228.ドワーフ少女の葛藤…と決意
前回忘れたので今言います。
あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いしまっす!
〔リオ〕
【同日の朝 リオの自宅】
その日は朝からどうも変だった。
起きたときは普通だった。
なんならむしろ快調だった。
前日にマーガレットたちとたっぷり遊んで、明日からまた頑張るぞ!っと意気込んでまでいた。
朝ご飯のときには、オフクロに応援されてもっとやる気が出たし、入院中に来たときはいつもの威勢が嘘のように無くなって謝ってきたオヤジとも、いつもみたいに軽口を叩き合ってお互いにオフクロに怒られた。
少ししか離れてなかったのに、その時間がとても楽しくて、オレはもっともっと頑張ろうとやる気が溢れていた。
なのに、鍛治ギルドに入ってから…いや、扉を開けて、中から聞き馴染んだ槌の音が耳に入ってからが変だった。
聞き馴染んだはずのその音に、体がゾワッとしたのだ。
最初は何かと思ったが、炉や鉄床を視界に入れたときに、背筋が寒くなったことで勘付いた。
オレは鍛治を恐れているのでは?ということに。
いやいや…そんなわけがない。
オレは昔っからこの音を聞いていたし、心地良いとまで感じているのだ。
炉と鉄床だって、自分の成長に合わせた練習台をオヤジがわざわざこしらえてくれて、それで時間を忘れて延々作業をしてオフクロに怒られたこともあるほどだ。
それが槌の音を聞けば体が強張り、炉と鉄床を見れば寒気が走るなんてそんな……そんな……うん……。
…実際に体が反応しちまってる時点でなぁ……。
いや…まだだ……。
まだ決めつけるのは早い……。
それに、仮にそうだとしても、だからって今さら鍛治から離れるなんて出来ない。出来るはずがない。
そうだ…そのはずだ……。
オレはうっすらと嫌な汗が噴き出るのを感じながらも、どうにか自分の作業台へと向かう。
ギルドメンバーA「おっ、リオちゃん!無事に退院できたんだな!」
メンバーB「リオちゃん!もう体は大丈夫なの?」
リオ「あっ…はい。ご心配をおかけして申し訳ございませんでした」
途中でギルドの人たちが声をかけてくれる。
そのおかげか、オレの心はだいぶ落ち着いてきた。
…のはいいんだけど……
メンバーC「気にすんなって!それより、本当にもう大丈夫なのか?」
メンバーD「うんうん。もう1日ぐらいゆっくりしたほうがいいんじゃないか?」
リオ「いえ、ただでさえ未熟なのに、その上ブランクまで抱えてしまったんですから、1分1秒でも多く練習して、早く認められないと……」
メンバーB「その気持ちはわかるけど……」
メンバーC「それで寝ないで練習してケガしたんだし、無理したらダメだぞ?」
メンバーA「あぁ。もし無理してそうなら今度は俺たちが力づくでもやめさせるからな?」
リオ「は、はい…気をつけます……」
めちゃくちゃ心配させちまって、物凄く過保護に扱われる……。
いや、まぁ…俺が悪いんだけどさ……。
サフィールにも「だから言ったのに……!」って怒られたし……しまいには泣かれたし……。
うん……あんなに怒ってるサフィールは初めて見たな……。
さすがにあんだけ怒られて泣かれちゃあ、オレも無理する気はもう無くなるってもんだよ……。
だからその点は大丈夫だよ……。
マーガレットにも睡眠の重要性を懇切丁寧に教えられたしな……。
ポーチがどうのこうのって部分はよくわかんなかったけど。
メンバーD「んじゃあ頑張れよ!ただし無理すんなよ!」
リオ「はい、わかりました!」
さて…過保護気味だけどめちゃくちゃ心配してくれた皆さんのためにも、無理せず、それでいて技術の洗練を頑張らないと!
なんてやる気に満ちて自分の台にたどり着いたところで…
リオ「っ……」
また、寒気がぶり返してきた。
自分の作業台が。
オヤジが毎年オレに合わせて作り直してくれる作業台が、とても恐ろしいものに感じて……
リオ(いやいや!そんなわけない!これはあれだ!ただやる気が溢れすぎて体が震えてるだけだ!)
オレは気合を入れるために自分の両頬を手でパンッと叩く。
ふぅ……さてと…まずはモノの確認をしないとな……。
えっと…オレの金槌はっと……あった…
リオ「っ…!」
自分の愛用の金槌。
それを目にしたとき、強烈な不快感がオレを襲った。
嫌な汗がドッと流れ、呼吸が浅くなる。
なんで…なんで……!?
自分の金槌だろう……!?
オヤジが拵えてくれた…ずっと愛用してきたオレの金槌なのに……!
どうして……怖い……!
いや…そんなわけない……!
怖いわけない……!
1回大ケガしたぐらいで、こんなになるわけがない……!
踏ん張れよオレ……!
鍛治をしようってここに来たんだろう……!
だったら、1度のケガぐらいで怖気付いてんじゃねぇ……!
握れ…握れ……!
持っちまえばあとは振るだけ……振る…だけ……。
…それで…打ち損じて……滑り落として……
リオ「うぐぅ…っ!」
大ケガをしたときのことを思い出してしまい、体が震えて止まらなくなってしまった。
怖い…怖い…怖い怖い……!
グラズ「おっ、リオちゃん。復帰最初の鍛治…ってリオちゃん!?どうしたのリオちゃん!?」
リオ「あぁ…あぁぁぁ……!」
後ろからグラズさんの声が聞こえてきたが、オレはそれに答えられる余裕がない。
怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいこわい…!
嫌だ…嫌だ……!
痛いのも熱いのも嫌だ……!
グラズ「おい!誰か!手伝ってくれ!リオちゃんがまずい!」
メンバー「リオちゃんが!?」
最後に聞こえてきたのは誰だったのだろう。
オレはそこから先のことをよく覚えていなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その後、ある程度落ち着いてきたところを見計らって何度か試したが、結局鍛治どころか、道具の点検も満足に出来ずに日が暮れてしまい、オレは晩飯も食べずに部屋にこもった。
なんでこんなに怖いんだ……?
どうして鍛治が出来ないんだ……?
そんな、答えはとうに出ていることを延々考えてしまう。
怖いのは大ケガしたから……。
鍛治が出来ないのはオレが恐怖を感じてしまっているから……。
それはわかっているのに……ずっと…ぐるぐるぐるぐる……ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……。
リオ「……いや…ダメだ……」
こんなずっと考えてたって何にもならない……。
そうだ…オレは怖がっている……それは認めよう……。
だが、ならばまずは、どうやってこの恐怖を乗り越えるべきかを考えなきゃいけないはずだろ。
こんな同じことを意味もなく考え続けてもしょうがないはずだ。
リオ「すぅ…ふぅ〜……すぅ〜……ふぅ〜……」
何度か深呼吸を繰り返し、どうにかこうにか自分の心を落ち着かせる。
…あぁ…意識してみるとよくわかる。
めっちゃ心臓バクバクしてる……。
ダメだダメだ、こんなんじゃ……。
冷静にならなきゃ……。
リオ「ふぅ〜…………よし……」
何度目かの深呼吸で、心臓のうるささがだいぶ落ち着いた。
これなら大丈夫だろう。
それで…どうやって恐怖を乗り越えるかだけど……。
う〜ん……う〜ん……。
落ち着いたまでは良かったが、どんなに考えてもまったく答えは出ず、オレは無意識に自分の部屋をぐるぐると見渡し始めた。
リオ「…ん……もう11時か……………えっ?」
11時……?
えっ待って?11時?マジで?
リオ「……そんなに悩んでたのか…オレ……」
いつもならもう寝ててもおかしくないような時間になってるのが一瞬信じられず、そしてオレはそんな時間まで立ち直れずにうじうじ悩んでたのかと自分に呆れて力が抜けた。
くるるる……
そして時間の流れに気づいたオレに、ようやくかとでもいうように腹の虫が鳴る。
そりゃあそうだよな……。
昼飯から何も食べてないし……。
……昼飯…何食べたっけ……?
そもそも…食べたっけ……?
ぐ〜きゅるるる……
リオ「…まぁ…いいか……」
そんなことより早く飯食おうぜと催促されたので、オレはその思考を中断した。
しかし…飯を食べたかどうか怪しいのに、腹が減ってることすら気づかずにずっと閉じこもって…いや…やめよう……。
まだ考えが悪い方に向かっていってる気がする……。
こんなん考えてたって無駄だ無駄。
だがまぁやっぱり…今日の記憶がまるでないのはやばいよなぁ……。
思い出せるだけ思い出してみるか……。
え〜っと……確か…ギルドで気分が悪くなって…グラズさんが面倒見てくれたのは覚えてるな……。
んで……?
何回か試してみて…ダメで……そのあと閉じこもって…………ダメだ…これ多分昼飯食ってないわ。
あっいや、待てよ?
晩飯にオフクロが呼びにきてたような……。
で、確かそのときに…マーガレットの名前が出てたような……。
…晩飯とマーガレットがなんで同じ会話の中から出てくるんだ……?
アイツ、ウチに来てたのか……?
……ありえるなぁ……アイツならしれっと上がり込んでてもおかしくないよなぁ……。
オフクロが気に入ってるもんなぁ……。
物凄く礼儀正しいのにツッコミとかは割と遠慮がなくていい!とかなんとか……。
いやもっといいとこあるだろオフクロ……。
まぁいいや。
それよりも…アイツが来てたとなると、オレのことは知られてるってことだよな……。
う〜む……。
…う〜ん……?いや…待てよ?
アイツが来てたのならわかりそうなもんだけどなぁ……?
アイツ、面倒事を避けたいような感じの割には、やること為すこと話題になるようなやつだし……。
本人もたまにぶっ飛んだこと言い出したりやりだしたりするし……。
そんなのがウチに来て印象に残らないまま飯食って帰るか……?
…いや、帰らない。
アイツがそうだとしても、周りが何かしらやらかす。絶対に。
アイツはそういうやつだ。
となると…アイツは来てないかもな。
ってかよく考えたら、オレを励ますためにマーガレットの名前を出しただけかもしんないな。
もしかしたらチェルシーやシエルの名前も出てたかもしれない。
はぁ〜……ダメだな……。
そんなのも聞かずに1人で考え込んでたとか思うと、また気持ちが落ち込んでくる……。
えぇい、いかんいかん。
落ち込むのはもう無しだろ、オレ!
ぐぎゅるるるる!
リオ「…とりあえず何か食おう……」
部屋に響き渡る再三の催促により、オレはとりあえず腹を満たすことにして、部屋から出た。
リオ(うっ…暗いなぁ……)
ウチの家族はみんな基本的に朝型な生活だ。
そのため、オレはまったく暗闇に慣れていない。
そのせいで、1つの窓からの明かりしかない廊下に少し怖気付いてしまう。
かといって、このままじゃ腹が減りすぎて眠れない。
せっかく心の整理がついたのに、別の意味で寝不足になってしまったのでは意味がない。
大丈夫大丈夫……ただ暗いだけだって……。
大体、時間は違うけどこんくらい暗いときに出て練習しに行ってただろ……?
…朝早くだったからここまでは暗くなかったけど……。
で、でも、そんな怖がるようなことは……
???「うぅ…うぅぅ……」
リオ「っ!?」
えっ何!?
なんかすすり泣く声が聞こえるんだけど!?
???「うぅ…リオぉ……」
リオ「っ…!!?」
しかもなんかオレの名前を呼んでるんだけど……!?
い…いやいやいやいやそんなバカな!
気のせいだ!うん!
きっとなんかの音がそう聞こえただけだ!
だから呼ばれてない!大丈夫!だろ!?
???「リオぉ…リオぉ……!」
嫌だー!気のせいじゃなかったーっ!(泣)
オヤジもオフクロも寝てる時間なのに…… なんだよぉ……!
オレになんか用かよぅ……!
このすすり泣く声はどうやら下の階から聞こえてくるようだ。
オレはちょっと涙が出てる目を擦りながら、そろりそろりと階段へと近づいていく。
やだなぁ…やだなぁ……。
そう思いながら階段にたどり着くと、下がほんのりと明るくなってるのが見えた。
…………帰りてぇ……。
このまま布団に潜り込みてぇ……!
でもそれはそれで怖くて眠れなくないだろうし……うぅぅ…くそぉ……!
進むも地獄、戻るも地獄……。
同じ地獄なら……
リオ(真相を確かめてやる……!)
万が一やばそうなときのために、この前もらった防犯ペンダントに手を添えて、いつでも魔力を流して鳴らせるようにしておき、オレは一歩一歩着実に階段を降りていく。
暗くてよく見えなくてシンプルに危ない階段を降りきると、上から見た淡い明るさの原因が、リビングから漏れ出た明かりであることがわかった。
リオ(なんだ…よかったぁ……!でも、こんな時間に誰か起きてるのか……?)
ただの照明の消し忘れとも思ったが、オフクロがそれを見過ごすわけがないと思い直す。
以前酒によったオヤジが明かりを消し忘れて寝てしまい、オフクロにこっぴどく叱られていたからだ。
そういうわけで、オフクロがこんなもったいないことを見過ごすわけがないので、必然的に誰かが起きていると思ったのだ。
オレは気配を消してゆっくりとリビングへと近づく。
それに伴ってすすり泣く声もよく聞こえるようになり……この声の主になんとなくアタリが付いた。
が…
リオ(…いや…でもなぁ……)
あの人がこんなすすり泣いてるとかなんて想像出来ないぞ……?
自分の予想を自分で否定しながら、リビングのドアのガラスから中を窺ってみる。
そして予想が当たっていたということが分かり、そのことにかなり驚いた。
ガリオン「うぅ…リオぉ……!」
リオ(マジかよ……)
あの声の主はオヤジだった。
近くではオフクロが食器を片している。
2人とも起きてたのか……。
いや、それよりも…なんでオヤジはあんなことに……?
やたらオレの名前を呼んでるけど……。
サワコ「あんた…もうこの辺でやめときなさいよ」
ガリオン「うるせぇ…!今日はもうこのまま飲み明かしてぇ気分なんだよぉ……!」
サワコ「気持ちはわかるしアタシだって飲み明かしてやりたいけど、明日も仕事があるし、何よりこんなとこリオに見られたら…」
ガリオン「うぅぅぅ…リオぉぉ……!」
サワコ「…ふぅ……」
…オヤジを止めようとしたオフクロが、オヤジのところに酒を追加で持ってきた……。
こういうことに厳しいオフクロが、止めるのを諦めたどころか追加を持ってくるなんて……。
オレが珍しい光景に驚いて間に、オフクロは自分の分の酒を持ってオヤジの対面に座った。
サワコ「…あんた…そんなに気にするぐらいなら、普段からあの子に優しくしてあげなよ……」
ガリオン「ダメなんだよ……それじゃあアイツのためになんねぇって言ってるだろ……?」
サワコ「けどねぇ……あの子が思い悩んでるのに、あんたときたらダメダメばっかで…何が悪いかすらちっとも教えてやらないじゃないか……あの子、あんたが意地悪してるんじゃないかって考えたこともあるんだよ?」
今でも思ってるんだよなぁ……。
サワコ「せめてヒントぐらいは教えてあげたらどうなんだい?」
ガリオン「……いや…ダメだ……あれは肝心なことなんだ……自分で気付くのと人に言われるのとじゃあ全然違うんだよ……」
サワコ「そうは言ってもねぇ……そのせいであの子は自分の腕が足りないんだと思って、朝日も登り切らない時間に起きては、昼も夜もご飯に呼びにいくまでず〜っと鍛冶場に入り浸って、友だちと遊ぶのも我慢して練習してたんだよ……?それだけじゃああんたの言う、肝心なことは分からないってことぐらいは教えてあげたっていいんじゃないの?」
えっ…そうなのか……。
じゃあ…オレの今までの頑張りは無駄だったのか……?
っていうかオフクロもそれを知ってたのか……?
ならなんでオフクロも教えてくれなかったんだよ……。
ガリオン「…それぐらいすぐに気付くと思ったんだよ……」
サワコ「だけど気付かずに続けちまって、その結果あんなことになっちまったんだろ?」
あんなことって……。
ガリオン「あぁそうだよ……俺のせいだ…俺があの時アイツと揉めてなきゃ……」
サワコ「あの子とケンカするのはいつものことだろう?」
ガリオン「それでも…鍛治を始めたら黙りゃよかったんだ……!なのに…俺は……そのまま続けちまった……作業の邪魔は命に繋がるって分かりきってたのに……!」
サワコ「…今さら悔やんでも悔やみきれるものじゃないだろう……それよりも今は、あの子の将来のことだよ」
オレの…将来……?
サワコ「あの子に…まだ鍛治をさせるのかい?」
ガリオン「……何が言いてぇ……?」
サワコ「鍛治が怖くなっちまったあの子には、他のことをさせる方がいいんじゃないのかい?」
リオ(っ!!)
そんな……。
オフクロの言葉にショックを受けるオレに、オヤジが机を叩いて怒鳴る声が聞こえてくる。
ガリオン「まだ今日だけしかやってねぇだろ!やめると決めるにゃ早すぎる!」
サワコ「だけどあんた……鉄を叩く音にすら怯えてたんじゃ、鍛治なんて到底出来ないだろう……?」
ガリオン「それを乗り越えるんだよ!アイツなら出来る!アイツは俺に似て諦めが悪いんだぞ!」
サワコ「じゃあ何かい!あんたはあの子がどんだけ怯えようと我慢させるのかい!?」
ガリオン「お前こそ、リオがもっと小せぇときから夢見てた鍛治師になるのを諦めさせろって言うのか!?」
サワコ「そりゃ叶えてやりたいさ!でも…苦しんでる姿を見るのは耐えられないんだよ……!」
ガリオン「…………」
オフクロ……。
サワコ「なぁあんたぁ……ほんとに良いのかい……?あんなに震えてたあの子にずっと、そんな思いをさせ続けるのかい……?」
ガリオン「……それはアイツが決めることだ……俺たちがここで何言ったって、アイツが決めたんなら…それで……」
サワコ「あんた……」
ガリオン「…うっ…うぅぅ……!俺が…アイツの夢にヒビを入れちまったんだ……!俺が…俺のせいで……うぉぉぉぉ…!」
…………。
オレはそっとその場から離れ、物音を立てないようにしながら部屋に戻る。
いつもダメ出しばかりだったオヤジが、本当はあんなにオレのことを考えてくれてたなんて……知らなかったな……。
…このままじゃダメだ……。
オヤジのためにも、早く鍛治が出来るようにならないと……!
オフクロには悪いけど、オレはまだ鍛治師の夢を諦めないからな!
……それはそれとして……。
きゅるるる……
…腹が…減った……。
うぅ……あんな雰囲気の中に割って入るのは気が引けるけど、このままじゃ腹減りすぎて鍛治のことどころじゃないぜ……。
どうしよう………ん…?
オレがくぅくぅ腹をすかしながら部屋の前まで戻ると、ドアの脇に何かが置かれている…ように見えた。
暗くてほぼ見えないけど……うん…何か置いてある……。
出るときは死角になってて見えなかったんだな……。
ともかく、それが何かを確かめるために近くに寄ると、来客用に使う、お茶などを乗せるトレイの上に、布が被せられていて、それを取るとパンと肉野菜炒めとスープが置かれていた。
リオ「オフクロ……」
多分、晩飯に呼びにきたあと、オレが出てこなかったからここに置いてあったのかもしれない。
恐らくそのときも一声かけられてるはずなんだろうけど……まったく覚えてない……。
…まぁでも……
リオ「ありがとう…オフクロ……」
オレは小さくオフクロにお礼を言うと、料理を部屋に持ち込む。
そして机に載せると、オレも椅子に座って、
リオ「いただきます」
1人静かにそう言ってから料理を食べ始めた。
明日から、また一層頑張ろうと誓って。
リオ「…………」
……うん……。
やっぱ…4〜5時間置いてあるとな……うん……。
やっぱり出来たてを食うのが1番だな……。
そんなわけでリオ編。
頑固オヤジが実は…というお約束パターン。
でもそんなことよりリオに「ホラー駄目」属性が付いて楽しかった☆
そんなわけでまた来週。
ではでは。




