなら…最初からちょうだいよ。
まぁそのことは置いといて、もらった紙をとりあえず隣にいたシエルに渡してリストに目を通す。
コウスケ(お米とかの食料品に…おっ、扇子もあるのか。それに…おぉ!刀!本場の刀まであるのか!)
マグ(コウスケさんコウスケさん。センスってなんですか?)
コウスケ(ん、扇子っていうのは、折り畳み式の団扇みたいなものかな)
マグ(ふむふむ)
コウスケ(俺の知ってるやつだと、結構オシャレなやつもあるから、ちょっと見てみる?)
マグ(はい!お願いします!)
ユーリ「あっ!」
みんな『わっ!?』
唐突に後ろから大きな声が発せられてめっちゃビビった。
ユーリ「あ、ご、ごめんね?」
コウスケ「いえ…それよりどうしたんですか?」
ユーリ「あ、うん、あのね!」
マグ(おぉ)
コウスケ「は、はい……」
叫んだ訳を尋ねた俺に元から近かったのにさらにズイッと顔を近づけてくるユーリさん。
マグが声を上げたのでわかると思うが、ふにふにが当たってる。
が、そんなことより…
ユーリ「あのねあのね!」
マグ(おぉぉ)
コウスケ「は、はい……///」
ユーリさんの顔が近すぎることが問題だ。
ほんの少し顔を動かせばキス出来そうな距離まで近づいているのだ。
元から青少年に悪影響を与えそうな美貌と、信頼した相手に対するバグった距離感と天然な性格で数多くのファンを持っている (本人は知らない…はず)ユーリさん。
いくら毎日のように一緒に寝てたとはいえ……寝てた……そうじゃん寝てたじゃん。
このぐらい今さらじゃん。
なんか緊張無くなってきたわ。
ユーリ「見て見て!ここ見て!」
コウスケ「あっはい」
なんかめっちゃ興奮した様子で話そうとしているユーリさんとは対照的に、男としてどうなのと思いながらもなんか落ち着いちゃった俺。
とりあえず大人しく彼女が指す場所に目を移すと、そこには《大豆》と書かれていた。
マグ(オオマメ?)
コウスケ(オオマメと書いてダイズと読むのだ)
マグ(へぇ〜)
コウスケ「で、これがどうかしたんですか?」
ユーリ「大豆だよ!?」
コウスケ「えっあっはいそうですね」
ユーリ「お揚げが無くてちょっとしょんぼりしたけど、大豆があれば自分で作れるんだよ!?」
コウスケ「へぇ……」
お揚げってやっぱ大豆が原料だったんだぁ……。
コウスケ「えっ?ユーリさん作れるんですか?」
ユーリ「当然!ヤマト女性の嗜みだよ!」
ほんとかよ。
そうツッコミたかったが、ユーリさんのあまりの熱意に押され…
コウスケ「そ、そーなのかー……」
という言葉しか口から出なかった。
ユーリさん……どんな生活してたんだろう……?
いなり寿司…なんか食べたいな〜って思うときがあるんですけど、何個もはいらないから買うのをちょっと躊躇う…そんな食べ物。
たまに普通にお昼として食べます。
基本ちょっと物足りないで終わるという。
ままならない。
ではではまた来週で。




