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異世界で少女とまったりするために頑張る  作者: レモン彗星
第1章…迷宮都市での基盤づくり
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22.あだ名…新人の洗礼

「チェルシーちゃん、こっちにまとめてある依頼書を、クエストボードに貼ってきてくれる?」

「は〜い!」

「マギーちゃん、一緒に行ってボード前の頼める?」

「分かりました」

「じゃあ行こ?マギーちゃん!」

「うん。掃除用具は?」

「そこの陰にあるよ」

「了解でーす」


あの後チェルにゃん呼びをどうにかやめさせることが出来たチェルシーと、割とガチでガッカリしている気がするララさんと共にいくつかの仕事を終わらせた。


どうやら今度はクエストボードに依頼書を貼りに行くらしく、その見学ついでに掃除を頼まれた。


「あれ?チェルシー、脚立とか使わないの?」

「ん?使わないよ?」

「届くの?」

「あたし飛べるもの」

「そうなの!?」

「あれ?言ってなかったっけ?あたしサキュバスだから翼があるんだよ」

「サキュ!バス!?」

「そこ分けるの?」


サキュバスって…あの男を惑わし、精を搾るエッチの権化!?


チェルシーはまだマグと同じくらいなのにサキュバス…ありだな……。


まぁさすがにそんなこと口には出さずに聞いてみる。


「サキュバスって、男の人を襲うあのサキュバス?」

「あー…やっぱりそう思う……?」

「思っちゃった。えーと…もしかしてまずかった…?」


俺の質問に苦い顔をするチェル。


「ううん…ただ、あたしがサキュバスだって言うとみんなそう聞くから……」

「あー…ごめん…どうしてもそんなイメージがあって……」

「ううん、大丈夫。でもたまにサキュバスなんだからって乱暴しようとする人がいるから……」

「うわ…そんな外道がいんの?やば……大丈夫だったの?」

「うん、お兄ちゃんやララ姉が助けてくれるから大丈夫。だけどやっぱり怖くって……」

「そりゃそうだよ、ただでさえ男と女で力の差もあるって言うのに……」


その上相手が大の男ならそれはもう恐怖だろう。

ただでさえ威圧感のある人とか多いのに、さらに紳士力の無い変態など、ただのヤベーやつだ。関わりたくない。


「最近は優しい冒険者の人とかが心配してくれるからあんまりいないんだけどね」

「そっか…ごめんね、嫌な事思い出させちゃって……」

「ううん!本当に大丈夫だから!」


そう言って心配させまいとしてくれるが、話している途中で小さく震えていたのを俺は見てしまった。


だから俺は彼女の手を握って励ます。


「まぁ…あれだ…その…少なくとも俺はそういうことはしないって約束するからさ……何かあったら頼ってよ…ね?」


手を握ったまでは良かったがまったく気の利いたセリフが出なかった……。


というかそういう経験した子に女の子(マグ)の体とはいえ、触ってる時点で信用されなくないか?

やらかしてないか?


あーもーダメダメだわホント……。


「マギーちゃん…」


自己嫌悪に陥って目を合わせられない俺にチェルシーが話しかけてくる。


チェルシーは自分の手を握っている俺の手を握ると、


「やっぱりマギーちゃんって…ううん、コウスケさんって……」


俺の顔を嬉しそうな顔で見ながら、


「お兄ちゃんに似てるね!」

「…………お兄ちゃん?」


そういえばさっきもお兄ちゃんって出てきたような……。


しかも彼女の左手の薬指には見覚えのある指輪が……


「もしかしてそのお兄ちゃんって、ハルキさん?」

「うん、そうだよ」

「ついでに言えば、その指輪ララさんの付けてたやつと同じだよね?」

「うん、みんなとお揃いなの」


みんなて。

まだ何人かいるんかハルキ。

…ちょっといじってみようかな。


「てことはチェルちゃん…ハルキにぞっこんラブラブキュンなの?」

「ふぇっ!?ぞ、ぞっこんラブラブ……(プシュー)」


おっと、ララさんに続き、チェル子までもオーバーヒートさせてしまった。

もうちょいいじろう。


「違うの?」

「え!?えーと…ち、違くはないけど…ラ、ラブラブ……」

「チェルシーちゃん…?マギーちゃん…?」

「「!?」」


赤くなってもじもじしているチェルシーをいじってニヤニヤしていると後ろから冷気を感じるほどの冷たい声が聞こえた。


俺とチェルシーが声の方を向くと、いつもの優しい笑顔でありながらとてもヤバそうな雰囲気のするララさんが立っていた。


「楽しくお喋りするのはいいけど、仕事はちゃんとやりなさい?」

「「は、はい!!」」


思わず二人してビシッと背筋を伸ばして気をつけの姿勢をとってしまう。


「二人のお仕事は?」

「私はボード前のお掃除です!」

「あ、あたしはボードに依頼書を貼ることです!」

「そうね。じゃあ、いってらっしゃい?」

「「分かりました!!」」


大きく返事をして俺は掃除道具を、チェルシーは依頼書を持ってカウンターから出ようとする。


「あぁ、待って二人とも」

「「は、はい!!?」」


まだ何か!?


「さっきの話、もしそういう人がいたら私か、周りの誰かに教えてね。二人とも可愛いから気をつけるんだよ」

「……うん!」

「…ありがとうございます、ララさん!」

「うん、じゃあがんばってね」

「「はい!」」


さっきまでの冷たい雰囲気は何処へやら、ララさんはいつもの柔らかい微笑みで俺たちを心配してくれた。


俺たちは今度は元気に返事をすると、人とぶつからないように気をつけながら、クエストボードに向かった。


「チェルシー」

「うん」

「やっぱりララさんって、怒らせたら怖いタイプだったんだね…」

「そうだよ、気を付けてね…」


今後はララさんをいじるときは引き際をきちんと見極めなきゃな……。

あとハルキは爆発しねぇかな……。


性懲りもなくそんなことを考えながら歩き、俺たちはクエストボードに着いた。


相変わらずデカいボードには、紙がびっしりと貼られていた。


…貼るスペース無くない?


「これどう貼るの…?」

「これね、朝とおやつの時間と夜に貼り替えるんだけどね。どこにどの依頼書があるって、時期ごとに紙の色が違うんだよ」

「え?あっそういうことなの?」


あまりにバラバラだからモザイクアートでも仕掛けられてるのかと思った。


「でね?これの上の方にあるのが、ランクが高いクエスト依頼なの」

「そういえば、ランクって何が高くて何が低いの?」

「えーとね…SランクからGランクまであって、Sが上でGが下だよ」

「へぇ〜…ランクの上げ方ってどうするの?」

「う〜ん…そういうのはララ姉の方が詳しいから、後で聞けば教えてくれるよ。ちょっとややこしいところもあるから難しいんだよねぇ……」

「そっか、じゃあ後で聞いてみるよ」

「うん、じゃあお仕事しよっか」

「はーい」

「それじゃあ…えーすみませーん!今から依頼の貼り替えをするので少し離れてくださーい!!」


ランクのことを軽く教えてもらい、チェルシーはボードの前にいた人たちにそう声をかけると、背中からバサァッ!と翼を出した。


その翼は、THE・悪魔の羽、といった感じの薄紫色のカッコいいものだった。


なるほど、この服の背中がパックリ開いてるのは、羽を広げたときに服が邪魔にならないようにか。


「おおぉぉぉ!!カッコいいぃぃ!!」


俺はそんなチェルシーの羽を見てテンションが上がり、思わず歓声をあげる。


そんな俺に、チェルシーは恥ずかしそうにしながら小さな声で「ありがと…」と言いそのままボードに向かって行った。


ちなみにチェルシーはしっかりとスカートの中にショートパンツを履いていた。


ハッ!そうだ!俺も仕事しないと…またララさんに怒られる……!


その光景を想像してゾッとした俺は、ボードに人がいない間にサッサッとお掃除を始めた。


そんな俺に何人かの冒険者が声をかけてきた。


「お嬢ちゃん、新しい子かい?」

「はい、今日からここで働くことになったんですよ」

「へぇ〜チェルシーちゃんと仲良さそうだね」

「ねぇねぇ、さっきの見てたよ。チェルシーちゃんがサキュバスだって知らなかったの?」

「さっき知ったばかりで、羽を見るのは初めてだったので、つい…」

「はぁ〜…また可愛い子が入ったなぁ」

「そういや嬢ちゃん、名前は?」

「あ、私はマーガレットって…」

「マーガレットちゃんかぁ!いい名前だな!」

「マーガレットちゃんは今いくつなんだ?」

「えーと…」

「マーガレットちゃん、何が好きなの?」

「アメとか好き?これとか美味しいよ?」

「ちょ、まっ…」

「マーガレットちゃん!」

「マーガレットちゃーん!」

「えーと…えーと……」


男女問わず、冒険者たちの質問責めにだんだん答えられなくなり、おろおろしてしまう。


もちろんそんな状態で掃除が進むはずもない。


やばいやばいどうしよう…!

掃除しないと…でも話の途中でそれは失礼だろうし…あれ?でも誰が何を聞いたんだっけ……?


「ただいまマギーちゃん…うわっ!すごいね…」

「た、たすけてチェルシィ…」


そこに戻ってきたチェルに助けを求め、彼女の後ろに隠れる。


「あぁどうしたの?マーガレットちゃん」

「ご、ごめんなさい…ちょっと待ってくださいね、ちゃんと答えますので……」


チェルシーの後ろに隠れたことで少し落ち着いた俺は、そう答えると一つ一つ質問に答えていく。


「えーとまずは…今10歳です。好きなものは甘い物全般なので、アメはありがたくもらいます。あと1度に喋りかけられるパニックになっちゃうので…ごめんなさい…お願いします…」

「おぉそうか…それはすまん…」

「ごめんねぇ…マーガレットちゃん…これからよろしくね」

「いえ、しばらくすれば慣れると思うので大丈夫です。こちらこそ、これからよろしくお願いします」


そうして無事にラッシュを乗り切った俺はチェルシーと一緒にカウンター裏まで戻ってきた。


「うぅ…緊張した……」

「お疲れ様。新人の人にはみんな興味があるからね。私の時も大変だったよ」

「マギーちゃんああいうの得意だと思ってた」

「駄目だよああいうの……本当は人と話すのもそんなに得意じゃないし……」

「え?あたしたちは?」

「仲良くなった人なら大丈夫なんだけど…そうじゃない人はどうしても営業対応で乗り切ってしまうというか……」


ララさんとチェルシーが顔を合わせている。


…まだ会ったばかりじゃんとか言われたら心が死ぬ。


「そっかぁ…仲良しかぁ…」

「ふ〜ん…そっかそっかぁ……」


なんか二人がニヤニヤしながらこっちを見た。

なんじゃい文句あるんかい、言わないでね心折れるから。


と思ったら俺の両手をそれぞれ繋いできた。


「仲良しぃ」

「仲良しぃ♡」

「……」


…そういう不意打ちはやめてくれ人妻たち。照れて言葉が出ないじゃないか。


「ほらほらマギーちゃん、仲良しぃ」

「マギーちゃんあたしともぉ、仲良しぃ♡」

「……でえぇい!!もう!仕事戻りますよ!!」

「あら、照れちゃった」

「マギーちゃんかわいい♡ウリウリ〜」

「うっさい!やめぃ!」


この後、しばらくウリウリされて、とてもムズムズした時間を過ごすのだった。


…そういやボード前の掃除全然出来てないけど……まぁいいか。

人妻2人に弄られるって凄いですね。


ちなみにチェルシーは12歳ぐらいかな


さすがにハルキもまだ手は出してません。

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